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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科53巻7号

1999年07月発行

雑誌目次

今月の臨床 胎児へのlife line臍帯 臍帯の基礎

1.臍帯の発生と解剖

著者: 武知公博

ページ範囲:P.884 - P.888

 臍帯は2本の臍帯動脈と1本の臍帯静脈,ワルトン膠質,羊膜鞘から構成される,いわば血管とその被覆物だけの簡単な構造である.しかし胎児にとっては文字通りの命綱であり,その異常は児に重篤な影響を与えかねない.
 本稿では臍帯の発生,解剖,神経について概説する.解剖については臍帯長と血管に関しては本誌別稿に詳細が記載されているため割愛し,ワルトン膠質に焦点を当て,筆者らの知見を示す.

2.臍帯血管内皮細胞の役割

著者: 高木耕一郎 ,   村岡光恵 ,   黒島淳子

ページ範囲:P.889 - P.891

 臍帯は胎盤を母体・胎児間のインターフェースに例えると,胎盤と胎児をつなぐライフラインということができるが,その機能については明らかにされておらず,成書をみても解剖学的な記載にとどまっている.一方,近年,内科を中心として血管内皮細胞の役割に関する研究が長足の進歩を遂げているが,それら研究の多くにおいてヒト血管内皮細胞として培養ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(human umbilical vein cells:HUVEC)が用いられている.したがって,これらの研究より得られた結果は,正しくは胎児,それも臍帯という特殊な構造に含まれる血管内皮に関するものであることは興味深い.現時点では,これまでにHUVECを用いて得られた知見が,すべて胎児期,あるいは胎児循環における臍帯血管内皮細胞の機能を反映しているかどうかは定かではないが,本稿ではとくに血管収縮に関与する因子について概説したい.

3.臍帯血流の生理

著者: 池田智明

ページ範囲:P.892 - P.895

 臍帯は,物質交換やホルモン産生の場所である胎盤と胎児の間を結ぶ,まさに生命線である.臍帯血流の生理は,ヒツジ胎仔を使った動物実験やヒトの胎盤還流実験により研究されてきたが,胎児生命への重要性のわりには,まだ解明されていないことが多い.
 臍帯血流量は,妊娠後期のヒト胎児では110〜125ml/min/kgといわれ,心拍出量(450ml/min/kg)の25〜30%にあたる.この体重当たりの値は,妊娠後半期では比較的一定であり,妊娠が進行するにつれて,胎児の体重増加とともに臍帯血流量も増加する.

4.臍帯血流の計測

著者: 小林秀樹

ページ範囲:P.896 - P.898

臍帯血流の計測
 胎児胎盤循環不全(UPI)の診断方法は,E3やHPLの測定からより即時的でダイナミックな超音波ドプラ法による血流計測,波形解析に取って代わられ1),「臍帯動脈RI値異常」や「臍帯動脈血流の途絶や逆流現象」といったことで,患者の紹介を受けることも頻繁になってきた.
 経験的に重症の子宮内発育遅延(IUGR)や羊水過少の発症やCTG上の胎児心拍パターンの異常の出現前に胎児臍帯動脈血流波形の異常を認めることも多い2).胎児の発育速度が低下するときや胎児尿産生量が低下するときは,臍帯血流量や臍帯動脈血流波形に変化が起きていることは動物モデルやヒト胎児の統計解析でも明らかにされているが,臨床の現場で産科的方針の決定に際しては,CTGに対する補助診断の域を出ていない.とくに各症例を経時的に観察し,病態の進行や治療効果判定に触媒変数として用いるときは,測定誤差や測定時の胎児心拍数や子宮収縮による自然変動を念頭に置くべきである.

臍帯の臨床

1.臍帯圧迫と胎児心拍数パターン

著者: 武久徹

ページ範囲:P.900 - P.904

 臍帯圧迫が原因の胎児心拍数(FHR)パターンは,変動一過性徐脈と遷延一過性徐脈である.変動一過性徐脈は分娩中に最も高頻度にみられるFHRパターンであること,間欠的な変動一過性徐脈が胎児脳損傷と密接な関連があること,臍帯圧迫による心配なFHRパターンに対し人工羊水注入法(amnioinfusion:AI)を行うことにより,FHRの改善,帝王切開(帝切)の回避が可能であることから,変動一過性徐脈を他の一過性徐脈と正確に鑑別し,迅速に対応することがきわめて重要である.

