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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科54巻12号

2000年12月発行

雑誌目次

今月の臨床 ART最新情報—妊娠率向上のために 卵巣刺激・受精

1.ARTの成功率と内分泌動態

著者: 本山洋明

ページ範囲:P.1362 - P.1366

はじめに
 倉敷成人病センターでは1988年にIVF-ETによる最初の女児を得た後,1994年にICSIに成功し現在に至っている.この間の臨床成績の分析に基づいて,品胎防止と良好胚選別の観点より,1998年からET胚数は2個以下に制限し,ET日は3日目から5日目の間に行っている1,2)
 1998年から2000年6月までの全年齢のART533採卵周期の総妊娠率は,ET489周期あたりで48.7%,生産妊娠率38.2%である.しかし40歳以上のET 47周期では総妊娠率17.0%,生産妊娠率6.4%と40歳未満よりも有意に低く,特殊な群として別に考えるべきである3)

2.Poor responderの卵巣刺激

著者: 中川浩次 ,   山野修司 ,   青野敏博

ページ範囲:P.1367 - P.1371

Poor responderとは?
 Poor responderとは,統一された基準で規定された病名ではなく,各報告者がさまざまな基準を用いて規定している状態である.その基準として,経腟超音波で認められる成熟卵胞数,卵胞期初期のFSH値,過排卵刺激中のE2ピーク値,さらには採取卵数など,各報告者が独自に定めている1).当科において平成8年1月〜平成12年6月までの間に通常刺激法2)で卵胞発育が認められず,採卵がキャンセル(経腟超音波で卵巣刺激開始後8〜9日目に14mm以上の成熟卵胞の発育が認められない)となった30例の臨床背景を検討した結果,93%には排卵を有する月経周期を認めたことから,排卵障害がpoor responderの原因ではないと推察できる.一方,卵巣の手術の既往があった症例が37%存在したことから,ovarian reserveの減少がその原因の1つとして考えられる.しかし,結局のところその病態(原因)は不明であるからその定義も定まらない.Poor responderをあえて説明するとすれば「通常の卵巣刺激で卵巣が低反応を示す症例」とすることができる.では,その頻度はというと,当科では上記期間内に通常刺激法2)で採卵がキャンセルとなった症例が14.2%存在した.

3.自然周期(clomiphene周期)採卵法の実際

著者: 貝嶋弘恒 ,   寺元章吉 ,   加藤修

ページ範囲:P.1372 - P.1375

 体外受精の歴史もイギリスのルイーズ嬢誕生から早20年が経過した.そもそも自然周期からスタートしたARTであったが1),採卵率,妊娠率の低さから,Gn-RHa製剤+HMGを使用した排卵誘発により多数の卵子を得る刺激周期が主体となり,複数個の胚を移植,妊娠率の向上を目指した.妊娠率はある程度向上したものの,OHSSをはじめとする副作用の問題,さらには多胎の問題が生じた.
 われわれは,当初より自然周期による体外受精を主体とし,刺激周期に匹敵する妊娠率を維持してきた.ここに当院の方法を踏まえた自然周期の実際を紹介する.

4.卵のquality改善法

著者: 神野正雄 ,   岩下光利 ,   中村幸雄

ページ範囲:P.1376 - P.1379

 ARTで妊娠を達成するために最も重要な点は,良好に成熟した卵を得ることである.そのため諸種の卵巣刺激法が開発され(表1),現在,GnRH agonist併用法が全世界の体外受精周期の85.3%で使用されている10).しかし,体外受精症例の65%はGnRH agonist併用法を反復使用しても妊娠に至らず11),各症例に応じた卵巣刺激法の選択・修正が必要となる.
 卵巣刺激で卵のqualityを改善するには,1)卵巣刺激法の種類の変更,2)hCG投与時期の補正,3)卵巣刺激前の処置の3つが有効と考える.

