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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科56巻6号

2002年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 多胎妊娠管理—レベルアップのために

日本における多胎妊娠の動向

著者: 青野敏博 ,   村山眞治 ,   田村貴央

ページ範囲:P.708 - P.711

はじめに
 自然排卵による多胎出産率はHellinの式によると89n−1回に1回(nは胎児数)で表される.わが国ではこれよりやや低頻度で,双胎はおよそ150妊娠に1回,品胎は22,500回に1回とされている.
 しかし1960年代の後半には排卵誘発剤が導入され,また1980年代後半から体外受精—胚移植を中心とする生殖補助医療の普及により,多胎妊娠,特に3胎以上の多胎妊娠が急激に増加し,周産期医療に対して大きな負担をかけている1)

新生児の合併症と治療

著者: 川瀬泰浩

ページ範囲:P.770 - P.773

はじめに
 双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusionsyndrome:TTTS)は一絨毛膜二羊膜性双胎にみられる特有な病態で,古典的には胎盤表面における血管吻合を通して一方の児から他方の児へ血液が移行することによって生じ,供血児に貧血,IUGR,受血児に多血症,心不全をきたす症候群とされ,さらにRausenら1)により出生児間でのヘモグロビン濃度差が5g/dl以上と定義されてきた.その後,必ずしもヘモグロビン濃度差が存在しない症例も報告され,超音波診断技術の進歩などにより出生前診断基準としてさまざまな定義が用いられてきたが,現在では病態を考える意味で大きく急性型と慢性型の2つに分けて考えるのが一般的である.すなわち,分娩直前の急激な血行動態の変化によりヘモグロビン濃度差が5g/dl以上となる急性型と,ヘモグロビン濃度差は存在しないが,胎内で羊水過多,過少となり供血児,受血児にさまざまな特徴的な病態を呈する慢性型である.

多胎妊娠増加の新生児医療へのインパクト

著者: 久保隆彦

ページ範囲:P.774 - P.777

はじめに
 本特集の他稿でも指摘されているだろうが,多胎の増加はARTの普及によるところが大きい.このことは不妊カップルに限りない恩恵をもたらしはしたが,一方で不妊治療の負の影響をも産み出していることは否めない.多胎出産は単に新生児が複数同時に出生することだけではなく,低出生体重児あるいは臓器不全を伴ったNICU管理を必要とするハイリスク新生児が出生する可能性が極めて高いことを意味する.また,出生後の高い後遺症率だけではなく虐待を含めた児の予後を巡る種々の問題,さらには家族への影響,経済的負担などの社会的問題を多胎児育児は内在していることから,NICUに従事する医療者は単胎とは異なった社会的支援を含めた柔軟な対応を余儀なくされる.このことから,多胎妊娠の周産期管理増加は新生児医療に強烈なインパクトを与えているといえる.

多胎児出生後の母児ケア

著者: 河野由美 ,   三科潤

ページ範囲:P.778 - P.782

はじめに
 近年,医療技術の発展に伴い,本邦の多胎の出生数は増加し続けている1).さらに,単胎にくらべ死亡率,罹病率ともに高い2).このことは多胎児が単胎児にくらべ早産率が高く,呼吸窮迫症候群(RDS),壊死性腸炎(NEC),未熟児網膜症の発生頻度が高いことなどと関連している.また,新生児仮死や先天奇形の頻度も高い.長期予後としては,脳性麻痺や精神発達遅滞の症例中に双胎の頻度が高いことも知られている3,4).育児面からみても,一度に二人以上の子どもを育てる困難性は,育児援助者が限られた現代社会において,最も極端な場合は子ども虐待という重大な問題となりうる.ここでは多胎児にみられる合併症とそのケア,多胎児の育児上の問題点を中心に述べる.

多胎妊娠管理の実際

1.膜性診断と初期管理

著者: 古賀剛 ,   佐藤昌司 ,   中野仁雄

ページ範囲:P.712 - P.715

はじめに
 多胎妊娠においては,卵性あるいは膜性の違いによって周産期予後が明らかに異なる.児の形態異常の頻度あるいは周産期死亡率は,一卵性双胎が二卵性双胎に比べてきわめて高いこと1),さらに一絨毛膜性双胎においては,双胎間輸血症候群などの多彩でかつ重篤な胎児異常や産科的合併症が高率に発生すること2)がわかっている.したがって,多胎妊娠の初期管理では,多胎妊娠を確実に診断し,さらに卵性あるいは膜性を正しく診断することが必須である.

