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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科56巻1号

2002年01月発行

雑誌目次

今月の臨床 女性内科的アプローチ—循環器系を中心に

企画のねらい

著者: 倉智博久

ページ範囲:P.11 - P.11

 わが国における人口,とくに女性人口の高齢化は著しい.したがって,閉経後女性のQOLを向上させることは,「女性内科」の重要なテーマである.女性内科的アプローチの対象疾患は,更年期障害,泌尿・生殖器系の疾患,アルツハイマー病,さらに骨粗鬆症や動脈硬化など極めて多岐にわたるが,本特集は閉経後女性の高脂血症を含む循環器疾患に関連する疾患に限局した企画とした.
 最近日本でも,高脂血症について大規模な疫学研究結果が発表され,血清脂質の管理基準が新たに設定されようとしている.産婦人科医が閉経後女性の脂質管理を含めて循環の管理を行い,また同時に循環器内科医がホルモン補充療法を日常診療に取り入れていくことは,お互いに大きなメリットを出せることとなるものと考えこの特集を企画した.したがって,本企画は産婦人科の専門医とともに,内科の先生方の中で,とくにホルモン補充療法に興味を持ち,これを診療に取り入れられている方に執筆をお願いした.

中高年女性の健康のケアにおける産婦人科医の役割

著者: 田中一範 ,   本庄英雄

ページ範囲:P.12 - P.15

はじめに
 女性においては,閉経前は動脈硬化の進行が進みにくいことが知られている.この現象は,女性においては閉経前,エストロゲンが脂質,あるいは血管への直接作用などを通じ,動脈硬化の進行を抑えているため起きると考えられている.ところが閉経期を過ぎると性差は序々になくなっていく.たとえば心筋梗塞による人口10万対死亡率の男女比を年齢階級毎にみると,50歳までは圧倒的に男性に多いのが女性では閉経期を境に増加し,年齢が高くなる毎に比が1に近づいていく1)(図1).海外での報告をみても,Framingham研究において,女性の心疾患による死亡は40歳代においては男性の3〜4分の1であるのに,70歳ぐらいになるとあまり差が見られない2).一方,卵巣摘出をうけた女性(45〜54歳)においては,術後年齢に依存せず,術後の時間に依存して心疾患が増加したと報告されている3).また,家族性高コレステロール血症において,女性では血清脂質レベルは同じでも心筋梗塞の発症は約20年おくれて起きることが知られている4).これらの疫学的知見および,各種臨床研究の結果から,HRTの心・血管への良好な作用が期待され,一時はアメリカの「AHAによる心血管系疾患一次予防のためのガイドライン」において,「閉経後女性,特にLDL高値などの危険因子を複数有するものには,ホルモン補充療法を考慮」と記されていたほどであった5)

女性と高脂血症

1.女性の高脂血症の特徴

著者: 大濱紘三 ,   真田光博

ページ範囲:P.16 - P.20

はじめに
 虚血性心疾患をはじめとする心・血管系疾患は動脈硬化を基盤として発生することが多く,動脈硬化の危険因子の第一には高脂血症が挙げられている.以前は,高脂血症や動脈硬化性疾患は欧米人に比較して日本人には少ないとされてきたが,しかし,最近は米国では生活習慣の改善によりコレステロールの経年的低下傾向が認められているのに対して,逆にわが国では増加傾向がみられ,日米間での逆転現象が生じつつある(図1).虚血性心疾患の原因となる動脈硬化は高脂血症がある期間持続することによって生ずるのが一般的である.現時点ではわが国の虚血性心疾患の患者数は米国の1/5であるが,今後はその差は小さくなることが予測されている.
 血清脂質は年齢および生活環境などにより変動し,またその推移には性差を認めるところから高脂血症の管理や対応に際してはそのような患者背景を十分考慮することが大切とされる.そこで本稿では女性の高脂血症の特徴について述べる.

2.最近の大規模臨床介入試験の結果

著者: 佐々木淳

ページ範囲:P.21 - P.23

はじめに
 HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)が登場して以来,コレステロール低下療法に関する臨床研究は多くの成果をあげてきた.実際高コレステロール血症患者に対するコレステロール低下療法により冠動脈イベント,総死亡率のみならず脳卒中も抑制できることが証明されている.これまで実施された大規模臨床試験は大部分男性を対象にしたもので,女性だけを対象にした研究はない.本稿ではスタチンを用いた女性を含む大規模臨床試験のサブ解析の結果を解説する.