5.未熟卵の体外成熟法

著者: 森本義晴

ページ範囲:P.1380 - P.1383

未熟卵の種類とその培養の試み
 胎生期に原始生殖細胞は卵原細胞となり,周囲の卵胞細胞とともに卵胞を形成する.卵巣の中に数多く存在する原始卵胞primordial follicleは一次卵胞から二次卵胞へと成熟し,やがて卵胞腔をもつ三次卵胞を経て成熟卵胞へと成長する.現在まで,動物においてこの一部の過程の培養が試みられ,成功例も散見される.例えばEppigら1)は,マウスの胎児卵巣を器官培養と卵胞培養の2段階で培養し,2匹のメスの産仔を得るのに成功している.しかし,ヒトにおける原始卵胞からの体外培養in vitro maturation(IVM)の研究はまだ少ない.われわれはこの長く困難な培養系のうち,前半の一部である卵巣組織の器官培養と後半の未熟卵子から妊娠までの過程について研究した.

6.ICSIと精子選別

著者: 笠井剛 ,   星和彦

ページ範囲:P.1384 - P.1387

はじめに
 ICSIでは,運動性良好な精子の数より,質が高く,debrisや細菌などの夾雑物のない精子を回収することが要求される.ICSIにおける良好な精子とは,DNAが正常そしてintactで,十分機能する卵活性化物質および中心体を含有している精子に他ならない.しかし現状では,精子の運動性,形態の正常性から良好な精子を判断するしかない.その基準がいまだ曖昧なところに精子の人為的選別の問題点が残されている.

7.当院における無精子症患者への対応

著者: 粟田松一郎 ,   田中温 ,   永吉基 ,   馬渡善文 ,   田中威づみ ,   竹本洋一 ,   高崎博幸 ,   岩本智子 ,   鍬田恵里 ,   竹本佳世

ページ範囲:P.1388 - P.1394

はじめに
 無精子症の患者で,精巣上体から精子を採取できる症例に対しては,男性不妊を専門とする大学病院泌尿器科においても,産婦人科との協力の下に,精巣上体精子や精巣精子を用いた顕微授精法による治療に取り組んでいる現状である.今やその恩恵を受けて待望の挙児を得ることのできたカップルの数は,かつて精路の吻合術による治療を受けて出生した児の数を遥かに凌ぐに至り,今後もその傾向はさらに続くであろう.多くの悩めるカップルに選択肢が広がり,妊娠できるチャンスが格段に高まったことは,喜ばしいかぎりである.
 ARTが世に出る以前には吻合術や人工精液瘤による人工授精法などしか対応方法はなく,挙児希望のカップルにとってはそれに頼る以外に選択の余地はなかった.今日不妊治療施設に通院している閉塞性無精子症の患者数を考えれば,当時においてもかなりの数の潜在的な適応症例が存在していたと思われる.全国の大学病院や大病院の泌尿器科の中には当時から積極的に精路再建術に取り組んでいた施設もあったが,これまでに報告されている妊娠総数は,全国のARTに携わる不妊治療施設からのここ数年の間になされた妊娠報告数をかなり下回る数字でしかない.

凍結・胚移植・着床

1.内視鏡的子宮内膜機能評価

著者: 佐久本哲郎 ,   本間裕朗 ,   徳永義光

ページ範囲:P.1395 - P.1398

 体外受精・胚移植(IVF-ET)をはじめとする生殖補助技術(ART)が不妊治療を進展させて以来,多くの難治性不妊の治療が可能となってきた.しかしながら,IVF-ETにおける妊娠率は胚培養技術の向上にもかかわらず依然として20〜30%台を推移しているのが現状である.その原因として胚の発生不全のみならず,子宮内膜の増殖,分化異常による着床機能障害が指摘されている.
 着床期子宮内膜の評価法としては,従来より黄体期に行う子宮内膜組織診でのendometrial dat—ingが用いられている1).一方,近年内視鏡の発達により子宮内膜の観察が外来診療で無麻酔下に容易に行えるようになってきた.この内視鏡を用いた観察は子宮内膜を全体像としてとらえることが可能であり,かつin vivoでの内膜評価がrealtimeに行える.また内膜に対し破壊的操作を加えないところから反復の観察が行えるため月経周期にともなう内膜の多様な変化を直視下にとらえることができる.これらの利点を用いわれわれは着床期子宮内膜の内視鏡的評価を行ってきた2,3)

