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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科52巻2号

1998年02月発行

今月の臨床 腫瘍マーカーは何を語るか

Overview

1.腫瘍マーカーの歴史と展開

著者: 青木大輔1 野澤志朗1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.121 - P.125

文献概要

 悪性腫瘍の診断は病理学的診断がその基盤となることは論を待たない.これに対して,その多くが血清学的あるいは免疫学的また生化学的に検出される腫瘍マーカーは,血液をはじめとする生体から得られた試料を使って低侵襲で迅速に診断できることを目標に開発されてきた.悪性腫瘍はその細胞生物学的挙動,さらに形態学的特徴が正常組織とは大きく異なっていることから,癌細胞やその組織には正常と異なる物質が産生されていると考えることは当然であり,この観点で種々の腫瘍マーカーが開発され実用化されてきた.その結果,悪性腫瘍の診断にとどまらず,その部位,進行度,治療効果の判定,腫瘍のモニタリングといった形態学的診断法とは異なる観点から数々の情報を得ることができるようになった.一方で,正常では皆無であるのに対して,癌でのみその存在が認められるといった厳密な意味での癌特異物質は見いだされておらず,腫瘍マーカーを用いた実際の臨床的な評価は癌関連物質の質的・量的変化に基づいて行われることが多い.その際にはcut—off値という概念に基づく感度や特異度をつねに念頭に置く必要がある.
 腫瘍マーカーの歴史は,1848年の骨髄腫におけるBence Jones1)蛋白の発見に始まる.その後1960年代にはAbelevら2)によってAFPが見いだされるとともに腫瘍マーカーとしての概念が導入され,さらにGoldら3)によるCEAの発見へと続く.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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