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雑誌目次

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臨床婦人科産科58巻4号

2004年04月発行

雑誌目次

I.無痛分娩の概要 無痛分娩の現状

1.諸外国,本邦における無痛分娩の現状について教えて下さい.

著者: 奥富俊之

ページ範囲:P.358 - P.359

1 現在の無痛分娩に至るまで(無痛分娩の歴史)

 19世紀半ば,英国においてSnowがVictoria女王の王子Leopoldにクロロホルムを用いて以来,麻酔分娩が急速に世に認められるようになった.以後,少し遅れて亜酸化窒素(いわゆる笑気)も使用されるようになった.20世紀に入るとこれらの吸入麻酔薬と並行して,脊髄くも膜下麻酔(いわゆる脊椎麻酔)や硬膜外麻酔のような区域麻酔,あるいは陰部神経ブロックや傍頸管ブッロックといった神経ブロックなどの技術が進み,やがてこれらが産科麻酔に応用された.20世紀後半になると母児に対する合併症の面から吸入麻酔薬よりも区域麻酔,特に硬膜外麻酔が主流となった.これら欧米の産科麻酔の流れは,大まかにはわが国においても同様であるが,時代的には約20~30年の遅れがある.すなわち,1970~1990年以前はトリクロールエチレン,ペントレン,亜酸化窒素のような吸入麻酔薬,あるいはペントバルビタール,ジアゼパム,酒石酸レバロルファン,塩酸ペチジンといった静脈麻酔薬が主流を占めていたが,1990年以降は硬膜外麻酔が主流となった.

2.なぜ日本では無痛分娩があまり行われないのですか.

著者: 奥富俊之

ページ範囲:P.361 - P.363

1 はじめに

 妊婦に対して「なぜ無痛分娩を受けないのですか」という直接的なアンケートを大規模に行ったデータがないので,あくまでも小数データからの推測でしかないが,諸外国と比べ文化的背景や出産事情が異なっていることは確かであり,それらが原因の一部であることは想像に難くない.

無痛分娩の目的と効用

3.無痛分娩の目的について教えて下さい.

著者: 奥富俊之

ページ範囲:P.365 - P.367

1 痛みから確実に妊婦を解放する

 一般的に,初産婦では200回,経産婦では150回程度の陣痛を経て児を出産するとされている.無痛分娩の目的は,そうした「子宮収縮に伴う痛み(陣痛)から妊婦を解放してあげること」である.

 しかし,一口でそういっても,現実には陣痛には個人差が大きい.月経痛の酷いようなものといってそれほど苦しまずに産んでしまう妊婦もいれば,下半身が引き裂かれるとか,鼻から西瓜が爆発して出てくるとか,男性には想像できないようないろいろな表現をする.ある研究によると,経産婦の場合,激痛を経験する妊婦の割合は半分弱であるのに対して,初産婦の場合は6割以上がかなりの激痛を経験する(図1).あらかじめその痛みがどの程度か,さらにはどれくらい持続するのか予測できれば妊婦自身も構えることができるが,実際には予測できないだけにその不安からさらに痛みは恐怖を伴い増強する.

4.無痛分娩の効用について教えて下さい.

著者: 奥富俊之

ページ範囲:P.368 - P.369

1 陣痛からの解放

 無痛分娩の第一の目的が「子宮収縮に伴う痛み(陣痛)から解放される」ことであるので,痛みがネガティブなイメージの妊婦,あるいは痛みによって興奮状態(極度の場合はいわゆる錯乱分娩)になる場合は無痛分娩が効果的である.痛みによって全身が硬直したりする場合は産道をかえって狭めてしまったり,子宮口が十分に開いていない場合は子宮内圧が不必要に上昇するため痛みは増強する一方である.このため,このような痛みの閾値の低い妊婦には無痛分娩が適しているといえる.

無痛分娩(産科麻酔)の種類

5.無痛分娩法の種類について教えて下さい.

著者: 中塚秀輝 ,   佐藤健治

ページ範囲:P.370 - P.371

1 はじめに

 無痛分娩法には精神予防的方法など薬物によらない方法もあるが,本稿では薬物を用いた無痛分娩法の種類について述べる.全身麻酔(吸入麻酔,静脈麻酔)と局所麻酔(神経ブロック,脊髄くも膜下麻酔,硬膜外麻酔)に大別されるが,最近は硬膜外麻酔が広く行われている.

