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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科51巻10号

1997年10月発行

雑誌目次

今月の臨床 妊娠初期を診る 妊娠の診断はどうするか

1.妊娠初期に基礎体温をどう利用するか

著者: 田辺清男 ,   浜谷敏生 ,   酒井のぞみ ,   山本百合恵 ,   吉村泰典

ページ範囲:P.1024 - P.1026

基礎体温とは
 基礎体温(basal body temperature:BBT)とは,体温上昇の原因となる筋肉運動や飲食物摂取,精神的感動などの影響が少ない,朝,目醒めた直後の体温を言う.婦人体温計を用いて舌下(口腔内)で5分間測定した体温を用いる.腋窩で測定してもよいが,口腔内より約0.3℃低温を示すことに留意する.電子体温計では約1分で測定できるが,水銀体温計に比べると再現性が低く変動が大きいように思われる1)
 女性のBBTは卵胞期の低温相と黄体期の高温相からなる二相性を示す.排卵後,顆粒膜細胞と莢膜細胞は黄体を形成し,黄体はLHの作用でprogesterone(P)(黄体ホルモン)を産生するが,これが視床下部の体温中枢に作用して体温を上昇させ高温相を形成する.したがって,BBTは卵巣機能ことにPの分泌状態を反映するとされる.正常周期の卵胞期の血中P濃度は0.1〜0.2ng/mlであるがBBTには影響を与えないし,さらにhMGを連日投与して排卵誘発した際の血中P濃度はhCG投与前には0.9〜1.0ng/ml程度上昇するが,BBTはほとんど変化を示さない2)ことから,BBTの上昇は‘all or none’の反応に近いと考えられ,通例P値が約4ng/ml以上になるとBBTの上昇が開始するとされている.

2.hCG微量診断の有用性とピットフォール

著者: 丸尾猛 ,   本山覚

ページ範囲:P.1028 - P.1030

 妊娠補助診断法としてのhCG測定は産婦人科臨床では不可欠なものであり,近年hCG測定の感度,特異度,精度,操作性ならびに測定時間短縮面から著しい改良がなされてきた.現在,日常臨床ではEIA(enzyme immuno assay)法の応用により感度50mIU/ml,ワンステップ操作,測定時間2〜3分仕様のものが汎用されているが,さらに子宮外妊娠などの異常妊娠の早期診断や体外受精後の管理ならびに絨毛性疾患の管理では,より高感度の微量hCG測定系が要求され,現在多くの測定キットが開発されている(表1).本稿ではこのような現況での微量hCG測定の意義とそれに伴う注意点について当教室での知見と諸家の報告をもとに解説したい.

3.経腟断層法で週数診断はどこまで可能か

著者: 竹村秀雄

ページ範囲:P.1032 - P.1034

 経腟超音波は胎芽の発生過程を詳細に観察することを可能とし,超音波発生学を生み出した.Rottem1)は,妊娠初期において44項目に及ぶ発生過程が次々と観察できることを報告しているが,日常臨床においてもほぼ2〜3分の1週程度の週数判定が可能である.

4.子宮内胎児死亡をどこまで予測できるか

著者: 川鰭市郎 ,   玉舎輝彦

ページ範囲:P.1036 - P.1037

 子宮内胎児死亡とは,胎児の心拍動が確認された後にこの心拍動が消失している状態を指す.したがって妊娠のごく初期には,流産と理解されているものも少なからず存在していることになる.ここでは妊娠の比較的初期に発生した胎児死亡について述べてみる.

5.子宮外妊娠の診断をどうつけるか

著者: 井坂恵一

ページ範囲:P.1038 - P.1041

 子宮外妊娠の診断は産婦人科における疾患のなかでも,その特徴的症状などから一般に容易であると考えられてきた.しかし実際には診断が容易に行えるのは,妊娠部の破裂や流産により腹腔内に大量の血液が貯留し,下腹痛やショックなど,ある程度の典型的症状がすでに出現している場合であり,破裂前や陳旧性の状態にある子宮外妊娠を診断することはなかなか難しい.ところが近年になり,経腟超音波装置が開発され様相が一変してきた.膀胱充満などの条件に左右される経腹超音波とは異なり,経腟超音波は子宮をより近い位置から観察することによって子宮内の妊娠を早期に診断することを可能にし,結果として子宮外妊娠も妊娠ごく初期の未破裂の状態において診断できるようになった.これに伴いその治療法に関してもMTXをはじめとする薬物保存療法1)や腹腔鏡下手術による低侵襲性手術2)など,多くの新しい方法が考案され行われるようになってきた.
 本稿では,子宮外妊娠の早期診断には欠くことのできない経腟超音波とその確定診断に重要である腹腔鏡検査にスポットをあてて述べたい.