2.早産の予防と切迫早産の管理

著者: 関博之

ページ範囲:P.716 - P.720

はじめに
 近年,生殖医療の進歩により多胎妊娠が増加している1).IVF-ET時の移植胚数の制限により,四胎以上の症例は減少してきているものの,双胎,品胎の症例数は増加している1).多胎妊娠の管理上の問題点は,早産および子宮内胎児発育遅延の防止に集約される.単胎においても指摘されている絨毛羊膜炎などの主要な早産原因の他に,子宮の急激な増大や子宮内圧の上昇,胎盤間の血管吻合などの多胎妊娠の特殊性が早産や子宮内胎児発育遅延の要因となる.したがって,多胎妊娠の管理上の要点は,一般に指摘されている早産,子宮内胎児発育不全に対する管理・対処法に,多胎妊娠に特有の問題点も加味して管理・対処していくことが必要である.以下,具体的な管理法について述べて行く.

3.胎児の発育とwell-beingのモニター

著者: 藤森敬也 ,   佐藤章

ページ範囲:P.721 - P.725

はじめに
 多胎妊娠を管理して行くうえで,超音波による胎児発育計測および胎児well-beingのモニターは欠かすことができない.大切なことは,一側胎児に異常な検査結果が得られた時に,他側胎児もその未熟性によってすべての児を失わないように注意することである.単に双胎妊娠を単胎胎児2人と考えるのではなく,母体および胎児のハイリスク妊娠というその特異性に注意を払う必要がある.胎児超音波では,妊娠初期に膜性診断を行っておくことは,後の胎児管理のうえで特に重要となる.超音波はそのほか,胎児奇形(双胎胎児で単胎のおよそ2〜3倍),結合体,無心無頭体,胎児死亡,子宮内胎児発育遅延,双胎間輸血症候群,頸管長による早産予測など,その使用は多岐にわたる.
 本稿では,双胎妊娠を中心とした胎児の発育と胎児well-beingのモニターについて述べていくこととする.

4.胎盤・臍帯・羊水の異常と対応

著者: 坂田麻理子 ,   宇津正二 ,   前田一雄

ページ範囲:P.726 - P.730

はじめに
 自然妊娠の場合,多胎出現の頻度は80n−1回の分娩に1回(Hellinの概算式)程度である.しかし最近では排卵誘発剤使用・体外受精など生殖医学の進歩により増加している.本稿では多胎の中でも頻度の高い双胎妊娠について胎盤・臍帯・羊水の異常と対応について説明する.

5.双胎経腟分娩のリスクと管理

著者: 井槌慎一郎 ,   大塚博光 ,   石塚文平

ページ範囲:P.731 - P.735

はじめに
 双胎児は単胎児に比べ,周産期死亡率,罹病率ともに高いことは周知の通りであるが,それら胎児の予後に深くかかわる要因の一つに,分娩様式の選択がある.本稿では,双胎の分娩方針(分娩様式)として,経腔分娩を選択する場合に考えなければならない点について過去のデータ,文献などをもとに考察するとともに,現在の当科における双胎経腔分娩trialの選定基準とその実際についてもふれてみたい.

双胎間輸血症候群の診断と管理

1.双胎胎盤の病理所見—双胎間輸血症候群の血管吻合を中心に

著者: 中山雅弘

ページ範囲:P.736 - P.740

双胎の胎盤の観察法1)
 双胎の胎盤による卵性診断について述べる.双胎は,胎児の性別が異なればまず二卵性である.この点に関して.唯一の例外は胎児の性染色体異常症である.極めて稀な状態であるが,一卵性双胎で,1個の接合子の双生児化の時期と並行して(あるいはその後)不分離が生じたため,一方の染色体のY染色体が障害を受け,46,XY(男児)と45,XO(女児,Turner症侯群)という例外が発生する.当科で1例にのみこのような例を経験している2).性が同じである場合は胎盤の数を見る.胎盤が2個の場合は分離二絨毛二羊膜である.次いで,胎盤が1つの場合は隔壁があるかないか(羊水腔は1つか2つか?)をみる.隔壁がなければ一絨毛一羊膜胎盤である.隔壁があるときに,これと羊水腔表面の羊膜・絨毛膜との関係を見る.一絨毛二羊膜のときは隔壁は2枚の羊膜のみからなるので非常に薄い.二絨毛二羊膜のときは羊膜の間に結合織が見られるので通常厚い.この鑑別は,肉眼的に簡単にわかるものが大部分であるが.このような胎盤の約10個のうち,1〜2個は難しくて間違いやすい.二絨毛二羊膜胎盤で隔壁の結合織がわずかな場合は,注意深く見ないと一絨毛二羊膜胎盤と見間違う.このような例は,隔壁の組織検査も併用するとよい.

