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今月の臨床 卵巣がんと闘うために
総論
文献概要
わが国の卵巣癌の年齢調整死亡率は1960年以降増加傾向にあり,その発生頻度も1966年以後の20数年間に,対10万人当たり3.7から7.0へと倍増している1).1984〜1986年までの発生頻度は対10万人当たり5.1であるが,同時期の米国ロサンゼルスでの発生頻度は12.1と高く,そのうち日系移民に限っても10.7であった.したがって人種差のみならず,何らかの環境因子が卵巣癌の発生に関与していることが推察される.
漸増傾向にある卵巣癌に対する集団検診が論議されているが,わが国の現在の発生率では費用効率が悪く,子宮頸・体癌のように正診率の高い細胞診などのスクリーニング法も確立されていない.したがって,ハイリスクグループを絞りこんだうえでの検診が必要と考えられる.日本母性保護医協会では卵巣癌の高危険群として表1のような項目を掲げている.最近ではこれらの因子に加えてさまざまな潜在的関連因子の関与が指摘されており,文明の発達とともに生じる環境汚染物質もその一つと考えられる.ダイオキシンは不妊症などをきたす内分泌攪乱物質として昨今注目を浴びているが,その女性生殖器における発癌物質としての意義はいまだ明らかにされていない.卵巣癌の発生には生殖因子や遺伝的因子などさまざまな要因が複雑にかかわっているが,これらの詳細は他項に譲り,本稿では疫学的事項も含めた環境因子全般について概説する.
漸増傾向にある卵巣癌に対する集団検診が論議されているが,わが国の現在の発生率では費用効率が悪く,子宮頸・体癌のように正診率の高い細胞診などのスクリーニング法も確立されていない.したがって,ハイリスクグループを絞りこんだうえでの検診が必要と考えられる.日本母性保護医協会では卵巣癌の高危険群として表1のような項目を掲げている.最近ではこれらの因子に加えてさまざまな潜在的関連因子の関与が指摘されており,文明の発達とともに生じる環境汚染物質もその一つと考えられる.ダイオキシンは不妊症などをきたす内分泌攪乱物質として昨今注目を浴びているが,その女性生殖器における発癌物質としての意義はいまだ明らかにされていない.卵巣癌の発生には生殖因子や遺伝的因子などさまざまな要因が複雑にかかわっているが,これらの詳細は他項に譲り,本稿では疫学的事項も含めた環境因子全般について概説する.
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