全身麻酔について

6.静脈麻酔の方法および利点と欠点について教えて下さい.

著者: 花崎元彦 ,   中塚秀輝

ページ範囲:P.372 - P.373

1 はじめに

 現在,無痛分娩法の主流は硬膜外麻酔であり,静脈麻酔による無痛分娩はさまざまな理由により硬膜外麻酔が行えない場合に適応となる.最大の利点は,静脈路さえ確保されればすぐに開始でき,簡便で特別な技術や機器を必要としないことである.しかしながら,その手軽さと背中合わせに多くの危険性も持ち合わせており,適応の判断,合併症への対応に注意を要する.

7.吸入麻酔の方法および利点と欠点について教えて下さい.

著者: 花崎元彦 ,   中塚秀輝

ページ範囲:P.374 - P.375

1 はじめに

 吸入麻酔による無痛分娩の歴史は古く,1847年にはSimpsonがクロロホルム吸入を行っている.さらに1853年,SnowがVictoria女王の無痛分娩にクロロホルムを使用したことで広く普及した.しかし現在の無痛分娩の主流は硬膜外麻酔であり,吸入麻酔による無痛分娩もまた,静脈麻酔による無痛分娩と同様に,さまざまな理由により硬膜外麻酔が行えない場合に適応となる.

局所麻酔について

8.神経ブロックの方法および利点と欠点について教えて下さい.

著者: 佐藤哲文 ,   中塚秀輝

ページ範囲:P.376 - P.377

1 はじめに

 分娩時の鎮痛法としては,(1)十分な鎮痛が得られる,(2)母体の意識が保たれ出産に積極的に参加できる,(3)新生児への影響がない,(4)分娩の進行に影響しない,ことが望ましい.この理想に最も近い鎮痛法として硬膜外鎮痛法が多くの施設で選択されている.しかし硬膜外麻酔が禁忌となる疾患を合併している場合や,硬膜外麻酔のみでは鎮痛効果が不十分な場合には,そのほかの神経ブロックが選択される.

9.脊髄麻酔の方法および利点と欠点について教えて下さい.

著者: 佐藤哲文 ,   中塚秀輝

ページ範囲:P.378 - P.379

1 はじめに

 脊髄くも膜下麻酔に用いられる局所麻酔薬の多くは,知覚神経のみでなく,運動神経も遮断する.運動神経遮断は分娩の進行に影響を与える可能性が大きく,分娩時の麻酔法としては局所麻酔薬を用いる脊髄くも膜下麻酔は不向きであると考えられてきた.また脊髄くも膜下麻酔により,妊婦では仰臥位低血圧症候群による血圧低下が起こりやすいことや,硬膜穿刺後頭痛の発生の問題から脊髄くも膜下麻酔は無痛分娩にあまり行われてこなかった.

 しかし最近では,低濃度の局所麻酔薬や低用量の脂溶性オピオイドの使用によって,運動神経遮断を最小限に抑えることで分娩の進行に影響を与えず,分娩時の痛みを抑制することが可能であることが知られてきている1)

10.硬膜外麻酔による無痛分娩の利点と欠点について教えて下さい.

著者: 谷西秀紀 ,   花崎元彦 ,   中塚秀輝

ページ範囲:P.380 - P.381

1 はじめに

 現在,硬膜外麻酔は無痛分娩の手技として最も広く用いられている方法である.通常,腰部よりカテーテルを挿入し,局所麻酔薬単独あるいは局所麻酔薬に麻薬を添加して持続注入を行う.最大の利点は,その優れた鎮痛効果とともに,妊婦の意識を残したまま施行することが可能であり,産む喜びを実感できることにある.ただ,確実に施行するためには多少の熟練を必要とする.合併症への対処が適切に行われないと母児ともに大きな障害を引き起こす可能性があるため,安易な施行は慎むべきである.

バランス麻酔とは何か

11.バランス麻酔の方法について教えて下さい.

著者: 小倉久男

ページ範囲:P.382 - P.383

1 はじめに

 バランス麻酔は,分娩の進行状況に応じて鎮静薬,鎮痛薬,麻薬,吸入麻酔薬などを投与して,お互いの効果を上手に利用し,和痛効果,無痛効果を期待する方法である.

