icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科58巻11号

2004年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 症例から学ぶ前置胎盤

出血しやすい前置胎盤とは

著者: 渡辺尚 ,   松原茂樹

ページ範囲:P.1377 - P.1381

はじめに

前置胎盤は,妊婦の約0.5%に起こる重篤な産科合併症である.妊娠中の性器出血の原因となり,止血しない場合には,母体および胎児を救命するために帝王切開以外に治療の選択肢がない場合が多い.したがって早産の頻度が高く,また首尾よく妊娠満期まで達することができても帝王切開術中,術後の出血が問題となる.最近の文献では,8年間,総分娩数93,996例中,前置胎盤は308例(0.33%),前置胎盤症例の以下の母体合併症のrelative risk(RR)は,子宮摘出 : 33.26,分娩前出血 : 9.81,分娩中出血 : 2.48,分娩後出血1.86,輸血10.05との報告がある1)

本稿では,自治医科大学産婦人科での前置胎盤症例を集計した結果より,大量出血の危険因子について記述する.統計学的解析には,unpaired student's t─test,chi─square test,pearson's correlation coefficient,multivariate logistic─regression analysisを用い,危険率p<0.05を有意とした.

前置胎盤における自己血の貯血と輸血

著者: 八並直子 ,   増崎英明 ,   石丸忠之

ページ範囲:P.1383 - P.1385

はじめに

産科領域の手術では往々にして大量出血を余儀なくされる場合があり,結果として輸血を行わざるを得ないことがある.しかし同種血輸血には常に輸血後感染症,移植片対宿主病,あるいは輸血に伴う未知の合併症のリスクがつきまとう.近年これらの問題点を背景に各科領域で自己血輸血が行われており,産科領域においても大量出血の予想される症例に対して徐々に普及してきている.本稿では当科で施行している前置胎盤に対する自己血輸血の方法を紹介し,その有用性に関して文献的考察を加えて報告する.

前置胎盤例の児の予後

著者: 佐世正勝

ページ範囲:P.1386 - P.1389

はじめに

前置胎盤は,分娩時に大出血を起こす代表的な産科救急疾患の1つである.最近では超音波診断の進歩により,多くは妊娠中期に診断され,予防入院,自己血貯血,予定帝王切開が行われるようになっている.しかし,突然の大出血により,早期に妊娠の中断を余儀なくされることもある.ようやく妊娠37週になって帝王切開を行っても,児の大きさの割には呼吸状態をはじめとした全身状態が安定せず,新生児科医の手を煩わせてしまうことも稀ではない.本稿では,周産期管理に必要な前置胎盤例から出生した新生児の予後について述べる.

症例から学ぶ

1.対応に苦慮した嵌入胎盤の1例

著者: 田熊直之 ,   佐々木禎仁 ,   千石一雄

ページ範囲:P.1327 - P.1331

はじめに

われわれ周産期科医は毎日が出血との戦いといっても過言ではなく,ほんの少しの判断の遅れが,妊産婦および胎児の生命を危険にさらすことになる.さらに医療事故も含めて,何かが起こるときには往々にしてさまざまな要因が重なっているものである.非常に苦慮した前置胎盤の症例紹介が本誌の目的だが,本稿では当科において最近経験した内子宮口から2 cm以内に存在する低置胎盤1, 2)で,結果的に嵌入胎盤であり,さらにほかのさまざまな要因が重なり,大量出血,子宮全摘を余儀なくされ,対応に非常に苦慮した症例を紹介する.また,前置胎盤,癒着胎盤などの定義,詳細は本誌の他稿をご参照していただければ幸いである.

2.膀胱まで胎盤が浸潤した前置・穿通胎盤の1例

著者: 赤堀周一郎 ,   山本昌彦 ,   早瀬良二

ページ範囲:P.1332 - P.1335

はじめに

帝切率が上昇している今日,帝王切開は比較的安全に行われているが,大量出血などの予期せぬ合併症に出会うことがある.特に帝王切開既往妊婦の前置胎盤症例では帝王切開瘢痕部への癒着胎盤を起こしやすい1, 2).このような症例では帝王切開中に制御不能な出血をきたしやすく,子宮摘出が必要なことが多い3, 4).また子宮摘出中に膀胱損傷をきたしやすい5, 6).われわれは帝王切開既往妊婦に発症した前置癒着胎盤症例で,胎盤が膀胱壁まで浸潤をきたしたと考えられる症例を経験したので報告する.

3.大量出血をきたした癒着胎盤合併全前置胎盤に学ぶ術前診断の重要性と体制整備の必要性

著者: 依田建吾 ,   平田学

ページ範囲:P.1336 - P.1339

はじめに

当院は救命救急センターと総合周産期母子医療センターを同施設内に併設しているため母体搬送件数も多く,産科的緊急疾患も多い.報告例は子宮手術歴がない初産婦にもかかわらず癒着胎盤合併による大量出血をきたしたが,初産婦のため子宮全摘術の決断が遅れ,麻酔管理に難渋した全前置胎盤症例である.

4.既往2回帝切後の全前置癒着胎盤症例に対して,子宮底部縦切開法を用いて帝王切開手術を施行した1例

著者: 細谷直子 ,   小川正樹 ,   平野秀人 ,   田中俊誠

ページ範囲:P.1340 - P.1343

はじめに

帝王切開術は,児を安全に娩出させることを目的とした急速遂娩術の1つであり,近年の少子高齢化を背景にその率は上昇している.一方で既往帝王切開術は,前置胎盤や癒着胎盤のリスク因子となり得る.Millerら1)は,帝王切開既往妊婦における前置胎盤の頻度は3倍高く,さらにこのリスクは既往帝王切開術の回数が多いほど高くなると報告している.帝王切開既往妊婦の前置胎盤においては,胎盤が帝王切開瘢痕部に付着する可能性が非常に高い.同部位は脱落膜が欠如するか発育不全に陥っているために絨毛が容易に子宮筋層へ浸潤し癒着胎盤となり,帝王切開時の大出血,最悪の場合は母体死亡へとつながる危険性がある2).したがって,帝王切開術の既往のある妊婦を診察する場合には,前置胎盤の有無を確認することはいうまでもなく,前置胎盤を認めた場合には,前置癒着胎盤の可能性を念頭に置いた周産期管理が必要とされる.

今回われわれは,超音波断層法およびMRI検査を用いて前置癒着胎盤が疑われた既往2回帝切後の妊婦に対して,子宮底部縦切開法を用いて帝王切開術を行い安全に児を娩出させた後,子宮全摘出術を施行した1例を経験した.症例を呈示するとともに,症例から学んだ周産期管理のポイントについて述べたい.

5.嵌入前置胎盤を伴った峡部頸管妊娠(isthmico─cervical pregnancy)の1例

著者: 新田律子 ,   斉藤麻紀 ,   大久保貴司 ,   斉藤正博 ,   竹田省

ページ範囲:P.1344 - P.1349

はじめに

帝王切開の増加に伴い,以前はあまり問題にされなかった帝王切開創部に関連する合併症が注目されている.帝王切開創部妊娠や癒着胎盤は,大量出血から母体死亡につながるため,その診断,管理は重要である.

一方,産褥子宮摘出の頻度は,出生1,000に対して約1.5程度といわれている.産褥子宮摘出の最も高いリスク因子は帝王切開手術であり,母体にとって「帝王切開が安全だ」とは決していえない.米国での成績では,帝王切開後の子宮摘出は出生1,000に対して8.3である.また,産褥子宮全摘術を受けた症例の94.5%は今回帝王切開で分娩しており,66.7%は帝王切開既往症例である.このため,帝王切開既往例の分娩法を説明する際や帝王切開術のリスクを説明する場合は,この点にも配慮する必要がある.

今回,前2回帝王切開既往妊婦が,前置胎盤による大量出血で帝王切開となり,内腸骨動脈結紮にてようやく止血したが,産褥27日目に再出血し子宮摘出術を余儀なくされた症例を経験した.病理診断より峡部頸管妊娠(isthmico─cervical pregnancy)と判明したので報告し,その病態,管理につき考察する.

前置胎盤における癒着胎盤

1.癒着胎盤の超音波診断

著者: 横田明重 ,   中井章人

ページ範囲:P.1351 - P.1353

はじめに

前置胎盤は帝王切開時に大量出血を起こしやすい危険な産科合併症である.また,癒着胎盤はそれだけで大量出血,胎盤遺残,子宮内感染などを引き起こす恐れのある状態である.前置胎盤に癒着胎盤を合併した場合には帝王切開時に大量出血をきたし,子宮全摘を余儀なくされることが多く,術前の準備,インフォームド・コンセントのうえでも術前診断が重要となる.術前診断には外来でも可能で頻回に施行しても侵襲が小さい超音波断層法が非常に有用である.そこで本稿では,前置・癒着胎盤の超音波診断について述べる.

2.癒着胎盤のMRI診断

著者: 倉林工 ,   鈴木美奈 ,   田中憲一

ページ範囲:P.1354 - P.1357

はじめに

癒着胎盤は,胎盤が脱落膜を介さずに子宮筋層に付着した状態と定義され,その程度により狭義の癒着胎盤(placenta accreta vera),嵌入胎盤(placenta increta,絨毛が筋層内に食い込むが貫通していない),穿通胎盤(placenta percreta,絨毛が筋層を貫通し,膀胱など近接組織に至る)に細分類される.頻度は2,000~7,000分娩に1例と稀な病態であり,前回帝王切開,人工妊娠中絶や筋腫核出術などの子宮手術の既往がリスクファクターとなる.本症例は胎盤剥離時に致命的な大出血を引き起こすことがあり,分娩前診断が重要である.

本稿では,われわれが経験したplacenta percretaの1例を呈示し,癒着胎盤のMRI診断について文献的に考察する.

3.癒着胎盤への対応

著者: 山田重人 ,   濱西潤三 ,   棚田省三 ,   伊東宏晃 ,   佐川典正 ,   藤井信吾

ページ範囲:P.1359 - P.1363

はじめに

癒着胎盤の病態は何らかの原因により胎盤付着部位において脱落膜が欠損し,胎盤の全部または一部が子宮筋に癒着し剥離が困難となり,ときとして分娩時に大量出血を起こす.一方,前置胎盤は,胎盤の一部または大部分が子宮下部(子宮峡部)に付着し,内子宮口に及ぶ病態であり,妊娠中期~後期において,しばしば無痛性の性器出血を繰り返し,ときとして突発的な大量出血をきたす.前置胎盤において癒着胎盤を併発するリスクは5%と,常位胎盤において癒着胎盤を併発する率(0.26%)に比べて高率であると報告されている1)

本稿では,癒着胎盤の分類,取り扱いを概説し,具体的な症例をもとに,前置胎盤における癒着胎盤の取り扱いについて述べる.

前置胎盤の帝王切開─私の工夫

1.私の工夫

著者: 谷昭博

ページ範囲:P.1365 - P.1367

はじめに

前置胎盤では,妊娠中および分娩時の出血とその対策が最も重要な課題となる.全前置胎盤ならば診断も容易で,帝王切開の準備も早期から行えるが,部分前置胎盤や辺縁前置胎盤では診断が困難な場合もあり,過剰診療に陥る可能性も高い.ここでは前置胎盤例での筆者なりの診療を紹介したい.