胎児発育の評価

1.GS,CRL,胎児計測

著者: 奥山和彦 ,   藤本征一郎

ページ範囲:P.1042 - P.1045

 超音波断層法の導入により周産期管理は大きく変貌を遂げたが,なかでも経腟超音波断層法の普及により,妊娠初期における胎児発育が段階を追って評価できるようになったことは特筆に値する.すなわち,妊娠4週のはじめから子宮内にGS(gestational sac:胎嚢),妊娠4週の半ばから卵黄嚢(yalk sac),妊娠5週の後半には胎芽(embryo)像ならびに心拍動が観察されるなど,日単位・週単位で胎児発育を捉えること1)が可能となったのである.この時期の超音波断層法を用いた胎児発育の指標には,GS,長径,CRL(crown—rump length:頭殿長,図1),およびBPD (bi—parietal diameter:児頭大横径)が用いられている.通常,妊娠4〜6週ではGS,妊娠7〜12週ではCRL,それ以降ではBPDが最も信頼される指標となる.

2.心拍動

著者: 秦利之 ,   青木昭和

ページ範囲:P.1046 - P.1049

 近年,近距離の標的臓器を観察するのに適した高周波数の経腟プローブが普及し,妊娠初期における高解像度の画像が得られるようになってきた.また,hCGの検出感度が上昇してきたため受精後約10日以降から尿中hCGが検出されるようになり,従来に比べ,より早期から妊娠子宮内の観察が行われるようになってきた.超音波断層法にて最初に描出できる妊娠像は胎嚢であるが,胎芽の生存そのものを証明するのは今のところ胎芽心拍(EHB)の確認のみである.よって超音波法で確認可能な週数より早い時期での胎芽生存の証明は今のところ不可能である.一方,EHBが確認されても流産になる場合が時々経験される.この過程において子宮内胎芽死亡を起こす前に心拍に異常の出現する時期がある可能性がある.そこで本稿では,胎芽および胎児発育過程における正常心拍動並びにその異常を取り上げ,最近の知見と筆者らの症例を提示して解説する.

3.頭頸部

著者: 夫律子 ,   青野敏博

ページ範囲:P.1050 - P.1057

 胎児期の超音波診断は近年高周波経腟プローブの開発とともに非常に進んできた.しかしながら,胎児中枢神経系異常は妊娠後半期になってから診断されることが多く,的確な診断に至らないこともある.胎児中枢神経系のより正確な評価を行うためには,妊娠前半期から経腟的アプローチを併用して観察することが望ましい.本稿では妊娠前半期における胎児頭頸部の正常像と異常像を比較し,その観察について述べる.なお,観察は主にGE横河メディカルシステム社製LOGIQ400および500(6.5MHz経腟プローブ)にて行った.

4.胸部

著者: 近藤俊吾 ,   高橋通 ,   畑俊夫 ,   小林俊樹 ,   小池一行

ページ範囲:P.1058 - P.1061

 近年,経腟超音波走査法の開発により,妊娠初期の胎芽・胎児の画像描出がより容易となり,いわゆる超音波発生学(sono-embryology)の概念も提唱されている.しかし,経腟走査法は元来,走査断面に限りがあり,胎芽・胎児の詳細な検討を行うためには頻回の検査を必要とする.

5.腹部

著者: 今井史郎 ,   金井宏之 ,   前田哲雄

ページ範囲:P.1062 - P.1064

 妊娠8週ごろより胎児の腹部,臍帯が超音波で認識できるようになる.妊娠初期における胎児腹部臓器のうち,超音波像として認識しやすい臓器について,先天異常との関連性から述べることにする.最近では妊娠16週くらいまでの胎児診断はTVS(経腟超音波)を使用する場合が多い.