2.臍帯圧迫と脳障害

著者: 伊藤隆志 ,   片桐千恵子

ページ範囲:P.905 - P.907

 成熟児の脳性麻痺が減少してきた現在,相対的に未熟児の脳性麻痺の数はむしろ増加しているとさえいわれている.その多くを脳室周囲白質軟化(PVL)が占めている.PVLは出生後だけでなく出生前にも発生するとされている.出生前発症PVLの原因と臍帯異常の関連性が注目されている.ここでは臍帯をクランプすることにより脳障害が起こるのか,どのようなクランプの方法で起こるのか,その機序はどうなのかなどに関する動物実験,および臍帯異常と出生前発症PVLに関連性が認められたとするわれわれの臨床成績について述べる.

3.臍帯巻絡

著者: 芹沢麻里子

ページ範囲:P.908 - P.910

 臍帯巻絡は臍帯異常のなかで最も多く認められる病態で,その発生頻度は全分娩の約25〜35%であるといわれている1-4).そのうち胎児仮死を引き起こす症例は約10〜30%くらいであり1,4),臍帯巻絡による分娩時胎児仮死はけっして必発するものではないが,分娩時胎児仮死の原因の多くが臍帯異常に伴うものである.さらにその程度によっては分娩時胎児仮死だけでなく子宮内胎児発育遅延(IUGR)や子宮内胎児死亡(IUFD)に至ることもあるため,確実な診断や状態の把握が必要である.
 臍帯巻絡は胎児のどの部分にも起こりうるが,体幹や四肢に巻き付いたものは胎動に伴い外れることが多く,あまり問題にはならないが,頸部に巻き付いた場合は外れにくく,分娩時に臍帯血流を障害することがある.そこで,今回は臍帯頸部巻絡を中心に述べる.

4.臍帯過捻転

著者: 宇津正二

ページ範囲:P.912 - P.914

 胎児へのlife lineである臍帯は,普通には,2本の臍帯動脈と1本の臍帯静脈が外側をワルトン膠質に被覆されながらほどよく捻れた形態をとっている.この捻れの構造は,ちょっとした臍帯の圧迫や折れ曲がりなどでは臍帯血流が障害されないようになっており,天与の安全構造ともいうべきものであろう.しかし,実際には3本の血管が真直ぐに並んだままでまったく捻れのない臍帯や,逆に電話コードのように著しく過剰に捻転した臍帯なども少なからずみられ,そのような例では,臍帯の異常な捻転が原因で臍帯血流が遮断されたり,うっ滞して子宮内胎児死亡(IUFD)や子宮内胎児発育遅延(IUGR),分娩時胎児仮死などの胎児異常が発生する例もある.本稿ではそのような胎児異常をもたらすような臍帯の病的な過捻転例の胎内診断と,その管理や予防の可能性について述べる.

5.臍帯辺縁付着,卵膜付着

著者: 水谷隆洋 ,   末原則幸

ページ範囲:P.916 - P.918

 臍帯は,胎盤で交換された物質や酸素などを胎児に輸送する大切なルートであり,臍帯の胎盤への付着部に異常があった場合,さまざまな周産期異常の原因となることは,容易に理解できる.臍帯の胎盤付着部位は,その位置によって,中心,側方,辺縁,卵膜付着に分類される.臍帯は,通常は胎盤の中心あるいは側方に付着するが,まれに辺縁付着(marginal insertion),卵膜付着(vela—mentous insertion)となり,この両者は,とくに卵膜付着では,臍帯付着異常として周産期罹病率が高いとされている.本稿では,臍帯付着異常について諸家の報告をレビューするとともに,大阪府立母子保健総合医療センターで経験した過去17年間の症例における臍帯付着異常の臨床的特徴について検討した.

