icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科52巻1号

1998年01月発行

雑誌目次

今月の臨床 先天異常をどう診るか Overview

1.先天異常診療の現況と問題点

著者: 鈴森薫

ページ範囲:P.10 - P.13

 新生児,未熟児医療の進歩により,極小未熟児の多くが救命され成育可能となった今日であるが,周産期に携わる医師の必死の努力にもかかわらず,いまだ予後が不良で周産期死亡の第1位を占めている疾患がある.それが先天異常である.周産期死亡という形で淘汰を受けたとしても,ヒト新生児の3〜7%が何らかの身体的・知能的な先天異常をもっており,これは患者と家族のみならず社会全体にとって重大な問題となっている.
 近年の遺伝医学の進歩は目覚ましく,先天異常を含む多くの疾患が染色体レベル,酵素レベルのみならず遺伝子レベルで正確な診断ができるようになり,保因者診断,発症前診断,出生前診断などが可能となっている.

胎児試料からの診断—合併症を減らすには

1.絨毛採取

著者: 大濱紘三 ,   三春範夫

ページ範囲:P.14 - P.16

 絨毛採取法は妊娠初期(9週〜11週)に絨毛組織の一部を採取する方法で,欧米では本法を用いた出生前診断法は1980年代から普及しはじめた.わが国でも欧米にやや遅れて臨床に導入され,現在では年間150例程度実施されている.本稿では絨毛採取に伴う出血,流産,感染などの合併症を減らすうえで重要となる採取法や実施の時期を中心に概説する.

2.羊水穿刺

著者: 松本雅彦 ,   渡辺通子

ページ範囲:P.18 - P.21

 羊水穿刺は古くより行われてきた手技であるが,かつては比較的特別な手技とされてきた.しかし現在では,先天異常の出生前診断や異常妊娠の際の胎児管理など応用範囲も広く,産科臨床において欠くべからざる手技となっている(表1).目的は異なっても基本的な手技は同じであるが,ここでは妊娠中期に先天異常の出生前診断の目的で行われる遺伝的羊水穿刺genetic amnio—centesisについて,筆者らの経験をもとに,起こりうる合併症とそれを減らすための留意点を中心に述べる.

画像診断でどこまでわかるか

1.妊娠初期(15週まで)に診断できる疾患の見つけ方

著者: 新沼武成 ,   岡村州博 ,   矢嶋聰

ページ範囲:P.22 - P.26

 近年,産婦人科領域におけるME機器の発達はめざましく,診断技術は大きく向上したといえる.なかでも超音波断層法は非侵襲的でかつ胎児にも安全性が高いと考えられており,妊婦管理,胎児管理にはなくてはならないものとなっている.とくに最近は経腟超音波断層法が普及し,高周波プローブにて対象を近距離で走査することによって,妊娠初期の状態を詳細に観察することが可能となった.このことにより従来,妊娠中期になってから診断されることが多かった胎児形態異常が妊娠初期に発見されることが多くなってきている.また,数年前より経腟超音波カラードプラ法も導入され,さらなる新展開をみせている.
 本稿では,妊娠初期(妊娠15週まで)に超音波断層法によって診断できる異常妊娠および胎児形態異常などについて述べる.

2.妊娠中期以降の診断と異常の特徴—頭頸部

著者: 田中守 ,   宮越敬 ,   吉村𣳾典

ページ範囲:P.28 - P.31

 近年,産科における胎児管理上,超音波断層法による胎児観察が必須となってきている.ことに胎児頭部は大横径(BPD)の計測時に必ず観察される部位であり,全身のなかで最も産科医療従事者の目に触れる臓器の一つである.当院産婦人科における胎児ハイリスク外来に何らかの胎児異常で紹介された患者の約20%を占め,紹介理由の上位を占めている.しかしながら,胎児頭部の先天異常の正確な診断のためには,妊娠週数にともなう中枢神経系の発達および超音波断層法の欠点などを十分に理解する必要があるものと思われる.また,妊娠中期まで生理的,相対的に側脳室が拡張しているため,いわゆる水頭症の早期診断は困難である.本稿では,顔面および頸部と頭部に分け,いくつかの代表的な先天異常についての特徴的な超音波断層像を示す.

