icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻6号

2003年06月発行

今月の臨床 ホルモン補充療法を再考する

HRTの適応を再考する

10.早発閉経

著者: 石塚文平1

所属機関: 1聖マりアンナ医科大学産婦人科

ページ範囲:P.827 - P.829

文献概要

定義および発症頻度

 早発閉経(premature ovarian failure : POF)は,一般には40歳未満の自然閉経,すなわち40歳未満の高ゴナドトロピン性無月経を意味するが,HRTの対象としては卵巣手術,癌化学療法,放射線照射などに起因する高ゴナドトロピン性続発性無月経も含まれる.自然閉経例には染色体異常を有する症例も含める.かつては早発閉経の卵巣機能の低下は常に不可逆的と考えられていたが,最近では自然寛解や排卵,妊娠,分娩例が報告されるようになり,またその発症頻度が決して稀ではないことが明らかになったことより,臨床的にもより注目されるようになった.

 Coulamら1)のRochesterにおける前向き追跡調査によれば,その頻度は30歳までで1,000人に1人,40歳までで100人に1人という.また,われわれの川崎市北部3区の一般住民調査(全50歳女性3,166人対象)において,40歳未満に自然閉経したと答えたのは0.54%で,Coulamのデータと同じオーダーでPOFが認められることが推察された.これらの一般住民対象の調査よりも無月経,不妊を訴えて来院する症例中にはPOF症例が高い頻度で含まれることが推察される.

 治療法はエストロゲンの補充が基本であり,挙児希望のある場合には種々の方法で排卵誘発を行う.最近では,多くのPOF症例でFSH値が一時的に正常値に戻ることが明らかになっており,排卵誘発はこの時期を見定めて行うのが有効と考えられるが,長期間にわたる頻回の観察が必要であり,排卵誘発は稀にしか成功しない.

 いずれにしろ,POFでは若年より長期間にわたるHRTが必要なため,閉経後のHRTとは異なる注意点が必要であると考えられるが,症例数が少ないためその方法に関しては現在まで定説はない.本稿では,われわれの行っている症例の分析とHRTの方法を呈示する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら