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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科58巻2号

2004年02月発行

文献概要

今月の臨床 産婦人科診療とリスクマネージメント 医療事故の実際とリスクマネージメント

13.院内感染

著者: 菅生元康1

所属機関: 1長野赤十字病院産婦人科

ページ範囲:P.204 - P.207

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はじめに

 医療事故または医事紛争に占める院内感染例の割合はそれほど多くないかもしれないが,特に病院における入院患者の薬剤耐性菌による院内感染などの事例は多くの施設で経験しているものと思われる.当院の最近の事例としては,交通事故による骨折の修復手術後にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染を起こした例と,硬膜外ブロックによる硬膜外膿瘍(起炎菌はMRSA)発生例があり,現在,補償を含めた交渉を継続している.院内感染対策は病院のリスクマネージメント(最近ではセーフティーマネージメントと呼ぶことが一般的である)の最重要課題として認識されており,感染対策委員会の設置,感染制御医(ICD)や感染制御ナース(ICN)が中心となった感染対策チーム(ICT)による院内巡視などを行うことが当たり前になっている.

 また診療報酬でも院内感染対策は必須とされ,前回の診療報酬改定から入院基本料のなかに院内感染防止対策未実施減算の項が設定され,平成12年4月から一定の基準に適合していない場合には1日5点(50円)が入院料から削られることになった.基準としては感染対策委員会の設置,感染情報レポートの定期的な発行,職員の手洗いの励行および各病室への手洗い液の設置などが求められている.感染対策を適正に行っていることが当たり前で,不十分な場合には入院料を100%は支払わないということであり,医療費の面からも感染対策の意識付けが医療者に強く求められている.

 さらに大学病院を主体とした特定機能病院のなかに感染制御部が設置されつつある.近年,ともすれば日本の医学教育や医学研究の場において感染症が軽視される傾向にあった.ここにきて大学病院もようやく重い腰を上げたとすれば医師として,一市民として喜ぶべきことと考えている.当院は現在,感染対策を委員会組織のみで行っているが,専従のICNやICDの配置(現在,当院には4名のICDがいるが,それぞれ診療部局に属しており専従ではない),および感染制御部の新設などを考慮しなければならない時期が遠からずくるものと思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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