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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科55巻8号

2001年08月発行

今月の臨床 遺伝子医療—現況と将来

悪性腫瘍の遺伝子診断,遺伝子治療

3.癌遺伝子治療の現況

著者: 島田隆1

所属機関: 1日本医科大学第二生化学 高度先端医療技術開発センター 遺伝子治療研究部門

ページ範囲:P.918 - P.921

文献概要

 分子生物学の進歩にともない,遺伝子レベルでの病因解析や遺伝子診断が可能になり,ついには遺伝子治療が現実のものになりつつある.遺伝子治療は,遣伝性の病気の治療法として研究が進められてきたが,癌も遺伝子の病気であることが明らかになり,遺伝子治療の重要な対象疾患と考えられるようになった.もし遺伝子の異常を修復して癌細胞を正常の細胞に戻す(脱癌化)ことができれば理想的な癌の治療法になる.しかし,この方法ではすべての癌細胞を治療する必要があり,現在の遺伝子導入技術では不可能である.そのため,遺伝子の修復ではなく,免疫力を増強して癌細胞を患者から排除しようとする免疫遺伝子治療が主に行われている.その他にも細胞死を誘導する自殺遺伝子や,血管の増殖を阻害する遺伝子を使った新しい遺伝子治療も注目されている.
 癌は遺伝性疾患に比べ,より身近な病気であり,患者数も圧倒的に多い.癌が対象に加わったことで,遺伝子治療に対する社会的関心が急速に高まったと言われている.すでに米国を中心に,3,000人以上のヒトに対する遺伝子治療の臨床研究が行われているが,約7割が癌患者を対象としたものである.本稿では,癌遺伝子治療の基本的戦略(表1)と問題点について紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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