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今月の臨床 ART最新情報—妊娠率向上のために 卵巣刺激・受精
2.Poor responderの卵巣刺激
著者: 中川浩次1 山野修司1 青野敏博1
所属機関: 1徳島大学医学部産婦人科
ページ範囲:P.1367 - P.1371
文献購入ページに移動Poor responderとは,統一された基準で規定された病名ではなく,各報告者がさまざまな基準を用いて規定している状態である.その基準として,経腟超音波で認められる成熟卵胞数,卵胞期初期のFSH値,過排卵刺激中のE2ピーク値,さらには採取卵数など,各報告者が独自に定めている1).当科において平成8年1月〜平成12年6月までの間に通常刺激法2)で卵胞発育が認められず,採卵がキャンセル(経腟超音波で卵巣刺激開始後8〜9日目に14mm以上の成熟卵胞の発育が認められない)となった30例の臨床背景を検討した結果,93%には排卵を有する月経周期を認めたことから,排卵障害がpoor responderの原因ではないと推察できる.一方,卵巣の手術の既往があった症例が37%存在したことから,ovarian reserveの減少がその原因の1つとして考えられる.しかし,結局のところその病態(原因)は不明であるからその定義も定まらない.Poor responderをあえて説明するとすれば「通常の卵巣刺激で卵巣が低反応を示す症例」とすることができる.では,その頻度はというと,当科では上記期間内に通常刺激法2)で採卵がキャンセルとなった症例が14.2%存在した.
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