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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻4号

2003年04月発行

文献概要

今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方 I. 周産期 [気管支喘息(妊娠中)]

15.妊娠初期(12週まで)と産褥期の喘息治療薬の使い分けについて教えて下さい.

著者: 越智博1

所属機関: 1愛媛大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.398 - P.399

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1 診療の概説

 気管支喘息の患者は近年著明に増加し,最近の喘息の罹患率は3%前後と20年前の3倍に増加している.喘息とは,さまざまな刺激に対する気道の反応性が増大し,極端な気道収縮が生じることによって急性増悪をもたらす慢性の気道炎症と考えられている.特徴として,可逆的な気道狭窄,気道炎症,刺激に対する気道反応性の増大が挙げられる.重症例においては,母体が低酸素となるためその管理によっては母体のみならず児の状態も悪化させる危険性がある.したがって,妊娠中の病態を把握し,適切にコントロールすることが重要である.

 妊娠が喘息に与える影響は症状改善,不変,悪化が3分の1ずつで,ほぼ同じ割合である.軽症例では喘息合併妊婦の気道過敏性がsecond trimester以降低下し,出産後は非妊時の状態に戻る.このことから,妊娠中は喘息症状を軽快させる方向に働くと考えられている.一方,非妊娠時に重症である場合には,妊娠によりさらに悪化することが多い.

 胎児に対する影響としてはコントロール不良例で流早産,IUGR,周産期死亡などが増加する.母体に喘息の急性増悪があり,動脈血酸素分圧PaO2が60 mmHg,SpO2<90%以下になると胎児も低酸素血症となって胎児死亡の危険性が高くなる.胎児動脈血の酸素分圧はもともと低いので母体の低酸素状態に耐える予備能力が低く,母体の低酸素血症の影響を受けやすい.一方,適切な治療により喘息が良好にコントロールされていれば母体や胎児に対するリスクは低い.喘息をコントロールするのに使用される薬剤の多くは妊娠中比較的安全に使用できる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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