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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科54巻3号

2000年03月発行

雑誌目次

今月の臨床 新生児外科の最前線—産科医としての必須知識

超音波検査の要点—妊娠中期以降

著者: 石川睦男 ,   石郷岡哲郎

ページ範囲:P.220 - P.223

 ME機器,とりわけ超音波診断装置の進歩によりさまざまな胎児異常の出生前診断が可能となってきている.このため致死的な先天奇形や出生直後のintensive careが要求されるような胎児異常に関しては,出生前診断を行っておくことがたいせっであり,妊婦健康診査(以下,妊婦健診)での胎児スクリーニング検査の重要性が増大している.現実に各国ならびにさまざまな施設で,いろいろな方法で胎児超音波スクリーニング検査が行われており,またその有効性が検討されている.
 本稿では,新生児外科疾患を主眼とし,妊娠中期以降の超音波検査に関して,おもに外来でのスクリーニング検査について解説する.なお,ここに述べられた疾患の詳細に関しては,他稿ならびに他書を参照されたい.

胎児MRI検査の適応と要点

著者: 川鰭市郎 ,   高橋雄一郎 ,   玉舎輝彦

ページ範囲:P.224 - P.226

 超音波検査に代表される画像診断の進歩は,周産期診療のあり方を大きく変貌させてきた.胎児診断が行われることにより,出生後の児の治療方針が明確にされることは,当然われわれ医療側にとってありがたいものであるが,同時に両親の精神的なサポートにも貢献していると考えられる.
 しかしこの超音波検査も万全とはいえず,胎児の位置や母体の皮下脂肪などのために十分な評価ができない症例に遭遇することがある.このような超音波検査の弱点を補うものとして,磁気共鳴画像(MRI)が胎児診断にも有用であることをわれわれは報告してきた1).ここでは胎児を対象としたMRIについて,その適応と利点を中心に述べてみる.

新生児外科患者搬送のタイミング

著者: 細田弥太郎 ,   山高篤行 ,   宮野武

ページ範囲:P.228 - P.231

 新生児外科領域では,近年の出生前診断の著しい進歩に伴い,新生児外科症例の母体搬送あるいは新生児搬送が増加してきている.これら搬送のタイミングは,その症例の予後に大きな影響を与え,非常に重要なポイントとなる.本稿では,日本小児外科学会学術委員会による1998年新生児外科全国集計に基づくわが国の新生児外科の現況1)を紹介するとともに,新生児外科患者搬送のタイミングについて述べてみたい.なお,本文中に記載されたすべてのデータは,日本小児外科学会学術委員会による1998年新生児外科全国集計として日本小児外科学会誌に掲載1,2)されたものである.

新生児外科の麻酔と術前・術後管理の要点

著者: 太城力良 ,   柳本富士雄

ページ範囲:P.232 - P.234

新生児外科疾患の種類
 超音波診断技術の進歩により,多くの疾患が出生前に診断可能となった.一般に,出生前に診断される疾患は出生後に診断される同じ疾患より重症である.とくに,羊水異常,胎児水腫を伴うものは重症度が高く,在胎中からの治療が必要となる.新生児外科疾患(表1)を出生前診断した場合は,①出生前の胎児管理,②出生児の蘇生の必要性,③搬送中の感染・低体温などを考慮し,専門施設への母体搬送と予定分娩が望ましい.