2.子宮筋層切開部位の設定と胎盤娩出後の出血対策

著者: 吉田幸洋

ページ範囲:P.1368 - P.1371

はじめに

前置胎盤では帝王切開での分娩は必須である.前置胎盤の症例に対する帝王切開でも,可能であれば子宮下部横切開法を行うが,胎盤が前壁付着の場合や,後壁付着の場合であっても内子宮口を被った胎盤が子宮の前壁にまで回りこんでいるような場合は,胎盤実質上の子宮筋層に切開を加えると,羊水腔に達する前に胎盤の実質と胎児面に切開を加えなければならず,この場合は胎児失血の可能性がある.一方,前置胎盤の症例に対する帝王切開の最大のリスクは,胎盤の付着部がもともと収縮力の弱い子宮下部であることであり,胎盤剥離後にコントロール不能の大量出血となる場合が少なくない.もちろん,癒着胎盤であった場合の出血が止血困難となることが多いことは知られているが,前置胎盤では,必ずしも組織学的に癒着胎盤でなくても,通常の帝王切開よりも胎盤剥離後の出血が多くなる場合が多い.

したがって,前置胎盤の症例に対する帝王切開では,胎盤娩出後の出血に対する備えと胎児を娩出するのに加えるべき子宮筋層切開の場所の設定ということが工夫すべきポイントということになる.本稿では,現在,順天堂浦安病院で行っている方法について紹介したい.

3.前置胎盤手術で考えておくこと

著者: 林敏 ,   清川尚

ページ範囲:P.1372 - P.1375

はじめに

前置胎盤は,辺縁前置胎盤の一部を除けば基本的に帝王切開で妊娠が終了することになる.したがって,その診断がついたときから母子の予後を決めるterminationとしての帝王切開を見通し,結果の良好性を求めて,一貫した管理と帝王切開の準備を進めなければならない.

連載 知っていると役立つ婦人科病理・64

What is your diagnosis ?

著者: 小川史洋 ,   中山真人 ,   石原理 ,   清水道生

ページ範囲:P.1323 - P.1325

症例 : 19歳,女性.0経妊,0経産

3年来の無月経にて当院を受診した.右卵巣腫瘍を指摘されるとともに,血中テストステロン値が166 ng/ml(基準値 : 0.9以下ng/ml)と高値を示していた.摘出された右卵巣は,肉眼的には直径5 cmの黄色調を呈する充実性腫瘤であった.

Fig 1,2は,右卵巣の代表的組織像(HE染色)である.病理診断は何か.

婦人科超音波診断アップグレード・8

ダグラス窩の経腟超音波所見

著者: 佐藤賢一郎 ,   水内英充

ページ範囲:P.1391 - P.1398

1 はじめに

経腟超音波によるダグラス窩所見の代表的なものとしては液体貯留所見が挙げられ,腹水,出血,膿貯留があり得る.腹水の存在は,卵巣腫瘍の悪性診断の補助,骨盤内炎症性疾患(以下,PIDと略),内膜症などの存在や,排卵後であること,および腹水貯留を惹起する他科疾患などが想定され,出血は子宮外妊娠,卵巣出血などの出血性疾患を,膿貯留は卵管・卵巣膿瘍,ダグラス窩膿瘍,虫垂炎の破裂などの炎症性疾患が考えられる.

経腹超音波と比較して解像度に勝る経腟超音波を用いても腹水,出血,膿貯留の鑑別は必ずしも容易ではないが,臨床所見と合わせて考察することによりある程度診断可能な場合もあり得る.液体貯留所見としては,量や貯留部位(例えばダグラス窩のみか,膀胱子宮窩のみか,子宮周囲全体かなど),エコー輝度,均質性が重要である.また,単に液体貯留部位のみの観察に終始するのではなく,腹膜や直腸,腸管表面の観察も重要で,悪性腫瘍の腹膜播種病巣の検出や悪性腹膜中皮腫などではある程度特徴的な所見を示すため,術前診断に非常に参考になる場合がある.

本稿では,経腟超音波によるダグラス窩所見について検討してみたい.

Dos&Don'ts婦人科当直の救急診療ガイド・6

[性器出血を伴わないもの]子宮外妊娠

著者: 米田直人

ページ範囲:P.1400 - P.1403

1 はじめに

本稿では子宮外妊娠に関して婦人科当直の現場で役に立つ内容を診断面を中心に述べる.ただし本稿の表題にある「性器出血を伴わない」子宮外妊娠は少数であり,「性器出血を伴う」子宮外妊娠とあえて分離する必要性は少ないので,出血症状の有無についての特別な記述はしていない.

