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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻1号

2003年01月発行

雑誌目次

今月の臨床 婦人科がん検診

婦人科がんの最近の動向

著者: 植木實

ページ範囲:P.10 - P.15

はじめに

 日本では昭和の初期(1924年頃)までは人生50年と言われていた.戦後の昭和25年(1949年)に女性の平均寿命が60歳を越してニュースになり,昭和60年(1984年)には80歳に,現在では84歳に到達し,世界の長寿記録をぬり変えつつある.計算上では女性の寿命は戦後2年に1歳延びてきたことになろう.

この理由には栄養とか環境などいろいろな要因が挙げられるが,やはり大きな原因は人間に死を招く病気,すなわち死亡疾患の変化にある.昭和初期は亡国病と言われた結核が最多で,昭和25年(1949年)には脳溢血などの脳血管疾患に代わった.その後昭和56年(1981年)にはがんがトップになり,以来がんは死亡原因(95万人/年・1999年)として増加し,他の疾患に大きく差をつけつつある1)

 したがって現在の医療はがんの早期発見への努力,進行したがんや再発がんに対する治療対策に大きな比重が置かれている.1983年,政府は「対がん10ヵ年総合戦略」,1992年には「がん克服新10ヵ年戦略」を策定し,各施設で本格的な研究が行われている.

 このような観点から,最近の悪性腫瘍の動向について述べてみたい.

婦人科がん検診の現状と将来展望

著者: 蔵本博行 ,   新井努 ,   川口美和 ,   藤澤武志 ,   鎌田裕子 ,   西村由香里

ページ範囲:P.16 - P.20

はじめに

 婦人科領域の悪性腫瘍の中で,子宮体癌と卵巣癌が急速に増加しており,これまで癌といえば子宮頸癌であったのに比べて大きく変化してきている.

 これらのうち子宮体癌は,例えば北里大学病院での経験では,全婦人科癌の20%,全子宮癌の40%を越えるレベルにまでになっている.体癌患者を年齢別に見ると,増加しているのは40歳代の比較的若年者である.これまで50歳以上の年齢層にほとんど集中していたのに比べて,体癌患者の40%を若年体癌患者が占めるまでに増加していた.

卵巣癌も子宮体癌と同様に増加している癌であって,その死亡率は婦人科癌の中で最も高い.そのため,早期発見・早期治療による死亡率の低減が期待されている.

 一般にがん検診が有効である癌は,長い前臨床期間を有しているものである.また,前癌病変も含めて癌の自然史が明らかにされているものに限られる.婦人科の3大癌の中では,子宮頸癌で最もその自然史が明らかにされており,子宮体癌も最近明らかになってきている.しかし卵巣癌に関しては不明なことが多い.そのため子宮頸癌と体癌は検診が有効である癌,卵巣癌は未だ有効でない癌とされている.

 本稿では,まず本邦における死亡の動向について検討を加える.次いで,子宮頸癌と体癌に対する検診の実績について,前者は神奈川県での車集検,後者では日本産婦人科医会の各都道府県支部に対して行った全国集計の結果を通して述べることとしたい.

婦人科がん検診の有効性

著者: 牧野浩充 ,   八重樫伸生

ページ範囲:P.21 - P.25

はじめに

 がん検診の目的は,がんの早期発見や早期治療によりがんの進展を予防し,がん死亡率を低下させることにある.がん検診が集団で組織的にかつ公的に行われるようになった現在,それが社会的,経済的に及ぼす影響は大きく,その実施においてはがん検診の有効性の評価が急務となってきた.

 諸外国では既に1970年代から,まずがん検診の評価の方法,次いでその有効性の評価についての検討が始められた.1980年代になると,子宮頸癌検診の有効性の評価に関する報告がいくつか見られるようになった.

