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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科58巻3号

2004年03月発行

雑誌目次

今月の臨床 不正出血の患者が来たら

機能性子宮出血(過多月経)に対する新しい治療法

著者: 可世木久幸

ページ範囲:P.309 - P.315

はじめに

 株式会社社会情報サービスのアンケート調査結果によると,国内で600万人の女性が月経過多で悩んでいると推計している(表1,2).そのなかには,子宮内膜癌などの悪性疾患症例以外に月経時の激しい疼痛あるいは腫瘤の骨盤腔圧排による消化器・泌尿器などの機能不全を示す子宮腺筋症,あるいは子宮筋腫などの良性疾患症例も入っていると考えられる.これらの場合には子宮摘出術の適応である.しかし,過多月経に悩む女性のなかには鉄欠乏貧血以外に自覚症状を認めない症例も少なくはない.さらに,上記のアンケート調査によると,30~50歳の月経過多に悩む女性のうち月経過多を理由として通院中あるいは通院経験のある女性は30%に過ぎない(図1).残りの70%のなかには病院に行くと手術を勧められるので行きたくないという女性も少なくないであろう.過多月経女性のうち70%は通院していないというデータは,われわれ産婦人科医と病める女性との間に厳然とした距離感が存在していることを示している.また,視点を変えれば婦人科医療経営的には600万人の過多月経女性のうち70%が通院していないことは,420万人という手付かずのbig marketが今なお存在していることをも示している.

 このような自覚症状の強くない過多月経症例に子宮摘出を行うのはover surgeryであるという考えから,欧米では最近20年間に,低侵襲的治療法として子宮内膜蒸散手術が広く行われるようになってきた.子宮内膜蒸散手術とは,挙児希望のない過多月経患者に対して子宮内膜蒸散(endometrial ablation)を行うことにより,子宮内膜機能層および基底層を破壊し月経血液量の減少あるいは無月経を目指す治療法である.初期の内膜蒸散手術はレゼクトスコープ1)あるいはレーザー子宮鏡2)を用いて行われた.その後さまざまの内膜蒸散器具が開発され,現在ではおよそ5種類の内膜蒸散器具が欧米では広く用いられている.これらの器具を用いれば,1日入院あるいは日帰り手術の規模で,静脈麻酔下に子宮摘出することなく過多月経の治療を行うことができるので,欧米では内膜蒸散術は婦人科臨床の大きな柱となりつつある.

 翻って国内に目を向けると,周産期管理システムのドラスティックな転換を受け入れざる得ない状況が迫りつつある現在,過多月経に対する内膜蒸散術は個人産婦人科開業医にとって必修の手技となる可能性が非常に高い.本稿では,これらの内膜蒸散器具を紹介するとともに,その治療効果,内膜蒸散器具を用いる内膜蒸散術の合併症を報告する.

年齢とreproductive stageで考える

1.小児期

著者: 藤井美穂

ページ範囲:P.242 - P.245

はじめに

 小児期の不正性器出血の多くは器質性出血である.不正性器出血は,子宮以外の性器出血と,排卵性月経を除いたすべての子宮出血とからなり1),器質性出血を除外したのち機能性出血が診断される.表1に器質性出血の出血部位別原因疾患をまとめた.出血部位は多くの場合明らかであるが,受診時にはすでに出血がなくなっていたり,一時的に止血してしまっていることもある.不正性器出血が腟からの出血であるか子宮からの出血であるかは,成人女性であれば腟鏡診で鑑別が容易であるが,小児では鑑別が困難であることが多い.小児期の外陰・腟からの出血は外傷によるものが多く,自損,腟内異物によることもあるので注意を要する.さらに性的虐待が原因にないかどうかも考慮に入れなければならない.また,血液疾患など全身性疾患の一症状であったり,切迫流産や他院で人工妊娠中絶術を受けた後の可能性もある.

 このように,小児期の不正出血の診断に際しては問診の技術に加え,限られた診察から得られる情報を十分利用して出血の原因疾患を推定しうる社会的関心と経験が必要である.

