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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科56巻8号

2002年08月発行

文献概要

今月の臨床 —どこまで可能か—悪性腫瘍治療と妊孕能温存 悪性腫瘍治療と妊孕能温存—最近の考え方

1.腫瘍治療の立場から

著者: 落合和徳1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学産婦人科

ページ範囲:P.942 - P.944

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固体保存と種族保存
 悪性腫瘍の治療上のゴールは治癒である.患者という固体から悪性腫瘍が駆逐され病前の健康を回復することである.これはとりもなおさず固体保存の概念にほかならない.一方,人間の本能的な欲求として子孫をもつ,すなわち種族保存,reproductionの欲求があることも事実である.固体保存と種族保存は時として相容れないことがある.とくに生殖器の悪性腫瘍は腫瘍病変に対する根治的治療を行うことによって生殖能力を失うことになる.固体を保存するために種族保存のための能力を犠牲にするわけである.一般論として,消化器など生命維持に必要な臓器悪性腫瘍の手術療法では当然のごとく機能温存が重視される.機能温存を行わなければ,外科的に腫瘍組織を取り除いた(という外科医の自己満足)だけでホストの生命は保証されない.これでは本末転倒である.ところが生殖器は固体の生命維持には無関係な臓器であるが故に婦人科腫瘍医は臓器摘出に躍起になったのかも知れない.
 乳房も生命維持には無関係な臓器である.女性のアイデンティティという意味では重要であるが,広汎な切除が必ずしも予後に貢献しないこと,術後の障害を起こしやすいこと,QOLを損なうことなどの理由から縮小手術が行われるようになった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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