2.胎盤血管吻合の血流評価

著者: 小林浩一 ,   馬場一憲 ,   竹田省

ページ範囲:P.742 - P.744

はじめに
 一絨毛膜性双胎では,そのほとんどに胎盤の血管吻合が観察される.しかし,そのうちで,双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusion syn—drome:TTTS)を呈するのは,およそ15%といわれている.TTTSにおける吻合血管の血流評価に関してはいまだ諸説があり,不明の点も多いが,最近の報告を中心にまとめてみたい.

3.胎児循環—動脈系からの評価

著者: 中井祐一郎 ,   西尾順子 ,   峯眞紀子 ,   西原里香 ,   荻田幸雄

ページ範囲:P.746 - P.749

はじめに
 双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusionsyndrome:以下,TTTS)に代表される一絨毛膜性二羊膜性(以下,MD)双胎児間における循環不均衡は古くから知られており1),今なおMD双胎における重篤な合併症として恐れられている.しかし,その定義については種々の報告がある2)もののいまだ曖昧なところがある.また,胎盤において血管吻合がみられる時には,多かれ少かれ血液の移動があると推察されるが.超音波検査を中心とする新しい評価方法の導入に伴い,このような循環不均衡を検出することが可能になった.したがって,本症の概念についても,拡大されていく傾向があると考えられる.本疾患の本質としては,多血児における心負荷と貧血児の発育遅延があげられるが,これらについては超音波ドプラ法による血流評価が有用である3)ことから,別項に述べられる静脈系を含めた報告が多数行われている.
 本稿では,一絨毛膜性双胎における動脈血流所見について紹介するとともに,その臨床応用における注意点について解説する.

4.胎児循環—静脈系からの評価

著者: 宮下進

ページ範囲:P.750 - P.756

正常胎児静脈系の解剖と機能(図1)
1.体循環のvenous return
 正常心構築例では,右前方に位置する右心房に上大静脈および下大静脈が接続する.
 上大静脈は上肢および頭部からの血液が通過する.下大静脈は体壁を除く横隔膜以下からの血液が通過する.下大静脈からの血流は,主として卵円孔経由で左心房へ至り左房室弁(僧帽弁)を通過し,左室から大動脈へ駆出される,左心房へは肺静脈も還流しているので,右心房および左心房で血液がmixingされていることになる.

5.羊水量と尿産生量の評価

著者: 坂巻健 ,   菊池昭彦

ページ範囲:P.758 - P.761

はじめに
 羊水は胎児の尿や肺胞液などに由来し,胎児の肺,消化管の発達などに重要な役割を有するなど,子宮内の胎児の発育や成熟にとって不可欠な要素である.同時に,羊水量は胎児の状態を反映すると考えられており,羊水量の異常は胎児の異常,状態の悪化と密接に関連するため,その適切な診断と管理が必要である.双胎間輸血症候群では,受血児の羊水過多は重要な所見であり,時には初発症状として児のdiscordant growthに先行することがあるため,一絨毛膜性双胎では羊水量の注意深い観察が必要である.本稿では,羊水量の診断と,羊水の多くを占める胎児尿の産生量の評価について述べる.

6.治療の実際

著者: 清河康 ,   田中守 ,   吉村泰典

ページ範囲:P.762 - P.764

はじめに
 双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusionsyndrome:TTTS)は,一絨毛膜性双胎の約15〜35%に発症する予後不良な疾患で,その周産期死亡率は70〜80%とされている1).一絨毛膜性双胎では常に胎盤上の血管吻合が存在し,何らかの理由により双胎間の血流量のアンバランスが生じることでTTTSを発症する.双胎の受血児は多血,多尿,羊水過多,心不全を呈し,供血児は貧血,乏尿,羊水過少を呈し,重症例ではいわゆる“stuck twin”の状態となる2).無治療例では,受血児において急速に進行する羊水過多とそれに伴う前期破水・流早産が発生したり,心不全に伴う子宮内胎児死亡が発生するため予後不良となっている2).TTTSの胎内治療法でコンセンサスが得られた方法はないが,胎盤血管レーザー凝固術法は,1990年のDe Liaら3)の報告以降10年以上を経て海外において相当数の治療症例を積み重ね,一定の評価を得てきている2).そこで本稿では現時点でのTTTSの胎内治療法とその成績について,最近のデータを基に概説する.