 1990年代には,わが国でもがん検診の有効性を評価しようとする取り組みが始まった.特に,1991年(平成3年)の第92回日本医学会シンポジウムでは,「癌集団検診の再評価」がテーマとして取り上げられた1).その後,1996年(平成8年)には,がん検診の有効性評価に関する研究班が組織され,1998年(平成10年)には「がん検診の有効性等に関する情報提供のための手引」2)(以下,平成10年報告書)という報告書が提出された.これは国内外の文献を詳細に検討し,個々のがん検診に関する現状での結論と勧告をまとめたものである.その後,さらに新たな知見を加え,2001年(平成13年)には「新たながん検診手法の有効性の評価」3)(以下,平成13年報告書)としての報告書が提出された.いずれもわが国の今後のがん検診の指針となるものである.

 本稿では,これらの報告書の内容にわれわれの最近の研究成果を交えながら,婦人科がん検診の有効性について概説する.

婦人科がんのリスク因子

著者: 加藤秀則 ,   近藤晴彦 ,   和氣徳夫

ページ範囲:P.26 - P.29

はじめに

 婦人科癌発症のリスク因子には,旧くからさまざまな要因があげられてきた.その多くは細胞の発癌機構にどのようにかかわっているかは不明の点が多く,統計的な有意差によって論じられてきた.最近の分子生物学的研究手法の進歩によって,そのいくつか,特に家族性の発癌の本態が明らかになりつつある.本稿では発癌のリスク因子を後天的・環境的因子と先天性・家族性のものに分けて概説したい.

婦人科がんの遺伝子検査―新しい検査法の可能性

著者: 青木大輔 ,   齊藤英子 ,   鈴木直 ,   野澤志朗

ページ範囲:P.30 - P.33

はじめに

 ある検査法ががん検診のスクリーニング手法として成立するためにはいくつかの条件がある.(1)罹患率,有病率,死亡率が高いこと,(2)検査が簡単で費用も適正であること,(3)スクリーニング検査の妥当性と信頼性が高いこと,(4)早期発見後の早期治療効果が明らかであること(公衆衛生審議会,1989)などである.(1)と(4)は検査法によらず,疾患の特性によって決定されるものである.3,000~5,000人に1人の発生頻度があればスクリーニングを検討するに値すると考えられており,婦人科領域では子宮頸がん,子宮体がん,卵巣がんの罹患率がこれに達するとされている.またこれら3つの疾患はいずれも早期発見された場合には治療によって比較的良好な予後が得られており,これらの観点から婦人科がん早期発見のためのスクリーニングは有用性があると考えられる.

 わが国では,老人保健事業による地域住民検診によって,国の施策として子宮頸がんと子宮体がんに対する検診が施行されてきたが,卵巣がんに対するスクリーニング法はわが国でも諸外国でも未だ試行段階であり,コンセンサスが得られた検診手法があるとは言い難い.また子宮頸がん検診においても子宮体がん検診においても現行の方法より優れたスクリーニング法が開発され,その有効性が証明されれば新たな手法を導入することもやぶさかではないだろう.

正診率向上のための要点

1.婦人科がん検診時の問診のコツ

著者: 藤原恵一 ,   前畑賢一郎 ,   小田隆司 ,   長治誠 ,   河野一郎

ページ範囲:P.35 - P.37

はじめに

 婦人科がん検診を受診する女性の大多数は無症状である.したがって検診時の問診は,日常診療における「症状を訴えて来院した患者」に対する問診とは異なり,いわゆる「現病歴」をとる必要がない.一方がん検診時の問診の特徴は,無症状の受診者あるいは本人にとっては問題ないと思われている軽微な症状をもった受診者において,どのくらいの割合で異常が発見されるかを後に明確にするための重要なデータソースとなることだと言える.したがって,対象となる疾患の疫学的背景を十分理解した上で問診票は作成されるべきであり,設定された項目は空欄がないように回答されているかどうかをチェックする必要がある.