2.思春期

著者: 田坂慶一 ,   田原正浩 ,   磯部晶 ,   清水彰子

ページ範囲:P.246 - P.249

はじめに

 患者が不正出血を主訴に来院した場合,患者の年齢,月経,あるいは年齢,妊娠の可能性などにより原因の分布がかなり異なっている.一般に幼小児期での原因としては腟外陰炎,異物,早発思春期,腫瘍などが多く,思春期における原因には無排卵,妊娠関連,血液凝固異常などが多い.一方,成熟期ではホルモン剤服用,妊娠関連,無排卵,子宮筋腫,子宮内膜頸管ポリープ,甲状腺機能異常が多く,閉経周辺期では再び無排卵,子宮筋腫,子宮内膜頸管ポリープ,甲状腺機能異常が多い.閉経後の場合はホルモン剤服用,子宮内膜病変(子宮内膜癌含む),萎縮性腟炎,子宮頸部外陰腫瘍が多い.

このように,同じ不正出血いう症状をとってみても,各世代により原因の頻度は大きく異なる.これらのことにまず留意して,思春期における不正性器出血に対応しなければならない.

3.性成熟期

著者: 石原理 ,   岡垣竜吾 ,   小林浩一

ページ範囲:P.250 - P.253

はじめに

 性成熟期女性が不正出血を主訴に来院した場合,その出血部位の鑑別がまず必要となるが,本稿では子宮からの出血に関して述べる.原因の鑑別診断は図1のような3ステップを考慮して行われる.まず,(1)診察・検査により妊娠を否定する,(2)さまざまな器質的疾患,すなわち腫瘍,外傷,炎症,感染症,凝固異常などの存在を否定する,そして,(3)これらすべてが否定されたとき,いわゆる機能性出血,実は無排卵症や黄体機能不全など多様な要因による子宮内膜からの出血と診断されることになる.

 本稿では,この3ステップの診断過程について,実地臨床に則した解決アプローチを呈示したい.

4.更年期

著者: 坂本知巳 ,   水沼英樹

ページ範囲:P.254 - P.257

はじめに

 不正性器出血の診断は,基本的には機能性出血と器質性出血を鑑別することからはじまる.この場合,年齢やreproductive stageにより考えるべき疾患の原因や頻度が異なってくる.一方,更年期に起きる不正性器出血は,更年期出血といわれる機能性出血の頻度が高いといわれるが,この時期は,悪性腫瘍をはじめとした腫瘍性病変の好発年齢に当たり,また,頻度は低いものの妊娠由来の出血の可能性も否定できない時期でもあるので,更年期女性ではあらゆる可能性を念頭に診断を進めなければならない.

5.閉経後

著者: 太田博明

ページ範囲:P.259 - P.263

はじめに

 閉経後の不正出血は,患者自身は癌を想定して来院することが多いが,大部分は萎縮性の腟炎である.しかし,不正出血のなかには悪性腫瘍が稀ではあるが混在していることがあるので,それを見逃してはならない.したがって,良性疾患を想定する場合においても,細胞診を中心とする癌検診を必ず施行すべきである.なかでも,不正出血が子宮内腔からと思われるときには,外陰癌や腟癌,子宮頸癌のように視診はまったく無力であるので,経腟超音波検査で子宮内腔の病変をチェックするとともに,子宮内腔の細胞診は必須である.そこで本稿「閉経後不正出血」では,悪性腫瘍を中心にその取り扱いについて記載する.

月経周期との関連で考える

1.一定の時期に起こるもの

著者: 香山浩二

ページ範囲:P.265 - P.267

はじめに

 不正性器出血は,月経,妊娠・分娩・産褥期の生理的出血を除いたすべての性器出血をいい,産婦人科外来受診患者の訴えのなかで最も多い症状の1つである.子宮内膜からの出血のうち,月経と妊娠,炎症,外傷,腫瘍などの器質的原因を除いたものを機能性子宮出血と呼び,卵巣からのホルモン分泌異常や子宮内膜の反応性の異常が主な原因となる1)

 機能性子宮出血は大きく無排卵性出血と排卵性出血に分類される(表1).無排卵性子宮出血は思春期,更年期に最も多くみられ,排卵が起こらないためプロゲステロンが産生されず,相対的にエストロゲン過剰となり,エストロゲンの消退による消退性子宮出血(withdrawal bleeding)またはエストロゲンの持続的分泌による増殖子宮内膜からの破綻出血(breakthrough bleeding)として起こる.老年期では萎縮性子宮内膜からの出血がみられることがある2)

 本稿のテーマである月経周期の一定の時期に起こる不正出血は大部分が排卵周期に伴うもので,その発生時期により,①月経後に起こるもの,②排卵期に起こるもの,③黄体期に起こるものに分けることができる(図1)3).稀にエストロゲンの消退性出血による無排卵性の周期性子宮出血がみられ,無排卵性周期症と呼ばれる(図1).

