icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科53巻9号

1999年09月発行

雑誌目次

今月の臨床 増えてきた子宮体癌 Overview

わが国における発生頻度と治療成績の現状

著者: 岡村智佳子 ,   佐藤信二 ,   矢嶋聰

ページ範囲:P.1128 - P.1131

 子宮体癌は,これまで本邦では欧米諸国に比べてその罹患率が低率であるとされていた.しかし,子宮頸癌の罹患率が世界的に減少しつつあるのに対し,子宮体癌の罹患率は上昇傾向にあり,女性の平均年齢の高齢化に伴う好発年齢層の増加や生活スタイルの欧米化などにより,今後この傾向はさらに強まると予想される.また,子宮体癌はI,II期などの早期癌として発見されることが多く,産婦人科領域の癌のなかでも比較的予後が良好であるとされてきたが,進行癌や再発癌では治療に苦慮する症例も少なくない.さらに子宮体癌における術後療法は,子宮頸癌における放射線療法や卵巣癌における化学療法のように地位が確立しているものがなく,いまだ統一の見解が得られていないのが現状である.
 本稿では子宮体癌の発生頻度についてふれ,治療法および治療成績の現状について述べることとする.

発生の基礎

1.高危険因子

著者: 西谷巖

ページ範囲:P.1132 - P.1136

子宮体癌の疫学
 癌の発生は,老化(aging)と密接なかかわりをもっているが,子宮体癌(以下,体癌)も高齢婦人に多発する.高齢化社会の到来によって,わが国でも体癌の増加は急速かつ顕著であり,65歳以上の高齢者が総人口に占める割合も1990年は12.1%,2000年は17.0%であるが,2010年には21.3%,2020年には25.5%とさらに加速すると推定され,とくに女性の増加が顕著である.
 人口動態統計(1998年,厚生省統計情報部)1)によると,癌の年間死亡総数は283,827人(1998年)に達し,前年度より8,414人増加した.このうち,女性の癌死亡総数は111,572人で,3,235人増加し,4,998人の子宮癌死が含まれている.前年度より10人減少している.しかし,これまでの癌死亡統計では,子宮頸癌と体癌とを分けていないので,体癌の正確な死亡総数は明らかではない.わが国の頸癌罹患率(prevalence rate)は,はなはだ高かったが,1965年ころから二次予防としての検診が全国で組織的,継続的に行われるようになり,これによって早期癌の段階で発見し,治療へ誘導されるので,死亡数は明らかに減少してきた.

2.発生・進展と性ホルモン

著者: 皆川幸久 ,   寺川直樹

ページ範囲:P.1138 - P.1140

 子宮体癌(内膜癌)の自然史についてはいまだ不明な点が多い.一方,子宮内膜は性ステロイド受容体を有することから,内膜癌はホルモン依存性腫瘍の一つに位置づけられている.乳癌の場合と比較すると明確な成績に乏しいものの,内膜癌の発生・進展と性ステロイドとの関連について,臨床的・基礎的知見が集積されつつある.本稿では体癌の発生・進展と性ステロイド,とくにエストロゲンとの関連について概説する.

3.発生の遺伝子・分子機構

著者: 栗秋ユミ子 ,   加藤聖子 ,   和氣徳夫

ページ範囲:P.1142 - P.1145

 癌は種々の癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活化により発生すると考えられ,さまざまな遺伝子の関与が推察される.
 最近,癌の発生にgenetic instability(GIN,遺伝的不安定性)の関与が示唆されている.GINはmicrosatellite instability (MIN)とChromo—somal instability (CIN)の二つに大別できる.MINは数塩基の繰り返し配列の異常が起こるもので,この機構に関与する遺伝子としてhMSH2やhMLH1がある.CINは染色体凝集や染色分体癒合などの異常が起こるもので,これらの機構にhMAD2,hBUB1などの遺伝子が関与する.MINやCINにより塩基配列の変化,染色体数の変化,染色体転座,遺伝子増幅が生じることにより,癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活化が起こる.

検査・診断

1.細胞診

著者: 野田定 ,   鳥居貴代 ,   布引治

ページ範囲:P.1146 - P.1151

 1998年,厚生省がん検診の有効性評価に関する研究班は体がん検診の有効性について「十分に証明されているとはいえない」1)と報告した.このことをもって体部細胞診の必要性をすぐに否定する流れがある.しかし体部細胞診は検診を行うべき対象を正しく定めて行えば体がんのスクリーニング法として最も優れているという厚生省野田班の報告2)をはじめ,日本母性保護医産婦人科医会(日母と略)の全国都道府県45支部に対するアンケート調査報告から体がん一次検診としての細胞診の有用性を認める報告3)もみられる.したがって有効性に問題ありとすれば,それは体部細胞診ではなくむしろ有効性を評価する方法(疫学的研究や検診対象者の選定や研究デザインなど)にその原因が求められるべきである.この現状を踏まえ,本項では子宮体がん検診に重要な役割を果たす細胞診の精度向上に必要な留意点について記載する.