2.子宮頸癌 1)検体採取のコツ

著者: 福田耕一 ,   内山倫子

ページ範囲:P.39 - P.41

はじめに

 子宮頸癌検診において,細胞診が果たす役割の重要性は広く認められているところである.近年,1989年の米国におけるTBS(ベセスダ・システム)の登場以来,細胞診の精度管理が話題となってきた1~3).細胞診の精度管理を左右するものは,検鏡に携わる細胞検査技士や細胞診認定医(指導医)の技量の問題よりも,多くの場合,臨床の現場にいる医師自身の知識不足に起因することが指摘されている4).年齢,最終月経,臨床診断などの適切な情報が欠けていたり,乾燥標本,細胞量が少ない,固定不十分,塗抹が厚いなど検鏡に不適切な標本であったり,あるいは採取部位が適切でないため異型細胞が採取されない(sampling error)などが考えられる.

 本稿では,sampling errorや不適切標本を避けるための頸部細胞診の細胞採取法,塗抹法,固定法,採取器具などについて私見を述べる.

2.子宮頸癌 2)見逃しやすい初期病変―腺系病変

著者: 大石徹郎 ,   紀川純三 ,   皆川幸久 ,   寺川直樹

ページ範囲:P.42 - P.45

はじめに

 がん検診の普及により,子宮頸癌においても初期癌や前癌病変の占める割合が増加し,その死亡率は低下した.子宮頸部の扁平上皮系病変に対する病理学的ならびに細胞学的診断基準はすでに確立している.一方,近年発生頻度の増加が指摘されている頸部腺系病変では,その自然史や進展様式について未だ不明な点が多く,腺異形成や上皮内腺癌の病理学的位置づけも明確ではない.

 子宮がん検診のさらなる精度向上のためには,頸部腺系病変の正確な把握と的確な診断が重要な課題となる.本稿では,子宮頸部の腺系初期病変の概念とその細胞像について概説する.

2.子宮頸癌 3)細胞診Class IIIの取り扱い方

著者: 斉藤淳子

ページ範囲:P.47 - P.49

はじめに

 細胞診による子宮頸癌検診は広く行われており,そのなかで細胞診Class IIIの症例に対しては,コルポ下生検を行ったり,施設によって再度細胞診後に追跡管理されているのが現状である.これらClass IIIの症例では,軽度の炎症性変化から異形成,癌に至る病変が見つかり,これらの取り扱いについては十分に注意する必要がある.日本ではその管理,追跡方法については確立した指針がない.一方,米国では2001年にこれまで用いられてきた細胞診診断のベセスダシステム(1991年)1)を細胞診断学と新技術(細胞診自動解析装置,細胞診画像解析システム,液状処理標本liquid―based specimen, HPV testなど)の発展による変更を加え,ベセスダシステム20012)とし,2002年にはThe American Society for Colposcopy and Cervical Pathology(ASCCP)が「子宮頸部細胞異常ならびに頸部前癌病変の取り扱いについての共通ガイドライン」3)を作成し,癌の見落としを少なくする努力がなされている.

 日本では,日母細胞診クラス分類4)が広く用いられており,米国での細胞診分類ベセスダシステム2001やその取り扱いについても参考にし,子宮頸部細胞診Class IIIの症例の取り扱いについて解説する.

2.子宮頸癌 4)妊娠時における診断の注意点

著者: 伊東英樹 ,   斉藤豪 ,   田中綾一

ページ範囲:P.50 - P.55

はじめに

 妊婦の子宮頸部細胞診異常の頻度は0.72~3.7%との報告1~8)があるが,集団検診による異常頻度報告9)が1.85%であり,また非妊婦の異常頻度が3.27%との報告8)と比較して大差ないものと言える.妊婦の子宮癌検診としては非妊婦と同様に,一次スクリーニング検査として細胞診,そして細胞異常が認められた場合には二次検診としてコルポスコピー(コルポ診),さらに異常所見があれば狙い組織診を施行する.しかし初診時の妊娠診断や妊婦検診に際し,妊婦には子宮頸癌検診が必ずしも必要な検査ではないと思い込んでいる女性も多いため,はじめに検査内容の十分な説明と同意を得ることが必要である.また子宮頸癌検診を行う場合には非妊婦と異なり,妊娠週数が進むほど細胞採取後に出血・褐色帯下を起こしやすくなる.さらに頸部軟化腫大などが生じやすくなり,特に妊娠中期以降では腫大化が著明となるため,コルポ診や狙い組織診が施行しづらくなる.このため,妊娠診断の早い段階での癌検診実施が重要である.この他に,細胞診異常の分娩までの管理などで,非妊時とは全く異なった検診上の注意事項が発生する.