外科治療の現況と産科医へのアドバイス 1.頭部神経系疾患

1)水頭症

著者: 夫敬憲

ページ範囲:P.236 - P.238

外科治療の現況
 1.未熟児脳室内出血後水頭症
 水頭症の治療は脳室—腹腔短絡術(VP shunt)が一般的であるが,低体重児の場合は皮膚壊死,髄液漏,腸炎,シャント感染などを合併しやすく体重の増加を待って短絡術を行う傾向にある.いったん水頭症の状態を認めた場合,あるいはPappile III度,IV度の脳室内出血を認めた場合はまずは反復腰椎穿刺を行い,髄液排除により脳圧のコントロールに努める.しかし,これで水頭症の改善を認めるほどの有効な髄液排除が行えることは少ない.より確実な髄液排除の方法として従来脳室ドレナージが行われてきたが,管理が煩雑,感染症の危険性が高いなどの理由で頭皮下CSFreservoirに取って代わりつつある.
 最近,脳室カテーテルとreservoirが一体型になった極小モデルが製品化されている.27Gの翼状針にてreservoirを穿刺することによって,十分な髄液排除が可能である.髄液排除量は個体差が大きく,体重は目安にならない.大泉門を触診することでたいていの排除量は決められるが,超音波検査で脳室拡大の進行を止めることが最大の目標である.大量の髄液排除を必要とする場合,電解質異常(とくに低Na血症),低タンパク血症に注意を要する.この手技によって,水頭症状態から離脱できる症例も認められる.患児の体重が2,000 gから2,500gに達した時点でVP shuntを行う.

2)二分頭蓋と新生児脳腫瘍

著者: 山内康雄 ,   稲垣隆介

ページ範囲:P.240 - P.243

二分頭蓋
疾患について
 発生機序はよくわかっておらず,神経管の閉鎖不全による可能性も否定できないが,神経系を覆う中胚葉組織の発育異常によるものと考えられる.正中部にみられる頭蓋骨の部分欠損であり,頭蓋内容物の脱出がないものを潜在性二分頭蓋という.先天性皮膚洞や腫瘍(類上皮腫・上皮腫・脂肪腫など)を合併することがある.これに対して頭蓋内容物が脱出しているものを嚢胞性二分頭蓋という.脱出物が髄膜のみであるもの(髄膜瘤)(図1)と脳実質も含まれているもの(脳瘤)(図2)に二大別される.
 生存出生児3,000〜12,000人に1人の割合でみられ,後頭正中部に好発する(80〜90%).後頭部のものは女児に多く(80%),他の部位では男児に多い(60%1,2)).前頭蓋底部に発生したものは外からはみえないが,出生時からみられる脈拍や呼吸に同期して拍動する鼻腔内腫瘤と後鼻腔閉塞,髄液鼻漏や繰り返す髄膜炎が診断の要点であり,また離眼症,正中唇裂,口蓋裂などの顔面異常を合併することが多い3)

3)二分脊椎

著者: 白根礼造 ,   吉田康子

ページ範囲:P.244 - P.246

 腰仙椎(髄)にみられる先天異常は二分脊椎関連疾患として理解されているが,個々の疾患によって病態がさまざまであり,脳神経外科医の間でも混乱が認められる場合がある.本稿では最近の二分脊椎および関連疾患に関する新生児期管理について解説する.

2.胸部疾患

1)先天性横隔膜ヘルニア

著者: 吉野裕顕 ,   加藤哲夫

ページ範囲:P.248 - P.251

出生前診断,周産期治療と治療成績
 近年,出生前診断,周産期治療の進歩により,新生児外科疾患の治療成績の向上がみられるなかで,唯一先天性横隔膜ヘルニア(以下,本症)のみは改善が得られず,その死亡率は約40%と高率である1)
 本症のおもな死因の一つである新生児遷延性肺高血圧(以下,PPHN)に対する治療成績はHFO,ECMO,NO吸入療法などの呼吸・循環管理の進歩により向上し,さらに出生前診断によって.出生直後から集中治療が可能となり,救命される症例は増加した.しかし,出生前診断例には救命困難な重症例も多く,当初期待されたほどの治療成績の向上には結びついていない.すなわち今まては見過ごされ,胎内死亡あるいは出生直後に死亡し,本症と診断されていなかったいわゆるhiddenmortalityが明らかとなり,統計的には治療成績の低下として現れることになった.

2)肺・縦隔の腫瘤病変

著者: 横森欣司

ページ範囲:P.252 - P.255

 新生児期に腫瘤として認識される肺・縦隔疾患としては,腫瘍性病変と嚢胞性病変に大別できる.以下に,それぞれのおもな腫瘤の周産期〜新生児期での診断・治療について述べる.

