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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科53巻6号

1999年06月発行

文献概要

今月の臨床 卵巣がんと闘うために 総論

2.上皮性卵巣癌発生のメカニズム

著者: 市川喜仁1 高野克己1 西田正人1

所属機関: 1筑波大学臨床医学系産婦人科

ページ範囲:P.770 - P.773

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 大腸癌において,遺伝子変化の蓄積とともに正常上皮が腺腫,さらに癌へと進行するadenoma—carcinoma発癌モデル(多段階発癌モデル)が提唱されて以来1),他臓器癌の発生についても同様のモデルで説明を試みる報告がみられるようになった.しかし,すべての大腸癌がadenoma-car—cinoma発癌過程を経るわけではなく,多段階発癌モデルでは説明できないde novo大腸癌のような例が存在するのも事実である2)
 従来,上皮性卵巣癌(以下,卵巣癌)の発生仮説として,incessant ovulation theoryとgonado—tropin theoryが知られており3,4),これらを支持する疫学的事象の報告もある5).さらに近年の分子生物学的研究の進歩により,卵巣の良性腺腫,境界悪性腫瘍,癌における各種の遺伝子異常の存在が明らかになってきた6).これらの報告のなかには,卵巣癌の多段階発癌モデルを提唱しているものもあるが7),一方で卵巣癌に隣接して存在する良性腺腫には癌から分化して発生したものがあるとの報告8)や,表層上皮もしくはinclusion cystから発生したと考えられるde novo卵巣癌の報告もある9,10).現在,さまざまな遺伝子異常が卵巣表層上皮の悪性変化に関与していることが明らかにされつつあるが,その過程を一元的に簡潔,明瞭に説明できる段階には至っていない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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