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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科5巻7号

1951年07月発行

雑誌目次

原著

妊婦血液のEsterase及Kathepsin作用に就て

著者: 伊藤久

ページ範囲:P.255 - P.257

緒言
 血液の酵素作用のうち血液 Esterase及血液Kathepsinをとりあげて著者はさきに産婦人科領域にをける腫瘍患者について検索し知見を報告した。著者は腫瘍と胎兒とはともに宿主に對する關係は新生の増殖性組織であると云う點から,妊娠時の血液酵素作用—Esterase及Kathepsin作用—に關して何等かの所見が得られるものと考えた。而して生理的の妊娠と病理的の腫瘍とはそこに異點の存することも豫想され本研究を企てた。尚健康非妊婦を對照として比較検討した。さて妊娠,産褥時の血液酵素作用に關する文献は著者の渉獵した範圍においては見出すことが出來なかつた。

戰後女學生の月經について(1)

著者: 原悅次

ページ範囲:P.257 - P.260

第1章 緒言
 月經が婦人と如何に密接な關係にあるかは今更論ずるまでもない所である。從つて,月經に關する報告は枚擧に遑のない程であるが,之等の文献を見ると,女學生を調査資料にしたものとそうでないものとに,大體,二大別する事が出來る。社會醫學的乃至勞働醫學的見地より,勤勞婦人を對象としたものに意義がある樣に,女學生以外を對象としたものにも,夫々目的によつて,意義があるが,年齡の差が少く,肉體的精神的負擔生活環境等の諸條件が近似している女學生を對象とするものも亦大いに意義があるので,本邦に於ても,伊坂1)(明治43年)を始めとして,保坂2),施3).岡島4),松山5),小畑6).辻7),岩田8),小榮9)池口90),氏等,女學生を調査資料として報告した人が少くない。
 併し,何れも,大體平時に於けるものである。我が國にとつて,第二次世界大戰は古今未曾有の出來事であつて,精神的,肉體的両面に,大變な影響を及ぼしたものと考えられる。從つて女子生活現象と密接な關係にある月經にも,戰前と異つたものが表われはしないだろうか。

進捗外陰癌根治手術全身轉移を起した剖檢例

著者: 中野裕雄

ページ範囲:P.261 - P.264

緒言
 女子性器が癌腫の好發部位であることは一般の認める所であるかが,今日までの報告例にも明な如く其の大多數は子宮膣部,頸部及び體部癌であつて,外陰癌は卵管癌,腟癌に次で稀に見るところとされている。本症の頻度を見ると少數例に於る統計のためか諸家により區々であるが,最少1.4%(Jacofy)のから最大4.0%(Peham-Pacol)を占むるに過ぎない。女子外陰癌は1751年Morgagniにより初めて記載され,次でO.Frankl,E.Ke—hrer,Wittkopf,Rupprecht,Mattmuller,Schottlande r,Giesecke等の報告次ぎ,また本症の手術に關してはKehrer,Stoeckal,Rupprecht,Savare,Ma chen hauerの諸氏の報告がある。本邦に於ては白木,内藤,近藤,京極,星合等により臨床統計約研究が發表されているが,其の豫後,再發特に死因剖檢所見等に關する報告は内外を通じてあまり見ない樣である。余は次記の1症例につき手術より再發,全身轉移剖檢の全經過を觀察し得たので,其の要綱を報告し諸賢の御參考に供する。

症例研究

妊娠5ヵ月卵管間質部妊娠破裂の1例

著者: 長島徹郞

ページ範囲:P.265 - P.266

緒言
 卵管間質部妊娠は稀なものであり,然も後半期迄妊娠を持續して生兒を得たと言うような例は,甚だ少く,外國ではRooswinkel,Heyn,Heltmuth,Toth等,及び本邦では矢内氏によつて報告されているに過ぎない。著者は最近5ヵ月迄持續した卵管間質部妊娠を經驗したので報告する。