3)先天性心疾患

著者: 藤原直

ページ範囲:P.256 - P.260

 近年,小児心臓血管外科手術の成績は著しく向上し,新生児期の手術についても安定した成績が得られるようになった.人工心肺などの補助手段や手技の改善が大きく寄与しているが,早期の専門病院への転送や侵襲の少ない診断方法の確立なども成績の向上に貢献している.
 早期の根治手術の利点は数多く挙げられているが,人工材料を使用する手術などでは患児の成長に従って問題となる部分もあり,すべての疾患で推奨されているわけではない.現在,新生児期の開心根治術が一般的であるのは,完全大血管転位症に対するJatene手術,総肺静脈還流異常症,総動脈幹症,完全型心内膜床欠損症,大動脈縮窄症および大動脈離断症に対する一期的根治術などが挙げられる.開心姑息術では左心低形成症候群に対するNorwood手術,無脾症候群に伴う総肺静脈還流異常修復術,純型肺動脈閉鎖症・ファロー四徴症に対する姑息的右室流出路形成術などがある.非開心姑息術としては肺血流減少群に対して行うBlalock-Taussig手術(体肺短絡手術),肺血流増加群に対して行う肺動脈絞扼術がある.

3.腹・背部疾患

1)臍帯ヘルニア・腹壁破裂

著者: 河原﨑秀雄 ,   水田耕一 ,   橋都浩平

ページ範囲:P.261 - P.265

概念と発生病因
 臍帯ヘルニアomplaJoceleは,腹腔内臓器が臍輪から腹腔外に脱出している状態で,羊膜と腹膜で形成される薄い半透明のヘルニア嚢で被覆されている場合と,ヘルニア嚢が破れて腹腔内臓器が体外に直接脱出している場合がある.腹壁破裂abdomial wall defectsは,腹壁の裂孔から腹腔内臓器が被覆する被膜を伴わず,直接体外に脱出している状態で,通常は臍帯の右側に裂孔があり,裂孔と臍帯との間には正常な皮膚が橋状bridgeに存在する.以後,両疾患を本疾患とよぶ.本疾患の発生頻度は出生数5,000に対して1と報告されている.20歳以下の若年者が母親の場合は腹壁破裂1)が,40歳以上の母親の場合は臍帯ヘルニア1,2)が多い傾向がある.
 臍帯ヘルニアの発生病因は,腹壁形成不全説と,腸管還納障害説がある.胎生初期(胎生3〜4週)における胎児の体壁形成は,上下左右の4つの皺襞fold(頭側皺襞と尾側皺襞と左右の側皺襞)が側方から中心に発育して,中央の臍部において癒合することで完成するが(図1)3),この皺襞の発育が悪く腹壁の形成が障害されると,各病型の腹壁形成異常が発生する.これが腹壁形成不全説である.この場合は比較的大きな臍帯ヘルニアを生じ,脱出臓器は小腸の他に,胃,肝,脾を含む.

2)消化管閉鎖

著者: 高松英夫

ページ範囲:P.266 - P.268

 近年の小児外科疾患の治療成績は向上し,その死亡のほとんどは合併する重症奇形に大きく影響されている.治療成績向上の要因としては出生前診断の普及により,より早期にかつ全身状態の保たれた状態で小児外科医のところに紹介されるようになったこと,低出生体重児でも長期に安全に使用できる人工呼吸器の開発,優れた抗生物質などの開発に伴う感染症の防止,種々の栄養法の開発による栄養管理の進歩などを挙げることができる.一方では,重症例や重症奇形合併例の増加がさらなる治療成績向上を阻害しているといえる.
 本稿では新生児疾患のなかの消化管閉鎖についてその手術の現状,時期とその予後,出生前診断された場合の妊娠中の管理,出産時期,分娩方法などについて閉鎖部位別に述べる.妊娠中の管理については胎便性腹膜炎症例以外ではとくに問題となるものはない.ただ,羊水過多のあるものでは消化管閉鎖を伴っているものが多いため,胎児エコーではこのことを念頭に置いた注意深い観察が必要である.

