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臨床経験
感染防止のためにストローを用いた前核期胚vitrification法による妊娠成功について
著者: 熊迫陽子1 公文麻美1 宇津宮隆史1 荒木康久2
所属機関: 1セントルカ産婦人科 2高度生殖医療技術研究所
ページ範囲:P.1576 - P.1579
文献購入ページに移動今から30年以上前にWhittinghamら1)によってマウス胚の凍結保存が行われて以来,ヒト卵子,前核期胚,分割期胚,胚盤胞と,さまざまな発育段階における凍結保存はなくてはならないものとなった.最初にヒトの凍結保存胚で妊娠が得られたのは1983年のTrounson and Mohr2)によってであった.
一方1985年に,それまでの緩慢凍結法に替わり-196度でマウス胚をガラス化保存するという方法がRall and Fahy3)によって報告された.そのultra―rapid freezing(vitrification)法は,冷却・加温の際に氷晶を形成させずガラス様の状態で胚を凍結保存するものである.1990年にGordtsら4)によってヒト胚で初のvitrification胚で妊娠が得られてからは,緩慢法に比べ迅速でコストが低く抑えられるというその利点から,多くの基礎研究,臨床について次々に報告された.胚を保存する際の保存容器についてもさまざまな報告があるが,cryoloopやelectron microscope gridやopen pulled strawなどの開放された容器では液体窒素からの汚染の可能性が危惧される.
今回われわれは,完全に閉鎖された系であるプラスチックストローでヒト前核期胚vitrificationを行い,融解後に移植し妊娠が得られたので報告する.
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