icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科56巻10号

2002年10月発行

雑誌目次

今月の臨床 不妊診療のピットフォール

不妊診療の動向と問題点

著者: 向林学 ,   辻勲 ,   星合昊

ページ範囲:P.1192 - P.1195

はじめに
 今日の不妊症診療は,生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)の進歩に伴い,以前は妊娠そのものを断念していた不妊症患者に妊娠の可能性を見出せるようになり,ARTは現在の不妊診療にとって必要不可欠な治療手段となっている.しかし一方では,新しい技術ではあるがゆえに法整備の遅れや,倫理面での問題を生み出してきているのも事実である.今回は,不妊症診療の動向と問題点として,現在の不妊治療をまとめたい.

検査・診断のピットフォール

1.内分泌検査データの解析

著者: 神野正雄

ページ範囲:P.1196 - P.1198

はじめに
 不妊診療において内分泌データを解析することは,卵巣機能,着床能,造精機能の評価に重要である.しかし正しく評価するためにはさまざまなポイントがあり,これを知らないと予期せぬピットフォールに落ちることもある.
 女性には月経周期があり,これに応じて多くのホルモンが日々変化するため,いつ採血するかで正常値も数値の意味も異なってくる.また日内変動や律動的分泌をするホルモンもあり,これも念頭に置く必要がある.

2.黄体期不全の診断

著者: 岩崎信爾 ,   田原隆三 ,   岡井崇

ページ範囲:P.1200 - P.1203

はじめに
 一般臨床においては,黄体期不全よりも黄体機能不全としての診断名のほうが使用されることが多い.黄体機能不全は不妊症や不育症,機能性子宮出血の原因とされている.日本産科婦人科学会の用語集においては「黄体からのエストロゲンとプロゲステロンとの分泌不全により,子宮内膜の分泌性変化が完全に起こらないものをいう.妊卵の着床障害による不妊原因として重要である」としている.その診断は主に基礎体温表や黄体期の血中ステロイドホルモン(プロゲステロン,エストロゲン)の測定・子宮内膜日付診などで行われる.しかし黄体期におけるステロイドホルモンの分泌異常や子宮内膜日付診の異常は単に黄体の機能障害だけではなく,LHやFSHの分泌障害や子宮のステロイドホルモンに対する反応性の異常なども原因となる.
 本稿における黄体期不全とはこれらの種々の原因によって生じる黄体期・着床期におけるホルモン分泌・子宮内膜機能異常の総称とし,その原因および診断について述べることとする.

3.卵管疎通性障害の診断

著者: 原田省

ページ範囲:P.1205 - P.1207

はじめに
 卵管障害は女性側の主要な不妊原因の一つである.したがって卵管疎通性検査は,挙児を希望して不妊外来を訪れた患者のスクリーニング検査として早期に行われるべきものである.本稿では,現在行われている卵管疎通性検査とその問題点について解説する.

4.内視鏡検査の実施

著者: 田中信幸 ,   岡村均

ページ範囲:P.1208 - P.1212

はじめに
 腹腔鏡・子宮鏡をはじめとした内視鏡検査は,超音波検査とともに日常診療に欠くことのできない重要な検査法である.しかも,今日通常行われる内視鏡検査は,検査と同時に治療を兼ねている場合が多く,これらに習熟することは産婦人科医として必須となってきている.一方,内視鏡検査・治療に伴うトラブルや合併症の発生も種々みられ,こうしたトラブルやピットフォールを避ける工夫も必要である.
 一般に不妊の検査・診断・治療の進め方としては,当然,頻度の高い不妊因子について,低侵襲性かつ低コストのものから開始すべきである.したがって腹腔鏡・子宮鏡による検査および治療は二次的診療内容と位置づけらるものの,適応のある症例では非常に有効な検査かつ治療法となり得るので,その症例選択,すなわち適応の決定が一つの大きなポイントとなる.その際,一般的な適応とは別に,術者自身の技量・熟練度に合わせた症例の選択を行うことが最も重要であろう.

