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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻4号

2003年04月発行

文献概要

今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方 VI. その他 [術後の肥厚性瘢痕]

100.肥厚性瘢痕ができやすい体質です.術後の適切な予防法について教えて下さい.また,予防にもかかわらず高度な肥厚性瘢痕が認められた場合はどうすればよいでしょうか.

著者: 金岡靖1 市村友季1 石河修1

所属機関: 1大阪市立大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.628 - P.629

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1 診療の概説

 肥厚性瘢痕の予防と治療について最も必要な資源は医師と患者双方の根気と熱意である.肥厚性瘢痕ができやすい体質とあらかじめ判明していれば,術後時間をおかず形成テープで固定するなどの予防的処置とトラニラストの内服を開始しておくことが適当であろう.長期間の治療を要しないような皮膚切開位置と方向を選択し,瘢痕形成を最小限にとどめるために真皮縫合を行っておくことは予防の前提である.

 術後瘢痕は程度はともかく不可避に発生するが,肥厚性瘢痕とケロイドを明確に区別して取り扱う必要がある.肥厚性瘢痕とケロイドは発生初期には鑑別が困難である.しかし,ケロイドは手術創だけでなく,炎症後,外傷後,あるいは虫さされなどの微小な傷跡などにも発生し,周囲の健常組織に進行性に浸潤・拡大する性格が特徴である.ケロイドは,肥厚性瘢痕から移行するのではなく,はじめからケロイドとして発生するといわれている.また,ケロイドは治療に抵抗するのに対し,肥厚性瘢痕は治療によく反応する.しかし,ケロイドには病因論的にも不明な点が多く残されており,肥厚性瘢痕とは病理組織学的に明確に鑑別することはできないという意見も多い.治療に反応して一定期間に改善を示すものが肥厚性瘢痕であり,難治性で増悪するものがケロイドであるという区別も実際的である.

 保存的治療に反応しないケロイドに対する外科的治療は一般論としては禁忌である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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