2.周期に関連しないもの

著者: 西岡良泰 ,   吉岡信也 ,   藤原浩

ページ範囲:P.269 - P.273

はじめに

 不正性器出血は婦人科を受診する患者の主訴のなかで最も多いものの1つである.出血部位としては,子宮,腟,外陰,尿道口,肛門などが挙げられるが,婦人科疾患に伴う不正性器出血で最も頻度が高い部位は子宮である.子宮出血の原因としては,外傷,炎症,腫瘍,血液疾患などによる器質的疾患によるもの(organic uterine bleeding)と,間脳─下垂体─卵巣系の内分泌異常による機能性子宮出血(dysfunctional uterine bleeding)に大別される.

 不正性器出血を主訴とする患者を診察する場合に最も重要なことは,子宮頸癌や子宮体癌のみならずほかの婦人科臓器も含めた悪性疾患を見逃さないことである.そのため常に悪性疾患の除外診断を心掛けながら診断・治療にあたらなければならない.また診断する際には出血をきたすあらゆる疾患を考慮に入れる必要があるので,適切な問診および視診が不可欠であり,これらは十分に時間をかけて行うべきである.

3.月経不順を伴うもの

著者: 苛原稔 ,   松崎利也 ,   安井敏之

ページ範囲:P.275 - P.277

考えられる病態

 性成熟期の器質的疾患を原因としない不正出血の病態には,卵巣ホルモンの分泌異常や子宮内膜の反応性の異常が存在し1),その原因としては軽度の排卵障害が考えられる.

 不正出血は,排卵障害の有無により排卵性出血と無排卵性出血に分類される2).排卵性では,①子宮内膜の増殖期の延長による排卵期頃の少量の出血がある場合(いわゆる排卵期出血),②排卵後の黄体期に黄体ホルモンの分泌不全が発生したために不正成熟内膜になり少量の出血が起こる場合(黄体機能不全による出血),さらに,③月経期に黄体の退縮が悪く内膜の剥離不全が起こるため剥離不全内膜となり,月経から引き続いて少量の出血が持続する場合(月経に引き続く出血)が考えられる.これらの場合は,卵胞発育は正常に開始するが,卵胞発育に支障が発生する結果,卵巣からのエストロゲンやプロゲステロンの分泌が低下するために起こる性器出血である.一般に出血過多にはならず,少量の性器出血であることが多い.

薬剤使用の有無をチェックする

1.ピ ル

著者: 杉野法広

ページ範囲:P.278 - P.281

はじめに

 現在使用されている低用量経口避妊薬(ピル)は,名前のとおり含有しているホルモン量が少ないため,ピル服用中の不正性器出血の頻度は思ったより高い(図1).特に,服用3か月間は不正性器出血がみられることが多いので注意が必要である.出血のパターンと原因は,服用周期の初期に起こるものは,エストロゲンの作用不足によるもので,子宮内膜の増殖が順調に進まないために起こるものである.服用周期の後期に起こる出血は,プロゲステロン成分の効力不足かあるいは用量不足が原因であることが多く,そのため子宮内膜の維持ができず内膜が剥脱してくるために起こる.なお,原因として,エストロゲンとプロゲステロンの割合の低下などによることもあるため,一概に絶対量といい切れないこともある.

 したがって,ピル服用中の不正性器出血に対処するためには,どのようなホルモン環境で出血をきたしているのかを考える必要があり,そのためにはどのようなピルを服用しているかをまず知る必要がある.

