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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科55巻2号

2001年02月発行

雑誌目次

今月の臨床 妊娠中毒症—新しい視点から 概念と定義の変遷

1.米欧の考え方の違い

著者: 竹村昌彦 ,   神崎徹 ,   村田雄二

ページ範囲:P.106 - P.109

はじめに
 妊娠中に著明な浮腫が出現し,それに痙攣発作を起こすような異常は,すでにギリシャ時代には認識され,記述されていた.このような病態に対してはその後何世紀にもわたって妊娠中毒症(toxemia)という言葉が使われてきた.しかしこの病名には,妊娠初期の悪阻なども含められており,妊娠中に特有なさまざまな症状が何らかの毒素により発生するという概念にもとづいていた.
 その後,妊娠中毒症の概念はさまざまに変遷をとげながら現在にいたっている.近代にいたって,高血圧,蛋白尿,浮腫がその三徴候とされ,中毒症の概念が絞り込まれた.妊娠に伴って発生する毒素は否定されたが,toxemiaという言葉は生き残って長らく使われてきた.

2.日産婦の定義と解説

著者: 木下勝之 ,   竹田省

ページ範囲:P.110 - P.113

はじめに
 わが国の産婦人科医にとって,妊娠中毒症という診断名は馴染み深く,妊娠中毒症が重症化すると母体に重篤な合併症が発生し母体死亡につながること,また胎児では,胎児発育不全や子宮内胎児死亡,さらに新生児の長期予後も問題となる場合があることをよく認識している.
 しかし,妊娠中毒症という名称はその病態を反映していないこと,さらに欧米ではすでにtox—emia of pregnancyが過去の診断名になっていることも理解している.したがって,今日では妊娠中毒症にかわる適切な診断名が求められているが,病態も症状もすべてを満足させることのできる名称を考え出すことが難しく,欧米に準じた単純化された診断名の出現が待たれる.

新しい病因・病態論

1.免疫学の視点から

著者: 藤井知行

ページ範囲:P.114 - P.119

はじめに
 妊娠中毒症はわが国では,「妊娠に高血圧,蛋白尿,浮腫の少なくとも1つ以上の症状がみられ,かつ,これらの症状が単なる妊娠偶発合併症によるものでないもの」と定義されている.その病態は複雑で(図1),従来,学説の疾患とよばれており,発症機序も明らかにされていなかった.しかし最近,妊娠中毒症の本態を血管の病気ととらえ,発症の流れを説明する考えが有力になってきた(図2).すなわち,妊娠初期に何らかの原因により,絨毛細胞の増殖障害や胎盤の血管系の構築障害が発生すると,胎盤が正常に形成されず,その後の妊娠経過において胎盤が虚血状態に陥るようになり,絨毛細胞から種々の血管作動物質が放出されるようになる.この血管作動物質が全身の血管において,その内皮細胞の傷害をはじめとする血管の異常を引き起こし,妊娠中毒症が発症すると考えるのである.この病態発生の流れの最初を成す原因は未だ明らかでないが,その一つとして近年,母児間免疫応答の異常が注目されるようになった.

2.血管内皮細胞の障害

著者: 正岡直樹 ,   山本樹生

ページ範囲:P.120 - P.124

はじめに
 妊娠中毒症は高血圧を中心として全身各臓器に多彩な病変をきたす.その病因・病態論ついては古くからさまざまに述べられ,学説の疾患とも言われていたが,近年その基本的病態は母児間適応不全状態であり,妊娠の負荷に対して母体,胎盤,胎児の適応能力が維持できなくなり臨床症状として表現されるとの考え方が有力である.また,その背景として妊娠中毒症妊婦においては血管内皮細胞障害,血管攣縮,凝固異常,血小板—好中球の活性化などが認められており,これらに起因する末梢循環不全の存在が指摘されている.特に血管内皮細胞は選択的物質の輸送—透過作用,抗血栓性,抗凝固性活性,血液細胞との相互作用,血管新生と組織再生・修復機能,炎症免疫調節作用のほかに,生理活性物質の産生により血管平滑筋細胞に作用し血管の収縮—拡張に与るなど局所での各種調節において極めて重要な役割を担っていることが明らかとなってきている1).本稿では,まず血管内皮細胞障害の妊娠中毒症への関与を示唆する各種所見を述べたうえで,さらに現在検討されている障害因子について概説する.

