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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科5巻11号

1951年11月発行

雑誌目次

原著

岡林式廣汎性全剔除術後の膀胱炎に對するモナフラシンの効果に就て

著者: 山田滿寬 ,   圖師鎭雄

ページ範囲:P.435 - P.438

I 緒言
 吾領域に於ける最重要疾患たる子宮癌の手術的療法に際しては,手術操作による骨盤内臟器の損傷特に膀胱に分布する神經血管の切斷や,腰椎痲醉の影響,腹壓減退,不馴れな體位等の原因で,一定期間尿閉が必發する。その頻度は廣汎性全剔出術(岡林式)後には,傍結合織炎を合併しない場合でも11〜26日で平均13.9日,之を合併した時は更に甚しくて10〜55日,平均28.3日1)の尿閉を訴える。これが對策として術後一定期間留置カテーテルを挿入するか,或は毎日數回の導尿を反復して自然排尿ある迄繼續しなければならない。最近の報告2)によれば前法を選ぶもの7名,後法即ち導尿を行う者3名で,留置カテーテルが習慣的に斷然多く,中にはカテーテル交換の都度膀胱體操の目的も兼ねて膀胱洗滌を行う者もあるが,何れにしても長期間の留置カテーテルや頻回の導尿は尿道炎膀胱炎の併發を助長し,引いては尿管炎腎盂炎時には尿瘻の發生をすら見るに至ることもある。從つて先ず膀胱炎尿道炎を豫防して尿路感染を阻止すると共に,一旦之が發生すれば直ちに治療を遂げなければならぬ。現今スルファミン剤(以下ス剤と略)やペニシリン(以下ペと略す)の出現に依つて尿路の炎症治癒率も可成り向上したとはいえ,グラム陰性の大腸菌に對しては本剤も効力尠く,而も吾々の最も屡々遭遇するのは實にこの大腸菌性膀胱炎である。

正規胎盤より得た乳汁分泌促進物質に就いて

著者: 赤須文男 ,   大谷知寸

ページ範囲:P.439 - P.445

Ⅰ緒論
 乳腺の發育並に乳汁分泌機能に就ては古來より實に多數の業績があるが,本邦に於ける藤井(久)氏(昭和13年)の實驗は過去の多數の業績を検討し,その一つ一つに就て詳細な追試を行い,且つ新しい見地から是等の問題に研究の斧を加え,理論整然たる中に結論を確立したものであつて,その細微に亘る用意周到の實驗に就いては蓋し驚嘆に價するものがあると思うのである。一方,乳汁分泌なる現象を考えて見るに,母體と胎兒,次いで乳見,下垂體と胎盤,而も,胎兒と胎盤は妊娠末期を終了すれば分娩として排出せられるものである等,この間に於て,不必要の時には乳汁分泌なく(妊娠中),必要時に到らば(産褥時),直ちに乳汁分泌作用が發現するなど,是等のデリケートな問題を何が司つているのか,一言にして言えば下垂體と胎盤であろうが,こうした微妙な問題に就ては尚,研究さるべき餘地が残されているのではないかと推察される。

骨盤外計測値と母體身長並に新生兒體重との相關關係に就いて(追試)

著者: 明石政雄 ,   渡邊久雄

ページ範囲:P.445 - P.448

緒言
 骨産道に關する産科學的診察法の一つとして骨盤外計測法は骨盤レ線診斷法に比較し多少正確性を缺くが,臨床上如何なる産科醫も助産婦も簡單に行う事が出來る點その實用性に於て最大である。而してこの骨盤外計測値と新生兒の體重,並に母體身長との數量的間係を知る事も亦産科學上甚だ重要な事である。小畑,尾島は骨盤の大さと,新生兒の體重とは平行關係にある事を確證し,安藤教授は之が産科學上甚だ重要にして有益な發見である事を高唱せられている。又高橋,緖方,猪原池田等は骨盤外計測値と母體身長との間に正の相關關係がある事を認めている。著者は先に以上の文献を引用して骨盤外計測値と妊娠子宮底の長さ並に最大腹圍との相關關係に就いて研究したがその成績を整理するに當り,著者自身も亦同樣の關係を探らんとし,その追試を行つた次第である。例數が少いにも拘らず同樣の事項を確證し得たので簡單に報告する。