2.胚盤胞移植

著者: 宇津宮隆史

ページ範囲:P.1399 - P.1404

はじめに
 生殖補助医療の領域において,1990年代初頭の精子卵細胞質内注入intracytoplasmic sperminjection(ICSI)の実用化は,特に男性因子不妊症の治療にとって革命的な進歩をもたらした.その後co-cultureやassisted hatchingなどの新しい方法が試みられたが,それらの結果も期待されたほどではなく,これといった目新しい技術の展開は見られなかった.その中でこの2〜3年,胚盤胞期まで胚を育て,移植するという方法が新たな培養液,いわゆるsequential mediaの考案によって可能になった.そしてその結果,従来の妊娠率20〜30%と比べて60〜90%という格段に良い成績も報告されている.
 その理論的根拠は 1)従来のIVF-ETでは採卵後〈排卵後〉2〜3日目に子宮に移植する.これは自然の妊娠では排卵後5〜7日目のいわゆるimplantation windowの開いている時期に胚盤胞期まで成長した胚が子宮に到達するのに比べ,2〜3日早いことになり,それが受精・分割率は70〜80%と高いにもかかわらず,妊娠率は20〜30%に低下する理由の一つと思われる.

3.選択的凍結胚移植—全胚凍結胚移植

著者: 神谷博文 ,   森若治 ,   田中恵美 ,   八木亜希子 ,   下大澤とし恵

ページ範囲:P.1405 - P.1409

はじめに
 凍結胚移植は,多胎妊娠の予防のための移植胚数の制限で生じる余剰胚を凍結保存し,その有効利用による妊娠率の向上や患者負担の軽減を目的としている.選択的凍結胚移植は排卵誘発時の採卵周期に新鮮胚を移植せずにすべての胚の凍結保存を行い,後日自然周期やホルモン補充周期での内膜調整を行い胚移植する方法である.筆者らは1995年より選択的凍結胚移植を卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症化の予防や子宮内部環境を考慮しての妊娠率,生産率向上のために行っている.

4.Vitrification

著者: 向田哲規

ページ範囲:P.1410 - P.1413

 従来の凍結法に代わる受精卵(胚)の超低温保存法として,ガラス化法(Vitrification)が注目されている.ガラス化とは“液体が結晶化することなく粘性が高まり固化すること”を表した用語であり,このガラス化法による凍結は,植氷操作(seed—ing)や緩慢冷却が不要な簡便な方法であるのみならず,細胞内外の氷晶(intra-cellular and extra—cellular ice crystal formation)に由来する物理的・化学的傷害がないため,生存性維持の面からも利点を有しており,既に多くの動物種の胚においてその有効性が証明されている.しかし,高濃度の耐凍剤を使用するため,それによる毒性が細胞に傷害をもたらす点や,その他にも,従来の凍結法と同様に,細胞内凍結,フラクチャー,浸透圧的膨張によっても傷害を受ける可能性がある.これらの要因を最小限にすることによって,優れたガラス化法を確立することができる.現在までに胚のガラス化法に関しては多くの報告が見られるが,研究者によって手法にかなりの違いが見られる.本論文では,ガラス化法の原理について概説し,ヒト受精卵における臨床応用について述べる.

5.エチレングリコールを用いたヒト凍結胚移植

著者: 山下正紀 ,   森布紀子 ,   福島護之

ページ範囲:P.1414 - P.1417

はじめに
 わが国におけるヒト胚の凍結ではプロパンディオール(以下,PROH)を用いた緩慢凍結法が一般的に行われ,これが主流となっている1).一方,ウシ胚の凍結においては以前より凍結保護剤にエチレングリコール(以下,EG)を使った緩慢凍結法が多くの施設で用いられており,実際EGによって凍結されたウシ胚が商業ベースで広く流通している.筆者らは,ウシの凍結胚移植の現場で行われているEGによる凍結法をヒト胚の凍結に応用し良好な成績を収めている.そこで,本稿において筆者らが行っているEGを凍結保護剤とし,エタノールを媒体としたプログラムフリーザーを用いた緩慢凍結法によるヒト胚凍結法の実際を紹介する.