3)消化管穿孔・腹膜炎

著者: 嵩原裕夫 ,   福山充俊

ページ範囲:P.270 - P.273

 消化管穿孔が胎生期に起こると無菌性の胎便性腹膜炎をきたし,周産期や生後に起こると細菌性あるいは化膿性腹膜炎に発展する.本稿では,胎便性腹膜炎の出生前診断や,生後早期の新生児消化管穿孔の診断および術前管理と治療について述べる.

4)肝・胆道疾患

著者: 池田信二 ,   世良好史 ,   内野信一郎 ,   吉田光宏

ページ範囲:P.274 - P.280

 新生児期にみられる肝・胆道系の腫瘍疾患として,肝芽腫,転移性腫瘍などがあり,外科的黄疸をきたす疾患としては胆道閉鎖症および胆道拡張症が認められる.いずれも頻度は少ないが小児外科領域においてはすべて重要な疾患であり,小児を診療する機会のある医療関係者は十分な知識が求められる.以下,症例を呈示し疾患の概略について述べる.

5)腎・尿路疾患

著者: 島田憲次 ,   細川尚三 ,   松本富美

ページ範囲:P.281 - P.283

胎児水腎症に対する治療の時期
 「水腎症」という診断名がつく胎児の尿路拡張は全妊娠の約1%にみられるが,その多くは一過性あるいは生理的な上部尿路の拡張であり,臨床的に問題となるのはその約1/5程度と考えられている1).われわれは産科医と話し合う機会が多いが,そのとき話題となるのは,腎尿路異常の出生前診断に何を望むのかという点である.ひとくちに腎尿路異常と言っても疾患の重篤度には大きな差があるため,正確な診断がわかればそれにこしたことはないが,何よりも知りたいのは満期になるまで妊娠を継続させてもよいのか,早期に出産させ治療を加えるのか,あるいは胎児治療を試みるのか,という問題に集約される.

6)卵巣嚢腫

著者: 八塚正四 ,   岡松孝男

ページ範囲:P.284 - P.287

 超音波画像診断技術の進歩によって,子宮内の「赤ちゃんの顔」までが描出されるようになった今1),ますます“患児としての胎児”に対する管理の重要性が高まりつつある.日本小児外科学会の事業の一つである5年ごとの新生児外科全国集計2)によれば,出生前診断施行率の高い疾患には,卵巣嚢腫,多嚢胞性異形成腎,水腎・水尿管症,胎便性腹膜炎,膀胱腸裂などが挙がっており,腹部の占拠性嚢胞性疾患が発見されやすいことがこの集計結果からもうかがい知ることができる.
 本稿では,これらのうち比較的遭遇しやすく,しかも周産期の治療方針に十分な配慮が必要な卵巣嚢腫(以下,本症)について述べる.本症の発生頻度は2,625出生に1例とされ3),周知のごとく,出生後は約1/2〜2/3が自然退縮するという特色をもつ4,5)

7)仙尾部腫瘍

著者: 伊川廣道

ページ範囲:P.288 - P.290

 仙尾部奇形腫は出生直後に仙尾部に大きく突出した特異な外観でわかるタイプと乳児期になって仙尾部が腫脹・隆起してくる悪性のタイプの二つに分けられる.ほとんどの症例は前者であり,現在では超音波により出生前に診断されていることが多く,産科医による出生前管理と小児外科医との連携がきわめて重要な疾患である.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・9

What is your diagnosis?

著者: 伊藤智雄 ,   清水道生 ,   石倉浩

ページ範囲:P.217 - P.219

 Fig 1,2は卵膜の正常構造である.
 1.卵膜の各層を同定せよ.
 2.Fig 2に示した細胞の名称は何か.

