icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科55巻5号

2001年05月発行

雑誌目次

今月の臨床 一歩先行く超音波胎児検診 妊娠初期

1.見逃しやすい異所性妊娠

著者: 本田育子

ページ範囲:P.560 - P.563

 経腟走査法による超音波検査の経験を重ねることで,妊娠初期異常妊娠の診断率は上昇したが,悲惨な転帰を迎える前の診断に苦慮する症例も少ないながら依然として存在する.超音波装置の進歩によって検出精度は向上したが,検者の診断能力が,胎嚢に心拍を有するような卵管妊娠の診断はともかくとして,異所性妊娠のさまざまな経過,転帰を画像から把握できないこともある.間質部妊娠,頸管妊娠,内外同時妊娠の早期診断では,子宮腔内の胎嚢の有無にかかわらず,卵管,間質部,頸管部を日常的に観察することが必要である.特に今日,不妊治療を目的に広く過排卵刺激法が行われている現状では,多胎妊娠出現(着床部位)の組み合わせは多彩である.子宮腔内の胎嚢の検出は子宮外妊娠を否定,除外する重要な指標ではあるのだが,過排卵周期では,子宮腔内に1つの胎嚢をみただけでは不十分で,習慣的に子宮全周を観察し,子宮腔内の他の胎嚢,異所性妊娠の有無を確認することが必要である.また妊娠6週や7週のルチン検査で異常妊娠を診断できなかったときでも,患者が疼痛などの症状を訴えたときには,必ず発症の可能性を念頭において検査を行うことが早期診断のポイントである.発症を肯定的に考えるのと,否定的に考えて検査を行うことでは,はじめから診断率に差が出る結果となる.

2.見逃しやすい合併妊娠

著者: 箕浦茂樹

ページ範囲:P.564 - P.567

子宮奇形
 子宮奇形は妊孕性自体に悪影響を及ぼすほか,妊娠が成立したとしても流早産,子宮内胎児発育遅延,胎位異常などの合併が多いことはよく知られている.また重複子宮や双頸双角子宮など子宮頸部が2個ある症例ではほとんどの場合に選択的帝王切開が必要であることから,妊娠初期に子宮奇形のタイプを正確に診断しておくことは臨床的意義が大きい.
 表1は子宮奇形の分類を示したものである.これらのうち低形成や無形成では妊娠は成立しない.またdiethylstilbestrolによるものはわが国ではほとんど認められない.したがって妊娠時に見られる子宮奇形は,単角子宮,重複子宮,双角子宮および中隔子宮である.子宮腔のある副角を有する単角子宮では副角妊娠のことがあり,これらの半数以上が妊娠中に破裂を起こすことから事前の診断が望ましいが,開腹手術前に確定診断することは困難であることが多い.なお副角妊娠は交通性,非交通性副角のいずれにも見られる.

3.初期からわかる異常

著者: 夫律子

ページ範囲:P.568 - P.576

はじめに
 経腔超音波が一般産科臨床に取り入れられ,妊娠初期からの子宮内構造が詳細にわかるようになったため妊娠初期異常が多く報告されるようになってきた1,2).胎芽の心拍が確認される5週後半から胎児の形態が徐々に明らかになっていくが,心拍確認の前から観察される卵黄嚢や7週ごろから見えてくる羊膜を確認することも重要である.本稿では妊娠初期における異常形態について症例を供覧しながら解説する.

4.Nuchal translucencyの意義

著者: 近藤俊吾 ,   高橋通 ,   畑俊夫

ページ範囲:P.577 - P.579

Nuchal translucencyとは
 Nuchal translucency(以下,NTと略す)は超音波断層法による検査上,胎児頸部の皮下に生理的にリンパ液が貯留して起こる現象で,リンパ系の発生過程において認められるが,その多くは自然に消失する.しかしリンパ管に先天的な異形成が起こり静脈系との交通が不十分だとリンパ液の異常貯留が亢進し,病的なNTを惹起する1)といわれている.
 図1,図2に示すようにNTの計測法としては胎児縦断画像において,後頸部のsonolucent areaを正確に測定するが,正常胎児の羊膜が胎児後頸部に接して,あたかもNTのごとく描出されることもあるので,疑わしいときは胎児頸部横断画像にて鑑別しておく必要がある.