 バランス麻酔および他の方法で無痛分娩を行う場合でも,無痛分娩を希望する妊婦には,母親学級への参加および個別指導により精神の安定,薬剤の効果,時期などに理解を得て,麻酔薬を使うということで術前検査に準じる検査(心電図など),グットマン,マルチウスなどの画像診断を行う.さらに,入院の時期(自然陣痛によるものか,誘発によるものか)について妊婦と相談する.

 バランス麻酔の方法には種々あるが,当科では図1の方法で行っている.パルトグラムを使用して個々の症例の経過を把握し,血管確保(19 Gエラスター針)を行い,分娩監視装置を装着し,陣痛の状態および児心音の監視を行う.

12.バランス麻酔の適応と禁忌について教えて下さい.

著者: 小倉久男

ページ範囲:P.385 - P.385

1 はじめに

 バランス麻酔による無痛分娩の適応と禁忌については,経腟分娩が可能かどうか,さらに麻酔薬を用いるので,麻酔薬による影響を与える母体疾患(喘息,心疾患など)があるかどうかを基本的に検討しなければならない.

13.バランス麻酔の利点と欠点について教えて下さい.

著者: 小倉久男

ページ範囲:P.386 - P.387

1 はじめに

 無痛分娩の主流は,現在では硬膜外麻酔と考える.しかし,一部では簡便に施行できるバランス麻酔を行っている病院もある.バランス麻酔の利点と欠点を考えてみると,適応と禁忌に相通じるものがある.

II.硬膜外麻酔分娩の概要 分娩の痛みについて

14.分娩の痛みについて,開口期(内臓痛)と娩出期(体性痛)に分けて説明して下さい.また,痛みの伝達経路についても教えて下さい.

著者: 甘彰華

ページ範囲:P.391 - P.393

1 痛みのメカニズム

 痛みはその原因により,(1)侵害受容性のもの,(2)神経因性のもの,(3)心因性のものに区別される.子宮や会陰組織にも苦痛や外傷などの刺激を受容し伝達する末梢神経構造,すなわち侵害受容器がある.

1. 侵害刺激

 機械的刺激,物理的刺激,発痛物質として化学物質が挙げられる.傷害された皮下組織血漿や細胞膜から産生される発痛物質により,神経終末は繰り返し刺激され痛みの信号を送る.神経終末は,受傷に伴う交感神経緊張状態から放出されるノルアドレナリンに過敏に反応し,さらにマクロファージから産生されるcytokine(インターロイキンやnerve growth factorなど)によっても反応を増強する.発痛物質として,アセチルコリン,カリウム,セロトニン,ロイコトリエン,ヒスタミン,ブラディキニン,プロスタグランジンなどがある.

硬膜外麻酔と分娩

15.なぜ硬膜外麻酔が分娩に一番適しているといえるのですか.

著者: 甘彰華

ページ範囲:P.395 - P.397

1 はじめに

 分娩という生理現象を自然のまま経過をみた場合,医学的にどのような生理的変化が母児に問題であり,それに対して麻酔分娩を行うことの意義が何であるのか.さらに無痛分娩には種々の方法があるが,硬膜外麻酔が分娩に一番適している理由は何かということになる.

 その前に,分娩の主体者である産婦の立場で考えた場合,この設問に対する判断は産婦が帰属している社会で長い間かかって培われた風俗,慣習,価値感や倫理感,すなわちその社会の持つ経済・文化的背景をも考慮しなければならないが,今回は医学的観点から話を進める.

硬膜外麻酔分娩の安全性

16.硬膜外麻酔分娩は自然分娩と比べて安全といえるのですか.

著者: 甘彰華

ページ範囲:P.398 - P.401

1 はじめに

 自然分娩に硬膜外麻酔を行うと,母体,胎児,分娩経過にどのような影響を与えるかという問題である.

 まず,妊娠と麻酔のリスクとの関連を全体的にみた場合,麻酔が関係した母体死亡は米国において生産100万に対し1.7と概算されている.これは0.75% bupivacaineを市場から撤去し,局所麻酔薬の分割投与が一般に広まったことにより,局所麻酔薬の中毒死が急激に減少したからである.一方,区域麻酔の安全性が高まるとともに,全身麻酔のリスクが相対的に高まる結果となった.帝王切開術においてその死亡率は,全身麻酔で生産100万に対して32,区域麻酔で1.9と報告されている.また,全身麻酔時の挿管困難が妊婦250例に1例起こり,非妊婦の約10倍である.