病院めぐり

和歌山労災病院

著者: 馬淵義也

ページ範囲:P.1405 - P.1405

和歌山労災病院は,和歌山県・市の幅広い大きな要望と期待のもとに,昭和41年に11診療科,300床の当時としては全館冷暖房空調の近代病院として,紀ノ川の西北(河西地区)に,和歌山県立医大病院,日赤和歌山医療センターにつぐ3大病院として設立されました.その後,諸先輩の努力によって徐々に発展を遂げ,386床,23診療科,医師数60名の病院機能評価(バージョン4),また県下唯一の地域医療支援病院の指定も受けた地域の中核・総合病院となりました.昨年には新築移転も決まり,平成20年春には新病院に移り新たな発展も約束されています.

さて,当院の産婦人科は,まず昭和52年に婦人科が,その後,昭和59年に産科が開設され,さらに平成11年に「働く女性メディカルセンター」も併設され,現在に至っています.

OBSTETRIC NEWS

陣痛抑制剤経口投与の有用性

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1406 - P.1409

日常医療でわれわれ医療従事者に求められる重要なことはevidence based medicine(EBM)と費用効果である.その2点から日本の切迫早産の管理を検討すると疑問が残る.

1971年にオランドから「塩酸リトドリンによって早発陣痛の80%を抑制できた」という報告がされた(BMJ p144, July 17, 1971).早発陣痛の診断基準は「血性腟分泌物,触知可能な子宮収縮,または頸管開大のなかの1つ以上がある場合」とした.しかし,偽薬投与群でも48%は早発陣痛が停止したため,この研究者達は早発陣痛と誤って診断された偽陣痛例が含まれていたのではないかという疑問を自ら投げかけている.その後,多数の研究で塩酸リトドリンの有効性が検討され,1992年にカナダで行われた塩酸リトドリンに関する研究(NEJM 327 : 308, 1992)を最後に,塩酸リトドリンの有効性は短期間のみという結論が出たため,その後に塩酸リトドリンの有効性を確認する研究は報告されていない.

もうひとつの国境なき医師団・5

ジャカルタの性感染症プログラム

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.1410 - P.1411

国境なき医師団と産婦人科

紛争地における避難民支援が主な活動として知られる国境なき医師団であるものの,活動はこれにとどまらない.自然災害,マラリア,HIV/AIDSなどの感染症とならんで性産業従事者やストリートチルドレンなどアクセスから遠い人々も対象としている.

世界約80か国で行われている国境なき医師団の活動のなかで,産婦人科領域にまたがるプログラムは多いものの,産婦人科を専門としたプログラムは多くはない.

原著

快適な妊娠・出産を支援する基盤整備に関する研究

著者: 尾島俊之 ,   阿相栄子 ,   川野貴久 ,   中村好一 ,   岡井崇 ,   戸田律子 ,   北井啓勝 ,   林公一 ,   三砂ちづる ,   柴田眞理子

ページ範囲:P.1415 - P.1420

妊娠・出産医療に関して,実施をしたほうがよいか否か議論のあるいくつかの点に関して,わが国における臨床医の考え方や実態を明らかにすることを目的として,日本産科婦人科学会などの名簿から無作為抽出した対象に自記式郵送調査を行った.717名から回答が得られ,回収率49.6%であった.

出産を取り扱っている医師に対して,妊娠や出産の治療方針などに関する考えや実態を問うた結果,賛成および80%以上の症例で実施している割合はそれぞれ以下の通りであった.すなわち,砕石位での分娩72%,67%,産婦の希望による体位決定52%,10%,早産予防のためのベータ刺激剤使用93%,23%,塩分制限等86%,24%,授乳時間を定めないこと75%,40%,分娩直後の母子同室58%,27%であった.エビデンスや妊産婦本人の希望を重視した実施の推進,必要なエビデンスの蓄積,賛成でも実施していないものについてはその理由の解明が必要と考えられる.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

icon up
あなたは医療従事者ですか?