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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻5号

2003年05月発行

文献概要

今月の臨床 妊娠と薬物―EBM時代に対応した必須知識 妊産婦,授乳婦人での薬物の選択と投与法

9.糖尿病薬

著者: 和栗雅子1

所属機関: 1大阪府立母子保健総合医療センター母性内科

ページ範囲:P.707 - P.711

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はじめに

 糖尿病の薬物療法としては,経口血糖降下薬とインスリンがある.前者には,スルホニル尿素(SU)薬,ビグアナイド(BG)薬,αグルコシダーゼ阻害α―GI)薬,インスリン抵抗性改善薬など作用機序の異なる多種の薬剤がある.しかし,従来より一般的に妊娠中は経口血糖降下薬は使用しない.なぜなら,インスリンは胎盤を通過しないが,SU薬は胎盤を通過し乳汁中にも移行することがわかっており,胎児の先天奇形や高インスリン血症,新生児低血糖の報告がみられるからである1, 2).BG薬は乳酸アシドーシスを起こしやすく催奇形作用も指摘されており,子癇前症や周産期死亡率が増加したという報告3)もある.また,α―GI薬やインスリン抵抗性改善薬などは,まだ胎児への安全性が確立されておらず,乳汁中への移行もみられるため使用されていない.ただし,最近一部のSU薬4)やBG薬5)で妊婦に使用して問題なく有効であったという報告もみられており,費用やquality of life(QOL)も含めて考慮すると今後使用されるようになるかもしれない.

 しかし,現段階では経口血糖降下薬の使用は時期早尚と思われるので,ここでは主にインスリン療法について述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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