硬膜外麻酔分娩の適応と禁忌

17.硬膜外麻酔分娩の適応について教えて下さい.

著者: 甘彰華

ページ範囲:P.402 - P.402

1 はじめに

 硬膜外麻酔分娩の禁忌には絶対的禁忌があるが,適応には絶対的適応はない.本来,分娩・出産は自然分娩が生理的状態だからである.したがって,硬膜外麻酔分娩の適応には,産婦自身の人生のなかで,分娩・出産をどのように位置づけ,どのような方法でそれを克服するかという個人的視点がある.もう一方は,医学的視点から硬膜外麻酔分娩を受けたほうが母児にとってより安全であると判断される場合である.

18.硬膜外麻酔分娩の禁忌について教えて下さい.

著者: 甘彰華

ページ範囲:P.403 - P.403

1 はじめに

 リスクを予防する基本は不適切な患者を除外することである.

硬膜外麻酔分娩前の診察と検査

19.硬膜外麻酔分娩前の診察と検査について教えて下さい.

著者: 甘彰華

ページ範囲:P.404 - P.405

1 はじめに

 安全な麻酔を行うためには自ら診察を行い,検査データをチェックすることが基本であり,きわめて重要なことである.

硬膜外麻酔分娩の所要時間

20.硬膜外麻酔分娩の所要時間について教えて下さい.

著者: 甘彰華

ページ範囲:P.406 - P.407

1 はじめに

 分娩所要時間を評価する場合,陣痛初来の時間をどこにとるかによって,分娩所要時間が異なってくる.すなわち,陣痛初来のスタート時間が入院時なのか,子宮収縮が10分ごと3回なのかは,施設によって異なってくる.

硬膜外麻酔分娩を行うための設備と体制

21.クリニックではどうしていますか.

著者: 牛丸敬祥

ページ範囲:P.408 - P.409

1 設 備

 硬膜外麻酔分娩を行うことは,麻酔を行うことである.したがって,硬膜外麻酔の合併症などの緊急時に対応できるように,通常の手術場と同じように,蘇生器として使用可能な全身麻酔器と酸素配管,吸引器を用意している.緊急薬品としては表1に示すものを用意している.

 筆者のクリニックでは,LDRルームでフリースタイル分娩を行っている(図1).元来,お産は恐怖心から解放され,リラックスし,居眠りをしながら行うのが安全で安産につながるといわれている.LDRシステムによる分娩は,そのような目的に沿って,病院の分娩室での管理分娩という多少恐怖心をあおるような分娩体制ではなく,家族の皆で,和気あいあいと,リラックスしたムードのなかでお産しようというのが狙いである.フリースタイル分娩についても,リスクを伴わなければ,クリニック内で,リラックスした自宅分娩(施設内助産院)を期待しての体制である.

22.公立病院ではどうしていますか.

著者: 内野直樹 ,   西井文乃

ページ範囲:P.410 - P.411

1 はじめに

 麻酔分娩管理のために必要な設備は特殊なものは一切必要としない.分娩室近辺に救急カートがあれば急変に対応可能である.カートの内容も一般の一次,二次救急対応可能な施設の機器で十分である.最も必要な体制は,母児の異常を早期発見可能とする産科スタッフの教育と円滑な連絡方法,直ちに救急救命処置の可能なシステム構築と迅速に行動できるスタッフの養成である.麻酔分娩の際に起こり得る重篤な合併症の頻度は1~2%以下に過ぎないが,処置が遅れた場合は致命的な結果に陥るからである.

 病院全体の体制として,可能であれば“飛び込みの帝王切開”(術前検査未施行で電話連絡と同時に入室するような帝王切開)が行える体制を整備しておくべきであろう.手術室は,分娩室と同一のフロアーにあればさらに時間の短縮が可能である.われわれの施設では年間1,000例弱の分娩しか扱っていないため,超緊急の帝王切開は年間10例前後であるが,手術決定から児娩出までの時間は年々短縮され,現在では最短20分程度で可能となった.麻酔科,手術室との定期的な話し合いで協力体制が徐々に整ってきたことが時間の短縮につながった.現在の課題は時間外,日祭日などの対応である.平日日勤帯と同様に行えることが望ましいが,われわれの施設では麻酔科,手術室看護婦はオンコール体制なので最短で40分となってしまう.将来の目標として,超緊急帝王切開は分娩室で行うことを検討中である.

