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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科57巻8号

2003年08月発行

文献概要

今月の臨床 妊娠と免疫 妊娠維持の免疫機構

1.妊娠による母体免疫系の変化

著者: 前川正彦1 山本哲史1 苛原稔1

所属機関: 1徳島大学医学部発生発達医学講座女性医学分野

ページ範囲:P.1012 - P.1016

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はじめに

 胎児は父親由来の遺伝子を有しているため母体にとって異物であり,免疫学的見地からみると半同種移植片(semiallograft)であると考えられるが,胎児は母体内で約10か月間生着・発育することから,拒絶を免れる何らかのメカニズムが存在しているはずである.1953年にMedawar1)はその機序として,(1)胎児は抗原として未熟であるため母体に認識されない,(2)胎児は母体の免疫系から隔離されている,(3)母体は免疫能が低下しており胎児を拒絶できない,(4)胎盤が免疫学的にバリアとなっている,という仮説を発表した.しかしこれらは現在ではいずれも否定されている.すなわちその後の研究により,胎児は母体に認識されており,子宮脱落膜における胎児・胎盤に対する免疫応答が妊娠維持に積極的に寄与していることが明らかにされ,また妊婦がウイルスに感染すると重篤化しやすいことや妊娠中に自己免疫疾患の病状が軽快・増悪することは妊娠が全身の免疫系に影響を及ぼしていることを示唆している.

 本稿では,妊娠が母体の免疫系に与える影響について概説し,さらに妊娠が末梢血におけるTh1/Th2バランスに与える影響について述べたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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