icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻4号

2003年04月発行

今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方

IV. 感染症 [膀胱炎]

78.難治性で再発を繰り返す膀胱炎の鑑別診断と処方について教えて下さい.

著者: 堀内和孝1

所属機関: 1日本医科大学泌尿器科

ページ範囲:P.575 - P.577

文献概要

1 診療の概説

 女性は解剖学的特徴,そのほかの要因により細菌が尿路に侵入しやすく,膀胱炎になりやすい(表1).膀胱炎は経過により急性と慢性に分類される.急性膀胱炎は性的活動期の若い女性に多く,急性に発症し症状も強いが,治療に対する反応は良好で,抗菌薬を3~5日間投与すれば治癒する.一方,再発を繰り返す膀胱炎や難治性膀胱炎のほとんどにおいて,宿主側の要因(基礎疾患),細菌側の要因,薬剤側の要因が影響している(表2, 3).

 宿主側の要因として,尿路の基礎疾患,感染防御能が低下する全身疾患の併発,易感染性薬剤の服用が挙げられる.感染防御能低下が強いほど原因菌の種類が増加して難治性となり,薬剤耐性も出現しやすくなる.腟内細菌叢が乱れると腟分泌物のpHが高くなり,細菌繁殖に有利に働く.尿路の基礎疾患としては神経因性膀胱が最も多く,次いで膀胱腫瘍,膀胱結石などがみられる.難治性で再発性の膀胱炎では,基礎疾患の正確な把握と適切な尿路管理が必要である.

 細菌側の要因として,複数細菌感染,菌交代,耐性獲得,バイオフィルム形成が挙げられる.再発時には前治療の影響を受けて,緑膿菌,セラチア,エンテロコッカスなどの薬剤耐性菌が分離されることが多く,複数菌感染例も少なくない.また,治療当初は有効であったものが,宿主の感染防御能の低下により菌交代現象を起こし,菌交代症へ移行することもある.さらに,ほとんどの細菌は,菌体外多糖類(グリカリックス)を産生し,細菌バイオフィルムを形成する1).抗菌薬はバイオフィルムおよびその中の細菌に対して無効なため,再発性の難治性病巣となる.

 バイオフィルムおよび基礎疾患を除去しない限り,抗菌薬による治癒は期待できない.また,薬剤の特性と薬剤の相互作用を熟知し,適切な抗菌薬を選択することが重要である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら