文献詳細
今月の臨床 思春期のヘルスケアとメンタルケア
思春期診療の実際とカウンセリング
1.性分化異常
著者: 田坂慶一1 川岸里香子1 石田絵美1 橋本奈美子1 田原正浩1 坂田正博1
所属機関: 1大阪大学大学院医学研究科器官制御外科学
ページ範囲:P.1156 - P.1159
文献概要
一般に性分化異常は外来患者でもきわめて稀で,その特殊性から診断手順と説明には両親の受け入れ,患者の受け入れ状態を考慮した細やかなカウンセリングが必要である.その点で疾患の治療や精神的ケアにあたっては,患者の人権および一生を通じたケアのワンステップとして行うことことへの配慮が必要である.
性分化異常の患者を取り扱う場合に最も重要なことは性の重層性,つまり性には染色体の性,性腺の性,内・外性器の性,戸籍上の性,精神的性があること,およびそれらの決定がどのように表現型として出てくるかを理解することである.多くの場合はすべて一致した表現型となるが,その分化過程に異常が起こると性の重層性に不一致が生じる.正常な性分化過程では染色体の性は男性XY,女性XXで表現され,Y染色体上に性腺の性を決定する因子SRYが基本的には性腺の性を誘導する.性腺の性が雄性に決定すると精巣から分泌される男性ホルモンでウォルフ管(輸精管,精巣上体に分化)が発育し,MIS(ミュラー管抑制物質)がミュラー管(卵管子宮,腟の上1/3)を退縮させる.性腺が精巣でなければ性器は女性型となる.外陰部の性は男性ホルモンにより男性型へ誘導される.男性ホルモンが欠落しているか,受容体異常の場合は女性型になる(図1).一般に戸籍上の性は外陰部で判断される.ここでは特殊症例は避け,稀な症例の中でも比較的外来で遭遇する機会のある疾患についてヘルスケアとメンタルケアについて述べる.
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