5.免疫異常の診断

著者: 辻芳之

ページ範囲:P.1214 - P.1217

はじめに
 免疫による不妊症としては精子不動化抗体による不妊症が唯一証明されたものであるが,それ以外には直接不妊症につながる免疫異常症というものはまだ証明されていない.抗リン脂質抗体症候群が習慣性流産に関係することは明らかであるが,胎盤形成期以降の流産の原因になっても着床障害などを起こし不妊症を発生していることは推定されても,まだ証明はされていない.最近は,抗甲状腺自己抗体の存在が不妊症と関係するのではないかという報告がみられるが,これも直接的な不妊症との関連は明らかではない.
 しかし,このように精子不動化抗体以外に直接不妊症につながる免疫異常と,不妊症診療を行う上で前もって免疫異常も調べておくことは必要である.不妊症外来で行うべき免疫異常のスクリーニング検査を表1に示す.

6.男性因子の診断

著者: 栁田薫 ,   菅沼亮太 ,   両角和人 ,   佐藤章

ページ範囲:P.1218 - P.1221

はじめに
 男性因子の評価は基礎検査である精液検査と,異常値であった場合に実施される泌尿器科学的な2次検査でなされる.後者には血中ホルモン検査,染色体検査,造成機能関連遺伝子検査,精路造影検査,精巣生検などがある.ここでは,産婦人科医としてできる男性因子へのアプローチに関して述べる.射出精子が得られるとして,それらの精子の細胞としての目的は父方遺伝情報であるDNAを卵内に到達させることで,この目的は受精の完了をもってほぼ終了する.したがって,精子の機能のほぼすべては受精までに発揮されるので,われわれは精子が腟内に射出されてから受精までの精子の機能を評価できればよいことになる.

治療のピットフォール

1.排卵誘発法の選択

著者: 苛原稔 ,   松崎利也 ,   桑原章

ページ範囲:P.1222 - P.1225

排卵誘発のピットフォール
 排卵誘発法の選択にあたっては,排卵障害の原因と重症度を十分検索し,その結果に基づいて適切な治療法を選択する必要があり,それが早期の妊娠に結びつく.排卵障害の原因やそれに対する治療法は多種類があるので,系統的に検査を進め,短時間で効果的に治療法を選択する必要がある.
 排卵誘発のピットフォールとして留意したい問題点は,①クロミフェンを無意味に長期投与することは避けること,②ゴナドトロピン療法を行う際には常に安全性を勘案すること,③管理が難しい疾患ではその特徴を考慮した選択を行うこと,などが考えられる.

2.黄体機能不全の治療

著者: 太田博孝

ページ範囲:P.1226 - P.1229

はじめに
 黄体機能不全症は,不妊・不育症の原因因子として高率に認められる疾患である.本症は比較的薬物療法が奏効して生児を得やすい疾患である,しかし,黄体機能不全症の中には,高アンドロゲン血症,高プロラクチン血症や甲状腺機能異常に基づく例が少なからず存在する.したがって本症の治療を開始する際には,あらかじめ合併因子を否定しておく必要がある.また,薬物療法を行う際には,いくつかのピットフォールがある.本稿ではこれらの点について述べていく.

3.卵管鏡治療

著者: 末岡浩

ページ範囲:P.1230 - P.1234

はじめに
 高い治療成績が低い侵襲性で得られる卵管鏡およびその導入用カテーテルシステムが開発され,着実に治療機器としての成果を上げてきている.この卵管鏡下卵管形成(falloposcopic tuboplasty:FT)法は治療技術の修得がやや難しく,とくに卵管通過障害の病変を有する場合の操作はいっそうの注意と技術を要する.発生しうる諸問題を回避するための操作原則とルールは本法を実施するうえで重要な鍵を握る.そのための操作法について述べることにする.

4.卵管形成術の選択

著者: 長田尚夫

ページ範囲:P.1235 - P.1239

はじめに
 卵管性不妊を取り巻く生殖医学は,この25年間にさまざまな治療法が開発され著しい進歩を遂げた.すなわちマイクロサージェリーによる卵管形成術(1976年),体外受精による胚移植法(1978年,以下,IVF-ETと略す),腹腔鏡下卵管形成術(1982年)ならびに卵管鏡下卵管形成術(1985年)1,2)などである.しかし今日,IVF-ETの普及によって卵管性不妊の多くがIVF-ETの適応にされている現状から,不妊治療のあり方を改めて見直す必要性にせまられている.
 マイクロサージェリーに代表される卵管形成術は,今日の低侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)である腹腔鏡下手術の登場によって,多くが腹腔鏡下卵管形成術によって行われている.腹腔鏡下卵管形成術は,開腹術によるマイクロサージェリーと同様,小型の鉗子,電気メスなどを用いて手術を行うことから,ラバロスコピックマイクロサージェリーともいわれている.本法は,必然的に卵管形成術の基本的事項を備えているばかりでなく,MISとしての多くの利点(小切開,短期入院,早期社会復帰)があることから,患者に受け入れやすい卵管性不妊の治療法として普及することが期待される.

