文献詳細
今月の臨床 周産期の難題を解く―最新のエビデンスを考慮した解説
分娩管理
4.GBS陽性例の取り扱いは?
著者: 山田秀人1 長和俊2
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻 2北海道大学医学部附属病院周産母子センター
ページ範囲:P.1295 - P.1299
文献概要
B群溶血性連鎖球菌(Streptococcus agalactiae, group B Streptococcus : GBS)は通性嫌気性菌であり,成人男女とも約30%の頻度で腸管内に保菌している.日本での妊婦の保菌率に関して,腟培養で13.8%1),腟・肛門培養で20.1%1),妊娠26~30週の腟前庭培養で18.1%2)などの報告が散見できる.
新生児GBS感染症は,生後7日未満に発症する早発型と,7日以降に発症する遅発型に分類される.早発型は3日以内,特に24時間以内に発症することが多く,肺炎や敗血症,次に髄膜炎の病型が多い.遅発型病型は髄膜炎や敗血症が多く,肺炎は少ない.早発型は上行性子宮内感染ないし産道感染による垂直感染で発症し,遅発型は垂直感染による保菌後に,または水平感染で起きると考えられている.以下,早発型新生児GBS感染症をEOGBS(early―onset neonatal GBS infection)と略する.
分娩中の予防的抗生剤投与によって,米国ではEOGBS発症率が1993年の0.17%から1998年の0.06%に減少した3).これまで,日本におけるEOGBS発症率は欧米に比べて低く4),0.051%5)と推察されてきた.このため,日本での予防対策効果を疑問視する見解すら存在する.新生児敗血症スクリーニングを実施してきた当院でのEOGBS発症率は0.34%であった.従来の推察と異なり,周産期医療におけるEOGBSの重みは決して少ないものではない.
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