3.妊娠中期以降の診断と異常の特徴—胸腹部

著者: 前田博敬

ページ範囲:P.32 - P.37

胸部
 1.胸部の正常像
 胎児の胸部を観察する場合に最も基本的な断面は,胎児心臓の4腔断面(four chamber view)を含む胸部横断面である(図1).この断面は,横隔膜の頭側で脊椎に直交する横断面を描出することによって得られる.この断面が胸部の異常を評価するうえで有用である理由のひとつは,心臓の胸腔内での位置や軸が最も観察しやすく,これらの偏位があった場合に胸部異常の診断の糸口となるからである.いまひとつは,胸郭周囲長の測定が本断面を基準としており,妊娠の進行にともなって直線的に増加し1),加えて胸郭周囲長と心臓径の比が全妊娠期間で一定であることから2),これらを定期的に測定することが,胸部異常の発見につながるからである.
 正常胎児の心臓は,胸部の左側に位置し心尖部が45度の角度で左前胸部を向いている.右心房,右心室は,それぞれ左心房,左心室の腹側に位置している.両心房は,ほぼ同様の大きさで描出される.反面,両心室は妊娠32週まではほぼ同様の大きさであるが,それ以降は右心室がやや大きく描出される.左心室は円錐状に近い形状で内面は平滑であるのに対し,右心室は半楕円の形成を呈し内面は粗である.両心房は,薄い膜様構造物として描出される心房中隔により隔てられている.心房中隔の中央部には卵円孔を認め,これをふさぐように左房を開く弁状物が観察される.また,右房に入る肺静脈も観察される.

4.妊娠中期以降の診断と異常の特徴—骨格,運動系(脊髄,四肢)

著者: 末原則幸

ページ範囲:P.38 - P.41

四肢の骨格の異常
 胎児の四肢は妊娠8〜9週ですでに確認することができるが,計測が可能になるのは妊娠12週以後になる.さらに妊娠18週ころになると,手指の確認が可能になってくる.
 大腿骨長(femur length:FL)や上腕骨長(humerus length:HL)の計測は,妊娠中期(おおよそ妊娠13週以後)以降においては,胎児成長度の評価のために欠かせない計測値である.骨の成長に異常がない場合はFLやHLは妊娠週数とよく相関する.しかし,ときに四肢が週数の標準値に比較して短く,四肢骨格の異常を疑うことも少なくない.一般にFLやHLが−2.0SD以下の場合には,四肢短縮症を疑う.多くの四肢短縮症では,妊娠20〜22週までにFLやHLが−2.0SD以下になることが多い.

新しい検査法

1.染色体分析はどこまで進んだか

著者: 古山順一

ページ範囲:P.42 - P.45

 ヒトにおけるはじめての染色体異常の報告は,1959年のLejeuneらによる21trisomy(Downsyndrome)の報告である.1969年にはQバンド法,1970年にはGバンド法が開発され,個々の染色体の識別が可能となり,染色体異常の分析は飛躍的に進歩した.本邦でも1973年から染色体検査が健康保険の適用となり,染色体分析が研究レベルから検査センターでの検査へ移行した.爾来,染色体異常の発見から38年を経過した今日,ビオチンなどの化学物質でクローン化DNAプローブをハプテン化し染色体DNAまたは細胞核DNAとハイブリダイズして,雑種形成部を蛍光顕微鏡下で検出するfluorescence in situ hybridization(FISH)法が一般化され,染色体分析は第2の黄金期に入った感がある.