 妊娠時における子宮頸癌検診の注意点を分類すると,細胞採取後出血に伴う注意点,頸部の軟化腫大に伴う注意点,細胞・組織診断上の注意点,細胞診異常の管理上の注意点に大別されるが,以下にこれらの注意点とその対策について具体的に述べる.

3.子宮体癌 1)検体採取のコツ

著者: 澤田守男 ,   笠松高弘

ページ範囲:P.56 - P.59

適切な細胞診標本

 細胞診の通常の流れとしては,まず臨床医が細胞を採取・塗抹・固定,続いてスクリーナーが染色・スクリーニング(鏡検)し,最後に細胞診指導医が診断するというのが一般的である.その中で円滑に細胞診が行われるには,(1)診断に耐えうる十分な量の細胞採取,(2)適切な塗抹,(3)適切な固定,(4)適切な染色,(5)適切なスクリーニング・診断といった条件が満たされる必要がある.

 そのうち(1)~(3)は臨床医の責任であり,正確な細胞診断を行うためには,臨床医から適切な細胞診標本を診断側に提供する義務がある.

3.子宮体癌 2)見逃しやすい初期病変

著者: 山本嘉一郎

ページ範囲:P.60 - P.63

はじめに

 本邦における子宮体癌検診は,昭和62年の第二次老人保健法において事業に追加され,全国規模での実施が開始された.検診対象者は子宮頸癌検診受診者のうち,問診などの結果6か月以内に不正性器出血を訴えたことのある者で,(1)年齢50歳以上の者,(2)閉経以後の者,(3)未妊婦であって月経不規則の者,のいずれかに該当する者(ただし,この条件に該当しない場合であっても,医師が必要と認める場合には実施する)と定められている.このように検診対象者を限定することは重要であるが1~4),初期癌の発見には症状のない閉経以後の女性を対象とした検診も必要である5)

3.子宮体癌 3)超音波によるスクリーニング

著者: 松岡隆 ,   市塚清健 ,   市原三義 ,   長谷川潤一 ,   石川哲也 ,   岡井崇

ページ範囲:P.65 - P.69

はじめに

 閉経後に不正性器出血を主訴として来院した患者では,必ず子宮体癌を鑑別する必要がある.近年生活スタイルの欧米化により,子宮体癌の発生率は年々増加傾向にあり,外来でのスクリーニングの役割が重要になってきている.しかしながら,細胞診においては子宮頸癌のようなシステマチックな診断手順が確立されておらず,また細胞診は検査そのものが疼痛を伴うことより,細胞診の適応に悩むことが多いのが実情である.ここでは侵襲の小さい経腟超音波を基礎とした子宮体癌のスクリーニング法について述べたいと思う.

4.卵巣癌 1)超音波によるスクリーニング

著者: 木村英三

ページ範囲:P.70 - P.75

はじめに

 経腟超音波断層法の発達により付属器病変の診断は一般外来ならびに検診センターなどで即時に,手軽に,そして正確に行えるようになった.とくに従来の経腹法と比べると,小さな病変の描出能,皮下脂肪などに影響されない腫瘍内部構造や内容物の観察能,卵管病変や傍卵巣病変の診断能などで良好な成績を示している.卵巣癌検診の分野でも経腟超音波断層法を積極的に利用する試みがいつくか報告されている.本稿では,超音波断層法を中心とした卵巣癌検診の現状と問題点ならびに良・悪性の鑑別における留意点を述べる.