6.四肢

著者: 佐藤昌司 ,   古賀剛 ,   小柳孝司 ,   中野仁雄

ページ範囲:P.1066 - P.1069

 超音波断層法の発達にともない,胎児の微細な解剖学的構築が妊娠早期から観察可能になってきている.胎児四肢の観察は,胎児形態異常の診断のみならず,妊娠週数の補正あるいは胎児体重の推定などに応用されており,さらに,胎児行動学の観点から四肢の動きを定量的に評価する方法も提唱されている1).このように,四肢の観察は超音波検査を行ううえで重要なcompartmentである.ここでは,妊娠初期〜中期における四肢の観察の意義について概説する.

初期異常への対応

1.絨毛膜下血腫

著者: 増崎英明

ページ範囲:P.1070 - P.1072

 絨毛膜下血腫(subchorionic hematoma)とは,超音波検査で胎嚢の近くに認められる液体貯留像であり,妊娠初期における子宮出血の原因として重要である.

2.頸管無力症

著者: 中西正美

ページ範囲:P.1074 - P.1077

 本稿は特集「妊娠初期を診る」の初期異常への対応の項の1つであり,頸管無力症はご存じのように主に妊娠中期のできごとであるが,初期異常への対応という観点から述べる.実際の診療に少しでも役だてれば幸いである.
 本疾患の定義を日本産科婦人科学会編『産科婦人科用語解説集』を引用するならば,「頸管無力症(cervical incompetency)は妊娠中期以後にみられる習慣流産の原因の1つで,外出血とか陣痛などの切迫流産徴候を自覚しないにもかかわらず子宮口が開大し,胎胞が形成されてくる状態である.既往妊娠時に受けた陳旧性頸管裂傷や,先天的な頸管組織の異常により,妊娠中期以後になると妊娠が維持できなくなり,頸管が開大し,続いて胎胞が膨隆し,流早産へと移行する.通常は無症状性であるが,ときに多量の腟分泌物,下腹部不快感を訴えることがある」と記してある.

3.抗リン脂質抗体症候群

著者: 青木耕治

ページ範囲:P.1078 - P.1081

抗リン脂質抗体症候群とは?
 1980年代中ごろに,細胞膜の重要な構成成分としてのリン脂質に対する自己抗体の存在とその測定法の原理が発見された.1986年,この抗リン脂質抗体(aPL)陽性例における一連の臨床特徴が注目され,これらの疾患群を「抗リン脂質抗体(aPL)症候群」と呼ぶことが提唱された.
 aPL症候群の主な臨床所見は,①動・静脈血栓症,②不育症,③血小板減少症であり,また主な検査所見は,aPL陽性(現時点では主に,抗カルジオリピン・β2グリコプロテインI抗体陽性;抗CL・β2GPI抗体陽性,あるいはループスアンチコアグラント陽性;LAC陽性)である.

4.卵巣嚢腫

著者: 佐藤重美

ページ範囲:P.1082 - P.1084

 産婦人科診察の際に内診に併用して経腟超音波検査を行うことが一般的になり,このため妊娠の診断と同時に卵巣腫瘤の診断も可能になってきた.その結果,妊娠初期に卵巣の腫大や腫瘤(嚢胞)を認める機会が増加し,これらと嚢胞腺腫(嚢腫)との鑑別が必要になってきている.本稿ではまず妊娠に合併する卵巣腫瘤(腫瘍)の頻度について述べ,さらに類腫瘍性の腫瘤と真正腫瘍との鑑別,二次的合併症などについて述べる.

5.子宮筋腫

著者: 友田昭二

ページ範囲:P.1086 - P.1088

 子宮筋腫は中高年婦人に過多月経・月経痛をもたらすことにより,臨床的に発見される良性腫瘍であるが,近年初経の若年化に伴い子宮筋腫の発生も若年化の傾向が認められ,臨床的に認識されない子宮筋腫も含めると妊孕性を有する婦人に多く認められつつある良性腫瘍である.さらに妊婦年齢の高齢化も加わり妊娠に子宮筋腫を合併する頻度は1970年代では0.7〜1.3%であったのが,最近では超音波による診断技術の進歩と相まって1.5〜4.0%に認められるようになった.