OBSTETRIC NEWS

妊娠糖尿病スクリーニングの候補者—米国糖尿病学会の勧告の問題点

著者: 武久徹

ページ範囲:P.291 - P.291

 米国産婦人科学会(ACOG)は,妊娠糖尿病(GDM)スクリーニングの施行対象は全例でも選択的でもいずれでもよいという指針を示している.選択的スクリーニングの対象は,糖尿病家族歴,巨大児または奇形児出産歴,死産歴,高血圧合併,尿糖陽性,30歳以上の妊婦,前回GDM歴のある場合である(AAP & ACOG Guidelines forPerinatal Care.4th Ed.p 77,1997).また,米国糖尿病学会(ADA)も1997年3月に,東または南アジア人を含めた妊娠中の耐糖能異常が発症しやすい人種は全例スクリーニングまたは100gGTTまたは75g GTTの診断的テスト[少なくとも3日間の普通食(炭水化物≧150g/日)と運動後,8時間以上14時間以内の空腹で朝,糖負荷試験を行う.検査を行っている間は,席に座ったままで喫煙を禁じる]が必要であるが,ローリスク妊婦(表1)であれば,ACOGと同様に全例または選択的スクリーニングのいずれでもよいという勧告を示した(Diabetes Care 21:B161,1998).
 しかし,ローリスク妊婦にはGDMスクリーニングを行う必要はないというADAの新勧告は実用的ではないとオーストラリアのMoses RGらは反論している.

薬剤の適応外使用(“Off-Label”drug use)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.296 - P.297

 日常臨床では,「薬剤を適応外で使用する場合が多数あるが,どのような薬剤が適応外で使用できるのか? 諸外国において有効性と安全性について複数の信頼できる研究で明らかにされていれば使用できるのか?」などのわれわれには理解できていない問題が残されている.
 薬剤の適応外使用に関し,米国食品医薬品管理局(FDA)は,1997年に新しい見解を示した(FDAModernization Act of 1997).薬剤はFDAで承認されたもので,Index Medicusに掲載されている学術誌に掲載され,peer reviewを受けた文献の別冊またはコピー,または製造業者による著しい変更や短縮が行われていない参考出版物の形で情報が提供されなければならない.

産婦人科キーワード・49

アポ蛋白

著者: 安井敏之

ページ範囲:P.292 - P.292

アポ蛋白とは
 アポとは,もともと一般に何かから分離した,あるいは派生したことを意味する言葉である.血液中にあってコレステロールや中性脂肪を運ぶ役割を果たしているのが,脂質(リポ)と蛋白の複合体であるリポ蛋白であり,このリポ蛋白を構成する蛋白をとくにアポリポ蛋白といい,通常アポ蛋白と略されている.

産婦人科キーワード・50

ヒト免疫不全ウイルス

著者: 前川正彦

ページ範囲:P.293 - P.293

語源
 human immunodeficiency virusは,発見当時さまざまな名称でよばれたが,1986年にWHOによってHIVと統一された.「ヒト」に「免疫不全」を引き起こすウイルスという意味であり,エイズ(AIDS:acquired immunodeficiency syndrome)の原因となる.

病院めぐり

国立大阪南病院

著者: 神田隆善

ページ範囲:P.294 - P.294

 国立大阪南病院は河内長野市(人口12万人)の北部に昭和20年に発足し,平成7年には創立50周年を迎えました.河内長野市は大阪府の南東部に位置し,大阪府内で3番目に広い市域を有し,肥沃な土壌と内陸性の湿潤,温暖な気候が相俟って,暮らしやすい環境です.市内には奈良朝時代に建立された天野山金剛寺や観心寺などの旧跡があり,歴史の町として府民の憩いの場となっています.
 病院は病床数550床,1日平均外来患者総数1,015名,職員数422名(医師53名,看護婦254名,そのほか115名),レジデント23名,臨床研修医25名で運営されています.診療科は22科が設置されており,特殊診療機能として,臨床研修指定病院,臨床研究部,エイズ拠点病院,救急告知病院,臓器提供病院などが指定されています.さらに,産婦人科をはじめ21にのぼる各学会認定施設になっています.

