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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科53巻5号

1999年05月発行

文献概要

今月の臨床 PCO症候群を斬る 病因・病態

1.病態の概説

著者: 矢本希夫1

所属機関: 1和歌山県立医科大学産科婦人科

ページ範囲:P.674 - P.677

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 正常月経周期女性では,各月経周期において単一の優位卵胞が排卵に至るが,卵胞発育の過程は一群の原始卵胞が発育し始めることから開始する1).各月経周期において絶え間なく卵胞が補充されることより,正常卵巣では第1次卵胞,第2次卵胞,第3次卵胞,成熟卵胞(グラーフ卵胞)と種々の発育段階の卵胞が存在する.単一の優位卵胞になる能力はすべての卵胞には付与されず,多くの卵胞は閉鎖卵胞となる.ヒトにおいては,約700万個の卵胞のうち,約400個の卵胞しか排卵に至らず,残りの卵胞はすべて閉鎖に陥る.このように,卵胞発育の過程は高度な選択性をもつものといえる.
 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は,LHの過剰な分泌,高アンドロゲン血症,排卵障害,両側卵巣の多嚢胞性変化,インスリン抵抗性などを所見とする症候群である.PCOS患者では,小成熟卵胞までの卵胞の補充,発育はほぼ正常と考えられるが,最終段階である優位卵胞の選択の過程が正常に作動しない2).このような状態が,通常,嚢胞と呼ばれる卵胞の多数の卵巣皮質への集積をもたらし,莢膜細胞はアンドロゲンを過剰に産生するが,顆粒膜細胞はそのアンドロゲンをエストラジオールに転換できないことにより,卵巣内に高アンドロゲン環境がもたらされる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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