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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科55巻8号

2001年08月発行

文献概要

今月の臨床 遺伝子医療—現況と将来 悪性腫瘍の遺伝子診断,遺伝子治療

5.絨毛癌の遺伝子治療

著者: 佐々木茂1 磯崎太一2

所属機関: 1日本医科大学附属多摩永山病院産婦人科 2海老名総合病院産婦人科

ページ範囲:P.928 - P.932

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はじめに
 絨毛癌はもともと化学療法に対して感受性が高く,著効を呈する例外的といってもよい癌である.今日では広範な転移がなければ,化学療法によってその完全緩解率は90%に達する.わが国における絨毛癌は,日本産科婦人科学会の長年の努力によって疾患の登録が行われるようになり,また取り扱い規約が定められて全国どこにおいても十分な管理が行われるようになった.その結果,治療成績も向上し,さらに近年の絨毛性疾患そのものの減少と相俟って,友田ら1)がその著書の冒頭でのべているように,20世紀中に完治可能となった癌の代表であるとさえ言われている.しかしながら,脳や肝に転移した難治症例に現在でもなお遭遇する.こうした症例の予後は集学的治療をもってしてもいまだに決して良いとは言えない状況にある.難治症例に対するbreak throughとなるような他の治療法の開発が望まれるところである.そこで現在注目されている遺伝子治療の可能性についてはどうであろうか.絨毛癌については,化学療法が著効することもあり,現在検索したかぎりにおいて,ヒト絨毛癌に対する遺伝子治療のプロトコールは動物実験においても,臨床治験においても報告はない.しかし,将来の遺伝子治療につながっていくと考えられるいくつかの基礎的な報告をみることができる.本稿ではそれらの成績を紹介しながら,絨毛癌の遺伝子治療の可能性について論じてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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