2.遺伝子解析法の実際と適応

著者: 片山進

ページ範囲:P.46 - P.48

先天異常と遺伝子解析
 先天異常は正常の範囲を超えた発生の歪みで,生まれる前にその出現があらかじめ決定されている.配偶子の受精からその個体の死に至るまでの全過程にあらわれる不可逆的で継続的な発生異常といえる.出生前では胎児期の死亡や発育遅延(IUGR),出生後では先天奇形,発育遅延,機能や知能障害などがある.また不妊症などの生殖障害や免疫低下による罹病性,さらには腫瘍の発生や短命まで,先天異常に含まれる対象疾患は広い.
 その先天異常はふつう発生時期により分類される.在胎週数0週の性細胞期にはいわゆる遺伝子病が発生する.同じく配偶子形成期には染色体異常として知られる配偶子病が発生する.在胎週数3〜10週の胎芽期には多くの先天奇形や胎内死亡,先天性腫瘍や発育障害などの胎芽病が発生する.11〜38週の胎児期には中枢神経の発育異常,性器発育異常,内反足・股関節脱臼などの四肢の変形や胎児感染症を含む胎児病が発生する.

3.胚生検で何がわかるか

著者: 竹内一浩

ページ範囲:P.50 - P.53

胚生検(着床前遺伝子診断)とは
 受精卵の一部を用いてDNA診断を行い,着床前に遺伝性疾患や染色体異常を診断しようというもので,ごく早期の出生前診断である.本稿では着床前遺伝子診断の基礎実験の成績や臨床応用などについて述べる.

4.母体血からの胎児診断

著者: 北谷真潮

ページ範囲:P.54 - P.56

 胎児の遺伝性疾患や染色体異常症の診断は,絨毛採取や羊水穿刺で得た胎児由来細胞を用いて行われている.これらの方法は少ないながらも胎児損傷や流産の危険を伴う.より侵襲の少ない胎児診断法が求められている.妊娠母体末梢血中には極少量の胎児血球が存在する.この胎児血球を分取できればPCR (polymerase chain reaction)法やFISH(fluorescence in situ hybridization)法で,遺伝子変異や数的染色体異常の診断が可能となる.

5.トリプルマーカーの使い方

著者: 名取道也

ページ範囲:P.58 - P.60

 妊娠しているおなかの赤ちゃんに異常があるかどうかは,妊婦やその夫,家族はもちろんのこと担当する医師にとっても大変気がかりな問題である.このための方法は,以前は放射線の単純写真,羊水造影などが唯一の手段であったが,超音波断層法の発達,さらにはMRI,またここに述べる母体血清中の物質の分析などにより大きな進歩を遂げてきた.この間,胎児の異常の診断を行うことしかできなかった時代から,まだ不十分とはいえ,胎児を患者として治療できる時代になってきたことは,さらに重要な進歩である.
 胎児異常の診断に限ったことではないが,一般に診断行為はスクリーニング検査と精密あるいは確定診断と呼ばれる検査の2種類に分けることができる.超音波断層検査はこれら両方の場合に用いられる手法であり,トリプルマーカー検査はスクリーニング検査として行われる.現在,トリプルマーカー検査により得られる情報には,21トリソミーや18トリソミーなどの染色体異常,神経管欠損,腹壁欠損などの疾患の罹患危険率に加えて,周産期ハイリスク群としてのスクリーニングなどがあるが,ここではトリプルマーカー検査による21トリソミーのスクリーニングに限って話を進めたい.

胎内治療の現況

1.経母体薬物治療

著者: 佐藤昌司 ,   小柳孝司 ,   中野仁雄

ページ範囲:P.61 - P.63

 胎児治療の目的は,病的状態にある胎児,あるいは未熟性ゆえに胎外生活への適応が困難であると判断された胎児に対し,子宮内で治療を行うことによって病態の回復,病態の進行の抑制,あるいは生理的な成熟過程を促進することにより最適条件で新生児治療へ移行させることにある.本稿では,母体に投与された薬物が経胎盤的に胎児に移行し,児の疾病に対して効果を及ぼす機序を用いた経母体薬物治療法に関して,疾患別に概説する.

2.胎児への外科的処置

著者: 梁栄治

ページ範囲:P.64 - P.66

 胎児手術の対象となるのは,出生後の治療では救命できない疾患であり,限定されたものである.本稿では胎児の外科的治療についての現状について述べる.

