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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科58巻2号

2004年02月発行

連載 ここまできた婦人科日帰り手術 9

性器脱手術―子宮脱と断端脱に対するPosterior-IVS手術について―

著者: 井上裕美1 木幡豊1 関口由紀1 山本謙二1 中村拓美1 黄木詩麗1

所属機関: 1湘南鎌倉総合病院産婦人科

ページ範囲:P.209 - P.215

文献概要

 少子化高齢社会になり,われわれに1つの新たな役割が明らかになってきた.それは,今までの「病気」を直す医療とは少し異なり,高齢女性の質のよい生活を支えるために,彼女たちが加齢によるものだと半ば諦めていたつらい症状を改善するという役割である.婦人泌尿器科領域からみてみると,その代表は尿失禁と性器脱であろう.この分野に新しい基礎的理論(インテグラル理論など)や手術方法(Posterior―IVSなど)が考え出された.それらを今までの治療と比較しながら,慎重に医療提供していく必要がある.また,この領域には“healthy patient”がたくさん存在する.日帰り手術などの選択肢は,彼女たちの心の負担をいくらかでも軽減するのに役立つに違いない.


[1] はじめに

 少子化と高齢社会が進むなか,性器脱という疾患は尿失禁と同様に,多くの中高年女性にとって質のよい生活を左右する大事な,悩ましい問題になってきている.しかも対象患者の年齢と健康状態を考慮したとき,今まで以上に安全で,侵襲性の低い,術後成績のよい手術が望まれるのはいうまでもない.今までの腹式・腟式手術以外に腹腔鏡下手術が加わり,さらに最近ではインテグラル理論に基づいたPosterior―IVS(intra―vaginal slingplasty or infracoccygeal sacropexy)と呼ぶ手術方法が登場した.尿失禁の手術と同様に,どこにも固定しない,tension freeな整復手術である.この理論を考え出した1人であるPetros1)は,1998年に108人の性器脱の患者にIVSを用いて手術を行い,全員日帰りまたは1泊入院で帰宅ができたと報告している.これまで考えられなかった性器脱に対する医療分野での変化がいま起こっているのは間違いなさそうだ.

 今回は,性器脱の現況とこのPosterior―IVSについて紹介したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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