3.血液の凝固・線溶異常

著者: 中林正雄 ,   磯野聡子

ページ範囲:P.125 - P.127

はじめに
 妊娠中は凝固亢進の状態にあり,分娩時の出血などに対しては有利であるが,反面血栓症の誘因となったりDICの準備状態とも言える欠点をもちあわせている.
 正常妊娠時は凝固・線溶系のバランスは保たれているが,妊娠中毒症ではそのバランスが破綻し,凝固優位の慢性DIC状態にあることが指摘されている.

4.血管攣縮の機序

著者: 小林隆夫

ページ範囲:P.128 - P.132

 妊娠中毒症は学説の疾患とも言われているように,病因,病態にいまだ混乱のみられる疾患である.最近のわれわれの研究によれば,全身の血管攣縮(vasospasm)による血管抵抗の増大と血管内皮障害こそが高血圧をはじめとする妊娠中毒症諸症状の原因であり,これらの結果血液凝固が亢進し,さらには各臓器に血流障害を来たすものと考えられるようになった1).本稿では,臨床例および動物実験の結果を紹介し,妊娠中毒症の病態,特に血管攣縮機序について解説する.

5.妊娠中毒症における臓器血流とその変化

著者: 中井祐一郎 ,   峯眞紀子 ,   鈴木晋一郎 ,   西尾順子 ,   荻田幸雄

ページ範囲:P.134 - P.137

はじめに
 超音波ドプラ法が,産科領域に用いられるようになって早くも20年が過ぎている.この間,機器の改良は目覚ましく,技術に習熟しないものでも,胎児血管のみならず母体の種々の動脈についてもその血流速度波形を得ることは容易になっている.
 妊娠中毒症に関しては,密接な関係のある子宮内胎児発育遅延における臍帯動脈血流やいわゆる慢性胎児仮死における中大脳動脈の血流変化など胎児側の血流について多くの報告がなされ,それを臨床に用いることにより一定の成果が得られてきた.一方,母体側血流については,深さ方向の分解能を持たない連続波ドプラ法に頼っていた時代から,子宮動脈血流は研究対象とされていたにもかかわらず,いまだ臨床に用いるに十分な成果を上げられているとは言えないのが現状である.

6.妊娠中毒症と胎盤

著者: 畑俊夫

ページ範囲:P.139 - P.142

はじめに
 妊娠すると,胎児の発育に従って母体は全身の各臓器・各器官を使って2つの生命を維持するように瞬時の休みなく変化させ,それぞれの生命のために恒常性を保とうとする.したがって,その変化に正しく即応できないような基礎的病態(例えば糖尿病,抗カルジオリピン抗体保持者,高血圧家系,慢性腎炎,甲状腺機能亢進症,社会的要因など)を持っているものは,全身の各反応系の破綻を来たし易く,恒常性を保つのが難しくなることが多い.その恒常性維持破綻によって現れるものの一つに妊娠中毒症がある.妊娠中毒症と診断されて高血圧・蛋白尿・浮腫などの症状が一緒でも,母体の体質によって恒常性破綻を来たす臓器・器官がそれぞれの母体によって異なり,それらの症状の程度や胎児に対する影響など,多くの点で個々の妊娠中毒症に違いが見られる.
 それらの違いは,妊娠初期の胎盤形成期にも差が出るとする意見が多くなった.着床初期にはtrophoblast cell columnから遊走した絨毛細胞が,脱落膜細胞と接して共存したり一部の脱落膜細胞を貧食したりしながら行動範囲を広げ,母体血管に到達して内皮細胞と置換したりする1).また,日が経つとラセン動脈周囲に群がって増殖したり,内皮細胞に置換したり,血管の中で増殖してplugを形成したりする.

