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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科54巻5号

2000年05月発行

雑誌目次

今月の臨床 ハイリスク分娩の管理指針 ハイリスク妊婦の分娩管理

1.VBAC管理とダブルセットアップ

著者: 水上尚典 ,   佐藤郁夫

ページ範囲:P.634 - P.636

VBAC
 vaginal birth after cesarean delivery (VBAC)のもっとも重要な問題は,いわゆるインフォームドコンセントである.子宮が破裂しても,高い確率で自らの命を失うことになっても経腟分娩を希望する妊婦がいても不思議ではない(価値観の多様性).医療従事者の価値観(命を守ることが最も価値がある)を患者に強要することは現在許されない.英国では児生命を失うことになっても帝王切開を拒否できる権利を患者は有している1).患者への公平な情報開示(自施設の能力に関して)と患者の価値観に敬意を払う(価値観の多様性を認める)姿勢が重要である.VBACの要件とVBAC時に患者に伝えるべき情報を表1,2に示した.

2.中毒症—分娩時の血圧管理と産褥ケア

著者: 中井祐一郎 ,   橘大介 ,   荻田幸雄

ページ範囲:P.637 - P.639

 妊娠中毒症はいまだその本質的病因が明らかではないこともあり,その治療は対症療法の域をこえていないのが現実である.したがって,本症の最も有効な治療法が妊娠の終結であることには,現在もなお変わりないのが現状である.このような観点からも,本症において母児の安全を図りつつ,妊娠を速やかに終結させることは重要な意義を持つ.本稿では,妊娠中毒症の分娩ならびに産褥期における管理について概説する.

3.HELLP症候群,急性妊娠脂肪肝—分娩前後の管理

著者: 大崎尚 ,   江川真人 ,   神崎秀陽

ページ範囲:P.640 - P.642

 HELLP症候群および急性妊娠脂肪肝はおもに妊娠後期に妊娠によって起因する肝疾患であり,発症早期の迅速な診断と集学的な治療を必要とし,適切な治療を怠ると両疾患とも周産期死亡やときに母体死亡を引き起こす疾患である.

4.CPDトライアル—比較的狭骨盤・低身長妊婦

著者: 土屋清志 ,   岩下光利

ページ範囲:P.644 - P.646

児頭骨盤不均衡(CPD)
1.定義
 日本産科婦人科学会の定義は,「児頭骨盤不均衡(cephalopelvic disproportion:CPD)とは,児頭と骨盤の間に大きさの不均衡が存在するために,分娩が停止あるいは母児に危険が切迫したり,あるいは障害が予想される場合をいう」(『産科婦人科 用語解説集』1989年)1)とされている.この定義は病因論的な分析によるもので,また概念的な性格をもつ.難産状態の要因を分娩の三要素(産道,娩出力,娩出物)に求めて考えるとき,児頭と骨産道因子との関係のみをCPDとして定義すべきである.現在,新しいCPDの定義として,「CPDとは児頭と骨盤の大きさ(径線あるいは角度)に関係した因子による難産状態」(日本産科婦人科学会用語委員会,1991年)2)が用いられる.難産=CPDではないのであるが,分娩の進行ぐあいで診断されるほうが臨床のうえでは実際的であるためである.
 米国産科学会のCPDの定義では,「子宮口が全開し,すでに破水しながら,児頭が嵌入しない状態」としており3),有効陣痛があることが前提となっている.ここでは,児頭の先進部が坐骨棘の高さより下降していれば嵌入としている.このような診断基準にかなうものをCPDと診断することが実際的であろう.

5.高年初産婦・肥満妊婦のリスク管理

著者: 辰村正人

ページ範囲:P.647 - P.649

 高年初産婦と肥満妊婦はどちらも帝王切開を念頭においた分娩管理が必要で,産科臨床上重要である.とくに高齢になるほど次回の妊娠・分娩の機会は減少するので児は貴重になる.このため高年初産婦の分娩時の管理はとくに重要と考える.高年初産婦と肥満妊婦では,妊娠中に可及的に異常の発見に努め,適切に対応することが分娩時の管理に大きく影響する.

