臨床婦人科産科56巻4号

2002年04月発行

今月の臨床 産婦人科手術における合併症管理のすべて III　麻酔にかかわる合併症

2．区域麻酔

著者： 天野完¹

所属機関： ¹北里大学医学部産婦人科　周産母子センター

ページ範囲：P.514 - P.519

はじめに
　産婦人科領域の手術は下腹部に限局し，比較的手術時間が短いことから区域麻酔が選択されることが多い．すなわち硬膜外麻酔（EDB），脊椎麻酔（SAB），あるいは脊椎麻酔硬膜外麻酔用（CSE）であり，無痛分娩にも用いられる．区域麻酔により全身麻酔に伴う副作用，合併症を回避できるが，区域麻酔に特有な副作用，合併症は無視できず，絶えず不測の事態を想定し，救急蘇生器具，薬品の準備とともに対応策を考慮しておく必要がある．帝王切開術などでは麻酔科医の関与のない状態で産婦人科医が麻酔管理と手術を同時に行わざるを得ない状況も多く．緊急時の対応は重要課題である．
　本稿では区域麻酔で生じ得る主な副作用，合併症について予防対策を含めて記述する．なおSABを安全に行うためのガイドラインを図1に示した．