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今月の臨床 遺伝子医療—現況と将来 生殖医療における遺伝子診断
2.受精に関する遺伝子診断
著者: 久保春海1 雀部豊1 西村崇代1
所属機関: 1東邦大学医学部産科婦人科学第一講座
ページ範囲:P.896 - P.899
文献購入ページに移動受精卵の遺伝子診断(PGD)の目的は遺伝性疾患による先天異常の発生を着床前受精卵(胚)の段階で診断する場合と,減数分裂や受精時の遺伝子組み換えの際にde novoに起きる異常胚をスクリーニングする場合の2種類に分類することができる.そして前者は受精卵診断,後者は受精卵スクリーニングと呼ばれている.遺伝性疾患として受精卵診断の理論的な対象となるのは,遺伝子病(genopathy)と呼ばれるメンデルの法則に従う単一遺伝子疾患群であり,Mckusick分類によれば約6,700種類有り,現在も責任遺伝子の発見は増加し続けている1).しかし,これらのうち現在,受精卵診断が可能なのは遺伝形式が明確で遺伝子座(allele)の変異がすでに診断できており,個々の遺伝子変異に対応するPCRのprimerやFISHのprobesが作製可能なものに限られる.また,配偶子の減数分裂時あるいは受精の段階で,de novoに高頻度に染色体異常が起きることが知られており,これらは配偶子病(gametopathy)あるいは胚芽病(embryopathy)と呼ばれており,受精卵スクリーニングの対象となる.したがって着床前診断では,遺伝性疾患の目的遺伝子の変異を検出するだけでは不十分であり,これらのde novoに発生する染色体異常のない正常胚をスクリーニングすることが重要なポイントとなる.
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