6.筋腫・子宮奇形の経腟トライアル

著者: 鈴木倫子 ,   植田充治

ページ範囲:P.650 - P.652

子宮筋腫合併妊娠
 子宮筋腫が妊娠に合併する頻度は1〜2%程度という報告がある.しかし女性の社会進出に伴う高年齢妊娠の増加や超音波診断法の発達,とくに経腟超音波装置の導入により子宮筋腫合併妊娠の発見の頻度は増加し,その管理は重要な課題となっている.
 筋腫は発生部位により体部筋腫と頸部筋腫,タイプとしては漿膜下,筋層内,粘膜下筋腫があり,これらが単独ではなく,混在している場合が多い.

ハイリスク胎児の分娩管理

1.骨盤位分娩におけるリスク回避

著者: 竹田善治 ,   中山摂子 ,   坂井昌人 ,   岡井崇

ページ範囲:P.654 - P.657

 骨盤位分娩は全分娩数の3〜6%を占め,ハイリスク分娩のなかでも遭遇することの多いものの一つである.頭位分娩に比し骨盤位例は次に述べるいくつかの特有のリスクが加わるため,経腟分娩に臨むにあたっては十分な意を注がなければならない.ここでは筆者らが愛育病院において実際に行っている正期産,単胎骨盤位例の扱いについて,主としてリスク回避の観点から具体的な管理法や注意点を述べる.

2.多胎分娩のリスクと対策

著者: 末原則幸

ページ範囲:P.658 - P.660

 多胎は単胎に比べて周産期死亡や新生児死亡が高いことが知られている.これは,多胎妊娠では合併症の頻度が高いことや早産が多いことと関連し,また先進児に比べて後続児での周産期死亡率が高いことも指摘されている.これは先進児に比べて後続児において胎児仮死など分娩中の異常が多いこととも関連している.
 多胎の分娩中のリスクを減少させるためには,より望ましい分娩様式の選択が不可欠である.これには多胎の胎位の組み合わせと妊娠週数,児の推定体重が参考になる.また双胎・多胎の分娩中に発生したトラブルに際しても,迅速かつ適切な対応が求められている.

3.早産,IUGR児の分娩管理

著者: 藤田恭之 ,   佐藤昌司 ,   中野仁雄

ページ範囲:P.662 - P.665

 日本産科婦人科学会によれば,早産およびIUGR(子宮内発育遅延)はそれぞれ「妊娠22週以降37週未満までの期間における分娩」,「発育,成熟の抑制または異常が認められる児の総称」と定義される1).双方ともに,低出生体重児の出生を前提とした厳重な母体および新生児管理を必要とするハイリスク妊娠である.以下,本症の妊娠・分娩管理に関して概説する.

4.巨大児分娩の管理と肩甲難産の対策

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.666 - P.669

 わが国の母子保健統計によると,1997年の出生児体重別早期新生児死亡率は2,500〜3,999gで,1,000対0.5〜0.6であるが,4,000g以上をこえる児では1,000対1.2と高い1).出生時体重が4,000g以上の児を巨大児といい,とくにWHOでは4,500g以上を超巨大児と定義している.すなわち巨大児は妊娠,分娩に関してハイリスクであることを意味している.
 今回,与えられた主題“巨大児分娩の管理と肩甲難産の対策”について,札幌東豊病院での症例統計を基に若干の考察を行った.

5.過期産の分娩対策

著者: 西島正博 ,   斎藤克

ページ範囲:P.670 - P.672

 過期産は分娩時に胎児ジストレスや胎便吸引症候群(MAS)などが高頻度に認められ,ハイリスク妊娠の一つである.しかし,妊娠中のどの時期から積極的な周産期管理を始めるのか,過期産を回避するための分娩誘発は適当なのかなどの問題が認められるが,一定の見解は得られていない.