23.大学病院ではどうしていますか.

著者: 天野完

ページ範囲:P.412 - P.413

1 はじめに

 北里大学病院では1971年の開院以来,麻酔分娩(無痛分娩)による分娩管理を行っている.当初はいわゆるバランス麻酔が中心であったが,1980年代より持続腰部硬膜外麻酔を導入し,1990年代からは第一選択の方法としている.従来の間欠投与法から低濃度局麻薬とオピオイド併用による持続投与法に切り替え,脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(combined spinal epidural analgesia : CSEA)も行っている1)(図1).

 最近3年間の予定帝切を除いた経腟分娩2,766例中の区域麻酔による無痛分娩の頻度は1,897例(68%)(硬膜外麻酔が1,530例,CSEAが367例)である(表1).

硬膜外麻酔の管理

24.クリニックではどうしていますか.

著者: 牛丸敬祥

ページ範囲:P.414 - P.415

1 誰が施行しているか

 硬膜外麻酔針を挿入する者は,ある程度の麻酔の知識と経験を有する医師が行わなければならない.したがって,当クリニックでは硬膜外麻酔カテーテルの挿入は院長である筆者が行っている(図1).


2 手 順

 当クリニックでは,以下の手順で行っている.

 (1)持続血圧計を装着する.(2)乳酸加リンゲル液で持続点滴をとる.(3)硫酸アトロピンの筋肉注射を行う.(4)患者の体位をとる(通常は側臥位).(5)硬膜外麻酔針挿入部をイソジン液で消毒する.(6)硬膜外麻酔針を挿入し,硬膜外麻酔カテーテルを留置する.(7)麻酔効果を確認しながら0.25%ないし0.5%のマーカインを注入する.

25.公立病院ではどうしていますか.

著者: 内野直樹 ,   西井文乃

ページ範囲:P.417 - P.419

1 はじめに

 2002年の第22回臨床麻酔学会シンポジウムでは,産科手術(帝王切開)に麻酔科専門医の関与する頻度は30%に満たないという現状が示された.同学会に発表したわれわれの帝王切開麻酔に関する調査もほぼ同様の結果で,産婦人科医が麻酔管理を行っている場合が多い.その反面,麻酔科医のほぼ90%が産科麻酔はハイリスクであるという認識を持っている.本邦では,麻酔分娩の麻酔管理を誰がどのように行うかに関する調査は施行されていないが,帝王切開麻酔の現状からは,分娩中に産婦人科医が管理を行っている施設がほとんどを占めているものと推察される.われわれの施設では,1992年より硬膜外麻酔分娩を産婦人科医による管理で行ってきたが,本年4月,麻酔科常勤医が確保された段階で麻酔分娩の麻酔管理を麻酔科医に依頼している.カテーテルの留置,main doseの注入までを麻酔科医に依頼し,異常をきたさなければ産婦人科医が以後の麻酔管理を行い,妊婦に急変をきたした場合は麻酔科医と共同で対処している.

26.大学病院ではどうしていますか.

著者: 天野完

ページ範囲:P.420 - P.421

1 誰が施行しているか

 北里大学では入局後2年間の研修医,3年間の病棟医としてのトレーニング期間は3月ごとに婦人科病棟,産科病棟,家族計画外来をローテートすることを原則としている(2004年からスーパーローテートが導入される).その間にNICU,麻酔科をそれぞれ3か月間ローテートし,5年終了後は研究員(助手)として周産期,婦人科腫瘍,生殖内分泌いずれかの領域で臨床,研究,教育に携わることになる.産科スタッフ(研究員,講師,助教授)には分娩室勤務の担当日が決められ,その日の分娩が終了するまで分娩管理に専従することになり,硬膜外麻酔も原則としてスタッフが実施することになる.現在は週3日のみ麻酔科指導医の分娩室勤務が可能となり,緊急時の対応がスムーズに行える.

 なお,脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(combined spinal epidural analgesia : CSEA)は麻酔科医が実施している.

硬膜外麻酔の手技

27.硬膜外麻酔分娩の開始時期について教えて下さい.