妊娠中期

1.胎児形態異常スクリーニングの実際 ①頭頸部

著者: 片桐信之

ページ範囲:P.580 - P.585

はじめに
 今回の特集の狙いは臨床の現場ですぐ役立つ内容と言うことで,本稿では「記述は具体的で簡素にかつ読み易く」を基調とするように心掛けた.
 まず頭頸部形態異常のスクリーニング対象を選び,その個々について超音波診断基準,走査手技のポイントと鑑別診断などを列挙した.そのエコーグラムについては残念ながら誌面の制約で稀少例だけに絞った.

1.胎児形態異常スクリーニングの実際 ②胸部(含む心臓)

著者: 根木玲子

ページ範囲:P.586 - P.590

はじめに
 産科診療において,超音波断層法による胎児診断は欠かせないものとなってきた.しかし,漫然と検査していたのでは,胎児異常を見逃すことがある.当然のことながら,胎児は羊水中に自由に移動している.したがって頭位か骨盤位かなどの胎位・胎向によりどちらが胎児の右か左かを確認してから検査を行う必要がある.それにより,ミラーイメージの右胸心などの診断にもつながる(図1—a).また,胎児は新生児と異なり,胎児の肋骨,脊柱,小部分などの存在で超音波ビームが遮られたり,胎児を取り囲む環境,たとえば羊水量・胎盤の位置により診断に制約を受けることもある.したがって,胎児先天性心疾患スクリーニングは,羊水量が豊富で,しかも胎児心形態が確認しやすい妊娠23週から妊娠28週頃が最も胎児心臓スクリーニングに適している.
 検査においては,卵円孔・動脈管などの胎児循環を頭に入れた上で,後述の胎児心臓基本7断面を描出しながら,血流の流れに沿って診断していく必要がある.たとえば,下大静脈,右心房,右心室,肺動脈,動脈管,下行大動脈といった流れに沿って描出していく.

1.胎児形態異常スクリーニングの実際 ③腹部

著者: 根本明彦

ページ範囲:P.591 - P.593

 超音波断層法の発達により,胎児形態異常の出生前診断が可能になった.形態異常のスクリーニングは,異常の種類によりスクリーニング可能な時期が異なるため,少なくとも妊娠20週前後,28週前後の2回は行う必要がある.スクリーニングを行うにあたっては,チェックリスト(表1)を用い,系統的に行うことが望ましい.本稿では出生前診断が可能な胎児腹部異常の中で重要な消化器・腹壁・泌尿器のスクリーニングについて解説する.

1.胎児形態異常スクリーニングの実際 ④骨格,四肢の異常—大腿骨長が短い場合の対応と骨形成異常の診断

著者: 梁栄治

ページ範囲:P.594 - P.596

 胎児の全身的な骨形成異常は多岐にわたりしかも稀な疾患が多いため,産婦人科医が全貌を熟知することは困難である.臨床の現場では,超音波検査で大腿骨長が短いことが診断の端緒となることが多い.したがって,本稿もこれを出発点として診断の要点について述べる.

2.21トリソミーの超音波マーカー

著者: 米本寿志 ,   吉田幸洋

ページ範囲:P.598 - P.600

はじめに
 一般に21トリソミーの児が出生する頻度は約660分娩に1例といわれている1).しかし,母体年齢が高くなるにつれその頻度は増加し,35歳以上の高齢妊婦においては約250分娩に1例の頻度で認めるといわれている2)
 従来,21トリソミーの出生前診断は,高齢妊婦をターゲットとした羊水染色体検査が唯一の方法であった.しかし,妊娠中の児が21トリソミーである場合に,母体血中のある種の物質の濃度が増減することを利用した母体血清マーカー試験によって,高齢妊婦に匹敵するハイリスク群を選別しようとする試みがなされるようになった3).このように,母体の年齢ならびに母体血清マーカー試験の結果からハイリスク群を絞り込み,羊水染色体検査を行うことで21トリソミーの出生前診断率は向上したものの,感度や特異度,適中率はそれほど高いものではないのが現状である.一般に,染色体異常を有する胎児は,それぞれ特有の形態異常を呈するものが多く,超音波検査で発見された形態異常の存在が染色体異常の発見の端緒となる場合が多い.21トリソミーの場合も,例えば先天性十二指腸閉鎖や心内膜症欠損などの先天性心疾患が子宮内で発見された場合には,まず21トリソミーの可能性を念頭に検査をすすめる.

