症例
高度な腎機能障害を有したIgA腎症合併妊娠の1例
著者:
磯和男1
野平知良1
舟山仁1
高山雅臣1
所属機関:
1東京医科大学病院産科婦人科
ページ範囲:P.749 - P.752
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IgA腎症は,慢性糸球体腎炎のなかで50〜60%を占め,10歳台後半〜40歳までの生殖年齢層に多くみられるため,合併症妊娠として取り扱うことも少なくない.今回われわれは,妊娠前より高度な腎機能障害を有しながらも妊娠を継続し,母児ともに良好に管理し得た1例を経験したので報告する.症例は,31歳0経妊0経産.28歳時,蛋白尿,血尿の精査にて当院の腎臓内科を受診し,IgA腎症と診断され,以後定期的に外来でフォローされていた.1995(平成7)年11月1日,無月経にて当科を受診.妊娠11週と診断した.来院時のCCrは47ml/minであった.患者および家族が出産を強く希望したため,生児を得る確率が健康妊婦の場合に比べて低いこと,腎機能の悪化をきたす可能性が高いということについて十分なインフォームドコンセントを行い,妊娠を継続した.妊娠23週,下肢の浮腫,腹部緊満が出現したため入院管理となった.入院後,安静と食事療法にて経過観察したところ,腎機能の低下を認めず,妊娠経過は良好であった.妊娠36週,帝王切開術を施行し,2,238gの女児をApgar score8点で娩出した.術後,母体の腎機能の低下を認めず,母児ともに経過良好にて退院となった.