6.単一臍帯動脈

著者: 吉井毅 ,   鄭智誠 ,   小野寺成実 ,   福地剛 ,   三上幹男

ページ範囲:P.920 - P.922

 単一臍帯動脈(single umbilical artery.以下,SUAと略す)は本来2本ある臍帯動脈のうち1本を欠く異常であり,臍帯血管のもっとも多い奇形の一つである.しかし一般的にSUAが認められるのみでは臨床上致命的なことは少なく,その出生前診断の意義はむしろ合併するその他の奇形に注意を払うことにあると思われる.本稿では,SUAの病因,診断や合併奇形などについて文献的に考察し,さらに当院で経験した症例なども加えて概説する.

7.過短臍帯・過長臍帯

著者: 今中基晴 ,   中井祐一郎

ページ範囲:P.923 - P.925

 臍帯は胎児付属物の一つであり,胎児のライフラインとして重要な役割を果たしている.その長さは通常50〜60cmであるが,個体差が大きく,臍帯がほとんどないachordiaから3mに達する長いものまでさまざまである.臍帯長の正常範囲として一定の基準はなく,25〜70cm,25〜75cm,30〜90cm,20〜100cm,30〜120cmなど種々の基準が用いられている.産科婦人科用語解説集(日本産科婦人科学会編)では,過短臍帯は25cm以下,過長臍帯は70cm以上と記されている.臍帯長は妊娠週数とともに長くなるが,妊娠35週以降,その伸びは鈍化する.妊娠20〜21週で32.4±8.6cm,妊娠30〜31週で47.6±11.3cm,妊娠40〜41週で59.6±12.6cmとなる(表1)1)

8.臍帯下垂と臍帯脱出

著者: 瓦林達比古 ,   牧野康男

ページ範囲:P.926 - P.928

 臍帯下垂ならびに臍帯脱出の定義については産科婦人科用語解説集によると,臍帯下垂(fore—lying of the umbilical cord)は破水前に先進胎児部分の側方または下方に卵膜を隔てて臍帯を透視ないしは触知するものをいい,臍帯脱出(prolapse of the umbilical cord)は破水後で産道内または陰裂間に臍帯が懸垂してきた状態をいう1).さらに破水前後にかかわらず,胎児の先進部をこえて下降しているが,内診や視診ではわからない状態を潜在性臍帯脱出(occult cord prolap—se)と定義されている.
 また,米国では臍帯脱出の頻度は頭位で0.5%,足位で15%,そして横位で20%とされているが2),近年,その頻度は0.2%に減少しつつあるという3).それは胎位異常における選択的帝王切開術の増加によることも一因になっているものと思われる.一方,わが国においては0.4〜1%程度と報告されている1,4).当院においては,1989年1月から1998年12月までの過去10年間の分娩数4,162例中12例(0.28%)の臍帯脱出の症例を経験している.このように実際の臍帯脱出の頻度は高くないが,いったん臍帯脱出が発症すれば臍帯還納による救命は困難であり,児は胎児仮死から胎児死亡へとかなりの頻度で移行し,予後は不良になってくる.

9.臍帯偽結節・真結節,臍帯血腫

著者: 平野秀人 ,   真田広行 ,   佐藤朗

ページ範囲:P.929 - P.931

 子宮内胎児死亡の約10%は臍帯因子であるといわれている.そのなかでも臍帯真結節や臍帯血腫は,胎児・新生児の生命予後に直結するほどの異常であるのにかかわらず,いまだにその診断は不確実であるといえる.
 この稿では,主に臍帯真結節,臍帯血腫と胎児・新生児異常との関連,および超音波検査などによる胎内診断方法およびその可能性について文献的に考察する.

10.一絨毛膜性双胎の臍帯血流

著者: 伊藤茂

ページ範囲:P.932 - P.935

 一般的に双胎妊娠は早産,妊娠中毒症などの合併症が多く,ハイリスク妊娠とされている.しかし,そのなかでも双胎において児の予後に最も大きな影響を与える合併症は双胎間輸血症候群(twin to twin transfusion syndrome:TTTS)といえる.したがって双胎は,一絨毛膜性双胎か二絨毛膜性双胎かを分けて産科管理を行わなければならない.
 一絨毛膜性双胎の管理において最も問題となるのは,その患者がTTTSに対するハイリスク患者であるかどうかを鑑別することである.このハイリスク患者の鑑別のため,現在までさまざまな報告がされている.今回は超音波パルスドプラ法にて最も容易に測定できる臍帯血流計測に着目し,一絨毛膜性双胎の管理における有用性と問題点について述べる.

