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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻4号

2003年04月発行

今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方

V. 腫瘍 [リンパ浮腫]

90.広汎性子宮全摘術後,早期に発生したリンパ浮腫,リンパ管炎,下肢蜂窩織炎の対処と処方について教えて下さい.

著者: 野田雅也1 工藤隆一1

所属機関: 1札幌医科大学産婦人科

ページ範囲:P.605 - P.607

文献概要

1 診療の概説

 婦人科悪性腫瘍の治療後にしばしば下肢のリンパ浮腫を認めることがある.リンパ浮腫は,骨盤内リンパ節摘出術や放射線治療により鼠径部でのリンパ流の障害やうっ滞が起こり,それが継続し発症する.発症に至る間,最初にリンパ管は中心の動脈(下肢の場合は大腿動脈など)周囲のリンパ管のうっ滞によるリンパ内圧の上昇に始まり,リンパ管の側副路が発達し全身循環に帰す機序が働くが,さらにその側副路でリンパ流のうっ滞が持続すると,その外側の皮下微小リンパ管の使用が中心になる(図1).このように,リンパ流のうっ滞とリンパ管内圧の上昇により,リンパ管からのリンパ液の漏出が起こり3rd spaceにリンパ液が溜まるため,続発性リンパ浮腫が形成される.

 問題は,皮下リンパ管に滞っている多量のリンパ液である.健常者は,表在リンパ管に極微量のリンパ流しかないため起こりえないが,リンパ浮腫患者は,皮膚の創傷,虫刺され,水虫などにより容易にリンパ管の破碇を起こし,リンパ管内の感染をもたらすことになる.皮下微小リンパ管内はほとんど還流が少ないため,細菌の流出が少なく,炎症が下肢全体に広がることとなる.この状態が蜂窩織炎,リンパ管炎である.

 非常に誤解されているところであるが,リンパ浮腫の場合,還流すべきリンパ流の障害からリンパ管内圧が高くなり低張のリンパ液が漏出し出現するが,生理的な状態でのリンパ管では,分子量の大きな蛋白(アルブミン,グロブリンなど)の漏出は起こらないといわれている1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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