6.重症悪阻—ビタミンB1欠乏とWernicke脳症

著者: 澤倫太郎 ,   荒木勤

ページ範囲:P.1090 - P.1092

 妊娠初期に起こる消化器症状をつわり(emesis)または妊娠嘔吐(vomiting of pregnancy)といい,妊娠5〜6週から発症し,通常は積極的な治療を必要としないで,妊娠20週までには軽快する.一方,妊娠悪阻(hyperemesis)は,つわり症状が悪化し食事摂取が困難となり,妊婦に栄養障害や代謝異常をきたし加療を必要とする状態をさす.
 加療は絶食,輸液療法が中心になる.しかし治療抵抗性の重症妊娠悪阻では頻回の嘔吐,食事摂取不能による母体の代謝異常に加え,多量のブドウ糖輸液によりビタミンB1の消費を招き,Wer—nicke-Korsakoff症候群の発症から,ときとして重篤な神経学的後遺症や妊産婦死亡につながるケースもあるので慎重な管理が必要となる.

7.子宮頸部悪性腫瘍

著者: 斎藤馨

ページ範囲:P.1094 - P.1099

 近年,初交年齢の若年化,性行動の変化によって妊婦を含む若年者に子宮頸部の異形成や初期癌が発見される機会が増えている(表1)1,2)
 子宮頸癌は妊娠に合併する悪性腫瘍のなかで最も多く,頻度は0.02〜0.09%である.さらに女性の晩婚化,出産年齢の上昇傾向によって,今後妊娠に合併した子宮頸部の異形成と初期癌は増加すると予想される.これらの疾患はすなわち命にかかわることはないが,その治療によって妊娠の存続,胎児の生命や妊孕性の温存が損なわれる可能性があり,一方,患者や夫が挙児あるいは妊孕性の温存を強く希望する場合もあり,慎重かつ適切な対応が望まれる.

8.絨毛採取

著者: 見常多喜子

ページ範囲:P.1100 - P.1102

絨毛採取(transcervical chorionic vil—lus sampling:CVS)の適応
 妊娠前半期に行われる先天異常の胎児診断,とくに妊娠初期絨毛検査に関する見解を日本産科婦人科学会倫理委員会は会告1)のなかで検査の実施,その後の処置について十分に慎重でなければならないと述べている.そして下記のような夫婦からの希望があり,検査の意義について十分な理解が得られた場合に行う.
 1.夫婦のいずれかが染色体異常の保因者

9.性病

著者: 阿部史朗

ページ範囲:P.1104 - P.1107

 ここでは,広く妊娠に関連したSTD(sexuallytransmitted diseases)について,当院における妊婦管理を中心に述べる.表11)にSTDの種類を示す.
 感染症には,母児垂直感染により児に感染したり,妊婦が感染したため子宮内発育遅延・奇形などの原因として胎児に影響する疾患がある.また,一般に妊婦では非妊娠時に比べると血中免疫グロブリン,とくにIgG・IgA濃度が低下しているといわれている.細胞性免疫についても末梢血リンパ球の反応性は低下し,NK (natural killer)細胞・K細胞は減少しているといわれている.これらは免疫学的妊娠維持機構のうえでは好都合であるが,妊婦にとってはウイルス感染症にかかりやすく,かつ感染すると重症化しやすいこととなる.一方,胎児についてはIgGは母体から胎盤を通過して胎児に移行し,またLAK (lymphokineactivated killer)細胞は16〜19週で機能が完成すると考えられている.しかし,NK細胞の活性は低く,T細胞・B細胞についても未熟であり,細菌感染・ウイルス感染には抵抗力が弱い.以上より妊婦については感染症に注意する必要があり,感染が明らかな症例に対しては母児間の感染への対策を検討しておく必要があることがわかる.

