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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科58巻10号

2004年10月発行

今月の臨床 ここが知りたい─婦人科がん化学療法

婦人科がん化学療法の将来を展望する

著者: 玉田裕1 阪埜浩司1 野澤志朗1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.1208 - P.1211

文献概要

はじめに

昨今の晩婚化に伴い,未婚女性のがん罹患症例は増加傾向にある.婦人科悪性腫瘍の治療は現在でも手術療法が中心的存在であることに変わりはない.しかしながら従来の治療法では妊孕能を保てない病状であっても患者が妊孕性温存を要望されるといった,がんの治療に携わるものにとって非常に難しい選択を迫られる状況に立たされることが少なくない.今後も社会的背景から,妊孕性温存とがんの根治性の両立を求める声はますます増加することが予想される.したがって,婦人科がんの治療において根治性を失わない縮小手術を可能にできる新規の化学療法の開発に大きな期待が寄せられている.

 婦人科がん領域における化学療法の現状を概観すると,卵巣癌では,プラチナ製剤やタキサン製剤に代表されるcytotoxic drug(細胞毒性薬)の登場により,抗がん剤治療の奏効率は飛躍的に向上し,治療のストラテジーに変革を及ぼすまでに至ったものの,依然として長期の生存率の改善には至っていないのが現実である.近年,増加傾向にある子宮体癌は他の婦人科がんと比較し,一般的に予後良好とみなされるが,化学療法の有効性に関しては一定の見解が得られていない.Gynecologic Oncology Group(GOG)122プロトコールにおいて進行期(III期,IV期)の子宮体癌症例では放射線療法よりも化学療法であるAP療法(doxorubicinとcisplatinの併用療法)の優位性が最近示され,今後さまざまなレジメンが検討されていく段階に入っている.一方,子宮頸癌ではIII期,IV期の生存率改善が最近の子宮頸癌治療の大きな課題として挙げられ,近年,抗がん剤と放射線治療の同時併用であるconcurrent chemoradiation therapyに多くの期待が寄せられている.

 本稿では,とりわけ次世代を担う若い産婦人科医師や産婦人科医を志す研修医の方々にも興味深いと思われる最新の知見を広く紹介させていただく.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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