子癇後に發生したJackson氏癲癇の1例

著者: 今井嘉春

ページ範囲:P.266 - P.270

緒言
 妊娠分娩産褥中に癲癇の第1回發作を見る事はそれ程稀ではなくて,Anselmino.1)Clemmessen,Bakker,Burgel,Karl2)雨宮,谷望等の諸氏が報告しているが,子癇に誘發或は原因せられて發したと思われる所謂子癇後癲癇3)(Posteklamptiscke Epilepsieの例は極めて稀であつて文献を徴してもGlockner,4)Buttner5)Hoffmann6)Bund雨宮7)氏等數例を數えるのみ。しかも報告は雨宮氏の1例をのぞいて他は皆子癇後に來した眞性癲癇である。余は最近典型的な産褥子癇後遺症としてJac—kson氏癲癇と考えられる1例に遭遇したので以下その臨床經過の大要を記し併せて本症に關する知見を補足する。

境界領域 精神科から

精神科からみた産婦人科

著者: 懸田克躬 ,   石崎孝夫

ページ範囲:P.271 - P.273

Ⅰ 問題はどこにあるか
 1.課題の意圖 日常の診察のあいだで,産婦人科の領域と精神神經科の領域とが,どのような交渉をもつかを明らかにすることが,おそらくは,われわれに與えられたテーマの意圖であろう。
 この2つの專門領域の交渉は,いろいろの意味で考えられるが,特に實地醫家を考えた場合に,われわれの問題は,1つには,産婦人科の診察の對象となる,生理的,または病理的現象に伴なつてみられる,精神神經科領域の障害の問題であり,2つには,その苦痛の現われ方が産婦人科疾患を思わせるために,産婦人科を訪れるが,實は,精神神經科領域の疾患であるものがないかの問題であろう。また,われわれ精神神經科の醫師としての側からは,1および2に關連するが,神經科を訪れやすいが,實は産婦人科でとりあつかうべきであるものを,われわれがみ逃していわしないかの問題がある。もちろん,こゝには,このすべてをつくすことはできないので1,2の問題を考察するにとどめなければならぬ。

推計學

推計學算法(Ⅶ)

著者: 宮信一

ページ範囲:P.274 - P.279

§相關係數の概念と求め方
 身體の大きい人の子供は大きいとか,歴史の點數が良い生徒は物理の點が惡い等々,一方の變量が變るにつれ,もう一つの對應する變量がどういう風な傾向で變化するかを知ろうとする尺度に相關係數(correlation coefficient)がある。第1圖と第1表のAB…Fの六通りのXとYとの關係を見て載きたい。
 Xが表の如く變化するにつれ,對應するYが(A)の如くに變る場合から,(F)の如くXが大になるにつれて,Yがそれに應じて減ずる場合及びこれ等の中間段階のグラフでXとYの關係の大略は知ることが出來よう。今迄學んだ偏差平方和を求めると次の如くなる。

檢査室

Carbowax compoundによる試驗的切除組織標本作製に就て

著者: 內野久

ページ範囲:P.280 - P.281

 病理組織學的檢査が診斷治療の方針を決定する上に必要缺くべからざるものであることは,今更申す迄もないことである。特に,婦人科領域に於ては,早期發見に於て治癒率を著しく上昇せしめることが出來る。子宮癌があるだけに,組織檢査がより必要になつてくるわけで他臟器癌に比べていとも簡單に,組織を切徐して檢査し得る點で,我々臨状家はもつと頻繁に組織檢を行つてよいわけで,私は患者で出血を主訴としないまでも子宮腟部糜爛があれば,殆んど凡を檢査しているが,偶然にも子宮癌が發見され,患者から感謝されたことも稀ではない。檢査術式も種々改良して現在では1時間内外で迅速に檢鏡までやつているが,我々臨牀醫にとつては尚,煩雜であるという感を深くすることが屡々である。ところが,最近アメリカからの輸入品であるCarbowax compoundによる組織切片作製を試みたが,操作,費用,成績等凡ゆる點で,甚だ優秀なものであることを經驗したのでその方法等に就き述べてみる。