2.組織診

著者: 蔵本博行 ,   上坊敏子 ,   新井正秀 ,   今井愛 ,   金井督之

ページ範囲:P.1152 - P.1155

 子宮体癌は,最近30年間で症例数も子宮癌中における頻度も急激に上昇してきている.そのため,体癌を正しく診断することの重要性はいっそう大きくなっているといえよう.診断には組織診が必須であるので,まずその実際を簡単に述べる.一方,組織型や組織学的分化度は予後にも大きく影響することが知られているので,組織所見別の対応についても概説する.

3.画像による子宮体癌の進展度

著者: 黒田健治 ,   菊池昭彦 ,   武谷雄二

ページ範囲:P.1156 - P.1159

 子宮体癌の画像診断の目的は,治療方針の選択と予後を予測するために,腫瘍の進展度を正確に把握することにある.
 子宮体癌は局所では内膜から筋層に浸潤し,漿膜面に達した後,隣接臓器へと浸潤する.また,付属器を介し腹腔内に播種する経路もある.下方では内子宮口をこえて頸管へと浸潤する.リンパ節転移は骨盤内リンパ節,大動脈周囲リンパ節に認められる.

4.子宮鏡

著者: 高島英世

ページ範囲:P.1160 - P.1163

 子宮体癌,すなわち内膜癌は体部に発生する悪性腫瘍の大部分を占める.子宮内膜癌の診断に内膜細胞診が有用なのは周知の事実であるが,確定診断は組織診で行われる.子宮腔は不可視領域なので,直接病変を観察し的確な生検を行うためには子宮鏡検査が必要である.子宮鏡検査は病変の位置や大きさを把握できるだけでなく,その輪郭や表層構造より良性や悪性の鑑別を始め,推定組織診断もある程度可能である.

5.腫瘍マーカー

著者: 福地剛 ,   野澤志朗

ページ範囲:P.1166 - P.1167

 腫瘍マーカーは,主として①癌の診断,スクリーニング,②治療効果の判定,③治療後のフォローアップなどに際しての臨床的有用性を期待されて用いられ,実際に卵巣癌や頸癌(扁平上皮癌)においては欠かせないものとなっている.一方,子宮体癌に関して特異的な腫瘍マーカーはこれまで報告されておらず,他の婦人科悪性疾患に比し腫瘍マーカーの有用性は低いと言わざるを得ない.しかし,このような現状において既存の腫瘍マーカーの再検討,あるいはコンビネーションによる応用も試みられている.
 本稿では,子宮体癌における腫瘍マーカーの成績と有効な臨床応用について概説する.

6.「取扱い規約」の注意点

著者: 岩坂剛 ,   杉森甫

ページ範囲:P.1168 - P.1170

 1996年3月に『子宮体癌取扱い規約』の改訂第2版が刊行された.この改訂が行われた背景には,1988年,FIGOが従来用いてきた術前の臨床進行期分類に代わって手術進行期分類を採用することになったこと,さらに1994年,WHOから『His—tological Typing of Female Genital TractTumours』の第2版が刊行され,新しい組織分類に対応を迫られたということがある.
 本稿では,改訂第2版における主な変更点および実地上の注意点について概述する.

治療

1.手術療法—基本術式と工夫

著者: 工藤隆一 ,   寒河江悟 ,   遠藤俊明 ,   伊東英樹

ページ範囲:P.1172 - P.1177

 子宮体癌の治療は手術療法が主であって,化学療法並びに放射線療法は現在でも補助療法にとどまっているといっても過言でない.しかし主たる治療法であっても患者の術後のquality of lifeを考慮すると,過剰の術式を選択すべきでなく,癌の進行期,腫瘍の悪性度,患者の手術術式への適応などを考慮して個別的な治療法を選択する必要がある.とくにわが国の手術術式は欧米と比較して拡大した術式が選択されている傾向にある.
 そこで本稿では,体癌の進行期,組織型,病理組織学的特徴などによってどのような術式がわが国では選択されているかについて紹介するとともに,欧米で実施されている治療法についても紹介したい.そして患者のquality of lifeならびに医療費のコストなどを考慮して,これから実施される可能性がある手術術式について筆者らの考えを述べたい.