新生兒赤芽細胞症—特に母體血中の抗Rh凝集素の消長に就て

著者: 小畑英介 ,   上塚惠美子

ページ範囲:P.449 - P.450

 Rh因子の不適合に依り發生する新生兒赤芽細胞症に就ては最近その研究が盛になつたが,本邦に於ては本症が比較的稀なため,確實な報告例は,末だ數うる程しかなく,殊に母體血清中に抗Rh。凝集素を證明し得たものは東大の野田,小川,神谷等の1例と,九大の膳所の數例を見るに過ぎず更に該凝集素の分娩後に於ける消長を長期に亘り追究したものは1例もない。
 本症の將來の分娩に對する豫後判定の上からも又今後の妊娠に對して何等かの處置を講ずると云う點からも母體に生じた該抗體の消長を明かにする事は臨床上極めて意義のある事と考えられる。

症例研究

双角子宮妊娠と卵巣嚢腫内蛔虫迷入の合併せる1例

著者: 田島安之助

ページ範囲:P.451 - P.452

1.はしがき
 蛔虫が消化管以外の異所に迷入し,種々の障害を起した例は,外科・泌尿器科領域に於ては多數の報告がある。しかるに婦人性器に迷入した例は極めて少く,本邦に於ては,佐々木氏例(膣から蛔虫排出例)中山氏例(卵管内迷入例)竹内氏例(子宮筋腫,左側附屬器嚢腫の手術後腹壁切創部より排出例)岩津氏例(卵巣嚢腫手術後腹壁切傷部より排出)徳永氏例(蛔虫による子宮穿孔例)等あり,卵巣内迷入例としては,田隅氏及び倉橋氏の類皮嚢胞内迷入例,鮫島氏及び茶谷氏の癒着性卵巣嚢腫迷入例等にすぎない。
 他方双角子宮の本邦に於ける頻度は,野島氏,0.218%木村氏0.141%となつているが,これと妊娠との合併率は全妊娠のおよそ0.3%とされている。

膣壁に原發せる惡性黒色腫の1例

著者: 永原貞郞 ,   早藤勇生

ページ範囲:P.452 - P.456

緒言
 女性性器に發生する惡性腫瘍の中,黒色腫は特に惡性度が強いが比較的稀なもので,腟壁に原發するものはParona (1887)以來僅かに十餘例に過ぎない。我々は,臨床上腟に原發し肝轉移を起したと思われる肉腫患者を,死後病理解剖學的に検索し,所謂「癌肉腫」の組織像を呈する腟壁原發の惡性黒色腫と診斷する症例をえたので,茲にその概要を報告する次第である。

外陰に大血腫を形成せる重症性交裂傷例に就て

著者: 小川安正

ページ範囲:P.456 - P.458

はしがき
 性交負傷に關しては,西歐に於ては,Neugeba—uer (1889)は既往文献150例に7例の自己治驗例Raum (1927)は109例に10例の治驗例,Wenzkowsky (1932)は,Neugebauer以後の212例に自己の53例を夫々加えて總括的報告をなしその他治驗例或は損傷成立に關する諸説等の報告があり,臼井(1940)によれば當時既に400例以上に達したという。
 飜つて本邦に於ては,萩野,星(1920)の報告以來現在迄77例に達しているが,その間内原(1935)が32例,臼井(1940)が70例,花岡(1951)が77例に就て夫々自己治驗例を含めて總括的記述をしている。その他末報告に終つているものもあるであろうし必ずしも稀有とは言い得ないが,余は最近産婦に於ては珍らしい外陰(右側小陰脣)負傷によつて右側大陰脣皮下よの腟周圍組織に互る大血腫を形成し,而も出血多量のための一時重篤全身症状呈した1例に遭遇したので,その大要を報告する。