新生児のマススクリーニングと臨床的対応

1.先天性代謝異常症

著者: 大和田操

ページ範囲:P.68 - P.71

 単一の遺伝子異常に起因する疾患である先天性代謝異常症(inborn errors of metabolism:IEM)の一部は治療可能であり,そのなかで比較的頻度が高く,確実な診断法がある疾患に対しては,新生児期にスクリーニングが行われている.わが国では,1977年からIEMのスクリーニングが開始され,20年を経過した現在,多くの患者が早期診断されて順調に発育している1-3).このスクリーニングを担っているのは,採血を受け持つ産科,検査を施行するスクリーニングセンターおよび治療を行う小児科であり,とくにスクリーニングにおいて異常が発見された場合に,まず患者の両親と対応する産科医の役割は重要である.もちろん,スクリーニングで発見される患者数はけっして多くはないが,その対象疾患について正しい情報を両親に提供するためにも,わが国におけるIEMの新生児スクリーニングの現況を知っていただきたいと考える.

2.先天性甲状腺機能低下症・先天性副腎皮質過形成症

著者: 安達昌功 ,   立花克彦 ,   諏訪珹三

ページ範囲:P.72 - P.76

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
 クレチン症患児では,胎児期から甲状腺ホルモン産生の低下した状態にあり,放置されると著明な成長および発達の障害をきたす.しかし,新生児期には,不活発・黄疸・便秘などの非特異的な症状しか示さないことが多く,臨床症状からの早期発見は困難である.そこで,RIA法の開発と相まって,1970年代からクレチン症の新生児マススクリーニングが各国で試みられ1),わが国でも1979年10月より公費負担で全国的に実施されている.

病児への対応をめぐって

1.出生前のインフォームドコンセント

著者: 神保利春

ページ範囲:P.78 - P.80

 周産期医療におけるインフォームドコンセントは,周産期医療が母児双方を対象とすること,ならびに母児に関する医学的な状況が急変しやすいという救急医学的性格をもつことなどから,日常診療においても,十分に行い得ないことが少なくはない.近年急速な発展を遂げつつある胎児医療においては,胎児診断,胎児治療のいずれについても,インフォームドコンセントの重要性がきわめて高いにもかかわらず,その実施にあたっては困難な問題が多く,担当医や妊婦・家族が戸惑う場合もけっして少なくはない.
 病児への対応をめぐる出生前のインフォームドコンセントが抱えるいくつかの問題について考えてみたい.

2.病児出産の看護と問題

著者: 小山道子

ページ範囲:P.82 - P.84

 周産期における障害児発生原因は,早産未熟児,母体合併症,分娩周辺期,先天奇形などがある.いずれの原因でも病児が生まれてくるが,周産期管理の目的は,こどもが持っている能力をできるだけ温存し,伸ばすことにある.先天異常においても奇形などによる機能制限は不可避であるにしても,その子どもの能力を最大限伸ばすように努めている.医療従事者からみると,胎児期・新生児期・小児期とそれぞれの時期において,お世話をする科はつぎっぎと変わっていく.しかし,治療を受ける患者さんは同一人である.先天奇形や病児の治療は,ひとつの科で完結することはできず,それぞれの科でその時期に応じた治療をしていく.この意味において,産科・新生児科・脳外科・神経科など,単独で治療するのではなく,先を見越した治療・看護でなくてはならない.本稿では,わたしどもの周産期医療部で胎児から小児期への保育についてどのように対処しているか,どこに改善すべき点があるか考察してみたい.

3.遺伝医療と倫理的側面

著者: 星野一正

ページ範囲:P.86 - P.88

 「遺伝医療と倫理的側面」(胎児の人権などを含む)という与えられたこのテーマは難しい.
 はたして「遺伝医療」とは何を意味しているのか? 着床前診断を含む出生前診断から,遺伝子診断,遺伝相談,遺伝子治療,先天異常の診療のすべてを含む医療を意味しているのであろうか.