11.臍帯穿刺の適応とタイミング

著者: 渡辺孝紀 ,   岡村州博 ,   矢嶋聰

ページ範囲:P.936 - P.940

 1983年のDaffosら1)の報告以来,胎児の臍帯穿刺による胎児血採取(percutaneous umbilicalblood sampling:PUBS)は周産期医療において不可欠の手技となった.しかしこの操作は母児に対し侵襲的であり,その適応の選択においては得られる結果による母児の利益とこの手技に伴う母児へのリスク,すなわち合併症の発生をつねに考慮する必要がある.
 現在,さまざまな適応でPUBSは行われているが,本稿ではわれわれの行ってきたPUBSの結果2)と経験した合併症について述べ,これらに基づいてPUBSの適応とタイミングについて主に妊娠22週以降の場合について検討する.

分娩後の臍帯

1.臍帯血データの正常値

著者: 麦島秀雄

ページ範囲:P.942 - P.947

 臍帯血を利用して検査する目的は母体や胎児の生理的状態を知ること,感染の有無を知ること,さらには新生児の採血量を減らすことなどが挙げられる.
 また今後の疾患や病態の解明に役だてるため,血清や血球の保存もきわめて重要である.臍帯血データを正確に評価するためには,適切な条件下で臍帯血が採取・処理されることが大切である.本稿では臍帯血の採血法,検体の処理と注意点さらには臍帯血データの標準値について述べる.

2.臍帯血バンク

著者: 高梨美乃子

ページ範囲:P.948 - P.950

 臍帯血中には造血幹細胞が含まれるとの報告は1980年代初期よりなされ,世界最初の臍帯血移植は1988年に行われた1).その成功から10年あまり,臍帯血は造血細胞の源として注目され,日本においては初めての同胞間臍帯血移植が1994年に,臍帯血バンクを介する同種臍帯血移植は1997年より行われている.ここでは日本と世界における臍帯血バンクの現状および臍帯血バンクを目的とする臍帯血の採取・保存について紹介する.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・1【新連載】

What is your diagnosis?

著者: 清水道生

ページ範囲:P.880 - P.883

 外科病理(診断病理),すなわち欧米でいうsurgical pathologyという学問が最近日本でもようやく見直され,その重要性が再認識されつつある.臨床においては病理診断は多くの場合最終診断であり,したがってそれに携わるものには広範な知識と判断力が要求される.そして婦人科領域の病理においては新しい概念が次々と提唱されており,臨床医のみならず,病理医もup-to-dateな知識をつねに吸収していこうとする姿勢が必要になってきている.今回の“知っていると役立つ婦人科病理”のシリーズでは日常の産科婦人科領域においてよく遭遇する疾患を中心に,ときにはまれではあるが知っておくべき疾患を加えて,その病理所見について毎回1〜2症例を呈示していく.また,婦人科領域においては組織診断だけでなく細胞診も重要な位置を占めており,必要に応じて細胞診も加味していく予定である.
 形式としては,実際に病理診断を行っている産婦人科医や病理医が当然知っておくべき疾患概念や臨床病理学的事項を各臓器ごとに取り上げ,最初のページはその肉眼像や組織像のカラー写真を“What is your diagnosis?”のタイトル通りに質問形式で呈示し,次のページではその写真についてどのような所見が認められるのかを詳細に解説し,3ページ目に各々の疾患について知っておくべき事項を簡潔に記載するという形式で進めていく.

OBSTETRIC NEWS

尿失禁,便失禁:分娩の影響

著者: 武久徹

ページ範囲:P.952 - P.954

 帝王切開(帝切)を比較的安全に減少させる最も有効な方法は,難産の取り扱いといわれている.また,従来からいわれてきた分娩第2期は,未産婦の場合は2〜3時間(経産婦は1〜2時間,ただし硬膜外麻酔を採用している場合はそれぞれプラス1時間)の経過観察が可能という「標準的管理」に疑問が持たれ,「厳重に母児が監視されていれば」さらに長時間の観察が可能という研究結果(OG 49:266,1977;J Reprod Med 35:229,1990;BJOG 99:381,1992)も示されはじめ,とくにマニトバで行われた研究で,分娩第2期の経過観察は6時間は可能と報告されている(AJOG173:906,1995).
 しかし,これらの研究は児の予後と母体罹患(出血や発熱など)の面から検討されただけで,尿失禁,便失禁,子宮脱などの母体の骨盤底の損傷の問題は検討されていない.