3.高脂血症の種類と検査

著者: 若槻明彦

ページ範囲:P.24 - P.28

はじめに
 血中コレステロール濃度の上昇は,冠動脈疾患の発症や死亡率を上昇させるとの疫学的成績が報告されており1),血中コレステロールの蓄積が冠動脈疾患の発症に密接に関与することは明らかである.Framingham Studyによると2),心血管系疾患による死亡率は50歳以前では男性が女性の3〜4倍高率であるのに対し,50歳を過ぎると女性の頻度が急増し,70歳代で男女ほぼ同率になる.これは,閉経後のエストロゲン濃度の低下が血中コレステロールや中性脂肪(TG)の上昇など脂質代謝異常を惹起することが大きな要因と考えられており,女性の場合はエストロゲン濃度の減少とともに脂質代謝動態が大きく変化する.この項では高脂血症の検査,診断,種類について述べ,女性の高脂血症の頻度や管理方法についても概説する.

4.高脂血症の治療—コレステロールはどこまで下げればよいか

著者: 山田信博

ページ範囲:P.29 - P.31

はじめに
 虚血性心疾患のみならず脳血管障害の発症の基礎には粥状動脈硬化症の存在が重要と考えられている.最近では心血管イベント発症におけるプラーク破綻が重要な病態として位置付けられ,高脂血症の果たす役割が種々の大規模介入試験を通じて明確となりつつある.最近の大規模介入試験によれば,特に高LDL血症,高中性脂肪血症や低HDL血症治療の意義が虚血性心疾患の一次予防や二次予防において明らかにされている1〜3)
 血漿(血清)脂質レベルは,栄養条件や地域差などに大きく影響を受け,一般的な正常範囲を決めることは必ずしも容易ではない.しかし,疫学的調査などより“将来,動脈硬化症などの合併症の発生を促進させない脂質レベルの上限値”として正常上限を定めることは可能であり,現在,わが国では空腹時のコレステロール220mg/dl,トリグリセリド150mg/dlをもって上限とし,HDLコレステロール値40mg/dlを下限とする診断基準値が設定されている.高脂血症の診療ガイドラインでは高LDL血症,高中性脂肪血症や低HDL血症が規定され,atherogenicリポタンパクとして,LDLの意義が強調されている.

5.高脂血症の治療薬の種類と特徴

著者: 田中栄一 ,   倉智博久

ページ範囲:P.32 - P.35

はじめに
 高脂血症の薬物療法開始にあたっては,個々の症例の性別や年齢,脂質代謝異常の特徴(病型分類)を考えたうえで薬物療法を開始すべきであるが,そのためには各薬剤の特徴を十分熟知しておく必要がある1)
 本稿では,高脂血症に対する代表的な治療薬についてその種類と特徴について述べる.

女性と循環器疾患

1.女性の循環器疾患の特徴

著者: 橋本正良

ページ範囲:P.36 - P.39

はじめに
 先進諸国ではその平均余命は確実に延長してきている.それに伴って閉経後女性のquality oflifeを考えた健康増進は医療に携わるもののみならず,広く一般大衆の関心事である.罹患率と致死率に関しても男性と女性においては差があり,男女を問わず罹患が認められる疾患にしても,女性に関しては十分な研究がなされていないものも多い.
 一般的に男性の血圧値は女性の血圧値より高く,中年層での高血圧罹患率は男性で高い.しかし,高年齢層では逆に女性の高血圧罹患率が上昇してきている.これは高血圧が高齢者,特に女性では閉経以降に高血圧が多く発症することと,女性の寿命が男性より長いことに起因しているものと考えられる.女性は男性に比較して冠動脈疾患発症率が有意に低いことが知られているが,この差は60歳以降減少し,70歳以降では男性とほぼ同程度となる(図1).また同年齢層の比較においても閉経前女性は閉経後女性に比較し冠動脈疾患発症率が有意に低いことが知られている1).これらの疫学的事実は女性ホルモンが動脈硬化性疾患の発症や進展に,抑制的に作用していることを示唆している.

2.加齢や閉経の体脂肪分布に及ぼす影響

著者: 堂地勉

ページ範囲:P.40 - P.43

はじめに
 肥満が高脂血症,高血圧症,糖尿病などの生活習慣病を伴いやすいことは良く知られている.しかし,肥満の程度とこれらの異常の発生頻度や重症度は必ずしも相関しない.肥満が脂肪組織の過剰な蓄積であるとすれば,その蓄積量よりもむしろ蓄積部位(体脂肪分布)がこれらの異常の発生と関連して重要な意義を有していることが明らかとなっている1).女性は加齢とともに体脂肪分布が上半身型へ移行することが示されている2).このような体脂肪分布の変化は,閉経に伴うエストロゲンの低下とは別に閉経以降に起こるさまざまの内分泌・代謝異常の発生に関与している可能性がある.
 ここでは,加齢や閉経に伴う体脂肪分布の変化を婦人科的に観察して,それが脂質代謝などにどのような影響を及ぼしているかを概説する.

