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今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方 II. 内分泌 [子宮内膜症]
39.子宮内膜症の外来治療でGnRHアゴニスト投与を過去に数回受けましたが,最近,症状が増悪してきたといいます.対処と処方について教えて下さい.
著者: 小池浩司1
所属機関: 1金沢大学大学院産科婦人科学
ページ範囲:P.466 - P.467
文献購入ページに移動1 診療の概説
子宮内膜症の症状として,臨床上,月経痛(症状の発症頻度 : 88%),腰痛(57%),性交痛(56%)などの骨盤内疼痛,過多月経(50%),および不妊(51%)が主なものとして挙げられる1).そのほか子宮内膜症病変が大腸・直腸あるいは膀胱に及べば月経時期に一致して排便痛・下血を生じたり,あるいは排尿痛・血尿をみることがある.しかし,症状の程度はさまざまで,それに応じて治療を要しないものから対症療法やホルモン療法などの保存的療法が適応されるもの,外科的治療法が優先されるものまでさまざまである.
例えば,外来診療での対応が主としてなされている骨盤内疼痛症状を例にとっても,鎮痛剤の投与で対応できる軽度なものから,鎮痛剤の投与では改善がみられず,就学,就労の妨げとなったり,あるいは性交痛のため夫婦生活に支障をきたしたりして生活の質が著しく損なわれるケースまでさまざまである.こうした症状の強い場合には排卵を抑制する必要があり,低用量経口避妊薬あるいはGnRHアゴニスト(GnRHa)療法などが汎用される.一方,子宮内膜症に起因すると思われる不妊症の治療には,腹腔鏡による診断も含めた外科的治療法が優先される場合が多い.
さて,今回のケースは「外来で子宮内膜症の治療としてGnRHa療法を数回受けたにもかかわらず症状が増悪してきた」場合である.一般にGnRHa療法は著明にエストロゲン分泌を抑制するため,副作用として卵巣欠落症状や骨密度に対する影響が懸念され,長期投与が難しい.一方,治療中止に伴い再発率も高く,今回のようなケースはGnRHaの単独療法の限界とも考えられる.そこでGnRHaを長期に投与するために,エストロゲン製剤を追加投与して低エストロゲン状態を回避するadd―back療法が試みられている.
本稿では,治療のゴールをGnRHaによる長期の排卵抑制においたadd―back療法を中心に述べる.
子宮内膜症の症状として,臨床上,月経痛(症状の発症頻度 : 88%),腰痛(57%),性交痛(56%)などの骨盤内疼痛,過多月経(50%),および不妊(51%)が主なものとして挙げられる1).そのほか子宮内膜症病変が大腸・直腸あるいは膀胱に及べば月経時期に一致して排便痛・下血を生じたり,あるいは排尿痛・血尿をみることがある.しかし,症状の程度はさまざまで,それに応じて治療を要しないものから対症療法やホルモン療法などの保存的療法が適応されるもの,外科的治療法が優先されるものまでさまざまである.
例えば,外来診療での対応が主としてなされている骨盤内疼痛症状を例にとっても,鎮痛剤の投与で対応できる軽度なものから,鎮痛剤の投与では改善がみられず,就学,就労の妨げとなったり,あるいは性交痛のため夫婦生活に支障をきたしたりして生活の質が著しく損なわれるケースまでさまざまである.こうした症状の強い場合には排卵を抑制する必要があり,低用量経口避妊薬あるいはGnRHアゴニスト(GnRHa)療法などが汎用される.一方,子宮内膜症に起因すると思われる不妊症の治療には,腹腔鏡による診断も含めた外科的治療法が優先される場合が多い.
さて,今回のケースは「外来で子宮内膜症の治療としてGnRHa療法を数回受けたにもかかわらず症状が増悪してきた」場合である.一般にGnRHa療法は著明にエストロゲン分泌を抑制するため,副作用として卵巣欠落症状や骨密度に対する影響が懸念され,長期投与が難しい.一方,治療中止に伴い再発率も高く,今回のようなケースはGnRHaの単独療法の限界とも考えられる.そこでGnRHaを長期に投与するために,エストロゲン製剤を追加投与して低エストロゲン状態を回避するadd―back療法が試みられている.
本稿では,治療のゴールをGnRHaによる長期の排卵抑制においたadd―back療法を中心に述べる.
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