3.臍帯の異常—付着部位異常,過捻転,巻絡など

著者: 宇津正二

ページ範囲:P.602 - P.604

はじめに
 分娩後に観察できる臍帯の異常を表1に列記したが,これらの臍帯異常が直ちに臍帯血流障害から胎児異常の発症を意味する訳ではなく,切迫早産例の子宮収縮頻発時や分娩時には臍帯が圧迫や屈曲,牽引によって絞扼されて臍帯血流が障害され易いために胎児ストレスを招来する危険性の高いハイリスク群であると言うことである.従来の産科臨床では,このような臍帯血流障害のハイリスク例が分娩前から診断されていることは少なかったが,近年の経膣法やカラードプラ法など超音波診断装置の発達によって胎児異常や胎盤や臍帯の異常も出生前に具に観察できるようになってきたため,これからの産科妊婦健診における超音波スクリーニングでは,このような臍帯循環障害のハイリスク群である臍帯異常の出生前チェックをしておくべきである.さらに,一歩先行く超音波検診としては,そのような臍帯異常が実際に胎児異常を発症する危険度を推定したり,通常の妊娠経過中の母体の日常生活や子宮収縮,胎動などの臍帯血流への影響を評価して,胎児の安全のためにより綿密な産科管理や分娩戦略を構築することが望まれている.
 本稿ではカラードプラ法で比較的容易に観察できる頸部巻絡や過捻転,卵膜付着などの臍帯異常を中心に,臍帯異常がもたらす胎児異常との関連や胎児異常発現の危険度の判定,産科的取り扱いについて述べる.

4.前置胎盤と低置胎盤の鑑別

著者: 関谷隆夫 ,   石原楷輔

ページ範囲:P.606 - P.610

はじめに
 胎盤位置異常は,臨床上妊娠/分娩/産褥の大出血の原因となり,産科外来での正確な診断が必要である.しかし従来からの内診による診断は侵襲が大きく,現在では安全で再現性の高い画像が得られる超音波断層法による診断が中心となっている1)
 胎盤の位置異常は,受精卵が子宮体部の下位(特に子宮峡部)に着床することに起因し,絨毛膜の付着部位と内子宮口の位置関係により将来前置胎盤や低置胎盤となると考えられている.木下らは,超音波経膣走査法で早期胎嚢像が子宮体部内膜の下1/3に検出された例では有意に胎盤位置異常を発生するリスクが高く(前置胎盤25%,低置胎盤12.5%),受精卵の低位着床と胎盤位置異常との関連を実際の画像として示した2)

5.頸管観察とストレステスト

著者: 沖津修

ページ範囲:P.612 - P.613

 経膣超音波断層法で頸部・頸管を観察する手法(ここでは頸管超音波と呼ぶ)が発達し,早産予知に臨床応用されている.とりわけ,頸管無力症の診断に頸管超音波は有用である.しかし,頸管無力症はall or none phenomenonではなく,さまざまな程度の機能不全症が存在するとされる1).頸管の機能不全が軽度であれば,自然な状態(nat—ural view)で妊娠の早期から早産サインを検出することは困難である.このような症例では妊娠早期でも圧負荷をかけると早産サインと考えられる形態の変化が出現することがある.すなわち,子宮底を圧迫したり,妊婦に咳や怒責を加えさせたりすることで子宮内圧が上昇すると,内子宮口開大や頸管長短縮が誘発される.これらの手法は,早産リスクのある症例をいち早く検出することができるので,早産予防を早期に講ずる機会を与えてくれる.頸管超音波の詳細については他書2)に譲り,本稿では頸管機能不全症を早期に検出するための手法,すなわち頸管のストレステストを紹介する.ストレステストには現在のところ,妊婦を立位のままで検査する方法,妊婦にいきみをかけさせる方法,検者が子宮底を圧迫する方法,子宮収縮時に検査する方法などがある.

6.双胎におけるチェック

著者: 上野和典 ,   上原克彦 ,   宮崎豊彦

ページ範囲:P.614 - P.616

 双胎妊娠は単胎妊娠と比し,さまざまな合併症の頻度が高いために,周産期死亡率は約4〜6倍,罹病率は約2倍以上も高いといわれている.また卵性・膜性によりリスクは大幅に異なり,一卵性では二卵性より3倍も,また一絨毛膜双胎では,二絨毛膜双胎より3〜5倍も周産期死亡率が高いといわれている1)
 本稿では,こうした状況をふまえ臨床的に重要と思われる超音波による妊娠中期の双胎におけるチェックポイントについて概説する.