境界領域 小兒科から

乳兒の糞便に就て

著者: 詫摩武人 ,   濱田琢 ,   本間道

ページ範囲:P.459 - P.463

まえがき
 糞便の性状が腸内に於ける消化吸收の状況,即ち消化管機能を窺知する一つの指標として重要視されるのは周知の通りである。殊に乳兒では下痢を起し易く,下痢すると重篤になり易いから,乳兒の糞便を仔細に觀察していくことは育兒上大切なことである。
 然し乳兒の糞便の性状は生理的範圍内でも色々と動搖し,必ずしも一定していないからその色調,硬軟等の輕度の變化に對してはあまり神經質になる必要はなく,糞便の性状よりもむしろ發育,食慾元氣,機嫌等の一般状態の方が育兒上一層大切であることも忘れてはならない。以下,健康乳兒の糞便の性状,次に便性の異常に就て述べ,更に最近當教室で行われた乳兒糞便中の遊離アミノ酸に關する研究の概略を紹介し,最後に乳兒の腸内細菌に就て述べる。

推計學

推計學算法(XI)

著者: 宮信一

ページ範囲:P.464 - P.469

§相關分析えの基礎
 次項で學ぶ相關分析法(analysis of covarian—ce)の分析表作成其他め基礎となる事項を此の項で學ぶこととする。前回の身長と食道の回歸直線の問題を再び第1表にのせて考察しよう。既に求めた如く標本回歸直線はとなり,12例の各々に對應するŶ及び残差.dy.χ=Y—Ŷは3行と4行に記入されている。ところで,"12例の食道の長さの標本平均は24.5cmで,その1例の食道は26cmだ。"というだけでは,食道が26cmの人の身長はどの位だつたかということや,身長に比し食道が長いか短いかがわからない。若し身長が97cmだという知識があると回歸直線の式から推定値Ŷを求め,身長の割に長いとか短いかの目安がつけられる。即ち残差dy.χ=Y—Ŷを調べることにょり身長に比し食道の長さの大小の目安がつけられよう。今度は1表の7番目と12番目の食道を比べるのにはどうするか。

診療室

子宮頸部病變の表現用語に就いて

著者: 林基之

ページ範囲:P.470 - P.471

 癌の早期發見の努力は,臨床醫と病理學者の協力に依り初めて價値を持つ。然し,臨床醫が病理學者に任せきりになることの不當なことは當然であるが,病理學者が,組織標本にのみ捉われ臨牀經過に對し無關心であることもよくない。
 癌の組織標本を見て之を表現する場合,簡明に而も誰にも納得行くように記載し成る可くラテン系用語に依り世界共通のものとすべきだと思う。そして一語一概念に徹し,學者に依り,又は國に依り用語の定義が違うようでは困る。今日,比較的明確なのは,明かに誰が見ても,癌と思われ,只之を如何なる系統に入れるかに就いて議論がある位で,割に問題は少いが,癌とまぎらわしく,而も屡々見られる病變を如何に表現するかは,將來益々大切となり,文献を讀む上からも自ら表現するにも大切である。

死産並びに新生兒死の原因竝に其豫防に關する一考察

著者: 河合信秀

ページ範囲:P.471 - P.472

 死産並びに新生兒死の原因としては,直接的原因として,母體を介しての急性,慢性傳染病或は臍帶の巻絡,出産時外傷,間接的原因として,胎生時の發育異常等に大別されるが,これらの原因の孰れにも屬しない例がかなり多く,これらは所謂生活力微弱死として片附けられる。實際これらは出血性素因及び卵圓孔,ボタリ氏管の開放という略々共通的な所見を見るにすぎないのが大多數であつた。從つてこれらの管口の開放を異常の範疇に入れようとする傾向も生じてくる。又この出血性素因の誘因としては,我々は新生兒の未發達な基質及び殆どすべての場合に行われている叩打人工呼吸等の影響を見逃す事は出來ない。

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外國文献抄録

著者: 宮川 ,   齋藤正實

ページ範囲:P.473 - P.475

婦人科的手術に於ける豫防的虫垂切除
 婦人科的手術に際して取り出した虫垂に,屡々カタール性虫垂炎及早期急性虫垂炎の所見が見られる事は報告されている。
 T.Taniguchi等はA.J.of.Obst. & Gynec.Vol.60,No.6,1950(p.1359-1362)に於て虫垂炎の發生率を檢討し,之によりかかる手術に際して虫垂切除の必要性を強調している。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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