診療室

腟式卵管避妊術の手技

著者: 佐伯政雄

ページ範囲:P.282 - P.285

まえがき
 母性保護並に優生學的見地より人工避妊法の最も切望されている現今,最も安全にして最も容易なる避妊手術を希求することは敢えて冗言を要しない。避妊手術には男性々器に行うものと,女性々器に施すものとの2者あるが一般には女性々器に行われることが多く,且つ吾人が關與するものも女性々器のみである。妊娠に關與する女性々器は卵巣,卵管,子宮及び膣の4者であるが,避妊手術に最も理想的なるは卵管である。

山元氏妊娠診斷法の追試及私の最後的妊娠診斷

著者: 津久井壽

ページ範囲:P.285 - P.287

 山元淸一氏は昭和25年7月の本誌,「産科と婦人科」及び「産婦人科の世界」に着色液を子宮腔に注入して之が逆出するか否かにより妊娠を鑑別し得ると發表した。この追試として昭和26年1月の「産と婦」に行村氏が,又第3回日本産科婦人科學會總會演説として山田氏が發表している。
 私も本法の追試を行つた。膣洗滌の後4號Ne laton's catheter により0,1%インデイゴカルミン液(蒸溜水に0,1%の割にインデイゴカルミンを溶して滅菌したもの)4ccを内子宮口を越えて子宮腔内に注入した。此の際山元氏は未産婦ではHegar氏擴張器2號乃至3號まで擴張の必要を感する場合ありと云うが,私はその必要を認めた事はない。懸身臺上で液の逆出なきを陽性(妊娠)とし,其の場で少しでも逆出するのを陰性(非妊)とする。

豫報・速報

馬尿酸合成試驗に於ける安息香酸値の圖表計算

著者: 佐藤彰一 ,   澄川豊 ,   大塚英郞

ページ範囲:P.288 - P.289

 馬尿酸合成試驗による肝機能檢査はQuickにより始められ以後肝機能を定量的に評價し得る點に於て多く用いられる樣になり,我が領域に於ても特に本邦にては長内及び高橋により取り上げられ産科的に婦人科的に應用せられているのである。その操作は簡單であり,得られる成績の精確な點に於ては他の種々なる肝機能検査に比し優れるとも劣らぬものと考えられるのである。この方法にては一定濃度の安息香酸ソーダ溶液を静注し1時間後に得られる尿中の馬尿酸の重量と尿量とから逆に安息香酸の重量を推算しその得られた安息香酸の重量の多寡により肝機能を推定するのであり重量大なれば肝機能良好であり,小なれば肝機能不良であると言うのである。勿論これらの手技及び馬尿酸重量及び尿量よりの安息香酸重量の算出はさして複雜ではないのであるが,多數例につきこれを行う場合にては最後の馬尿酸重量と尿量よりの安息香酸重量の推計算はかなり手間のかゝるものであり,從つて誤算をひき起す恐れなしとしない。依つて著者等はこの計算を圖式により行うことを考え新たに計算圖表を求め多數例に使用しこの優れた肝機能檢査の手數をはぶくことを得たるにより大方諸賢の參考に供したいと思い發表する。

座談會

産科婦人科昔ばなし—佐伯,木下兩先生をかこんで

著者: 佐伯理一郞 ,   木下正中 ,   安藤畫一 ,   木下正一 ,   今田見信 ,   金原元

ページ範囲:P.290 - P.294

 木下正一 佐伯先生はいつお生まれになつたのですか。
  佐伯(理一郎) 文久2年の2月生れと戸籍にはのつて おりますが,事實は文久元年の12月生まれです。それ でまあ滿90歳といえるし,89歳ともいえるのですが。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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