著者: 横田和美 ,   照井克生

ページ範囲:P.422 - P.423

1 開始前の処置

 無痛分娩希望の妊婦は,陣痛発来した時点から誤嚥防止のために絶飲食とする.しかし,最終経口摂取から一定時間経過するまで硬膜外麻酔開始を遅らせる必要はない.妊婦はすべて“フルストマック”であると考えるべきであり,一定時間経過したからといって誤嚥の危険性がなくなるわけではないからである.直前に経口摂取をしてしまった妊婦が急に硬膜外麻酔を求めた場合は,メトクロプラミド(プリンペランィ)10 mgを静注して胃内容量減少をはかる.

 絶飲食に対する水分補給と,低血圧への対処の目的で末梢静脈路を確保する.

28.硬膜外麻酔に使用する器材について教えて下さい.

著者: 横田和美 ,   照井克生

ページ範囲:P.425 - P.427

1 部屋の環境と設備

 硬膜外麻酔を施行する場所は,病室ではなく清潔度の高いところで,例えば陣痛室や分娩室で行う.またショックや局麻中毒などに備え,酸素と吸引はすぐ使用できる状況でなければならない.施行者と介助者は帽子とマスクを着用し,滅菌手袋をして清潔操作で行う.

29.硬膜外麻酔に使用する薬剤について教えて下さい.

著者: 横田和美 ,   照井克生

ページ範囲:P.428 - P.429

1 硬膜外無痛分娩にとって理想的な麻酔薬とは

 分娩にとって理想的な鎮痛法は,筋緊張や運動機能を保ちながらも,痛覚は遮断されている状態を提供できるものである.産婦が陣痛(子宮収縮)を感じることができればなおよい.同時に,母体にとって副作用が少なく,胎盤を通過しにくく,胎児への影響が最小限の麻酔薬が望ましい.

 これらの目的を達成するために,局所麻酔薬の濃度を低く抑えて運動神経遮断を回避し,鎮痛効果を補うためにフェンタニルを併用する方法が一般的である.

30.硬膜外麻酔を行う体位について教えて下さい.

著者: 横田和美 ,   照井克生

ページ範囲:P.431 - P.433

1 体位の重要性

 最初に適切な体位がとれるか否かによって,硬膜外穿刺が成功するか失敗するかが決定するといっても過言ではない.術者,麻酔介助者が正しい体位を理解し,適切な体位を産婦にとらせることが大切である.それが短時間で手技を終える近道でもある.

31.硬膜外カテーテル留置を行う際の消毒について教えて下さい.

著者: 田中基 ,   田村高子 ,   宮坂勝之

ページ範囲:P.434 - P.437

1 はじめに

 硬膜外無痛分娩における重篤な合併症には,硬膜外膿瘍や細菌性髄膜炎などの感染によるものがある.硬膜外膿瘍の発生率は硬膜外ブロック50万件に1例程度と発生率は非常に低く,血行感染などの場合もあるため必ずしも硬膜外カテーテル留置と関連するとは限らない1).しかし,Huntら2)は硬膜外カテーテルの22%に細菌感染があり,特に産科患者において感染率が高かったと報告しており,硬膜外カテーテル留置の際の消毒および清潔操作をおろそかにすることはできない.

 現在,硬膜外カテーテル留置時の消毒についてのEBM(evidence based medicine)に基づいたガイドラインは存在しないため,海外においても消毒方法や帽子,マスク,滅菌ガウンの着用に関しては施設により異なる3).しかし,脊髄近傍へのカテーテル留置であるため,中心静脈カテーテル留置時と同様のmaximal barrier precautions(最上級の感染遮断防御策)が必要と考えている施設も多い4).当センターにおいても,CDC(Centers for Disease Control and Prevention : 米国疫病管理予防センター)が公表している中心静脈カテーテル留置時の感染予防ガイドライン5)に準じた処置を硬膜外カテーテル留置の際にも行っているので紹介する.

32.硬膜外麻酔の穿刺部位と穿刺法について教えて下さい.

著者: 林玲子 ,   田村高子 ,   田中基

ページ範囲:P.439 - P.441

1 硬膜外麻酔の穿刺部位

 分娩第一期(子宮口全開大まで)の痛みは,子宮の収縮と頸管の伸展により生じるため,産婦は下腹部から腰部の痛みを訴える.これらの痛みは子宮を支配する求心性の神経により伝達される.この痛みは交感神経とともに子宮神経叢から下下腹神経叢,中下腹神経叢,上下腹神経叢を経て腹腔神経叢に至る.脊髄分節ではT10からL1の分節で脊髄に至る.体性痛と比較して,内臓の支配神経は必ずしも明確ではないが,分娩第一期にはT10からL1にわたる範囲の痛覚をブロックすれば鎮痛効果が得られると考えられている.