2.化学療法

著者: 土岐尚之 ,   柏村正道

ページ範囲:P.1178 - P.1181

 子宮体癌の約90%は臨床進行期I〜II期であるため,治療法の第一選択は手術療法となっている.一方,子宮体癌の予後因子が明らかになってきており1-3),この予後因子を考慮した術後分類が1988年FIGOより提唱されたが4),日本産科婦人科学会においても1995年の症例から採用されることになった.手術進行期によるhigh risk症例に対する術後補助療法として従来,放射線療法が行われてきたが,照射野外の遠隔転移として再発する例も多数みられることが指摘されていることや5,6),腺癌に対する感受性が扁平上皮癌ほど高くないことなど,術後補助療法としての放射線療法の有効性については疑問が残る.したがって,術後補助化学療法が次第に取り入れられつつあるが,確立したregimenは存在しないのが現状である.また術後療法について,化学療法と放射線療法を比較したものがrandomized studyとして解析された報告はみられないのが現状である.

3.放射線療法

著者: 佐藤重美 ,   齋藤良治

ページ範囲:P.1182 - P.1184

 子宮体癌は放射線感受性が低い腺癌がほとんどである.したがって,その治療選択の第一は手術療法であり,放射線療法は手術不能症例に対しての術後補助療法の一つとして行われる.ただし,子宮摘出が困難な子宮体癌は従来から頻度的に少なく,その大半は手術療法が可能であり,したがって放射線療法が子宮体癌治療の第一選択となることは少ない1)
 また,子宮体癌の術後補助療法としても,従来行われてきた放射線療法に代わり,最近ではシスプラチン(CDDP)やアドリアマイシン(ADR)を併用した化学療法を行う施設が多くなってきており2,3),筆者らも1992年以降この目的には主に化学療法を行っている.そこで本稿では子宮体癌術後補助療法としての放射線療法について術後化学療法と比較して述べる.

4.内分泌療法

著者: 冠野博 ,   山本宝

ページ範囲:P.1185 - P.1187

 エストロゲンは子宮体癌の発生・増殖・進展に密接に寄与しているとされ,またプロゲストーゲンはその抗エストロゲン効果により子宮体癌の発生・発育を抑えることが期待されている.
 そこで,子宮体癌に対する手術療法を補完するものとして放射線療法や化学療法とともにホルモン療法(プロゲストーゲン療法が中心)が広く検討され,副作用の少ない点からQOLを重視した治療法の一つとして注目されている.

5.若年者子宮体癌の治療

著者: 永井宣隆 ,   大濱紘三

ページ範囲:P.1188 - P.1190

 従来は子宮体癌の約4分の3が閉経後の症例で占められていたが,最近は体癌罹患率の増加とともに若年化の傾向が指摘されている.若年者子宮体癌の定義として学会で定められたものはないが,一般には40歳以下に発生した体癌とする報告が多く,その場合の頻度は2〜8%であり,30歳以下の例に限るとその率はわずか0.08〜1.6%となっている1).若年者体癌の特徴として高齢者に比べてエストロゲン依存性であること,排卵障害を伴う不妊や肥満との関連性が強いことなどが挙げられている.そのため未婚,未産婚の場合には妊孕性の温存を考慮に入れた対応が求められる.
 本稿では若年者子宮体癌の特徴,診断と治療の現状について述べる.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・3

What is your diagnosis?

著者: 清水道生

ページ範囲:P.1125 - P.1127

症例:41歳,女性
 子宮頸部扁平上皮癌の診断のもとに広汎子宮全摘・両側付属器切除術,および骨盤リンパ節郭清術が行われた.Fig 1(a:弱拡大,b:中拡大)およびFig 2(強拡大)はその際に提出された左閉鎖リンパ節の組織像(HE染色)である.