6.免疫性不妊とART

著者: 柴原浩章 ,   高見澤聡 ,   山田哲夫 ,   佐藤郁夫

ページ範囲:P.1418 - P.1424

 受精や着床にかかわる免疫因子の研究が盛んに行われている.中でも受精に関しては,in vitroにおける研究が比較的容易に行えるため,配偶子に対する免疫のかかわりについては分子レベルまでの知見が得られているものがある.一方で自己抗体と不妊治療あるいはIVFの成功率との関係に関しては論争があり1,2),これは着床期周辺がいわゆるブラックボックス内にあること,自己抗体による不妊症発生機序が明確でないことなどに起因する.にもかかわらず,習慣流産に対する治療を着床障害に臨床応用する機運が先行し,しかもその有用性に対する判定が明確でない現状に対しては,警鐘を唱える立場をとるものがある.
 同様に免疫療法に関しても,免疫学的妊娠維持機構や免疫療法の作用機序がいまだ解明されておらず,習慣流産症例に対しても慎重な対応をとるべき現状である.その一方で,原因不明着床障害症例に対する免疫療法の有効性を唱える報告もある3)

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・18

What is your diagnosis?

著者: 伊藤智雄 ,   清水道生

ページ範囲:P.1359 - P.1361

症例:3歳,女児
 最近になり,嘔吐および腹痛がみられたため,近医を受診.腹部腫瘤が触知され,精査にて卵巣と思われる部位に充実部と嚢胞部が混在する腫瘤が認められた.血中のAFPは1,705ng/mlと上昇しており,開腹術が施行された.Fig 1は摘出された左卵巣腫瘍(11×7×6cm)で,Fig 2,3,4はその組織像(HE染色)である.
 1.肉眼診断として何を考えるか.

病院めぐり

札幌厚生病院

著者: 西谷雅史

ページ範囲:P.1426 - P.1426

 札幌厚生病院は昭和18年に北農診療所として開設された.昭和44年には総合病院として認定され,平成6年10月,現在地に全面移転を行い近代的医療機関として面目を一新した.病床数は494床,1日の平均外来受診者数は約1,300名で,15診療科より構成され,医師数は研修医を含め83名である.当院は札幌市の中央部に位置し,二次,三次の高度医療を提供し,札幌市はもとより全道各地から受診者が来院している.
 産婦人科は,土門洋哉主任部長,西谷雅史部長,光部兼六郎医長,井上明子医師の4人からなり,病床数は35床で日本産科婦人科学会認定研修病院に指定され,「すべてを診ることのできる産婦人科医の育成」を目指している.昨年度の年間手術数は272件であった.婦人科癌手術が50件で,そのうち広汎子宮全摘術13件,卵巣悪性腫瘍手術8件であった.腹式子宮全摘は83件,膣式子宮全摘は37件で,吊り上げ式による腹腔鏡手術は41件と増加している.

青梅市立総合病院

著者: 陶守敬二郎

ページ範囲:P.1427 - P.1427

 青梅市立総合病院は,青梅市,羽村市,福生市,昭島市,あきる野市などからなる西多摩地区の中核病院として昭和32年11月に開設され,その後2回の増設工事を経て平成12年6月には救命救急センターが開設されました.現在は25診療科,569床の病床数を有する東京都内でも有数の総合医療の基幹病院(現院長星和夫)として機能しています.現在の常勤医師数は70名,1日の外来患者数は約1,450名です.
 産婦人科医師は6名です.病棟は50床からなり,診療の効率化を目的にクリニカルパス,注射処方箋制度を導入しています.外来患者数は一般外来が1日約80名,妊婦健診が1日約60名です.特殊外来として不妊外来を午後に行っています.助産婦による妊婦保健指導,母親学級,立ち会い分娩希望者を対象とした両親学級も行っています.また,インフォームド・コンセントの重要性から,「正常分娩と異常分娩」の説明を外来にて周知しています.