横浜南共済病院

著者: 飛鳥井邦雄

ページ範囲:P.295 - P.295

 横浜南共済病院は昭和14年に横須賀海軍共済病院追浜分院として創設され,その後5度の改称を行い,平成9年より名称を国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院としました.何回かの改修工事を行い平成3年に許可病床655床となり,平成8年に健康管理センターが,平成11年にはICUが開設されています.また,平成元年に厚生省から臨床研修病院に指定され,毎年4〜6名の研修医を受け入れています.
 当院は横浜市南部の金沢区に位置し,ほんの数分歩けば横須賀市に辿り着きます.近くには八景島シーパラダイス,金沢動物公園などのレジャー施設や金沢八景の景観,金沢文庫などがあり,横浜市の中心部とは異なった雰囲気があります.プロ野球通の方はご存じと思いますが,当院は横浜ベイスターズ選手の健康管理を行っており,佐々木 主浩投手やそのほか多くの選手の手術に成功しており,院長の山田勝久先生(整形外科)は,テレビやスポーツ新聞などのマスコミにしばしば登場する有名人です.

誌上Debate・9

進行卵巣癌における傍大動脈リンパ節郭清の是非

著者: 落合和徳 ,   武田佳彦

ページ範囲:P.300 - P.307

 是 卵巣癌は初期のものは卵巣に限局しているが,やがて骨盤内臓器に浸潤転移し,さらには腹腔内に進展する.播種転移は卵巣癌の特徴的な転移形態であるが,リンパ行性の転移も知られている.
 卵巣癌患者の約半数は進行したIII,IV期で発見されるが,腹腔内病変のコントロールが困難であった時代はリンパ節転移やその対応をいかにするかは問題にならなかった.しかし初回手術時になるべく多くの腫瘍組織を切除し,残存腫瘍を小さくすることが予後改善につながることが明らかとなり,さらにadjuvant chemotherapyの進歩により,腹腔内病変のコントロールが可能となったことから,後腹膜リンパ節病変もあらためて見直されてきた.

Expert Lecture for Clinician

OCの起源とその探究—ピンカスからのメッセージ

著者:

ページ範囲:P.309 - P.313

 1999年 本邦においても経口避妊薬(Oral contraceptives;OC)が認可され低用量ピルの正しい知識と理解が,医療従者に必要,不可欠な時代になった.11月東京で行われた日本不妊学会に,米国におけるOCの研究の第一人者でもあり開発者でもあるThe R.W.Johnson Pharmaceutical Research InstituteのDo Won Hahn博士が来日,『OCの起源とその探究—ピンカスからのメッセージ—』と題して講演を行った.
 青野敏博 徳島大学教授の司会のもと,OCの研究開発の端著となったMargaret Sanger女史,Katherine McCormick女史とGregory G.Pincusとの出会いから,現在の低用量で高い効果が期待されるニュープロゲストーゲン・ノルゲスチメートに至る研究進歩の足跡をふりかえった講演は,OCの起源からその後の発展を今後の展望を交えてコンパクトにまとめ,満員の聴衆を魅了した.

症例

帝王切開術後1日目に肺血栓塞栓症を発症しcatheter-directed thrombolysisにより良好な経過を得た1例

著者: 佐藤賢一郎 ,   水内英充 ,   玉川心吾 ,   実藤洋一 ,   井上玲 ,   星野弘勝 ,   松木高雪 ,   山内一暁 ,   國本清治 ,   伊藤洋輔 ,   大谷則史 ,   浅田秀典 ,   三上晴克

ページ範囲:P.315 - P.319

 今回,帝王切開術(以下,帝切と略)後1日目に肺血栓塞栓症を発症し,ウロキナーゼ(以下,UKと略)を用いたcatheter-directed thrombolysisにより良好な経過を得た1例を経験した.症例は45歳,1経妊1経産で,既往歴として1994年(平成6年)8月に児頭骨盤不均衡にて帝切をうけている.家族歴では父が脳梗塞で死亡している.1999年(平成11年)6月14日帝切の目的で入院し,6月16日帝切施行,翌日(6月17日)初回トイレ歩行後,帰室時に意識不明となり転倒した.
 肺シンチ,肺動脈造影により最終的に肺血栓塞栓症との確定診断に至り,肺動脈造影に引き続きカテーテルよりUKを造影所見を観察しながら計3回(24万単位2回,48万単位1回)動注したところ,直後にpO2,SpO2,臨床症状が著明に改善した.本症例の経験より,肺動脈造影を施行した場合catheter-directed thrombolysisは引き続き施行を考慮する価値のある方法であると思われた.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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