連載 カラーグラフ 実践的な腹腔鏡下手術・13

急性腹症に対する腹腔鏡下手術の対応:Ⅰ—捻転などの出血を伴わない症例から

著者: 伊熊健一郎 ,   子安保喜 ,   山田幸生 ,   西尾元宏

ページ範囲:P.5 - P.7

 腹腔鏡下手術では,画像に再現された腹腔内の状態をスタッフ全員で共有して,最終的な確定診断と状況把握をしたうえで最も適した治療法を選択するチームプレーが可能となる.とくに婦人科領域における急性腹症に対しては,本法は実に理に適った有用な治療法であると認識する.
 しかし,実際の急性腹症に当たっては,たとえ平日であっても予定外や時間外さらには夜間や休日での対応となり,腹腔鏡下手術を行うには必ずしも好条件がつねに備わっているわけではない.また現実的には緊急時の手術対応としては,短時間で行える簡便で有効な手術内容であることも要求されるため,日常,行っていない内容やできない内容を緊急時の悪条件下に求めることは実際には困難であると考えるべきである.あくまでも常日頃より安全で合理的な手技・手法や術式を求めた手術を心がけていることが,緊急時であっても集大成した力が発揮されるものであると考える.

Estrogen Series・23

経口避妊薬と心筋梗塞

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.89 - P.89

 高用量の経口避妊薬(oral contraceptive:OC)の使用者を対象とした1970年代の報告では,OC使用者に心筋梗塞(MI)が増加するという報告がいくつかあった1-3).しかし,主として1989年以降になされた研究では,OCの使用により心筋梗塞は微増するが,統計的には有意差はないというものである4-6)
 カリフォルニアの著者らは,低用量ピル使用者を対象にOCと心筋梗塞の関係を調べてみた.この研究グループは,前にもピルと脳卒中との関係を調べ,その関連のないことを証明している7)(本誌Estrogen Series No.21,51巻11号参照).

OBSTETRIC NEWS

羊水穿刺施行例数を減少させられるか?—妊娠中期超音波による21トリソミー診断

著者: 武久徹

ページ範囲:P.90 - P.91

 産科超音波による染色体異常診断は,膨大な数の研究が紹介され,それらの幾つかを組み合わせることによって,特定の染色体異常は,かなり正確に診断できるようになってきた.Vintzileosらは,21トリソミーのハイリスク妊婦(35歳以上の高齢妊婦1,483例:71%,血清生化学検査異常+<35歳501例:24%,家族歴に染色体異常あり105例:5%)2,089例を対象に染色体異常の有無を診断した.対象妊婦の平均年齢は,35.4±4.3歳(15〜47歳)であった.1,426例(68%)は,第一選択に羊水穿刺(医師が第一選択に羊水穿刺を提案),663例(32%)は,超音波による染色体異常検査(妊娠19.4±1.5週)を選択した.超音波による染色体異常の有無は,21トリソミー検索のための10の超音波診断マーカー(表1)(OG 87:948,1996)をチェックした.その結果,超音波による21トリソミー診断施行後の羊水穿刺施行数は12.2%(1994年)から,4.0%(1996年)に減少(67%減少,相対危険度0.33,95%信頼区間0.14〜0.77)した.また,総羊水穿刺数は,99.6%(1993年)から,47.0%(1996年)に減少(53%減少,相対危険度0.47,95%信頼区間0.39〜0.57)した(表2).

病院めぐり

名古屋第一赤十字病院

著者: 水野公雄

ページ範囲:P.92 - P.92

 名古屋第一赤十字病院は名古屋市西部の中心部にあり,愛知県の基幹病院として機能しています.昭和12年4月,日本赤十字社愛知県支部病院として開設され,昭和29年3月に名古屋第一赤十字病院と改名され現在に至っています.当院は戦国武将の豊臣秀吉生誕の地として有名な中村区にあることから,「中村日赤」の通称で長い間市民から親しまれてきました.
 現在,総病床数は900床で,そのうち産婦人科で産科病棟35床,婦人科病棟48床を占めています.年間の総分娩数は950〜1,000件,年間手術件数は約450件,1日の外来患者数は120〜180名あり,常勤8名,レジデント2名の産婦人科医師で診療に当たっています.