連載 カラーグラフ 実践的な腹腔鏡下手術・10

TLM(Total Laparoscopic Myomectomy):Ⅱ—種々の症例と改良点や工夫点などについて

著者: 伊熊健一郎 ,   子安保喜 ,   山田幸生 ,   西尾元宏

ページ範囲:P.1019 - P.1021

 当科におけるTLM(全腹腔鏡下子宮筋腫核出術)の基本的な手術手順については前回の本連載シリーズ⑨(本誌51巻9号905頁)を参照いただきたい.今回は,本法による種々の内容とともに改良点や工夫点などについても紹介する.なお,TLMを施行するためには,①筋腫の核出方法,②子宮の修復方法,③核出した筋腫の回収方法,の3点が重要な鍵であるとともに克服しなければならない課題点でもある.これからもより簡便な手技や手法の確立を目指したいと考えている.
 次回は,「動物トレーニング:I」として,メス豚による婦人科手術の各種シミュレーションについて紹介する予定である.

病院めぐり

大森赤十字病院

著者: 高橋さと子

ページ範囲:P.1108 - P.1108

 大森赤十字病院は,東京都の南西に位置する大田区にあり,病院の屋上に上がると羽田空港で発着する飛行機を見ることができます.近くには歴史的に有名は大森貝塚跡や日蓮上人入滅の地の池上本門寺などがあり,また現在の日本の精密器械の土台を支えている町工場も多いところです.当院は,昭和28年,この地に全国に92施設ある赤十字病院の63番目の病院として設立されました.設立以来,病院の方針である「地域に密着した医療,日赤救護活動」を地道に行ってきました.
 現在のベッド数は335床で,常勤医は57名です.中規模病院の長所だと思いますが,各科との連携が大変に良く,円滑に診療が行われています.当院は厚生省の臨床研修指定病院に認定されており,産婦人科は,日本産婦人科学会認定医制度卒後研修指導施設に指定されています.

千葉労災病院

著者: 遠藤信夫

ページ範囲:P.1109 - P.1109

 千葉労災病院は千葉市の南に隣接する市原市辰巳台団地の片隅にあり,昭和40年2月に全国で32番目の労災病院として現在地に設立された.千葉市の中心部から車で30分ほどのいまだ緑豊かな地であり,手術室の窓からみえる景色は田園風景そのものである.当時は東京湾の東岸に続く京葉工業地帯の勤労者医療と労働災害への対応のためのものであったが,時代とともに周辺の状況や医療の質も変化してきた.現在では公的医療機関として地域医療に貢献する総合病院としての性格が強く,労災患者の占める比率は外来3〜4%,入院6〜7%である.
 また,昨年6月に第二次の大規模な増改築工事が完了し,外来棟,手術棟が一新された.総ベッド数は400床と変わりないものの,病床スペースの拡大化と,より多くの個室化が図られ,現在では17診療科を有する総合病院で,厚生省の臨床研修指定病院に認定されており,地域住民の信頼も厚い.

Q&A

陣痛促進剤使用時の留意点は?(3)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1111 - P.1113

 Q 陣痛促進剤の使用方法の留意点をお教え下  さい(北海道TK子).
 A 2回にわたって陣痛促進剤による陣痛誘発  についてお答えしましたが,今月は陣痛増  強について説明します.

Estrogen Series・20

ピルと出血性脳卒中(その2)

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1115 - P.1115

 前回は「ピル(OC)と虚血性脳卒中」に関するWHOの調査をご紹介したが,今回は同調査の続きで,OCと出血性脳卒中(hemorrhagic stroke)の発生との関係,さらに出血性脳卒中,虚血性脳卒中,および区別の困難なunclassified(鑑別不明)のstrokeも含めたすべての脳卒中(stroke)の発生を調べた結果をご紹介したい.
 1960年代と70年代にわたる調査で,脳塞栓(cerebral infarction)とOCとの関連が確立された.しかし,この年齢層の女性でもっとも多い出血性脳卒中との関連はいまだ不明部分が多く,その関連は確立されていない.出血性脳卒中はクモ膜下出血と脳内出血に分けられる.