OBSTETRIC NEWS

子宮内感染と脳性麻痺

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1165 - P.1165

 脳性麻痺の原因は複雑である.第46回米国産婦人科医協会(ACOG)臨床大会でも,脳性麻痺の原因に関し,胎児低酸素症(Gilstrap)と胎児感染(Romero)の面から討論された.出生時の啼泣があり,アプガースコアが正常,臍帯動脈血pHが正常,哺乳良好で母親とともに退院した児が最終的に脳性麻痺となっても分娩中の胎児低酸素症が原因ではない(Gilstrap LC,第46回ACOG臨床大会,1998年5月)が,脳性麻痺はしばしば医療訴訟の対象となり,原告側は分娩中の産科管理が原因と考える例がきわめて多い.
 脳性麻痺の原因に関する多くの研究がある.後方視的研究であるが,臨床的にNelsonらは約156,000分娩(1983〜1985年の分娩,サンフランシスコ地域,出産時2,500g以上,3歳までフォローアップ,脳性麻痺84例,対照378例)の調査で分娩中に母体発熱(>38.0℃),(臨床的)絨毛膜羊膜炎,胎盤感染(組織学的診断),敗血症などの感染がある場合の脳性麻痺発生頻度は約9倍と有意に増加することを明らかにした(JAMA278:207,1997)(臨婦産52:354,1998).Romeroの共同研究者の一人であるYoonは妊娠家兎を用いた実験で,子宮内感染で脳室周囲白質硬化症(PVL)を発症させることができることを証明した(AJOG177:797,1997).

敗血症とbirth asphyxia—医療訴訟の回避と胎盤の組織学的検査の重要性

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1196 - P.1197

 胎児感染と脳性麻痺は密接な関連があることが,最近の研究で確認されている(JAMA278:207,1998;AJOG 180:S2,1999).しかし,脳性麻痺の原因が,分娩中の胎児低酸素症と断定される場合もあり,医療紛争の大きな問題点となっている.回避できた可能性がある症例の不適切な管理に対する責任を負うのは当然であるが,逆に不可避的原因の責任を不当に負う必要がないことはいうまでもない.
 今回,オーストラリアから,GBSによる敗血症が原因の新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)の論文が発表された.

Estrogen Series・41

エストロゲンと分娩後のうつ状態

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1191 - P.1191

 国際疾病分類に掲載されている多くの精神科診断名がそうであるように,分娩後の精神状態に関する病態(postnatal affective disorders)も症状により分類されている1).臨床家も研究者も,分娩後の精神障害を①the blues,②puerperal psy—chosis,③postnatal depressionに分類している.
 the bluesは頻度が高く(50〜80%),軽度で一過性であり,「正常な経験」であり,特別の治療は不要で,よく説明して安心感を与えることが主要な治療法である.puerperal psychosis(産褥期精神病)はまれ(0.2%)で重症度が高く,その本質は主として躁うつ病である.多くは分娩後30日以内に発症するが,この期間は精神病の入院がもっとも多い期間で,発症の危険度は通常の22倍にも達する.

産婦人科キーワード・37

セレクチン

著者: 東敬次郎 ,   苛原稔 ,   青野敏博

ページ範囲:P.1192 - P.1192

語源
 血液中の白血球や血小板は,通常は血管内を血漿とともに流れているが,炎症などの際には血管上皮細胞などの細胞と緊密に応答する.すなわち炎症の際には,白血球は血管内皮細胞の上をゆっくりと転がるような運動(ローリングという)を行った後,血管内皮細胞の間をすり抜けて炎症部位に到達する.また血小板も血液凝固機転が働くと好中球や単球と接着する.これらの細胞間接着に重要な役割を果たしているのがセレクチンである.セレクチンは特定の糖鎖と結合することがわかり,糖鎖を認識し結合する物質であるlectinと選択の意のselectを合成してselectinと命名された.

産婦人科キーワード・38

緊急性交後避妊法

著者: 宮本誠一郎

ページ範囲:P.1193 - P.1193

語源
 contraceptionの“cept”は,ラテン語の“capere:つかまえる,取る”を語源とし,accept(受け入れる)やreceipt(受領書)など“受け取る”の意味を持つ.capture(捕らえる)やcaption(記事のタイトル=読書を捕らえる)も同じ語源を持つ.妊娠(conception)は,“皆で(con—)授かる”ものであり,避妊(contraception)は授かりものを拒否(contr)することである.

病院めぐり

公立八女総合病院

著者: 畑瀬哲郎

ページ範囲:P.1194 - P.1194

 公立八女総合病院は福岡県の南部に位置し,南に県境の小高い山並みを望む田園にたたずむ八女市にあります.当院の特色は,診療圏の人口が約10万人で,面積は520km2と非常に広いことです.最も遠い矢部村までは約40kmもあり,山間部も多く,周辺は一部熊本・大分両県に接しています.
 当院は昭和24年に八女地区28町村の民生委員連盟で20床で開設され,昭和35年に一部事務組合立病院となり,その後数次にわたり診療機能の拡充をはかり,平成6年に増改築され現在16診療科,330床の総合病院となっています.現在,本院を構成する1市4町2村(八女市,立花町,広川町,黒木町,上陽町,星野村,矢部村)も例外なく高齢化,過疎化が進んでいます.平成10年には厚生省臨床研修指定病院の指定と病院機能評価の認定を受け,平成11年4月には老人保健施設「回寿苑」を併設し,さらに地域に密接した医療施設として住民の厚い信頼を得ています.