5.人工授精のピットフォール

著者: 朝倉寛之 ,   矢野樹理

ページ範囲:P.1241 - P.1243

はじめに
 平成12年現在,全国に400を超える日本産婦人科学会登録体外受精施設が存在し,生殖補助療法(ART)がより一層日常医療の一種として普及してきたことはわが国民にとって福音といえる.だが体外受精(IVF)の諸費用の高額化や,治療の第一選択法として受け入れる患者心理の抵抗を考慮すると,排卵誘発および子宮内または頸管への人工授精(artificial insemination:AI)は各種の不妊症に対する第一選択の治療法としての意義は不変である.EBM(evidence based medicine)の実践が強調される昨今,当論文ではAIに関する最近の知見を紹介し,また筆者らの経験に基づくAI施行上のコツについて述べる.

6.体外受精への移行時期

著者: 柴原浩章 ,   平野由紀 ,   山中誠二 ,   鈴木達也 ,   高見澤聡 ,   鈴木光明

ページ範囲:P.1245 - P.1251

はじめに
 本邦における体外受精—胚移植(IVF-ET:in vitro fertilization-embryo transfer)による不妊症治療の適応は,卵管因子,男性因子,免疫因子および原因不明である.諸外国の一部において,AID不成功症例,排卵誘発不能症例,子宮の先天的あるいは後天的欠損症例などのために,第三者の配偶子や子宮の利川を前提とした適応が認められている現状とは,現時点では大きく異なる.
 日本産科婦人科学会報告1)によると,本邦における平成11年分のIVF-ETなどの実施数は69,019周期,それによる出生児は11,929人であった.適応毎の治療周期数などは不明であるが,対象となる症例は年々増加の一途である.IVF-ETの絶対適応である再建不能の両側卵管閉塞や,IVFでは受精できず卵細胞質内精子注入法(ICSI:intracytoplasmic sperm injection)を要する重症男性不妊に対する移行時期に関しては,もはや議論の余地はない.ところがAIHの反復でも一定の妊娠成立が期待できる男性不妊,免疫性不妊,原因不明不妊に対するIVF-ETへの移行時期は,各施設の判断に委ねられている.したがってこの相対的なIVF-ET適応に対して存在する施設間の差を少なくすることは,多施設からの報告を集約するART実施に関する年次成績の信頼性向上につながる.

7.子宮内膜症合併不妊

著者: 大須賀穣

ページ範囲:P.1252 - P.1255

はじめに
 子宮内膜症合併不妊の診療において問題となるのは,子宮内膜症合併不妊の症例において子宮内膜症が不妊の原因であるか否か,もし原因であるとすれば機序は何であるかについて特定することが困難な場合が多いことである.さらに,子宮内膜症が不妊を惹起する機序は多岐にわたり,機序に応じて最善の治療が異なることも取り扱いを困難にしているといえる.本稿では,種々の子宮内膜症合併不妊につき可及的にパターン化して診療の役に立つ情報を解説したい.

8.子宮筋腫合併不妊

著者: 田坂慶一 ,   矢田美奈子 ,   橋本香映

ページ範囲:P.1256 - P.1259

はじめに
 子宮筋腫は生殖年齢後半女性の20〜50%に存在する.従来,子宮筋腫と不妊は古典的教科書では切っても切れない関係と報告されてきた.しかしながら女性において不妊の原因が筋腫である頻度は1〜2.4%であると比較的少ない.Butramら1)の報告以来,子宮筋腫の不妊症における原因としての評価は低下してきている.また子宮筋腫が妊娠中に大きくなる確率は比較的低く,妊娠中の合併症を引き起こす原因となる頻度は約10%程度といわれている.また開腹による筋腫の手術はその癒着のためにかえって不妊症の原因になるともいわれている.しかし,最近でも未だ筋腫の切除(開腹,腹腔鏡,子宮鏡)による妊娠の転帰は多くの学術雑誌に掲載されているのが現状である.したがって,現時点では子宮筋腫の不妊症における原因としての評価は従来想定されていたより低いが,なお筋腫治療の妊娠には話題性があると考えてよいであろう.ここではそれらをふまえた上で最近の知見のレビューを引用して,子宮筋腫合併不妊について述べる2)

