文献詳細
今月の臨床 妊娠初期を診る
妊娠の診断はどうするか
1.妊娠初期に基礎体温をどう利用するか
著者: 田辺清男1 浜谷敏生1 酒井のぞみ1 山本百合恵1 吉村泰典1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部産婦人科
ページ範囲:P.1024 - P.1026
文献概要
基礎体温(basal body temperature:BBT)とは,体温上昇の原因となる筋肉運動や飲食物摂取,精神的感動などの影響が少ない,朝,目醒めた直後の体温を言う.婦人体温計を用いて舌下(口腔内)で5分間測定した体温を用いる.腋窩で測定してもよいが,口腔内より約0.3℃低温を示すことに留意する.電子体温計では約1分で測定できるが,水銀体温計に比べると再現性が低く変動が大きいように思われる1).
女性のBBTは卵胞期の低温相と黄体期の高温相からなる二相性を示す.排卵後,顆粒膜細胞と莢膜細胞は黄体を形成し,黄体はLHの作用でprogesterone(P)(黄体ホルモン)を産生するが,これが視床下部の体温中枢に作用して体温を上昇させ高温相を形成する.したがって,BBTは卵巣機能ことにPの分泌状態を反映するとされる.正常周期の卵胞期の血中P濃度は0.1〜0.2ng/mlであるがBBTには影響を与えないし,さらにhMGを連日投与して排卵誘発した際の血中P濃度はhCG投与前には0.9〜1.0ng/ml程度上昇するが,BBTはほとんど変化を示さない2)ことから,BBTの上昇は‘all or none’の反応に近いと考えられ,通例P値が約4ng/ml以上になるとBBTの上昇が開始するとされている.
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