3.虚血性心疾患

著者: 佐久間一郎 ,   北畠顕

ページ範囲:P.44 - P.47

はじめに
 女性は正常性周期の存在する間はエストロゲンの作用により動脈硬化の進展が抑えられ,その結果,虚血性心疾患の発症が男性より15〜20年遅れる.しかし,虚血性心疾患の発症率は閉経を期に徐々に増加し,70〜80歳代となると男性とほぼ同率となる.一般に,虚血性心疾患発症の危険因子としては,年齢,家族歴の他,喫煙,肥満,高血圧,糖尿病や高脂血症などが挙げられるが,前二者を除いた後者が生活習慣に深く関連した因子であり,特に比較的若年で心筋梗塞を発症した女性においては「metabolic syndrome X」が重要な誘因となる.また,閉経後女性に多い疾患として「coronary syndrome X」がある.この疾患には抗うつ薬が効果を示すことがあり,その病因には閉経によるエストロゲンの欠落が関与する可能性がある.

4.高血圧

著者: 林秀晴

ページ範囲:P.49 - P.51

はじめに
 高血圧は生活習慣病の一つとして,その予防と治療が重要である.女性は更年期に至るまでは男性に比較して血圧はやや低いが,更年期以降は男性と同等かそれ以上になる.女性においては,女性ホルモンによる影響の他に,妊娠時や更年期の高血圧に対する問題がある.
 エストロゲンは血管拡張に,プロゲステロンは血管収縮に作用する.従来の経口避妊薬では高血圧の副作用が問題とされてきたが,最近の低用量ピルでは血圧上昇の頻度は軽減されたとされている.

エストロゲンと心血管系

1.HRTと循環器疾患に関する大規模試験

著者: 麻生武志

ページ範囲:P.52 - P.55

閉経後の心・血管疾患とホルモン補充療法
 更年期以降の低エストロゲン状態は,多彩な症状・障害を誘発するばかりではなく,長期的な視野に立つと生命予後を大きく左右する疾患,すなわち骨粗鬆症,虚血性心・血管疾患,痴呆などの発症へとつながるリスクを増大する因子となる.今日,日本女性の平均寿命が約84歳にまで延長している現状は,閉経後の低エストロゲン状態での生活が人生の約3分の1を占めることを意味しており,この時期の生活の質(QOL)を維持し,高める方策が強く求められている.このようなニーズに応える方法の一つとして閉経後に欠落するエストロゲンの補充を目的としたホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)が開発され,今日欧米を中心に広く実地臨床で用いられるようになっている1).しかし,近年報告された大規模臨床試験において,閉経後女性の循環器疾患の一次・二次予防におけるHRTの効果を見直すべきとの指摘がなされている.本稿では,その主な大規模臨床試験を紹介し,これらの問題点の検討を試みたい.

2.HRTの効用と副作用

著者: 赤松達也

ページ範囲:P.57 - P.59

はじめに
 加齢による卵巣重量の減少は40歳を境として起こり,これに伴って機能的にも卵巣性ステロイドであるエストロゲンは急激に低下する.このエストロゲン欠乏状態はさまざまな身体的変化をもたらす.女性の高齢化によってこの性ステロイド低下が単に閉経期という一時期の問題でなく老年期に発症する各種疾患にも深く関連していることも明らかとなってきた.すなわち,閉経期のみならず,その後の老年期のQOLを考えるうえで,エストロゲンの補充療法は重要な課題の一つとして注目されている.将来起こり得る心血管系病変,骨粗鬆症などの予防にも役立つと考えられている.

3.エストロゲンと血管に関する基礎知識

著者: 大道正英 ,   久本浩司 ,   神田裕樹 ,   村田雄二

ページ範囲:P.60 - P.67

はじめに
 わが国の疾病構造は,生活習慣の欧米化や高齢化などにより大きく変化しつつある.現在,死因の第一位は悪性新生物であるが,第二位の心疾患と第三位の脳血管疾患とを合計すると,悪性新生物を上まわるようになった.つまり,脳心血管系の疾患による死亡が第一位であり,全死因の約三割を占める.
 動脈硬化による心血管系疾患の発症は加齢とともに上昇するが,女性と男性でやや異なり,女性の場合は閉経後に急増して55歳以降は男性と同等の発症率となる1).これは閉経によるエストロゲンレベルの低下による心血管系への保護作用の破綻がその大きな要因として考えられている.多くの疫学調査において,閉経後女性に対する女性ホルモン補充療法が,動脈硬化による心筋梗塞の発症を約半分に低下させるとの報告がある2).そのため,欧米においては,エストロゲン補充療法が,閉経後女性の死亡率を低下させる意味においても,多くの女性(40%前後)に施行されているのが現状である.