4.卵巣癌 2)腫瘍マーカーの使い方

著者: 沼文隆 ,   縄田修吾

ページ範囲:P.76 - P.79

はじめに

 日常診療において卵巣腫瘍を認めた場合,良性・悪性の鑑別が,その後の治療方針決定の上で最も重要となる.これには臨床症状,内診に加え,腫瘍の形態学的性状をとらえる画像診断(超音波,CT,MR)とともに,腫瘍の生化学的指標とも考えられる血清腫瘍マーカー測定が参考となる.この腫瘍マーカーとは「癌細胞が作る,または非癌細胞(宿主)が癌細胞に反応して作る物質のうちで,癌の存在,細胞の種類とその量を反映する指標となるもの」をいい,卵巣癌に対してもこれまでCA125をはじめ多数のものが開発されている.われわれ産婦人科医は保険診療上の制約もあり,多くの腫瘍マーカーの中から適切なものを選択し使わなければならない.一方,腫瘍マーカー測定の意義については,治療効果の判定,再発のモニタリングにおけるその有用性は認められているものの,偽陽性疾患が存在すること,あるいは癌の早期診断に用いることは未だ困難であることなどの実状を理解しておくことも大切である.

 ここでは,当科における卵巣癌の腫瘍マーカーの使い方を中心に述べる.

5.外陰癌と腟癌

著者: 小西郁生 ,   岡賢二 ,   伊東和子

ページ範囲:P.81 - P.85

はじめに

 外陰癌および腟癌は比較的頻度が低い疾患であるため,がん検診によってスクリーニングを行う対象ではない.したがって,患者が外陰腫瘤の自覚,疼痛,掻痒感,性器出血を訴えて来院した際に,これを見逃すことなく診断して適切な治療を行うことが重要である.このためには悪性の疑いのある病変を肉眼的に同定し,必ず生検を行うことが必須である.また子宮頸癌のスクリーニングと異なり,細胞診に頼らずに積極的に生検を行うこと大切である.

連載 知っていると役立つ婦人科病理・43

What is your diagnosis ?

著者: 森谷卓也 ,   武山淳二

ページ範囲:P.7 - P.9

症例 : 48歳,女性

月経不順および比較的程度の強い不正性器出血を主訴に来院した.生検組織像の弱拡大像(Fig 1)とその近傍の強拡大像(Fig 2)を示す.

1.病理組織診断は何か.

2.増殖症や癌の可能性はないのか.

OBSTETRIC NEWS

妊娠中のルチーン検査 : C型肝炎抗体検査を全例に行うべきか?

著者: 武久徹

ページ範囲:P.86 - P.88

 米国産婦人科学会(ACOG),NIH,そしてCDCも妊娠中のC型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査を全例に行うことに反対する見解を変えていない.

 NIHは,どのHCV感染妊婦と新生児がC型肝炎発症のハイリスクで治療の恩恵があるかの予知に限界があり,さらに母子感染を予防する介入方法がないから,より安全,有効,安価な治療方法が利用でき,母子感染を阻止できる方法が開発されればルチーン検査が再検討されるべきであるが,現時点では危険因子(表1)に基づき選択的検査を採用すべきで,全妊婦をルチーンに検査する正当性はないと勧告している(Obstet Gynecol 94 : 1044, 1999).ACOGも,危険因子(表2)(AAP & ACOG. Guidelines for Perinatal Care. 4th ed. p 213, 1997)がある例にのみ検査を行うべきで,妊娠中のルチーン検査は勧められないと勧告している(ACOG Committee Opinion. No. 213, December 1999).