管理と治療

1.ハイリスク症例における発症予防

著者: 山口昌俊

ページ範囲:P.144 - P.147

はじめに
 妊娠中毒症は長年にわたる精力的な研究にもかかわらず,いまだに原因不明の疾患であり,その根本的な治療法は妊娠を中断させることである.しかし早期に発症すればするほど,胎児の未熟性が問題となり,どの時点で妊娠を中断するか判断に苦慮することになる.そこで,妊娠中毒症の発症を予防しようという試みが行われた.残念ながら,全妊婦を対象とするような試みは必ずしも有効でないため,妊娠中毒症発症のハイリスク例に限って,予防できないかという検討がなされている.

2.妊婦の栄養管理と中毒食

著者: 江口勝人

ページ範囲:P.148 - P.151

はじめに
 妊娠中毒症の発症病態は多岐にわたっており,多数の要因が複雑に絡み合って症状が発現する極めてユニークな疾患であり,その意味では古くしてまた新しい疾患であると言える.発症病態は複雑であるが,他の疾患と異なり,薬物療法の効果には自ずから限界があり,本症治療の基本は薬物療法ではなく,あくまで安静と栄養管理であることは論をまたない.従来から,妊娠中毒症に対する食事療法の3大原則は減塩,低カロリー,高蛋白とされてきたが,最近これに異論を唱える報告もある.本稿では,妊娠中毒症栄養管理の最近の動向について述べることとする.

3.高血圧の治療

著者: 北中孝司

ページ範囲:P.152 - P.156

はじめに
 妊娠中毒症はいまだその成因が明らではなく,今後解明されるべき疾患であるが,妊娠中毒症にみられる高血圧が重症化すると母児の予後が悪化することが多い.この高血圧の病態としては,子宮胎盤乏血に伴う血管内皮障害,免疫応答の異常,全身の血管収縮,循環血液量の減少,さらにはそれらが原因となって発症するDICや多臓器不全などがあげられている.また,妊娠中毒症は今なお本邦の妊婦死亡の原因の一つとして大きな部分を占めているので,妊娠中毒症妊婦に高血圧を認めたときには安静と減塩食に加えて,降圧剤を用いた薬物療法が必要になるが,投与するタイミングを間違わないように気を付けねばならない.
 ここでは,妊娠中毒症の高血圧の治療につき自験例を含めて紹介したい.

4.Chronic DICへの対応

著者: 佐藤秀平 ,   齋藤良治

ページ範囲:P.158 - P.161

はじめに
 妊娠中は,出血に対する母体の防御機構として凝固系の亢進・線溶系の抑制という状態に保たれている.これは,産科的出血に対する生体の適応機能として合目的な状況であるが,反面,血栓を生じやすい状態であり,また,DICを惹起しやすいということが言える.
 妊娠中の凝固・線溶系の異常については,他の章で詳説されているので,ここでは妊娠中のDIC準備状態での対応を述べる.

5.胎児の管理

著者: 久保隆彦 ,   一ノ橋祐子

ページ範囲:P.162 - P.165

はじめに
 通常,母体の子宮内環境は何にもまして胎児に最適の環境であるはずである.しかし,前期破水と同様に母体が妊娠中毒症を発症した場合,環境は一変し,胎児well-beingの脅威となる.しかも,その発症時期が胎児成育限界に近づけば近づくほど,早期であれば母体の管理だけではなく,いかに胎児の状態を評価し児の予後を考慮して,いつ娩出すべきかに苦慮せざるを得ない今日の産科臨床の重要な課題となっている.もちろん,胎児の状態を考えず,やみくもに母体妊娠中毒症悪化で安易に帝王切開を決定することは今日の周産期医療に逆行するゆゆしき問題でもある.
 本稿では,妊娠中毒症における胎児の病態に触れ,評価方法,管理方法を略述したい.