岐阜県立多治見病院

著者: 竹田明宏

ページ範囲:P.93 - P.93

 岐阜県立多治見病院のある岐阜県多治見市は,岐阜県東濃地方の南西端に位置し,愛知県に隣接する人口10万人の地方都市です.しかし,近年,名古屋のベッドタウンとして人口が急増している地域の中心に位置しており,また美濃焼陶器の産地としても有名なところです.
 当院は,昭和13年に県立3病院の1つとして地域住民の要請により当地に設立され,地域医療の中核施設として年々拡充がはかられてきました.現在のベッド数は715床で救命救急センターおよびNICUを備え,医師数は80名です.厚生省の臨床研修指定病院に認定されており,産婦人科は日本産婦人科学会認定医制度卒後研修指導施設に指定されています.

産婦人科キーワード・1

癌胎児性フィブロネクチン

著者: 福井理仁 ,   三谷龍史 ,   青野敏博

ページ範囲:P.94 - P.94

語源
 fiber (繊維)をconnectするという接着因子の性質を意味しているのであろう.

産婦人科キーワード・2

術前補助化学療法

著者: 古本博孝

ページ範囲:P.95 - P.95

語源・歴史
 neo「新しい」,adjuvant「補助の」という言葉から構成されており,術前補助化学療法と訳される.すなわち癌に対する主治療である手術,放射線療法の前に化学療法を行う方法である.これに対して主治療の後に化学療法を追加する方法をadjuvant chemotherapy (補助化学療法)という(図).
 最初にneoadjuvant chemotherapy (NAC)という言葉を用いたのは,米国シドニーファーバー癌センターの内科医Frei E.(1982年)である.1960年代の癌治療における化学療法の役割は,もっぱら転移を有するような進行例や再発例に対する姑息的治療法でしかなかった.しかし,単剤から多剤併用へ,新しい抗癌剤の開発,支持療法の発達などにより奏効率が上昇し,1970年代には,手術後のハイリスク症例に対して後療法として化学療法を追加するadjuvant chemotherapyとしての有効性が確立した.1970年代後半になると,小児癌,頭頸部癌領域で術前補助化学療法の試みがなされるようになったが,Freiはこの方法を従来のadjuvant chemotherapyに対する新しいadjuvant chemotherapyとしてNACと呼んだのである.

CURRENT RESEARCH

イムノグロブリン結合因子

著者: 鎌田正晴 ,   青野敏博

ページ範囲:P.97 - P.104

 留学中のRockefeller大学Koideラボでの話.抗精子抗体の認識する精子抗原の同定を試みて,健常人(筆者であるが)血清IgGを対照として,抗精子抗体陽性血清IgGを用いてひたすら精子抗原のウエスタンブロットを行っていた.抗精子抗体にのみ反応するいくつかのバンドの他,対照血清も含めてどの血清とも強く反応してくるバンドを認めていたが,はじめはノンスペと無視していた.ある日何かの文献を読みながら,あのバンドはFcレセプターかも知れないとふと思ったのがきっかけで本稿で述べるイムノグロブリン結合因子(Koide博士命名)の研究が始まった.可溶性のFcレセプターが抗体産生を制御することはよく知られており,筆者の進めてきた一連の研究の主要テーマ,抗精子抗体による免疫性不妊症の病態解明,治療法の開発に加えて,抗精子抗体の産生機序を解くキーになる研究と期待している.

薬の臨床

婦人科癌化学療法後の白血球減少に対するrhG-CSF 9回連続皮下注救済療法の有用性

著者: 高田眞一 ,   高田博行 ,   森田哲夫 ,   田村彰浩 ,   村瀬隆之 ,   井上純 ,   森宏之

ページ範囲:P.105 - P.108

 CP療法(CPA 600 mg/m2,CDDP 80 mg/m2),またはCTP療法(CPA 600 mg/m2,THP-ADM 40 mg/m2,CDDP 80 mg/m2)後に白血球数が2,000/mm3以下になってからrhG-CSF(フィルグラスチム75μg/日)を9日間連続皮下投与する救済療法について検討した.
 対象患者の平均年齢は59.5±10.5歳,体重は47.8±7.9 kg, PSは全例0〜1であった.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

icon up
あなたは医療従事者ですか?