ここまできた婦人科日帰り手術 1

婦人科日帰り手術の現況

著者: 井上裕美

ページ範囲:P.89 - P.95

1 はじめに

 1995年10月に湘南鎌倉総合病院に日帰り手術センターが開設されてからはや7年が経過しようとしている.婦人科以外にも多くの患者が手術当日にこのセンターに入り,隣の手術室で手術を受け,そして夕方帰っていく.初めて卵巣嚢腫の手術をして当日帰った患者を玄関まで送った日が懐しく思えてくる.内視鏡下手術と呼応するように行われた「婦人科日帰り手術」はさまざまな要素が関係し,そしていろいろな要素がこのシステムを後押ししていた.1997年には腹腔鏡下手術後に日帰りした患者は2人であったが,この7年間でそのような患者は350名を超えようとしている.いま間違いなくいえることは,このシステムは「患者のための医療」の一環としてのよい評価,そして一方では批判的評価などさまざまな評価を受けながらも,患者の治療法選択の1つになりつつあるということである.いま当院で行われている婦人科日帰り手術について,産婦人科学というより,産婦人科医療として振り返りながら,今後の展望についても述べてみたい.

 このシリーズでは,術後,翌日退院までの症例(広い意味での日帰り手術)も検討に入れて,全体としてはminimally invasive surgeryについて検討してみたいと思う.

病院めぐり

国立水戸病院

著者: 対木章

ページ範囲:P.98 - P.98

 病院の概要 : 当院は,明治43年,水戸陸軍衛生病院として設立され,昭和20年,厚生省に移管し国立水戸病院として発足した.昭和40年,日本三名園の水戸偕楽園からほど近い現在地に移転し,水戸市周辺の二次医療圏約80万人の地域基幹病院として機能を果たしている.現在,23診療科,500床,医師数107名の総合診療施設で,その特徴は(1)救命救急センターを中心とした第三次救急医療,(2)癌の高度先駆的医療,(3)少子化に対応できる成育医療,(4)心疾患,脳血管疾患の高度先駆的医療,(5)エイズ拠点病院としての医療,(6)原子力災害に対応できる設備,医療,(7)臨床研修指定病院としての研修医の卒後教育,が掲げられている.

 新病院への移転 : 当院は,平成16年,茨城町に新築移転の予定で,電子カルテシステムと院内LANからなる総合医療情報システム,SPDなどの物流搬送システムの導入により,21世紀の診療体制が整備される.病棟構成が機能別になり,成育病棟,がん病棟,循環器病棟,一般病棟が設置される予定である.

国立相模原病院

著者: 巽英樹

ページ範囲:P.99 - P.99

 当院は昭和13年に相模原台地に臨時東京第3陸軍病院として発足しましたが,昭和20年12月に官制改革に伴い厚生省移管となり,以来,国立相模原病院として50数年の歴史があります.

 建物は昭和40年台に建設されたものがほとんどですが,内外の改修により,古き良き時代の自然の多い趣を保っています.また,平成13年には病院機能評価にも合格しています.

症例

子宮底部漿膜下膿瘍の1例

著者: 井上孝実 ,   野村昌男

ページ範囲:P.102 - P.104

●はじめに

 子宮体部の炎症はそのほとんどが子宮内膜炎であり,膿瘍を形成するとすれば一般的には子宮腔内に膿が貯留するいわゆる子宮留膿腫の病態をとる.今回われわれは,きわめて稀と思われる子宮漿膜下の膿瘍を経験したので報告する.

総説

帝王切開創部妊娠の診断について

著者: 佐藤賢一郎 ,   水内英充

ページ範囲:P.106 - P.111

はじめに

 帝王切開(以下,帝切)創部妊娠はきわめて稀な疾患であるが,first trimesterで子宮破裂や大量出血に至る可能性が高いため,早期診断が必要とされる.しかし,本疾患の診断については,症例が少ないこともあり現時点で確立したものはない.今回われわれは,経腟超音波およびMRI所見により術前診断し,腟式子宮切開除去術により子宮温存が可能であった帝切創部妊娠の稀な1例1)を経験した.本症例の画像・臨床所見および文献的考察より,本疾患の診断について検討を行い,若干の知見を得たので報告する.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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