9.子宮奇形合併不妊

著者: 和泉俊一郎 ,   鈴木隆弘 ,   貴家剛 ,   松林秀彦 ,   牧野恒久

ページ範囲:P.1260 - P.1265

はじめに
 子宮奇形の合併した不妊症におけるピットフォールについて述べる(表1).子宮奇形の病型の理解にはミュラー管(中腎傍管)の正常発生と異常についての知識が必須であるため,その点についても留意して解説を進める.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・40

What is your diagnosis?

著者: 清水道生 ,   茅野秀一 ,   三橋智子

ページ範囲:P.1189 - P.1191

症例:55歳,女性
 不正出血のため入院.精査の結果,子宮体部に腫瘤が認められ,内膜全血掻爬が行われた.Fig 1,2はその代表的な組織像(HE染色)である.なお,白血球数は13,000と高値を示したが,異常分画は認められなかった.
 1.鑑別すべき疾患は何か.

最新の手術器械を使いこなす・6

自動吻合器・自動縫合器

著者: 今本治彦 ,   塩崎均 ,   塩田充 ,   星合昊

ページ範囲:P.1268 - P.1273

 自動吻合器や縫合器の開発・改良は,手術を容易に,また正確にし,術式をも変えようとしている.また開腹手術だけではなく,内視鏡下手術においてもより有用性を増しており,患者のQOLの向上に大きく寄与していると思われる.しかし器械による吻合自体は誰もが一定に行えるが,吻合前後の状況を適切につくり出すことが大切であり,取り扱いを十分に熟知し,上手に行うことが縫合不全や狭窄のリスクを減らすものと思われる.

病院めぐり

茅ヶ崎徳洲会総合病院

著者: 太田寛

ページ範囲:P.1274 - P.1274

 茅ヶ崎徳洲会総合病院は1980年(昭和55年)に開設され,過去20年にわたり年中無休・24時間オープンの救急診療体制を維持するとともに,慢性疾患や在宅医療も重視し,患者のニーズに応える形で発展をしてきました.現在では419床の総合病院として,湘南地区の中核的医療施設となっています.近隣の地域を含めた医療対象人口は50万人を超え,2001年の茅ヶ崎市救急搬送7,488件のうち50%以上が当院にて治療されています.なお当院は,臨床医師を教育する実践的卒後研修病院として高い評価を受けており,1994年度より厚生労働省認定の臨床研修指定病院となりました.日帰り手術も早くから推進し,1996年以後2000年6月までに1,500例以上を行い,その内容も鼠径ヘルニア手術,甲状腺・副甲状腺切除術,乳腺腫瘍切除術,痔核切除術,腹腔鏡下胆嚢摘出術,下肢静脈瘤切除術など多岐にわたっています.
 産科・婦人科は40床あり,院長を含めた4名の常勤医と約2名の研修医で対応しています.年間分娩数は631件(帝王切開率約10%)で,年間手術件数237件,平均在院日数6.1日となっています(2001年実績).産科,婦人科とも地域に密着した一次,二次病院として診療を行っています.

国立弘前病院

著者: 真鍋麻美

ページ範囲:P.1275 - P.1275

 弘前市(人口約17万7千人)は,青森県津軽平野に位置し,江戸時代より城下町として栄えました.西に岩木山,東に八甲田連峰の景観を望み,人々は桜祭り,ねぷた祭りなど,四季折々の変容を楽しんでいます.
 国立弘前病院の歴史は古く,明治30年,弘前衛戎病院として創設され,昭和11年に弘前陸軍病院と改称,昭和20年に厚生省所管の国立弘前病院として発足しました.