妊娠後期

1.胎児well-beingの評価

著者: 篠塚憲男

ページ範囲:P.618 - P.621

緒言
 胎児が健康な状態であることを確認することは周産期医療の基本である.子宮内という閉ざされた環境にいる胎児からの情報を得る手段は限られており,現状では超音波という手法を用いて,胎児から得られる情報の一部から,全体の状況を類推しているにすぎない(表1).成人の健康診断の基本はまず身体計測で,これは胎児においても同様であり,超音波計測による胎児の発育評価,児体重推定による評価がwell-being診断の基本手技と考えられる.次に生理学的機能情報の評価ということになろうが,これは,心拍数モニタリング,臍帯動脈などの血流波形評価,羊水量の評価,また胎動,羊水量,心拍モニタリング所見を組み合わせたbiophysical scoringなどの所見を総合して判断しているのが現状であろう.以下,上記の方法および将来的なwell-being評価手法について私見を述べたい.

2.羊水量の評価

著者: 佐藤昌司 ,   藤田恭之 ,   中野仁雄

ページ範囲:P.622 - P.626

はじめに
 羊水量は,母体および胎児の生理的な水分出納バランスを反映する指標であり,羊水の産生あるいは吸収のいずれかが障害された場合に出現する量的異常を早期に,かつ確実に診断することが重要である.本稿では,羊水量の生理的変化ならびにその異常について概説する.

3.骨盤位分娩前の最終チェック

著者: 竹田善治 ,   坂井昌人 ,   中山摂子 ,   中林正雄

ページ範囲:P.627 - P.629

はじめに
 骨盤位分娩は全分娩の3〜6%と比較的多くを占めるが,分娩様式を考慮する際に,経膣分娩のリスクの高さを心配して帝王切開術が選択されることも多い.しかし,骨盤位経膣分娩といえども頭位と同様にスムースに分娩となる症例が多いのもまた事実である.骨盤位例を安全に経膣分娩を行うためには分娩前,分娩中のハイリスク症例の早期発見が重要となる.本稿では愛育病院における骨盤位経腟分娩の対応について,おもに超音波断層法の活用点を中心に述べる.

4.子宮下節帝切瘢痕の評価

著者: 佐藤章 ,   柳田薫 ,   藤森敬也

ページ範囲:P.630 - P.633

はじめに
 既往帝王切開術症例(以下,既往帝切例と略す)に対し,次の分娩は必ず帝切すべきであるといった1900年代初めの頃とは異なり,最近では試験分娩(trial of Iabor)を行って,経膣分娩させる試みがなされ,試験分娩を行った既往帝切例のうち,その約60〜80%は経膣分娩できること(vagi—nal birth after cesarean section:VBAC)が報告されるようになった.しかし,VBACの最も大きな問題は,分娩中の子宮破裂(uterine rupture)である.その頻度は1%未満と報告されていて,比較的頻度は少ないが子宮破裂を起こすと,母体はshock,子宮摘出など,また胎児は死亡または永久的な神経学的後遺症を残すことになり,重大な問題となる.したがって,VBACを施行するにあたっては,十分なインフォームド・コンセントが必要になる.既往帝切症例に対して,VBACの適応についての論文があるが,その中で現在の帝切の手技では子宮下節の横切開がほとんどであることから,超音波断層法による子宮下節の超音波像が,子宮破裂を予測できるのではないかという考えが起こってきた.しかし,超音波断層法による子宮下節帝切瘢痕の評価についての報告は現在までのところきわめて少ない.この理由の主なることは,子宮下節の厚さや性状について一定の判定基準を定めて,大きな無作為コントロール試験ができないためと考えられる.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・23

What is your diagnosis?

著者: 加藤佳瑞紀 ,   永井雄一郎 ,   岸本充 ,   清水道生 ,   石倉浩

ページ範囲:P.557 - P.559

症例:30歳,女性
 切迫早産にて治療中,陣痛発来,妊娠33週にて分娩.1,80Ogの男児を出産した.胎盤にFig 1a,bに見られるような結節性の病変が散在性に観察された(HE染色).結節内には小血管の増生が観察され,その周囲に間質細胞の増生が認められる(Fig 2a,b).このような,胎盤内小結節状構造は何か.

