84.進行卵巣癌の外来維持化学療法について教えて下さい.
著者:
榎本隆之
,
中嶌竜一
,
上田豊
,
村田雄二
ページ範囲:P.590 - P.591
1 診療の概説
現在,進行卵巣癌に対する寛解導入化学療法としてpaclitaxel+carboplatinがfirst line chemotherapyとして使用されており,高い奏効率をあげている.しかし,臨床的に完全寛解(complete response)となった症例の約50%が1年以内に,約80%が2年以内に再発することが知られており,再発卵巣癌に対する化学療法(second line chemotherapy)は,現在のところどのような薬剤の組み合わせでも奏効率は低く,完全治癒の可能性は低い.したがって,進行卵巣癌の予後を改善するためには,寛解導入後,卵巣癌の再発を防ぐことが重要であり,このような見地から進行卵巣癌の維持化学療法に関して各国でさまざまな無作為比較試験が行われている(表1).なかでも初回化学療法にて寛解導入後にpaclitaxel(タキソール(R))による継続治療を行った第II相試験で,副作用が少なく臨床的に有用性であることが確認されたため,米国ではpaclitaxel(タキソール(R))による外来維持化学療法の無作為比較試験(GOG178)が施行されている.
2002年のASCO(米国癌治療学会)ではこのGOG178の中間報告がなされ,paclitaxelを維持化学療法に用いることにより無病生存率が改善することが示されたので,これについて紹介する.
白金製剤であるpaclitxel(タキソール(R))にて著効(CR)が得られた患者を,paclitaxel(タキソール(R))135 mg/m2の外来での毎月1回投与を3か月施行した群と12か月施行した群に無作為に振り分けて治療成績を比較した(図1).2001年9月までに予定の約50%の227症例が登録され,そのうち3か月投与群が112症例中34症例,12か月投与群が110症例中12症例の計54症例で再発が認められた.3か月投与群と12か月投与群との比較では,12か月投与群で有意に無病生存期間の延長が確認された(cox model analysis, p=0.0023).無病生存曲線を図2に示す.
この中間解析から,12か月の無病生存期間の延長が明らかに有意であるとして,この比較試験は終了された.中間解析結果が報告されたのち,多くの患者が12か月投与群に変更されたため,生存期間に関する群間差は不明のままとなっている.なお,この試験では,投与終了後に再発が急増しており,さらに化学療法を延長する必要がある可能性が示唆された(表2).Paclitaxel単剤の12コースの維持療法が標準的治療といえるには,維持療法なしの群と比較して生存期間が有意に延長することを確認する必要がある.