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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻7号

2003年07月発行

文献概要

今月の臨床 UAE―子宮筋腫塞栓療法

適応と禁忌と限界

著者: 鈴木昭太郎1 筒井章夫1

所属機関: 1川崎市立井田病院婦人科

ページ範囲:P.898 - P.901

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はじめに

 塞栓術は,産婦人科領域では1970年代から進行末期の子宮頸がんや産後出血の止血目的で行われており,悪性腫瘍を扱う医師にとって比較的馴染みのある治療法として知られていた.1995年にRavinaら1)が子宮筋腫に対して骨盤血管造影下に子宮動脈塞栓術を施行し,子宮筋腫を手術することなく治療し得ることを報告した.彼らによると,塞栓術施行により筋腫核は16例中12例が施行後3か月の間に20~80%まで縮小したとし,その後の報告でも,塞栓術後2~4か月で子宮容量は40~60%減少することが報告されている.その後,欧米ではかなり普及し,良好な治療効果の報告が出され,2000年にはRavinaら2)は塞栓術後の12例の妊娠の報告を行っている.

 われわれは1998年10月より,子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術を放射線科と共同で開始し,2000年に3例の治療効果と塞栓術の実施手技を紹介し,3か月後にはMRI画像からも筋腫は明らかに縮小したことを報告3)した.2000年には杏林大学の安藤ら4)が8例の治療効果を報告し,治療前の筋腫核の体積を100とすると,施行3か月後には57.5%から6.2%に縮小したことを報告した.さらに,杏林大学からは2002年に中村ら5)が15例の治療成績を報告し,治療前の筋腫核の体積を100%とした場合,1か月後73.3±19.0%,3か月後46.7±25.5%,6か月後33.7±23.5%,1年後26.3±18.5%まで縮小が認められたと述べ,子宮動脈塞栓術は,高率に臨床症状の改善と筋腫核の縮小をもたらし,筋腫治療の選択肢の1つとなり得ることを期待すると結んでいる.

 われわれは2002年これまで塞栓術を行った75例の治療成績を報告6)した.詳しい内容は論文に譲ることにするが,結論の主なものをここでは記述する.

 1)75例の年齢分布は26歳から52歳に及び,平均は40.3歳となる.北海道など遠方の患者が7人おり,術後MRIによる効果の確認は68例となった.4例は治療後に筋腫核の縮小が認められず,むしろ増大傾向を認め,1例は開腹して筋腫核出術が行われた.縮小が認められたのは64例で,92.75%に効果が認められた.術前のMRIの3方向計測値の積を100として,3か月後,6か月後,12か月後の計測値を術前と比較すると,それぞれ58.50%,45.44%,40.07%と効果が認められた.

 2)75例のうち1例が術後妊娠し,経腟分娩にて2,968 gの女児を出産し,母児ともに異常は認めなかった.

 3)術後管理を適切に行うことにより,術後合併症は認めず,安全性も期待できる.

 以上から,子宮動脈塞栓術は子宮筋腫治療の選択肢の1つに加え得る治療法であると考えるとの結論に至った.さらにその後の調査により,塞栓術後9か月にて妊娠したが妊娠9週で子宮内胎児死亡と診断し,内容除去術を実施した患者が,4か月半後に再び妊娠を確認し,経過は順調であったが妊娠38週に他病院で前置胎盤と診断され,帝王切開にて2,830 gの男児を出産したとの連絡があった.これにより,われわれが行った塞栓術後に先に報告した1例に加え,計2例の健康児を出産したことを追加報告する.

 さて今回は,与えられた主題に沿って,われわれが今まで実施した症例の再検討を行い,解説を交えて記述を進める.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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