4.新しいホルモン補充療法(SERM)

著者: 山本伸一 ,   野崎雅裕 ,   江上りか ,   中野仁雄

ページ範囲:P.69 - P.71

はじめに
 エストロゲンは生殖器だけでなく,骨,心血管系,中枢神経系などの生殖器以外の組織に対しても,重要な役割を果たしている.閉経後女性に対するエストロゲン補充療法は,卵巣欠落症状を改善するだけでなく,更年期以降問題となってくる骨粗鬆症,動脈硬化などを予防し,QOLを改善すると考えられている.一方で,子宮体癌や乳癌のリスクが高まるといった懸念や子宮出血,乳房痛などの副作用を伴うことでエストロゲン補充療法に対するコンプライアンスは依然低いのが現状であり,またエストロゲン補充療法の大規模臨床試験であるHERSの結果より,エストロゲンの心血管系に対する有効性を疑問視する見方もあり,新たな薬剤として選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)に対して期待がよせられている.SERMはエストロゲンと異なり,標的組織によりエストロゲンレセプターのアゴニストとして作用したり,アンタゴニストとして作用し,現在までに多くの種類の薬剤が開発されてきた.その中でもラロキシフェンはベンゾチオフェン系のSERMで,現在欧米において骨粗鬆症の治療薬として広く使用されており,心血管系に対する作用に関しても多くの研究がなされ,抗動脈硬化作用も期待されている.そこで本稿では,ラロキシフェンの心血管系に対する作用,知見をもとにそれぞれの機序を概説する.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・31

What is your diagnosis?

著者: 清川貴子

ページ範囲:P.7 - P.9

症例:21歳,女性
 骨盤腹膜炎の診断のもとに開腹手術を行った.骨盤内には癒着と非血性腹水(100ml),右卵管の発赤および軽度腫大を認めた.右卵管摘出術が行われた.
 Fig 1〜3は摘出された卵管の組織像である.

婦人科腫瘍切除標本の取り扱い方・11

子宮内膜症切除標本の取り扱い方

著者: 岡田智志 ,   岩瀬春子 ,   吉川裕之

ページ範囲:P.73 - P.77

はじめに
 子宮内膜症(endometriosis)の名称は1925年にSampsonによってつけられたとされている.良性疾患ではあるが,エストロゲン依存性に増殖・播種し,しばしば再発を繰り返すなど,その性格はあたかも腫瘍のようである.また,子宮内膜症の発生には未妊・未産が深く関与することは明らかだが,分子レベルの発生機序は未だに解明されていない.さらに,WHO分類では腫瘍ではなく,類腫瘍病変に分類されているが,上皮性卵巣癌との関連が注目されるように,将来的には腫瘍に分類される可能性もある.
 子宮内膜症の治療は薬物療法と手術療法があり,両者を組み合わせて行うことも多い.本稿では手術により摘出された内膜症病変の取り扱いとして卵巣内膜症性嚢胞を中心に,取り扱い規約に沿った臨床的取り扱いと研究のための検体取り扱いについて概説する.

病院めぐり

淀川キリスト教病院

著者: 椋棒正昌

ページ範囲:P.78 - P.78

 淀川キリスト教病院は,昭和30年(1955年)に大阪市東淀川区淡路の地に,米国南長老教会の婦人会誕生日献金を基にして建てられた病院です.当院の基本理念は,キリストの愛の精神と,近代医学により身体的・精神的・社会的・霊的な苦しみを持つ病める人々を癒す「全人医療」です.
 初代院長フランク・A・ブラウン先生は,全人的総合医療を行うために,全職員がよいチームワークをつくり,広範囲な医療活動を通じて地域社会や他の医療機関と協力し,当院を健康保険制度下でなしうる最高の医療を目指す非営利的病院として発展させました.そして,現在当院は,23診療科と5センターおよびホスピスを持つ607床の宗教法人の総合病院となっています.