2.ホルモン補充療法(HRT)に伴う不正出血

著者: 菊池典子 ,   本庄英雄

ページ範囲:P.282 - P.285

はじめに

 ホルモン補充療法(HRT)は閉経周辺期のエストロゲン欠落に伴う血管運動神経障害による諸症状を改善するだけでなく,骨粗鬆症,動脈硬化やアルツハイマー病の予防に有効であるとされ,閉経後女性のQOLを向上させるものと期待されている.一方で,近年HRTの否定的な報告1)が発表され,副作用に関してのコンセンサスを十分に得る必要性が高まっている.HRTの普及で障害となるのは,子宮内膜や乳腺に関連する副作用であり,なかでも不正出血は患者にとって最も気がかりなものであり,臨床医にとっても対処に苦慮するところである.本稿では更年期のHRT施行に伴う不正出血のアプローチに関して考察する.

3.GnRHアナログ

著者: 北島道夫 ,   石丸忠之

ページ範囲:P.288 - P.291

はじめに

 不正性器出血とは,分娩期の出血を除いて,「排卵性月経以外の性器出血」すべてを含むものと考えられ,腫瘍性病変,炎症,外傷,異物などにより生じる器質性出血と,器質的原因を認めない主に内分泌異常,稀には血液疾患により生じる機能性出血に大別される1)

 GnRHアナログ(アゴニスト)製剤は,産婦人科領域では主に子宮内膜症,子宮筋腫あるいは排卵誘発に対する薬物療法として一般臨床の場で頻用されている.GnRHアゴニスト製剤使用時には,器質性および機能性出血のいずれのタイプの不正性器出血をも認める場合がある.本稿では,GnRHアナログ製剤使用時の不正性器出血の特徴と留意点について述べる.

4.タモキシフェン

著者: 吉川史隆 ,   水谷栄彦

ページ範囲:P.292 - P.295

はじめに

 欧米における乳癌の死亡率は肺癌についで第2位を占めているが,1990年ごろより減少傾向にある.一方,本邦においては乳癌の死亡率は胃癌,大腸癌,肺癌についで第4位であるが,生活習慣の欧米化に伴って年々増加傾向にある.乳癌と子宮体癌はホルモン依存性腫瘍であり,エストロゲンやプロゲステロンにより癌の増殖・進展が影響されるだけでなく,癌の発生にもこれらの性ホルモンが深くかかわっている.したがって,ホルモン依存性を利用したホルモン剤が癌治療に用いられている.子宮体癌に対してはプロゲステロン(ヒスロン)の大量投与が実施されているが,乳癌ではエストロゲンレセプターに結合してその作用を遮断するクエン酸タモキシフェンが使用されている.

5.向精神薬など

著者: 小池浩司

ページ範囲:P.297 - P.299

はじめに

 高プロラクチン血症の患者は,乳汁漏出とともに無月経に至る過程で,黄体機能不全,無排卵性月経,機能性出血,稀発月経などのさまざまな月経異常を高率に伴うため,不正出血を主訴として婦人科外来を訪れることが多い.なかでも薬剤によりもたらされる高プロラクチン血症は臨床上しばしば遭遇するもので,無排卵性月経や機能性出血などによる不正出血が初発症状となることも多い.そこで,本稿ではまず薬剤服用に伴う高プロラクチン血症の原因薬剤の分類について概説し,ついで薬剤性高プロラクチン血症の臨床症状ならびに鑑別診断の実際とその対応について述べた後,最後に薬剤による高プロラクチン血症がもたらす排卵障害のメカニズムについても触れたい.

子宮以外からの出血もチェックする

1.腟出血(炎症,異物,外傷)

著者: 伊東宏絵 ,   井坂恵一

ページ範囲:P.301 - P.303

はじめに

 不正性器出血を訴えて来院した患者を診察する際には,まずその出血が性器から出血しているのかどうかを明らかにする必要がある.しばしば患者は腟からの出血以外であっても,腟からの出血であると訴えることが多い.不正出血の大半は子宮からであり腟からの出血は稀であるが,外来診療においては,常に子宮以外の部位からの出血も念頭において診察を行わなければならない.一般に腟からの出血は,腟鏡診にて出血部位や病変の観察が可能であるため診断は比較的容易なものが多い.鑑別すべき出血部位としては外陰,子宮頸部,子宮内腔,卵管,尿路,消化管などがある.

 腟出血の原因としては,①炎症性,②腫瘍性,③異物,④外傷性に分類される.以下に診断のポイントについて詳記する.

