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今月の臨床 周産期の感染症―管理と対策 垂直感染の管理と対策
5.サイトメガロウイルス
著者: 池田智明1 金子政時1 池ノ上克1
所属機関: 1宮崎大学医学部産婦人科
ページ範囲:P.55 - P.59
文献購入ページに移動周産期脳障害の原因のなかで先天性感染症が占める割合は依然不明であるが,われわれが検討した宮崎県におけるデータからは4%前後であると推定された1).先天性感染症は,単純ヘルペスウイルス,トキソプラズマ,風疹ウイルス,水痘ウイルスなどの微生物によって起こるが,先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染は最も頻度が高い.先天性CMV感染症が原因とされる脳障害の発生頻度は10,000出生あたり3~4例であり,これは脳障害を起こす先天性感染症の約80%であるといわれる2).さらに重要なことは,新生児期に無症候であったとしても,先天性感染症児の10~15%が,その後の発達期に難聴,知能障害,運動障害などの神経障害をきたしうるという事実である.概算ではあるが,先天性CMV感染症が原因で年間約400例の重症脳障害,約400例の難聴児が毎年わが国で発症していることになる.したがって,CMV母子感染の正確な診断と,感染児のフォローアップ体制の確立が重要である.
本稿では,CMV感染症を周産期脳障害に対して最も重要な病原体であるという観点から,病態,出生前診断,新生児期診断,予防と治療の順で概説する.
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