Estrogen Series・39 HRTと静脈性血栓塞栓症・4

静脈血栓症の発生リスクとホルモン補充療法

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.956 - P.957

 38回および37回のエストロゲンシリーズで血栓症とHRTの関係を解明しようとした論文をご紹介したが,今回はそれに関してLancet誌に掲載された論説(commentary)をご紹介したい(以下,その要旨).
 教科書を繙けば,更年期周辺および更年期後女性のホルモン補充療法(HRT)には静脈血栓症の危険がほとんどないことが書かれている.また,それを裏づける研究には結論を出すには症例数が少ないとも書かれている.HRTに関連した静脈血栓症はいままであまり危惧されたことはなかった.若年女性に使用されている経口避妊薬(OC)に伴って発生する静脈血栓症はOCに含まれるエストロゲンによることが解明されているが,それならばなぜHRTの場合には血栓症リスクがないのであろうか?この疑問は今回の3論文で解答されたことになる.

産婦人科キーワード・33

家族性腫瘍

著者: 西村正人

ページ範囲:P.958 - P.958

定義
 家族性腫瘍とは,家族集積性を示す腫瘍性疾患のことであり,ある特定の癌抑制遺伝子に異常があり,それが次世代に伝わるため,若年でしかも家族集積性に発生すると考えられている.1985年にKnudsonは,病因分類(Oncodeme分類)を発表した.この分類は癌が突然変異の積み重ねにより発生するということを前提とし,突然変異の起こる原因として,環境要因と生体の関係により4種類に分類したものである.ちなみにoncoは「癌」,demeとは「高度に近親交配を行う血縁集団」を意味する.一般に遺伝性腫瘍といわれ,発癌の原因として遺伝要因が大きな要素を占めているものはOncodeme 4に相当する.

産婦人科キーワード・34

顆粒球エラスターゼ

著者: 福井理仁

ページ範囲:P.959 - P.959

語源
 顆粒球から発生するエラスチンを分解する酵素(elastase).

病院めぐり

太田西ノ内病院

著者: 田中幹夫

ページ範囲:P.960 - P.960

 郡山市は福島県の中央部にあり,人口は約33万人で,県の地域経済の中心地です.
 太田西ノ内病院はこの郡山市にあり,地域の基幹病院として機能しています.太田綜合病院は創立103年であり,現在,太田記念病院,太田西ノ内病院,太田熱海病院の3病院からなり,当院はその中心的な病院となっています.

刈谷総合病院

著者: 山本真一

ページ範囲:P.961 - P.961

 刈谷総合病院は名古屋市の南東にある刈谷市に,豊田グループ7社と刈谷市からなる医療法人豊田会により,昭和38年3月に設立され,現在に至るまで地域の基幹病院として機能してきました.トヨタ自動車と関係の深い土地ながら,病院の周囲には田畑が広がり,のどかな環境に恵まれています.
 現在は総病床数629床,職員数903名,医師数112名,1日平均外来患者数約2,000人の規模となり,厚生省の臨床研修病院指定をはじめ,産婦人科学会卒後研修指導施設など各種学会の認定施設となっています.

誌上Debate・1【新連載】

前回帝切妊娠の経腟分娩の是非

著者: 水上尚典 ,   佐藤郁夫 ,   武久徹

ページ範囲:P.964 - P.970

是 前回帝切妊娠の経膣分娩(vaginal blrth after cesarean dellvery:VBAC)はオプションとして提供されるべきである VBACと対比されるprocedureは選択的帝切である.前回帝切妊婦に対して選択的帝切が施行されやすいのは明らかに次の理由による,「既往帝切妊婦は経膣分娩時,子宮破裂を合併しやすく,いったんそれを合併すると母児生命が危険にさらされる」.はたしてその危険はどの程度のものであろうか?