2.尿路・消化管出血

著者: 前村俊満 ,   田中政信 ,   久保春海

ページ範囲:P.304 - P.307

はじめに

 不正出血を主訴として産婦人科を受診する人は多い.産婦人科を受診したからといって必ずしも産婦人科領域の疾患ではない場合もあることを考慮して診察に望む必要がある.まず問診,視診,触診,内診,画像診断などにより,産婦人科領域に関する器質性疾患を否定したうえで機能性疾患を考え,産婦人科領域の疾患による出血か否かを鑑別する.本稿では尿路・消化管からの出血をきたす主な疾患を解説する.

連載 知っていると役立つ婦人科病理・56

What is your diagnosis ?

著者: 清水道生 ,   小川史洋 ,   清水禎彦

ページ範囲:P.239 - P.241

症例 : 12歳,女性

 思春期早発症がみられ,精査を行ったところ腹部に腫瘤が認められ,左卵巣腫瘍の診断のもとに切除術が行われた.摘出標本では,腫瘍の直径が12 cmで,割面では大部分が充実性で,散在性に嚢胞性の部分が認められた.Fig 1~2はその腫瘍の代表的な組織像(HE染色)である.病理診断は何か.

ここまできた婦人科日帰り手術 10

婦人科日帰り手術の援助とケアのポイント

著者: 長谷川充子

ページ範囲:P.317 - P.319

[1] はじめに

 医学の進歩により,日帰りの手術が多くの病院で行われるようになってきた.手術前,手術後に入院という形をとらず,手術もトラブルなく麻酔から覚醒し,食事摂取ができ,1人で歩行が可能となれば24時間以内に退院することを日帰り手術(デイサージャリー : 以下,DS)と呼ぶ.術前・術後の管理を自宅で行うことになるため,術前のインフォームド・コンセントや術後の家庭での過ごし方の指導をするケアコーディネータが必要となる.手術当日に帰宅することで不安を訴える患者,家族もいて入院を希望することもあるが,そのような人達の不安を解消し,安心して自宅療養できるように看護師はサポートしている.

 当院で行われている主なDS手術は,(1)腟前壁形成術,(2)腟後壁形成術,(3)子宮内容物掻爬術,(4)腹腔鏡補助下腹式付属器摘出術,(5)腹腔鏡補助下腹式嚢腫摘出術,(6)腹腔鏡下嚢腫摘出術,(7)円錐切除術,(8)付属器摘出術である.

OBSTETRIC NEWS

双胎妊娠胎児一児死亡は遂娩が必要なのか?

著者: 武久徹

ページ範囲:P.321 - P.323

 筆者は約20年前から北米の周産期学会,セミナー,卒後教育の会に出席している.10年以上前に,Palm Springsで行われているFreeman RK(ロングビーチ記念病院)らが毎年主催しているコースで,双胎妊娠胎児一児死亡(single demise)の講義を聴いたときには,「胎児生存可能時期以降で即刻遂娩を行えば,残存生存児の転帰を改善できるから即刻介入が標準的医療」という結論ではなかったと記憶している.詳細を把握しているわけではないが,最近,single demiseの診断後直ちに遂娩せず,残存生存児に分娩後に高度脳障害が発症した例の医療訴訟が複数発生していることを耳にした.最近10年間で,「single demiseの診断後即刻遂娩して明らかに残存生存児の転帰の改善がみられた」という複数の信頼できる証拠となる研究が紹介されたのであろうか? 本稿ではこの問題を検討する.

 Single demiseの発生頻度は2.2%(OG 63 : 126, 1984),2.4%(Lancet 355 : 1597, 2000),2.6%(OG 73 : 685, 1989),7.9%(Acta Ob Gyn Scand 78 : 202, 1999)で,多胎妊娠では稀な合併症ではない.残存生存児の転帰に関しては多数の報告がある.

Estrogen Series 60

「エストロゲン+プロゲステロンが乳癌およびマンモグラフィに及ぼす影響について」──WHI研究の詳細分析

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.324 - P.325

 今回ご紹介するのは先回と先先回に引き続き,WHIの結果をさらに詳細に分析しようとしたものである.この論文は,エストロゲン+プロゲステロン(ここではE+Pと略す)と乳癌およびマンモグラフィ所見との関連をみようとしたものである.対象はWHIにおけるものと同一で,50~79歳の健康な更年期後の女性16,000人に対し,E+Pとプラセボの使用とにランダムに分け,平均5.6年フォローした.これらの女性は毎年乳房検診とマンモグラフィを行った.