胎盤・臍帯・羊水異常例の分娩管理

1.低置胎盤分娩時の出血管理

著者: 森巍

ページ範囲:P.674 - P.677

低置胎盤とは
 低置胎盤は胎盤が子宮下部に付着するが,胎盤下縁は内子宮口に達しないものと定義される1).しかし胎盤がどの程度下方に位置していれば低置胎盤であるかについての用語上の明確な定義はない.
 Oppenheimerら(1991年)2)は,経腟超音波検査により胎盤下縁と内子宮口の距離が2cm以下の症例では8例中7例が帝王切開になったので,2cm以下の症例を低置胎盤low-lying placentaとして前置胎盤,正常位胎盤から区別することを提唱した.

2.臍帯循環ハイリスク例の分娩管理

著者: 宇津正二

ページ範囲:P.678 - P.682

 妊娠中毒症や予定日超過などによる胎盤機能不全が原因と考えられるような胎児仮死例は,近年の産科医療レベルの向上により激減した.しかし母体合併症や胎児の形態異常もないのに発育が遅れている例や,正常妊娠経過でノーリスクと判定していた症例でも,分娩時に突然,一過性徐脈が頻発したり,遷延性徐脈が持続して胎児仮死の心配をさせられる症例は少なくない.
 ほとんどの場合,娩出後に臍帯の頸部巻絡や胎盤への付着部異常(辺縁付着または卵膜付着),臍帯過捻転,さらには羊水過少などが存在したことを確認して納得するのであるが,陣痛時に臍帯が圧迫や屈曲,牽引などの物理的外力を受けて臍帯血管に狭窄部や絞扼部が生じた結果,胎児・臍帯・胎盤循環を障害すると考えられる.

3.羊水過多分娩時のリスクとその対策

著者: 島田勝子 ,   岡村州博

ページ範囲:P.683 - P.685

羊水過多の定義
 日本産科婦人科学会での定義1)によれば,羊水過多とは羊水量が800mlをこえる(と推定された)ものをいい,自覚症状を伴うものを羊水過多症とよばれている.
 頻度は一般に0.42)〜1.53)%と報告されている.

合併症妊婦の分娩管理

1.心疾患合併例の分娩時リスク管理

著者: 根木玲子

ページ範囲:P.686 - P.689

 本稿においては,心疾患合併妊婦の分娩時におけるリスク管理について解説することを主旨とした.したがって妊娠の許容限界あるいは妊娠継続の可否については他稿に譲ることとする.また,本稿では,胎児がすでに胎外生活可能な週数に至った症例においての解説とする.

2.易出血性血液疾患の分娩対策

著者: 荻島大貴 ,   吉田幸洋 ,   桑原慶紀

ページ範囲:P.690 - P.693

 妊娠中や分娩時に問題となってくる易出血性血液疾患には,特発性血小板減少性紫斑病(以下,ITPと略)や,頻度は少ないが先天性凝固因子異常症が挙げられる.ITP合併妊娠では,妊娠中や分娩時の母体血小板数の管理に加え,胎児血小板数の評価によって分娩様式の選択に迫られる.また,先天性血液凝固異常症は,近年,適切な血液凝固因子の補充療法により生存年数が延長し,妊娠・出産も可能になっている.
 そこで本稿ではITPに加え,代表的な先天性血液凝固因子異常症であるvon Willebrand病を有する患者が妊娠した場合の管理について述べる.

3.喘息合併例の分娩管理

著者: 中田好則

ページ範囲:P.694 - P.698

 分娩中の喘息の重積発作は母体の呼吸不全による高度低酸素症を誘発し,持続すれば胎児の低酸素血症を引き起こし,胎児仮死さらに胎児死亡の原因となる.また妊娠中の慢性的な低酸素状態は児の発育に影響を及ぼしIUGRの原因となる.分娩中の喘息発作を予防するには,妊娠中さらに妊娠前から治療を行い,十分にコントロールしておくことが重要である.そこで喘息合併妊婦の取り扱いについて触れ,分娩時の管理について述べる.