7.重傷度の臨床評価と児娩出のタイミング

著者: 鈴木真

ページ範囲:P.766 - P.769

はじめに
 双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusionsyndrome:TTTS/feto-fetal transfusion syn—drome)は一絨毛膜性双胎の10〜15%に起こるとされる1).娩出された一絨毛膜性双胎の胎盤の検討では95〜100%に血管吻合が認められ2),一絨毛膜性双胎のほとんどで二児が一つの胎盤を共有している.また,胎盤に存在する吻合血管では血流が存在しているが,各方向の血流量が等量であるため相殺され均衡を保っている.しかし何らかの原因で胎盤吻合血管において血流量が一方に偏り,シャント血流量の不均衡が生じると双胎間輸血症候群が発症すると考えられる.
 双胎間輸血症候群はBlicksteinの提唱した診断基準3)が最もよく知られているが,ヘモグロビン差>5g/dlや体重差>15%にあてはまらない症例が多く存在する4).最近では実際の臨床に即した血流動態の変化を基本としたtwin oligohy—dramnios-polyhydramnios sequence(TOPS)と称される供血児の羊水過少と受血児の羊水過多,つまり循環血漿量減少と循環血漿量増大として理解されている.

連載 カラーグラフ 知っていると役立つ婦人科病理・36

What is your diagnosis?

著者: 島田志保 ,   廣瀬隆則 ,   清水道生

ページ範囲:P.705 - P.707

症例:80歳,女性
 外陰部掻痒感を主訴に来院.外陰部に8.5×4.5cm大の白色斑が認められた.Fig 1(弱拡大)およびFig 2,3(強拡大)は切除検体の組織像(HE染色)である.
 1.表皮内にみられる病変の診断名は何か.

病院めぐり

岡山済生会総合病院

著者: 岸本廉夫

ページ範囲:P.784 - P.784

 恩賜財団岡山県済生会は「済生・救療」の精神を基本とし,昭和13年に診療所として岡山市(JR岡山駅より徒歩5分)に開設され,「すべての人が医療を受けられるように」との理念持って,地域医療に密着した信頼される医療を行ってきましたが,さらに昭和32年には総合病院としてスタートして40年余となります.現在,18診療科,568床で運営されています.新築工事も平成10年2月に竣工し,屋上にヘリポートを有する岡山の中核病院として機能しており,平成12年には日本医療機能評価機構の認定病院にもなりました.さらにエイズ治療拠点病院,災害拠点病院,臨床研修病院など多くの指定を受けています.
 現在,産婦人科は35床,5名の常勤医で運営されており,スタッフはすべて岡山大学医学部産婦人科学教室からの派遣です.年間手術件数は約330件,分娩数は400例あまりですが,産科,婦人科ともバランスのとれた診療を行っています.また,医療の質の向上をはかるべくクリニカルパスを積極的に導入しています.

国立病院長崎医療センター

著者: 山下洋

ページ範囲:P.785 - P.785

 国立病院長崎医療センターは,昭和17年に佐世保海軍病院大村病舎として創設され,昭和20年に厚生省移管国立大村病院として発足しました.その後,昭和50年に国立長崎中央病院と名称を変更し,さらに平成13年9月に新病棟開院とともに名称も変更され国立病院長崎医療センターとなりました.
 当病院は,長崎県のほぼ中央部に広がる大村市の海岸に面した高台に位置し,長崎空港,九州横断自動車道の大村インターとも接し,長崎,島原への交通の要所に位置します.診療圏は,長崎県の県央部および多くの離島・僻地.佐賀県西部と広い地域をカバーしています.そして地域の消防隊および自衛隊と協力し救急患者搬送を積極的に受け入れ,長崎県の救急医療の中心となっています.夜間・休日は,内科系2名,外科系2名,救命救急室当直医1名,研修医2名の計7名の医師当直体制をとり,さらに各科独自に待機体制が確立しており,当直医と連携して救急医療に従事しています.現在,全病床数は650床で,25の診療科を標榜し,救急医療のみならず,高度先進医療を提供するように努めています.