前橋赤十字病院

著者: 植竹泰

ページ範囲:P.1195 - P.1195

 前橋市は,赤城山の麓で“水と緑と詩のまち”として知られる人口28万人の地方都市です.前橋赤十字病院は大正2年,日本赤十字社群馬支部病院として内科,外科,産婦人科など5科,ベッド数80床で看護学校を併設して開院し,地域の中核病院として貢献してきました.現在も地域の中核病院として施設,設備の充実をはかり,診療科目は22科,ベッド数は一般病床538床,人間ドック18床となっています.前橋市内には群馬大学医学部附属病院をはじめ数病院がひしめいており,病院経営という意味では厳しい環境にあります.
 平成11年4月1日より救命救急センターを開設し,24時間体制ですべての救急患者をいつでも引き受けることにしています.また,病診連携を進めるように努力し,群馬県消防学校の救急隊員養成のための教育や救急救命士受験者の実習も行っています.

誌上Debate・3

更年期障害にエストロゲン療法は役にたつか

著者: 相良祐輔 ,   栁沼忞

ページ範囲:P.1200 - P.1204

是 エストロゲン療法の妥当性は,基本的には否定されるにたる医学的理由はないといってよい.しかし,性ステロイドホルモン療法の限界・危険度もよく知ったうえで使用されるべきであることは,他の種々の薬物療法における場合とまったく同じである.
 更年期障害に対する治療にエストロゲン剤を用いることは,すでに臨床医においては常識となっているといってもよい,その医学的理由は,更年期障害にみられる不定愁訴には,明らかに低エストロゲン血症に起因すると証明されるものが多く含まれるからである.

総説

婦人科悪性腫瘍に対する内視鏡下手術に伴うPort Site転移

著者: 林博章 ,   石川睦男

ページ範囲:P.1205 - P.1210

 婦人科悪性腫瘍に対する内視鏡下手術で注意しなくてはならない特異な合併症,すなわちport site転移・再発について次の5点に関して文献的検討を加える.①開腹手術における創部転移,②ヒト悪性腫瘍細胞移植実験,③port site転移,④動物実験,⑤port site転移の予防.

症例

膀胱腟瘻をきたした腟内異物の1例

著者: 松本光弘 ,   西田荘哉 ,   大野義雄 ,   松浦俊子 ,   松本尚 ,   秋山欣也

ページ範囲:P.1211 - P.1213

 帯下の増加などの主訴にてまれに腟内異物に遭遇することがあるが,少女の場合は挿入事実の未自覚・羞恥心などによりそれを言及しない場合があり,治療までに回り道をすることがある.今回,われわれは診断が遅れた腟内異物の症例を経験したので報告する.症例は膀胱腟瘻,膀胱結石,腟結石を合併しており,瘻孔は異物の角の物理的刺激で,結石はウレアーゼ産生細菌により尿中の尿素が分解されて生じたアンモニアが尿をアルカリ化することにより生じたと考えられる.わが国での1990年からの腟内異物の報告例は自験例を除き17例で,挿入異物は種々あり,動機は幼児期では不明なものが多く,成人ではいたずら,マスターベーションなどが多い.うち腟瘻に至ったのは3例で,2例は経腟的に,1例は経腹的に瘻孔閉鎖術を行い予後良好とのことである.

臨床経験

腹腔鏡下手術を行った卵巣腫瘍合併妊娠8症例の検討

著者: 塚原慎一郎 ,   渡邊義輝 ,   宇田川敦子 ,   竹田明宏

ページ範囲:P.1215 - P.1219

 8例の卵巣腫瘍合併妊娠に対して,腹壁吊り上げ法による腹腔鏡下手術を行った.麻酔方法は,当初は脊椎麻酔,場合により硬膜外麻酔を併用していたが,最近では全身麻酔で行っている.組織型は,7例が類皮嚢胞腫,1例が漿液性嚢胞腺腫であった.1例は術中に類皮嚢胞腫の腫瘍内容が漏出し,術後に軽度の化学的腹膜炎を併発した.しかしながら,その他には明らかな合併症を認めなかった.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

icon up
あなたは医療従事者ですか?