CURRENT RESEARCH

妊娠母体ならびに胎児・新生児の免疫特性からみた母子感染

著者: 斎藤滋

ページ範囲:P.971 - P.980

 大学6年生のときに,私の母校出身の森山郁子先生(現奈良県立医科大学附属看護短大教授)がNature誌に,エストロゲンとプロゲステロンを投与すると,絨毛癌細胞株のハムスターへの移植が成功することを発表されました.その頃,Kajii, Ohama(大濱紘三先生は現広島大学産婦人科教授)らは,胞状奇胎が雄性発生であることを発表されました.私は異物であり,しかも完全に父親由来の胞状奇胎がなぜ母体から拒絶されないのかを研究したくなり,奈良県立医科大学に赴任早々の一條元彦教授のところへそのことを研究したいので産婦人科に入局させて欲しいと生意気に申し出ました.一條教授は「それなら大学院へ入学して,君は免疫学を勉強しなさい」と答えて下さいました.以来,免疫学からみた母子感染,妊娠成立機構ならびにその破綻について,京都大学ウイルス研究所の日沼賴夫先生をはじめ,多くの先生方のご支援のもと,研究を進めてきた次第です.

Expert Lecture for Clinician

HRTの現状と更なる普及のために

著者: 青野敏博

ページ範囲:P.981 - P.988

 今春 東京で開催された第51回日本産科婦人科学会総会(会長 佐藤和雄日本大学教授)に併催されたランチョンセミナー『HRTの現状と更なる普及のために』(日本シエーリング株式会社 共催)は矢内原巧昭和大学教授の司会のもと,400人余の聴衆を集め,このテーマのもつ関心の高さをうかがわせた.
 演者をつとめた青野敏博徳島大学教授は『臨床医のための女性ホルモン補充療法マニュアル』『更年期外来診療プラクティス』(共に,医学書院刊)の著作をもつ,この領域研究・診療の第一人者.

症例

先天性無眼球症の1例

著者: 澤崎隆 ,   藤井恒夫 ,   向井啓司 ,   白山裕子 ,   木岡寛雅 ,   内藤博之

ページ範囲:P.991 - P.993

 他の先天異常を伴わない先天性無眼球症の1例を経験したので報告する.
 症例の母親は30歳の主婦で,巨大な子宮筋腫を合併しており高位破水の疑いで入院した(妊娠30週+1日).感染徴候,胎児仮死徴候が出現したため緊急帝王切開となり,1,243gの患児を娩出した.胎盤に早剥を疑わせる所見が一部認められ,臍帯は卵膜付着であった.新生児は左眼球が肉眼的に認められず,左眼裂も狭小であった.精査の結果,他臓器の異常は認められず染色体は46XYであった.MRIでは左眼窩内に正常の眼球構造が認められず左視神経も欠損していた.児は現在順調に成長しており,人工義眼を装着するためシリコン製コンフォーマを使用して義眼床を作製中である.

原発性アルドステロン症合併妊娠の1症例

著者: 岡田園子 ,   近藤良介 ,   大立陽代 ,   神崎秀陽 ,   森泰清 ,   藤山総一郎 ,   佐藤仁彦 ,   芦田眞

ページ範囲:P.995 - P.998

 症例は30歳の4回経妊2回経産婦人で,妊娠24週ころより高血圧,低カリウム(K)血症,血漿アルドステロン(PAC)高値,血漿レニン活性(PRA)低値を認め,原発性アルドステロン症が疑われた.妊娠30週,子宮収縮,性器出血が出現,超音波断層検査にて内子宮口上部に血腫を認め入院となった.妊娠31週1日,血塊の排出,変動一過性徐脈を認めたため緊急腹式帝王切開術を施行し,1,716gの正常女児を娩出した.術後,降圧剤,K製剤にて患者の血圧,血清K値は正常を維持した.しかし,下腹部切創に一致して血腫形成を認め,術後15日目に,筋膜下血腫除去術およびドレナージ術を施行した.経過は順調であり,ドレナージ術後に行った上腹部CTスキャン,副腎シンチグラム,立位/フロセミド負荷試験の結果より,右副腎腫瘍による原発性アルドステロン症と診断し,腹腔鏡下右副腎摘出術を施行した.術後,速やかに血清K,PRA,PACは正常化し,現在も母児ともに無治療にて経過中である.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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