最新の手術器械を使いこなす・2

超音波凝固切開装置

著者: 森田峰人 ,   渡辺慎一郎 ,   浅川恭行 ,   中熊正仁 ,   久保春海

ページ範囲:P.788 - P.793

はじめに
 手術は,「切る」,「はさむ」,「剥離する」,「結紮する」,「縫合する」,「止血する」の6つの基本的操作から成り立っており,いかなる複雑な手術であっても,結局,基本的にはこれらの基本手技の組み合わせで行われる.腹腔鏡下手術では,これらの基本的な手技の中で,結紮,縫合,止血の3者は,開腹手術に比べると困難で時間を要する手技である.特に止血に関しては,従来から出血させない手術と迅速な止血が望まれ,そのためにさまざまな止血法が実施されてきた.焼灼による止血,結紮による止血,クリップによる止血,電気メスによる凝固止血,レーザーによる止血,マイクロウェーブによる凝固止血,種々の止血剤による止血などが従来から用いられてきたが,腹腔鏡下手術ではクリップや電気メスが多用されてきた.
 本稿で取り上げる超音波凝固切開装置(ハーモニックスカルペル:ジョンソン・エンド・ジョンソン社:以下,HS)は,これまでの手術の概念を大きく覆すもので,軟組織の凝固と切開を同時にかつ低温で行うことができ,周辺組織への損傷が他のエネルギー形態を使用した手術装置よりも少ないことが特徴である.本稿ではHSの構造や基本原理から実際の使用までを解説する.

OBSTETRIC NEWS

胎児酸素飽和度モニター—ACOGの姿勢

著者: 武久徹

ページ範囲:P.796 - P.797

 2001年の米国産婦人科学会臨床大会(ACOGACM 2001,シカゴ)のscientific sessionの1つで胎児心拍数モニタリングの過去,現在,未来が取り上げられた(Quilligan,Freeman & Garite).将来の問題を担当したGariteは,胎児酸素飽和度モニターの有用性を解説した.胎児酸素飽和度モニターはnonreassuring FHRパターンのための帝王切開率を減少させる上で有用であるという結論であった.
 しかし,ACOG(ACOG産科医療委員会)は最近,胎児酸素飽和度モニター採用に関する慎重な見解を以下のように示している.

Current Practice

分娩出産の合併症にはどのようなものがあるか

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.797 - P.797

 分娩出産の合併症にはどのようなものがあるだろうか?米国の場合を最近の産婦人科新聞からご紹介したい.以下,米国の場合である.
 なお,言葉の問題であるが,英米では分娩は陣痛(labor)と娩出(delivery)とに分けられる.日本語では分娩遷延という時の分娩はlaborであろうし,分娩外傷という時の分娩はdeliveryとなる.

薬の臨床

桂枝茯苓丸の非エキス化製剤「TK−061」の更年期諸症状に対する効果—テイコク桂枝茯苓丸料エキス顆粒との比較検証

著者: 荻田幸雄 ,   藤本征一郎 ,   後山尚久 ,   神崎秀陽 ,   野口昌良 ,   荒木勤 ,   石川睦男 ,   田中俊誠 ,   畑俊夫 ,   菊池義公 ,   太田博明 ,   岩下光利 ,   牧野田知 ,   玉舎輝彦 ,   鈴森薫 ,   星合昊 ,   本庄英雄 ,   大濱紘三 ,   高井教行 ,   池ノ上克 ,   田部井徹

ページ範囲:P.799 - P.810

 桂枝茯苓丸は,元来は生薬を煎じることなく服用するものであった.今回,原典に即してエキス化せずに生薬粉末を用いて錠剤化した「TK−061」と,既存のエキス製剤である「テイコク桂枝茯苓丸料エキス顆粒(TKK−25)」との臨床的同等性の検証試験を実施した.対象疾患は更年期障害とし,簡略更年期指数(SMI)の改善度を指標として有効性の検証を行った結果,TK−061群の有効率は58.8%で,TKK−25群の51.0%よりも高く,TK−061は原料生薬量が少ないにもかかわらず,TKK−25に対して同等以上の有効性を有することが検証された.重篤な有害事象の発現はなく,有害事象および副作用の発現率については両群間で有意差は認められなかった.また,概括安全度の解析結果からも,両薬剤の安全性はほぼ同等であることが明らかとなった.

総説

系統的リンパ節郭清術の意義—予防的,診断的,それとも治療的?

著者: 林博章 ,   藤井哲也 ,   山下剛 ,   石川睦男

ページ範囲:P.813 - P.819

 悪性腫瘍の診療で,リンパ節転移の有無は術式の決定,術後の治療法,予後推定に大きな影響を及ぼす.悪性腫瘍におけるリンパ節転移は各臓器において予後因子となることに,現時点で異論はないと思われる.リンパ節切除・郭清が予後を改善するか否かはいまだ議論の最中で確証が得られていないにもかかわらず,リンパ節郭清術が根治手術の一環として行われている.「系統的リンパ節郭清術は診断的,予防的,それとも治療的?」といった疑問について,EBMの観点からprospective randomized trialの報告を中心に,他領域のリンパ節郭清術の成績を含めて検証を行う.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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