4.感染症—児への感染リスクの回避

著者: 小島俊行

ページ範囲:P.700 - P.704

性器ヘルペス
 単純ヘルペスウイルスには1型(HSV−1)と2型(HSV−2)があり,HSV−1は目・口・脳などの上半身とときに性器に感染するが,HSV−2はほとんど性器などの下半身にしか感染しない.ただし,本邦の女性性器ヘルペスの40%はHSV−1による1).生児ヘルペスは約2/3がHSV−1により,約1/3がHSV−2により発症している.胎内感染による胎児奇形の発症はごくまれである.妊婦において,HSV−2による性器ヘルペスが増加している.
 分娩時に性器ヘルペスを合併し,経腟分娩を行った場合,初感染では児の50%が新生児ヘルペスを発症し,再発型では1〜3%に発症したといわれている.この理由は,初感染では再発型に比べて病巣が広いことと,ウイルス量が多いことと,胎児に移行する抗HSV-IgG抗体が少ないことであると説明されている.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・11

What is your diagnosis?

著者: 古屋充子 ,   伊藤智雄 ,   清水道生

ページ範囲:P.631 - P.633

症例:45歳,女性
 成人頭大の子宮筋腫と子宮頸部を充満するカリフラワー状の腫瘤が指摘され,子宮頸部の生検が施行された(Fig1).考えられる疾患名と生検診断での注意点を述べよ.
 子宮頸癌の診断のもと,広汎子宮全摘術が施行された.Fig2はその切除材料の肉眼像,Fig3はその組織像である.肉眼像および組織像の特徴と診断名を述べよ.

産婦人科キーワード・51

AZF

著者: 奈路田拓史

ページ範囲:P.706 - P.706

語源・作用
 azoospermia factor,azoospermy factor,azoospermy factor geneなどとよばれる遺伝子で,Y染色体長腕上に存在するとされ,精子の形成,成熟に関与していると考えられている.以下のような候補遺伝子が報告されているが,これらの遺伝子の異常のみでは無精子症,乏精子症のすべてを説明することはできず,現在では,AZFは複数存在すると考えるのが一般的である.

産婦人科キーワード・52

クローン

著者: 前田信彦

ページ範囲:P.707 - P.707

定義・語源
 クローンの原義は同じ幹から派生した小枝つまり同一の性質を持った集団を意味し,挿し木や小枝を意味するギリシア語に由来している.遺伝学的には遺伝子組成が同一で無性生殖的に生じる生物,細胞,ウイルス,DNAの集団をいう.また免疫学的には同一の抗原レセプターを発現しているT細胞,B細胞の集団のことをT細胞クローン,B細胞クローンとよぶ.さらに一般的に複製,コピーという言葉の代用として使われることもある.

病院めぐり

岡山労災病院

著者: 小橋勇二

ページ範囲:P.708 - P.708

 労働福祉事業団岡山労災病院は岡山県岡山市の南部に位置し,昭和30年3月に開設されました.当時は内科,外科,整形外科の3診療科,30床でしたが,著しく発展する岡山市南部の医療需要に対応すべく診療体制の整備をはかり,昭和46年には11診療科401床を有する総合病院に,そののち昭和62年の増改築を経て17診療科451床を有する現在の病院(現院長 大森弘之)となりました.
 この間,昭和39年に国内初のアイバンク設置,昭和40年に救急指定病院指定,昭和55年に健康診断部設置,昭和63年にICU設置,平成7年に臨床研修指定病院認定,平成9年にHCU設置と診療機能の充実をはかり,岡山市内でも有数の総合医療の中核病院として機能しています.

勤医協中央病院

著者: 坂本和利

ページ範囲:P.709 - P.709

 北海道勤医協は,働く者の医療機関として1949年に創立され,患者の立場に立った医療を目指して今日まで歩んできました.勤医協中央病院は,1975年に北海道勤医協のセンター病院として,一面タマネギ畑であった札幌市東区の現在地に,内科,外科の150床で開設されました.以後,施設規模と診療内容の拡充が行われ,開院20周年に当たる1995年には457床になりました.1999年現在,内科9グループを含めて21の科・グループで構成され,常勤医師84名,1日の外来患者数約1,000人の地域の基幹病院となっています.
 主な診療圏は,病院所在地を中心とする札幌市内と近隣市町村ですが,北海道内各地の関連施設10病院,26診療所からも多数の患者が紹介されてきます.また,医師研修の場としては,以前より新卒医師の研修を受け入れていましたが,1997年度に厚生省臨床研修病院に認定され,現在,21世紀に向けて研修要項の改訂に取り組んでいます.同時に,22の専門学会認定施設として全国から医師の専門分野の研修を受け入れています.