6.ターミネーションのタイミング

著者: 松尾博哉

ページ範囲:P.166 - P.169

はじめに
 妊娠中毒症は,母児双方の生命予後に重大な影響をもたらす産科合併症として産科管理上最も重要な疾患である.
 しかるに妊娠中毒症の病因,病態は特定できず不明であり,その根本的な治療法は未だ確立されておらず,管理の要諦は対症療法と時宜を得た妊娠の終結とに集約されるのが実状である.したがって,母体に対症療法を行いながら児の発育,成熟を待ち,母体諸臓器に不可逆的変化が起こると判断された場合,あるいは子宮内環境が悪化し胎児に危険が迫っていると判断された場合には,妊娠を中断して速やかに児を娩出させるのが肝要である.

関連疾患の管理

1.子癇

著者: 前田和寿 ,   青野敏博

ページ範囲:P.170 - P.173

定義
 妊娠中毒症病型の純粋型,混合型にかかわらず妊娠中毒症によっておこった痙攣発作をいい,痙攣発作の発生した時期により,妊娠子癇,分娩子癇,産褥子癇と称する.
 なお,痙攣発作の発生した時期がそれぞれ重複した場合,たとえば分娩期と産褥期が重複した場合は分娩・産褥子癇とする.子癇は,妊娠中毒症の軽症・重症判定基準にかかわらず重症とする.ただし,てんかん,脳出血,脳腫瘍などの他疾患による痙攣発作は子癇としない.

2.HELLP症候群

著者: 水上尚典 ,   佐藤郁夫

ページ範囲:P.174 - P.176

はじめに
 妊娠中毒症や子癇合併妊婦がHemolysis(H,溶血),Elevated Liver enzymes(EL,ASTやALTなどの肝臓由来酵素の上昇),Low Platelet(LP,血小板減少症)などの血液検査異常を示すことがあり,予後が不良であることは1950年代から報告されるようになった.1982年Weinstein1)がHELLP症候群と名付けて29例を報告した.(HELP!助けて)という呼称がなじみやすかったこともあってか,HELLP症候群はその後全世界で有名になった.この呼称により妊婦が肝機能異常や血小板減少症を示した時はそれが産科固有の疾患である可能性がありかつ注意を要する状態であることを全世界の産科医が知るようになった.Weinsteinはわれわれに何を伝えたかったのか?その後,HELLP症候群について何が明らかとなったかを解説したい.

3.急性妊娠脂肪肝

著者: 安水洸彦

ページ範囲:P.178 - P.181

基本的な疾病概念
 脂質代謝異常のため,生理的範囲を超えた脂質が肝細胞内に蓄積した状態を脂肪肝fatty liverという.生理的な肝脂質量は肝湿重量の4%以下であり,5%を超えたものを脂肪肝とする.しかし肝脂質量測定は現実では困難であるため,組織学的に「肝小葉の1/3以上の領域で,肝細胞に著明な脂肪滴の蓄積性変化を認め,その他には著明な形態学的異常を認めぬもの」を脂肪肝と定義している1).正常な肝の脂質組成は75%がリン脂質,10%がコレステロール,15%が中性脂肪である.このうちリン脂質とコレステロールはほとんどが生体膜構成成分であるので,脂肪肝は中性脂肪の増加によって生じる.
 一般に認められる脂肪肝は過栄養,肥満,飲酒などで生じる大滴性脂肪肝であり,予後は良好である.しかし,本症で紹介する急性妊娠性脂肪肝acute fatty liver of pregnancy(以下,AFLPと略)や小児に発生するReye症候群は,急速に発症する小滴性脂肪肝であり,早期治療を怠れば予後はきわめて不良である.またAFLPは胎児死亡率も高い.

