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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科53巻12号

1999年12月発行

文献概要

今月の臨床 産褥の異常と対策 出血と感染

4.産褥熱

著者: 秦利之1 妹尾大作2

所属機関: 1香川医科大学母子科学講座周産(生)期 2香川医科大学産科婦人科

ページ範囲:P.1464 - P.1466

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 近年,臨床の場において産褥熱(puerperalfever)という言葉を耳にする機会がなくなってきた.そもそも産褥熱とは分娩によって生じた子宮,腟,外陰の創傷の感染およびそれに続発する感染によって生じる熱性疾患の総称であり,狭義には産褥子宮内感染,広義には産褥骨盤内感染を指しているものと考えられる.産褥熱に対し産褥感染症(puerperal infection)という概念があるが,これは性器感染症あるいは骨盤内感染症のみならず産褥期に発生する乳房感染症,尿路感染症などの偶発的な感染性疾患を包括しており,したがって産褥熱とは産褥感染症からそのような偶発的疾患を除外したものといえる.
 かつて産褥熱の原因あるいは病態が不明であった頃,産褥熱は妊産婦死亡のきわめて重要な要因であった.しかし,今日,産褥熱の原因菌および感染ルートが臨床的に十分認識され,清潔,不潔の概念に基づいた消毒法の発達と徹底,抗菌作用の強い抗生剤の開発による感染の予防的投与を含めた化学療法の進歩,さらに施設分娩の普及などによって,産褥熱の発症はまれといっても過言ではなくなった.一方,その病態が明確に把握されるようになったことにより,臨床上もおのおのの病型(原因疾患)で診断し病名を記録するのが一般的となり,産褥熱という用語とはますます疎遠になりつつある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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