誌上Debate・10

鉗子分娩か吸引分娩か

著者: 原量宏 ,   宮崎豊彦 ,   野村弘行 ,   吉村𣳾典

ページ範囲:P.714 - P.719

 鉗子分娩を是とする立場からの原稿を依頼されたとき,従来から種々の雑誌,あるいは研究会などでなされたように,結局不毛な結果に終わることが予想されたので強く固辞しました.鉗子を用いない方々や吸引のみしか行わない(鉗子技術を習わなかったため)方々とは,論点がかみ合わず議論にもならないからです.しかしその後,岡井先生(愛育病院)など多くの先生方から,この際,鉗子遂娩術の安全性と技術習得の重要性に関して,是非とも意見を述べるようにと勧められたこともあり,あえて本文を提出する次第です.鉗子分娩を是とする立場からの原稿を依頼されたとき,従来から種々の雑誌,あるいは研究会などでなされたように,結局不毛な結果に終わることが予想されたので強く固辞しました.鉗子を用いない方々や吸引のみしか行わない(鉗子技術を習わなかったため)方々とは,論点がかみ合わず議論にもならないからです.しかしその後,岡井先生(愛育病院)など多くの先生方から,この際,鉗子遂娩術の安全性と技術習得の重要性に関して,是非とも意見を述べるようにと勧められたこともあり,あえて本文を提出する次第です.
 鉗子分娩を是とすることはあまりにも当然のことで,是か非かを問うこと自体が誤りです.鉗子を習得せずして,吸引ができればよしとする風潮はかなり広がっているようですが,産婦人科医師,とくに周産期医療の専門医の教育に責任を持つ指導者としてあってはならないことです.

臨床経験

新しいエストラジオール測定キットの基礎的および臨床的検討

著者: 髙橋健太郎 ,   宮﨑康二

ページ範囲:P.721 - P.726

 ホルモン補充療法(HRT)の普及に伴い,血中のエストラジオール(E2)測定は治療上重要であるが,結合型エストロゲン(CE)投与患者において,測定されたE2値は正確な血中E2値を反映していないのではないかという疑問がある.今回,E2以外のエストロゲンおよびその誘導体に対する交差反応性の低いCoat-Count Estradiol−6 kit(E2—HRTキット)の基礎的および臨床的検討を行った.基礎的検討の結果,最小検出感度は10pg/mlであり,再現性試験も良好であった.患者血清における従来のCoat-Count Estradiol kitとの比較検討の結果,コントロール群およびE2投与群においては両キット間に血中E2濃度の解離はほとんど認められなかったが,CE投与群においては50%に解離が認められた.以上より,E2HRTキットはE2以外の成分と交差反応性はきわめて少なく,HRT施行時における結合型エストロゲン投与時の血中E2濃度を正しく反映していると推察される.

膀胱子宮靱帯前層と後層はペアをなすものか—Latzkoと岡林術式の相違

著者: 矢吹朗彦 ,   朝本明弘 ,   干場勉 ,   平吹信弥 ,   八木原亮 ,   西川有紀子

ページ範囲:P.727 - P.732

 膀胱子宮靱帯を機能的,構造的に再検討した.膀胱子宮靱帯前層は,膀胱筋膜,子宮頸部筋膜に連続し,筋性筋膜の硬さを持つ真の支持帯である.それに対し,膀胱子宮靱帯後層は基靱帯に連続し,血管,神経の走行路としての機能を持つareolar tissueである.膀胱子宮靱帯前層と後層の間には手術的に「腔」をつくることができる.Latzko手術と岡林術式の相違は,この「腔」への意識の有無にあると考える.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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