Estrogen Series・46

更年期後のホルモン補充療法と乳癌との関係—エストロゲン単剤とエストロゲン+プロゲスチン組み合わせとの比較 その1

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1428 - P.1429

 さきに発表された,それまでに発表された世界の疫学的データの90%以上を含む大規模なレビュー調査で,更年期後のホルモン補充療法(HRT)と乳癌との関連が調べられた1).その結果によれば,HRT期間が長くなると乳癌との関連が認められた.ただし,過去の一時点でHRTを使用した場合には,その関連はなかった.その関連は現在あるいは最近まで使用していた場合(recent users)に見られた.この調査によれば,HRT期間の延長にともなう乳癌リスクの増加は痩せ形女性(leaner women)に多く見られ,また臨床的に進展度の少ない場合に見られた1)
 この調査で解決できなかった問題の一つに,HRTにエストロゲンとプロゲスチン(E+Pとここでは略す)との組み合わせを使用した場合(コンビネーションHRT)に,エストロゲン単剤(Eとここでは略す)を使用した場合にくらべて,乳癌発生は増加するのか,という問題がある.

産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン—私のノウハウ

結紮縫合糸により生じる裂傷の防止法について—子宮筋層および卵巣縫合時のパッチ縫合の考案

著者: 佐藤賢一郎 ,   水内英充

ページ範囲:P.1430 - P.1430

 子宮筋腫核出術,帝王切開術などの際の子宮筋層縫合や卵巣嚢腫核出術などにおける卵巣縫合時に,時に縫合糸による組織の裂傷,出血を経験することがある.垂直な針の刺入,糸の締め具合や針・縫合糸の選択に留意しても完全には防ぎ得ないものと思われる.われわれはこのような場合の対処法としてインターシードを細切,折り畳んで(以下,インターシードパッチと呼称),縫合糸の各刺入部に当て結紮する方法(以下,パッチ縫合と呼称)を考案した.
 パッチ縫合の手順は以下の通りである.

OBSTETRIC NEWS

経口中絶薬RU−486,米国で認可

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1431 - P.1431

 米国の食品薬品局(Food and Drug Adminis—tration:FDA)は最近,経口投与により使用できる妊娠中絶薬の発売と使用を認可した.これはRU−486(一般名はmifepristone,その商品名は米国ではMifeprex®)という名で知られている薬で,フランスのRoussel-Uclaf社(この頭文字を取ってRU)により開発されたものである.すでにヨーロッパでは50万件以上に使用されているといわれる.米国では約1万件のテスト使用がなされ,今回リベラルなクリントン政権下で認可された次第である.
 RU−486は妊娠維持に必要なプロゲステロンの受容体をブロックするものである.その使用法は概略すると以下のようになる(FDAのプロトコールによる).妊娠中絶のためには合計3回の診察が必要である.また,この方法が有効なのは妊娠の持続期間が最終月経後49日まで,それ以後は従来の手術的方法を取るように推奨されている.

臨床経験

卵巣未熟奇形腫12例の臨床的検討

著者: 朝野晃 ,   石垣展子 ,   早坂篤 ,   丹野治郎 ,   藤田信弘 ,   大井嗣和 ,   明城光三 ,   和田裕一

ページ範囲:P.1434 - P.1437

 卵巣未熟奇形腫12例を対象として臨床的検討を行った.患者の年齢は15〜30歳で,平均年齢は21.5歳であった.主訴は腹部腫瘤と腹部腫瘍,腹痛が多かった.臨床進行期は11例がⅠa期で1例はgliomatosis peritoneiを認めるⅢb期であった,腫瘍重量は230〜3,470gであり,全例片側発生で左右差は認めなかった.手術は,患側の腫瘍核出術を3例,患側の卵巣摘出を1例,患側の付属器切除を8例に行い,対側卵巣の楔状切除を7例に行った.全例,妊孕性は保存した.また,治療後の出産例は12例中2例であった.転帰は,1年以上観察可能だった10例には再発は認めなかった.

症例

子宮体癌内視鏡下手術後のPort Site転移の1例

著者: 渡邉喜久雄 ,   林博章 ,   山下剛 ,   中田俊之 ,   小島貴志 ,   伊藤秀行 ,   石川睦男

ページ範囲:P.1439 - P.1442

 悪性腫瘍に対する内視鏡下手術には特異な合併症,すなわちport site転移・再発が欧米で報告されている.悪性腫瘍に対する内視鏡下手術が日本でも行われてきているが,未だその症例数は少なく,この特異な転移・再発例は本邦では報告されていない.
 今回,本邦初の婦人科悪性腫瘍に対する内視鏡下手術後の腹壁転移症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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「臨床婦人科産科」第54巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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