総合病院 取手協同病院

著者: 染川可明

ページ範囲:P.79 - P.79

 総合病院取手協同病院は,茨城県厚生連が県内で経営する6病院の1つで,昭和51年に旧取手協同病院と龍ヶ崎協同病院が合併し現在地に移転し開設されました.昭和58年に総合病院としての体制を整え,産婦人科もこのときから開設されました.その後,この地域の基幹病院として,24時間体制の救急医療や悪性疾患治療のための諸施設,設備の充実に力を入れ,何回かの増改築を重ね,平成6年の大幅な増改築などを経て,現在,病床数は410床(一般406床,感染病床4床)で,標榜科は19科,常勤医師は65名で,医師はほぼ全員,東京医科歯科大学の医局出身者で構成されています.
 病院の方針として,当初から患者の立場に立った医療を心掛けており,昭和61年より投書箱による患者側からのモニターを実施,患者中心医療の充実に役立てています.平成10年に臨床研修指定病院に指定され,研修医の公募も行っています.平成11年には日本医療機能評価機構の認定病院にもなっています.病院の将来像は,周りの病院との連携を強め,外来を紹介患者中心にし,地域医療支援病院型の病院を目指しています.

Debate・13

骨盤位の外回転術の是非

著者: 竹田善治 ,   長阪恒樹 ,   坂井昌人 ,   中山摂子 ,   中林正雄 ,   岡井崇

ページ範囲:P.82 - P.91

是 骨盤位に対する外回転術は有用な手技である.
●理由
 骨盤位経膣分娩は頭位分娩に比し,周産期死亡率が高く,児の障害も多いことは明らかな事実である.したがって骨盤位例は帝王切開率も高いのが一般的である.このような実状から,骨盤位分娩そのものを減らす努力はこれらの状況を改善するために有効と考えられる.その方法のひとつとして胎位矯正術である骨盤位外回転術(externalcephalic version:以下,ECV)は効果的な手技である.従来広く行われてきたECVが近年になってあまり行われなくなった理由として以下のことが挙げられよう.

OBSTETRIC NEWS

羊水過少症(ロウリスク妊娠)に誘発分娩は必要か?(1)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.98 - P.99

 羊水量推定が分娩前胎児管理試験に採用され始め約15年が経過している.現時点では,羊水過少症が疑われる症例では介入分娩を行うことが一般的である(Am J Perinatol 7:266,1990/OG 79:558,1992/JRM 37:719,1990/OG 80:769,1992/AJOG 173:167,1995/AJOG 172:142,1995).しかし,誘発分娩が帝王切開(帝切)率の増加につながること,また羊水過少症の診断法の不正確性(OG 96:737,2000),介入のポイントとして考えられている羊水指数5cm以下は適切なカットオフポイントなのかの疑問は未解決である.
 Chauhanらは1987〜1997年に報告された18論文(10,551例)を基にメタ分析を行い,分娩前と分娩中の羊水過少症と帝切(nonreassuring FHRパターン:心配なFHRパターン)率と新生児予後を比較した.分娩前に診断した羊水過少症907例(破水を除く)では心配なFHRパターンのための帝切(2.2倍),アプガースコア<7(5分値)(5倍)は有意に増加し,分娩中に診断した羊水過少症1,004例でも同様に帝切率(1.7倍),アプガースコア<7(5分値)(1.8倍)が有意に増加することを報告した.

Estrogen Series・49 HRTと乳癌・1

乳癌治療後のホルモン補充療法

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.100 - P.101

 過去に乳癌の治療を行った患者に対して,ホルモン補充療法(HRT)を行ってよいのだろうか?この問題に対する決定的な解答はまだない.しかし,いままでに行われた多くの研究結果に基づいて,いくつかの根拠に基づく推定をすることは可能である.今回はこの問題に関して米国産婦人科医会が発表したcommittee opinionをご紹介したい.1999年の発表である.

臨床経験

高カルシウム血症を伴った卵巣明細胞癌の3症例の臨床的検討

著者: 朝野晃 ,   丹野治郎 ,   明城光三 ,   和田裕一 ,   鈴木博義

ページ範囲:P.92 - P.95

 術前検査で高カルシウム血症を認めた卵巣明細胞癌の3症例の臨床的検討を行った.症例は55,54,60歳で,臨床進行期はそれぞれlc,lllc,lllc期であった.2例は術前に血中PTHrP(parathyroid hormone-related protein)を測定し,高値を認めた.1例は高カルシウム血症による精神症状が初発症状であった.3症例全例に手術療法・術後化学療法を行ったがともに予後不良で,初診後12か月以内に死亡した.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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