〔結 果〕

乳癌の発生率

 乳癌の発生はE+P使用者に,明確に,有意差を持って増加していた.

病院めぐり

桐生厚生総合病院

著者: 深石孝夫

ページ範囲:P.326 - P.326

 当院は,昭和9年に桐生組合病院として20床で発足し,昭和35年より桐生市外8箇町村医療事務組合による桐生厚生総合病院となりました.現在は,桐生市のほか6か町村(大間々町,笠懸町,薮塚本町,新里村,東村,黒保根村)の医療事務組合による病床数510床,診療科18科の公立総合病院です.桐生市は群馬県の東,東毛地区にあり,足利,太田に隣接し三方を山に囲まれ,渡良瀬川と桐生川が流れる山紫水明の町です.かつて織物,養蚕で一世を風靡した歴史のある地域であり,またスポーツも盛んで,最近では現在日本ハムの正田樹投手を擁し桐生第一高校が平成11年の夏の甲子園で優勝したことは記憶に新しく,サッカーの日韓ワールドカップの日本代表で活躍した松田直樹選手は当地の出身です.

 平成13年11月に病院機能評価認定病院となり,また平成14年4月に厚生労働省の臨床研修指定病院に認定され,“向学心と優しさに満ちた医療”を基本理念に,ますます地域医療の中心として活発に活動しています.

平塚市民病院

著者: 齋藤優

ページ範囲:P.327 - P.327

 当院のルーツは,昭和25年に平塚市周辺8か町村の国民健康保険組合直営診療施設として設立された「中南国保病院」にさかのぼります.昭和43年に平塚市が継承し,平塚市民病院として再出発しました.昭和45年に現在地に移り,同時に交通救急センターを併設,地域の基幹病院としての責務を果たしてきました.一般病床数500床,感染症病床6床より構成され,診療科目19科の総合病院です.平成4年には,厚生省臨床研修指定病院に認定され,現在4名の研修医が各科で研修中です.臨床研修システムの変更に伴い,来年度よりさらに多くの研修医が当院で研修する予定になっています.

 産婦人科は,病床数50床に対しスタッフは常勤医5名,専修医1名,産科志望研修医1名の計7名です.市民の幅広いニーズに応えることをモットーに,さまざまな分野に意欲的に取り組んでいます.産科分野では分娩数こそ年間約600件弱ですが,周産期センターを設立し,NICUを8床持ち,神奈川県周産期医療システムの中核病院として市内および周辺の医療機関からの産科救急患者,早産患者を受け入れています.NICUの容量の関係からなかなかすべての要請に応えられるわけではありませんが,24時間体制で対応しています.また,エコーによる胎児疾患スクリーニングの分野にも力を入れています.

症例

妊娠中に大動脈解離を起こした1例

著者: 逸見博文 ,   鈴木静夫 ,   岡村直樹 ,   蠣崎和彦 ,   吉田俊人 ,   其田一 ,   足立憲昭 ,   遠藤俊明 ,   工藤隆一

ページ範囲:P.330 - P.333

解離性大動脈瘤は予後不良の疾患であり,妊娠,分娩が解離性大動脈瘤発症の原因となることが高率であることが知られている.今回われわれは,妊娠36週にStanford B,DeBakey IIIbの解離性大動脈瘤を発症した症例に対して,人工血管置換術が施行できる体制下において緊急帝王切開術を施行し,術後ICUにて降圧療法を施行し,保存的に治療した症例を経験したので報告する.


はじめに

解離性大動脈瘤は予後不良の疾患であり,原因として動脈硬化,Marfan症候群などが多いが,妊娠・分娩が解離性大動脈瘤の原因となることが知られており,40歳以下の女性の解離性大動脈瘤の50%以上は妊娠中の発症であるという報告がある1).今回われわれは,妊娠36週に解離性大動脈瘤を発症し,帝王切開にて分娩ののち,保存的に治療した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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