4.常位胎盤早期剥離

著者: 渡辺博 ,   石川和明 ,   稲葉憲之

ページ範囲:P.182 - P.186

はじめに
 常位胎盤早期剥離(以下,早剥と略)は,児の周産期死亡や母親の血管内血液凝固症候群(DIC)など,母児の生命を脅かす事態に至る頻度が高い産科救急の代表的疾患である.100万人以上を対象とした大規模な集計によると,早剥の発症頻度は全分娩の0.6%前後1,2)である.慢性高血圧や妊娠中毒症など高血圧性疾患と早剥との関連はよく知られているが,他の発症要因による早剥も少なくない.本稿では早剥の要因とその対策について概説し,最後に当科で管理した早剥の成績を提示する.

5.肺水腫

著者: 中村靖

ページ範囲:P.187 - P.189

はじめに
 妊娠中毒症関連疾患の中で,肺水腫は妊娠中毒症が重症化し,母体死亡に至るうえでの重大な合併症の一つである.その病態の理解と的確な診断・管理が,重症妊娠中毒症妊婦の生死を分けると言っても過言ではない.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・20

What is your diagnosis?

著者: 泉美貴 ,   向井清

ページ範囲:P.103 - P.105

症例:21歳,女性
 腹部腫瘤のため来院.左卵巣に腫瘤が認められたため切除術が施行された.Fig 1は摘出卵巣の捺印細胞診(Papanicolaou染色),Fig 2はその組織像である.
 1.出現細胞の特徴的なパターンは何か.

Estrogen Series・48

更年期後のホルモン補充療法と乳癌との関係—エストロゲン単剤とエストロゲン+プロゲスチン組み合わせとの比較 その3

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.173 - P.173

 前回と前々回でHRTに際し,エストロゲン単剤を使用する場合に比較して,(子宮内膜癌発生を予防するために)エストロゲン+プロゲスチンを組み合わせて使用する場合には,乳癌発生リスクがより高いとの論文をご紹介した.ここでは,それに対する米国産婦人科医会(American College of Obstetricians and Gynecologists,ACOG)の見解をご紹介したい.以下,その要約.
 『最近発表された2論文(エストロゲンシリーズNo.46,47で紹介ずみ)は,HRTに際し,エストロゲン単剤を使用するときに比較して,エストロゲン+プロゲスチンの組み合わせ使用で乳癌発生が増加することを示している.その手法は,それぞれ後方視的コーホート研究とケース・コントロール研究である.その結論は最近の疫学的分析と一致するものである.が,それらは前方視的ランダム・コントロール研究に比較すれば,その手法はやや甘いといえよう.

病院めぐり

東京都立墨東病院

著者: 武永博

ページ範囲:P.190 - P.190

 東京都立墨東病院は東京都東部に位置し,錦糸町駅より徒歩5〜6分のところに位置する.当院は,昭和36年4月に,伝染科病院の旧本所病院(明治12年8月,コレラに対処するため深川区北松代町に官立避病院として設立)と普通科総合病院であった旧墨田病院(昭和4年4月,関東大震災の帝都復興計画の一環として深川区牡丹町に普通科東京市立深川病院として設立)を統合し,区東部における唯一の公的医療機関として開設された.開設時は診療科13科,病床数400床でスタートし,その後平成11年6月,都立築地産院を統合して新病棟を開設し,救命救急センター,総合周産期母子医療センター,精神科救急をはじめとして2次,3次の総合救急病院として365日,24時間何にでも対応できる体制を確立した.病床数は767床で,内科,循環器科,神経科,小児科,外科,胸部心臓血管外科,整形外科,脳神経外科,形成外科,皮膚科,泌尿器科,周産期センター(産婦人科,新生児科),眼科,耳鼻咽喉科,リハビリテーション科,リウマチ膠原病科,診療放射線科,歯科口腔外科,感染症科,救命救急科,麻酔科,内視鏡科の計23科の診療を実施している.宿日直は13科,17名体制である.