婦人科腫瘍切除標本の取り扱い方・3

子宮頸癌切除標本の取り扱い方

著者: 大野正文

ページ範囲:P.640 - P.643

迅速組織診断のための検体の提出法
 迅速組織診断の意義は,生検・手術材料で良・悪性の診断,断端浸潤や転移の有無など,短時間に判定され,直ちに適正な処理が施される点で重要である.
 迅速組織診断は凍結標本によって判定されている.近年,凍結標本の薄い切片が作成できるようになったことで,迅速組織診断はかなり容易になった.しかし,迅速組織診断標本はパラフィン包埋標本に比較すると,染色などの条件が悪く,診断には限界があることを念頭において依頼すべきである.

病院めぐり

大阪回生病院

著者: 谷俊郎

ページ範囲:P.644 - P.644

 大阪回生病院は,明治33(1900)年に大阪市北区絹笠町に創立され,平成12(2000)年にちょうど創立100周年を迎えた.創立者は菊池篤忠である.菊池家は代々佐賀藩の御典医で,維新後は明治政府の軍医の高官であったが,下野して大阪に病院を開いたのであった.現在の院長は,創立者篤忠の曾孫にあたる菊池幹雄である.
 当初は中之島の堂島川の畔に建つ瀟洒な洋館で,大学病院以外に総合病院のなかった大阪において,「一視同仁・博愛慈善」を院是にして,広く市民に親しまれた存在であった.昭和20年の大阪の大空襲に際しても,職員の奮闘によって焼失を免れたが,建物の老朽化と都市化の進展によって,昭和43年に現在の地に新築移転した.

岡山赤十字病院

著者: 江尻孝平

ページ範囲:P.645 - P.645

 岡山赤十字病院は,昭和2年5月に岡山市丸の内に内科,外科,産婦人科の3科で病床数50床の日本赤十字社岡山支部療院として開設されました.昭和18年には岡山赤十字病院と改称され,昭和60年4月に岡山市青江(岡山駅から南東に車で約15分)に新築移転し,現在に至っています.病院は19科,500床(そのうち開放病床が40床)の総合病院で,循環器,救急救命,周産期,老人性痴呆疾患などのセンターを要し,エイズ拠点病院,基幹災害医療センターに指定され,地域住民に“信頼され親しまれる病院に”をモットーに地域との連携による生涯医療サービスを目指してきました.さらに,平成12年12月には新たに救急救命,健康管理,内視鏡のセンターを要したセンター棟が新築され,岡山市の中核病院として果たすべき役割がますます大きくなっています.
 産婦人科の医師は,院長と常勤医5名(部長1名,副部長1名,医師3名)の計6名で,すべて岡山大学医学部産婦人科学教室の出身です.外来診療は毎日ありますが,初診,産科予約再来,婦人科予約再来(一部自由再来)に分かれています.手術は月,水,金曜日,検査は火,木曜日の午後に行っています.昨年の開腹手術は約480件で,広汎性子宮全摘術から腹腔鏡下の手術まで多岐にわたっています.

症例

巨大粘膜下筋腫の経頸管的摘出—バゾプレッシン局所投与とレゼクトスコープの併用

著者: 山田隆 ,   武内享介 ,   岡田十三 ,   本山覚 ,   丸尾猛

ページ範囲:P.634 - P.637

 妊孕能温存を必要とする若年女性における粘膜下筋腫に対して,レゼクトスコープを用いた経頸管的切除術が急速に普及しつつある.しかし筋腫が大きい場合はその摘出に困難を伴い,GnRH ana—logueの術前投与による筋腫の縮小化あるいは複数回の経頸管的切除を要することがある.筆者らは出血が持続する巨大粘膜下筋腫に対してvaso—pressinを併用し,レゼクトスコープおよびバイポーラ—シザーズによる経頸管的切除術を施行し,一期的に摘出し得た.本症例のようにGnRHanalogueによる前処置を行う時間的余裕がなく,緊急的に巨大粘膜下筋腫に対して経頸管的切除を行う場合,血管収縮作用のあるvasopressinの局所投与は術中出血量低減のためぜひとも試みる価値がある方法であると考えられた.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

icon up
あなたは医療従事者ですか?