産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン—私のノウハウ

診断用ヒステロファイバースコープ操作のコツ

著者: 高島英世

ページ範囲:P.1116 - P.1116

1.頸管通過法
 診断用ヒステロファイバースコープの長所は,先端径が細く(オリンパス社製3.6mm),先端可曲性で頸管および内子宮口を容易に通過できる点である.通常はヘガール拡張器による頸管拡張は不要である.しかし頸管内壁に不規則な凹凸があり,頸管にゆがみがあるとスコープがスムーズに通過できないことがある.この際スコープ基部にあるレバーを操作し,先端を上下に屈曲させ(上下それぞれ100度可),一方,スコープ基部を左右にひねり,先端を回転させることにより頸管を通過することができる.外子宮口径が狭ければ,先細ケリー鉗子で少し拡張し,スコープ先端だけを挿入する.生理食塩液を灌流し水圧で頸管を拡張しながらスコープを少しずつ挿入する.頸管深部は通常は視野の中央に小楕円形の孔として見える.この孔を直視できるよう上下方向にレバーを操作し,スコープを左右にひねる.つねに孔が視野の中央に見えるように調節しながら,奥のほうへスコープ先端を押し進める.図aのように孔が視野の右上にあればレバーを前に押して先端を上へ向け,スコープを長軸に対し右方向に回転させる.図cのように視野の左下なら,レバーを後に押してスコープの先端を下に向け,スコープを長軸に対し左方向に回転させる.内子宮口を通過すると図eのように視野は広がり子宮腔下部が観察される.頸管のゆがみに合わせてスコープを屈曲させることがコツである.

単純子宮全摘出術における頸部病変処理のバリエーション

著者: 兼元敏隆

ページ範囲:P.1117 - P.1117

 筆者らが伝承している後方操作に意義を持つ頸部処理の実際を基靱帯鉗子の誕生を含めて,別稿で記述したが(本誌51巻9号982頁),手術を計画する症例のなかには既往手術(頻回帝切のほか骨盤臓器摘出など)や合併症(内膜症,骨盤腹膜炎など)を持ち,全身的にも高齢,肥満,高血圧,心疾患など術式の選択と手術前後の管理にも慎重な対応が要求される事がらが増加してきている.
 子宮全摘が緊急手術の対象となるのはけっして多くはないが,症例の内容により全摘出術が最適な選択と考えられ,その旨を患者さんに告げるとき,およそ3つのパターンがある.①は待ったなしで少しでも早くであり,②は計画的に時期を選んで,③は手術を前提に薬物療法などの効果をみたうえで,とする場合であり,患者さんの同意の得られたあとに,麻酔,術式と切除範囲へと具体的に話が及ぶ.腹式(A.T.H)か腟式(V.T.H)かの論議は避けたいが,少なくとも「今のうちなら下から取れる」との説明に利点はない.

Currrent Practice

米国の大学病院の医師たちの俸給

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1084 - P.1084

 米国の大学に席を置く医師たちは,いったいどのくらいの俸給をもらっているのだろうか,と疑問に思ったことがありますか?私の個人的経験でも,日本の医師からときどきそのような質問を受けることがあります.ここに挙げるのは平均的な金額です.大学により相違がありますし,また,大学以外からの収入のある場合もあります.

原著

乳癌手術後の婦人科検診の意義—tamoxifen使用例と未使用例

著者: 市毛敬子 ,   伊藤良彌 ,   長束美貴 ,   鬼頭隆尚 ,   田中忠夫

ページ範囲:P.1123 - P.1128

 多摩がん検診センターで婦人科検診を受けた乳癌手術後の155名の延べ254件の検診結果について,集団検診全体の結果と比較検討した.子宮頸部では,細胞診異常の頻度は1.2%で集団検診と大差はないが,tamoxifen(TAM)使用例にMlの右方移動の傾向が見られた.頸管ポリープは4.7%,感染性腟炎の疑いが3.5%に認められた.子宮体部では,内膜細胞診異常が高頻度にみられ(3.5%),とくにTAM服用中の閉経例で高率(11.4%)であった.筋腫は37.0%で診断され,TAM服用中には縮小した例はない.卵巣腫大の頻度はTAM服用中の閉経前に高率(23.1%)であったが,自然に縮小するものが多かった.
 以上の結果および乳癌危険因子,乳癌の転移の観点から,乳癌術後の婦人科検診の重要性が確認された.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

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今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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