高槻病院

著者: 辻本大治

ページ範囲:P.191 - P.191

 医療法人愛仁会は昭和34年に大阪市に産声を上げ,昭和52年に高槻病院が開設されました.現在は貢献,創意,協調をモットーとして,当院を含めて3病院および看護助産専門学校,2老人保健施設などを含む11施設から成り,昭和61年4月には特定医療法人の認可を得ました.
 病院の所在する高槻市は大阪府の東北部,京都市と大阪市のほぼ中間にあります.自然と文化の調和ある文化都市建設の趣旨に沿い,当院は広く36万市民に親しまれる市民病院的な役割を担い,現在,総病床数は477床,常勤医師76名を有する総合病院として活動しているばかりでなく,救急告示病院として昼夜の別なく地域医療に貢献できるよう努力を続けています.また看護婦,助産婦の実習病院として,若さと学習意欲に溢れた院内が平成9年には臨床研修指定病院となり,さらに活気に満ちた職場となっています.現在,スーパーローテートを含めて約10名の研修医の教育,臨床指導が行われています.

婦人科腫瘍切除標本の取り扱い方・1【新連載】

婦人科腫瘍切除標本取り扱いの基本

著者: 工藤隆一 ,   寒河江悟

ページ範囲:P.194 - P.200

●はじめに
 婦人科腫瘍の検体には,細胞診,生検,手術材料などがあり,それぞれさまざまな臓器によりその扱いを異にする.しかし臓器を越えて正確な病理診断を行うためには,その材料の採取法はもとより,採取後あるいは切除後適切な検体の処理を行い,臨床側の治療方針の決定などに役立つように組織標本を作製すべきである.
 本邦では各臓器の癌取扱い規約が発行され,ほとんどの施設ではこれに準拠した立場で臨床進行期分類および病理的な検索が行われている.婦人科病理検体の取り扱いについても同様であり,それぞれ子宮頸癌取扱い規約(1997年10月)1),子宮体癌取扱い規約(1996年3月)2),卵巣腫瘍取扱い規約(1990年7月)3)などに基づき行われている.ここでは,組織学的診断を目的とした生検と手術材料に絞り,その扱いについて概説したい.また本稿では加えて,臨床側からの病理学的診断への要望も含めて婦人科腫瘍切除標本の取り扱いについて述べたい.

座談会

最近の避妊法—銅付加IUDを中心として

著者: 我妻堯 ,   早乙女智子 ,   三島典子

ページ範囲:P.201 - P.206

 1999年9月に低用量ピルが,2000年1月に銅付加IUD(子宮内避妊具)が実地臨床の場で使用できるようになり,女性が主体となって行うことのできる近代的避妊法の選択肢が増えてきた.このたび本誌では,IUDに深くかかわり続けてきた我妻氏の司会の下,産婦人科医の立場から早乙女氏に,避妊指導にあたる助産婦の立場からは三島氏に出席いただき,患者の避妊に対する意識の変化や今後の展望などについて語り合っていただいた.

症例

先天性アンチトロンビンIII欠乏症合併妊娠の1例

著者: 野村祐久 ,   伊藤誠 ,   西迫潤 ,   杉浦智子 ,   松原英孝 ,   千原啓 ,   高田亨 ,   石井シゲ子

ページ範囲:P.208 - P.210

 筆者らは,辺縁静脈洞破裂による出血が契機となりAT-III欠乏症が診断された症例とその周産期管理を経験したので報告する.
 症例は,32歳2経妊0経産で,妊娠27週3日に妊娠中毒症,子宮内胎児発育遅延,性器大量出血のために当院に母体搬送された.入院時AT-III活性値33.0%と異常値を認めたため,メシル酸ファモスタット,AT-III製剤を投与した.その後,妊娠中毒症が増悪したため妊娠30週4日帝王切開術を行ったが術中,術後に著変なく術後18日目に,児もNICUで順調に経過し日齢81日で無事退院した.本症例はAT-III活性値33.0%,蛋白量16.4mg/dlの先天性AT-III欠乏症タイプIと思われ,児も新生児期には活性値35.0%で本症を疑ったが,その後の検査で否定された.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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