OBSTETRIC NEWS

緊急帝王切開—「30分ルール」を達成できるか?(2)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1276 - P.1277

1.「30分ルール」を達成できるか?(Tuffnellら  の研究)
 研究対象となった病院の年間分娩数は約5,500例で,緊急帝王切開(帝切)率は9〜12%であった.調査期間を第一期(9〜11月/1993年:“緊急”≦30分,“準緊急”≦40分に分類),第二期(10〜12月/1995年),第三期(4〜6月/1996年:患者移送が最大の問題点)および第四期(5月〜/1997年)に分類した.第四期では非選択的帝切は1,344例に施行された.そのなかで“緊急”帝切は721例で(表1),決定から分娩まで30分以内だった例は478例(66%),40分以内が637例(88%)であったが,50分以上かかった例が29例(2%)あった.
 患者入室までの時間が10分以内の場合は「30分ルール」が達成できた例が有意に増加することが示唆された(表2).特に緊急を要する例(“emergency”症例:胎児徐脈,臍帯脱出,器械的分娩不成功)では30分以内86%(表3),40分以内97%であった.緊急帝切の麻酔は,局所麻酔の安全性の増加が示唆されていて(Anesthesiology 86:277,1997/Anesthesiology74:212,1991),全身麻酔の際の挿管不成功が増加することが報告されている(Br J Anaesth 76:680,1996).

緊急帝王切開—「30分ルール」を達成できるか?(3)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1278 - P.1278

 この2論文(本誌56巻9号p 1154,56巻10号p 1276-1277参照)に対し,Jamesは次のように論評を加えている.Fetal distress(筆者注:最近では使用されない用語になっているが,今回は原文のままとする)のための帝王切開(帝切)の場合,「30分ルール」が要求されるが,この「30分ルール」は産科医に対するムチである.分娩中の胎児低酸素症は約1%に発生し,妊娠1,000例中の胎児死亡は0.5,脳性麻痺は1である(BMJ 308:743,1994).しかし,分娩中の胎児低酸素症の原因はよく理解されていない.多因子(例:子宮胎盤血管性疾患,子宮灌流の減少,胎児敗血症,胎児予備能の減少,臍帯圧迫など)が原因で,ときにはそれらが重複していると思われる.
 Fetal distressのための帝切のほとんどは,決定から娩出まで30分以上かかっているのが英国の現状であることが示唆されている(BMJ 322:1334,2001/J Obstet Gynecol 11:241,1991).

TOPICS

Women's Health Initiativeの結果について

著者: 倉智博久

ページ範囲:P.1280 - P.1285

 さる7月9日,米国衛生研究所(Ntional Institutes of Health:NIH)からニュースリリースされたホルモン補充療法についての報道は,日本でも多くのマスコミに取り上げられ,われわれにも大きなインパクトがありました.今回の研究結果は以下に記しますが,健康な閉経後女性に対する長期にわたるHRTは総合的にはむしろ不利益のほうが上回ったという結果が報告されています.

症例

直腸低位前方切除術を要した直腸子宮内膜症の1例

著者: 伊藤雅之 ,   大野原良昌 ,   高橋弘幸 ,   皆川幸久 ,   澤田隆 ,   山代豊

ページ範囲:P.1288 - P.1290

 直腸子宮内膜症は月経に随伴する消化器症状だけでなく,月経時以外の疼痛、排便痛,性交時痛などの特徴的な臨床症状を有する疾患である,治療としてGn-RH agonistなどのホルモン療法が行われるが,疼痛など内膜症症状の一時的な改善には効果がみられるものの,ホルモン療法中止後の再発や腸管病変の治療効果が乏しいなど根治的治療とはなり得ないことが多い.われわれは,Gn-RH agonist療法により症状の改善がみられたものの,直腸狭窄症状に改善がなく直腸低位前方切除術を要した1例を経験したので報告する.

頸管妊娠保存的治療後の妊娠,分娩の1例

著者: 小見英夫 ,   中田尋晶 ,   山高毅久 ,   葛西真由美 ,   鈴木博 ,   川原寿緒 ,   西島光茂

ページ範囲:P.1291 - P.1294

 近年,頸管妊娠に対する治療において,保存的治療を選択する機会が増加してきており,治療成績も向上してきている.しかし,治療後の挙児希望患者の妊娠成立に関しての報告は必ずしも多くはない.今回われわれは、胎児心拍陽性頸管妊娠に対して保存的治療〔選択的子宮動脈塞栓術,methotrexate(以下,MTX)補充療法,子宮頸管内容清掃術〕後に妊娠が成立し分娩に至った症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

icon up
あなたは医療従事者ですか?