 分娩第二期(子宮口全開大から児の娩出)の痛みは,主として会陰部の伸展による痛みであり,産婦は臀部,仙骨部の痛みを訴えることが多い.これは仙骨神経叢から始まる陰部神経(S2からS4)を経て伝わる1~3)

33.硬膜外麻酔の効果判定について教えて下さい.

著者: 田村高子 ,   宮坂勝之

ページ範囲:P.442 - P.443

1 無痛分娩に必要な麻酔域

 分娩第1期の痛みは,子宮体の収縮と,子宮頸部の拡張,伸展によるものがある.これらは脊髄神経のAdとC求心性線維によってT10~L1の脊髄レベルに伝わる.分娩第2期には会陰部と骨盤内組織の牽引痛が加わり,T10以下,S領域にまで痛みが拡る.

34.硬膜外麻酔中の管理方法について教えて下さい.

著者: 田中基 ,   田村高子 ,   宮坂勝之

ページ範囲:P.444 - P.447

1 硬膜外無痛分娩は安全に行われなければならない

 近年,硬膜外無痛分娩に関心を持つ妊婦は増加しつつある.硬膜外無痛分娩は優れた鎮痛方法ではあるが,硬膜外無痛分娩中の呼吸停止による妊婦の脳障害の報道を例に挙げるまでもなく,重篤な合併症を引き起こす可能性があるため,わが国において硬膜外無痛分娩を普及させていくには安全な麻酔管理が必要である.

 当センターにおける硬膜外無痛分娩は麻酔科医が麻酔管理を行い,周産期医療スタッフ(産科医,助産師,新生児科医ら)とのチーム医療を目指しており,月間20~30例の硬膜外無痛分娩管理を行っている1)

35.硬膜外カテーテルの抜去時期について教えて下さい.

著者: 田中基 ,   田村高子 ,   宮坂勝之

ページ範囲:P.448 - P.449

1 いつ硬膜外カテーテルを抜去するか?

 硬膜外カテーテルの抜去時期についてのガイドラインは現状では存在しておらず,各施設がそれぞれの実情に合わせて行われている.

 以下に当センターで行っている方法を紹介する.われわれは,分娩中より行っているPCEA(patient controlled epidural analgesia)を会陰切開部位の縫合処置中も続行し,分娩直後のすべての産科処置が終了してから抜去していることが多い.場合により,母親が児と十分にふれあい,直接授乳をするなどの時間をあけてから抜去してもよい.会陰裂傷が大きく産後の疼痛管理が必要と考えられる場合には,産後1~2日間,PCEAを続行することもある.

硬膜外麻酔分娩におけるコメディカルの役割

36.硬膜外麻酔分娩におけるコメディカルの役割について教えて下さい.

著者: 牧野英博

ページ範囲:P.450 - P.451

1 コメディカルが硬膜外麻酔分娩に関与する必要性はあるのか?

 コメディカル(医師以外の医療従事者=看護スタッフ : 助産師・看護師と考えます.以下,看護スタッフと言い換えることがある)が硬膜外麻酔を希望する妊婦のケアをするには,分娩と硬膜外麻酔に関する正しい知識を学び,理解して初めて適切な支援ができると考えている.出産時の産痛に対する不安や恐怖感を抱き,「産痛を軽減したい」として硬膜外麻酔を希望する妊婦は少なからずいる.

 日本では現在年間115万件の分娩がある.無痛分娩の需要はどの程度であろうか.硬膜外麻酔分娩を施行している医療機関が妊婦に対し外来で希望者以外に説明を行わない場合は20~25%(当クリニックで最近3年間で22.9% : 436例中100例.東海大学医学部附属病院で2002年に73例,約25%の実施率)と考えている.

硬膜外麻酔分娩のスケジュール

37.硬膜外麻酔分娩の典型的なスケジュールについて教えて下さい.

著者: 牧野英博

ページ範囲:P.452 - P.453

1 入院前

1. 入院までに必要な検査があるか?

 入院までに硬膜外麻酔分娩に支障となる合併症がないか,必要な検査(例えば血液凝固異常では血小板数,出血時間など)をすませておく.

インフォームド・コンセント

38.硬膜外麻酔分娩のインフォームド・コンセントの実際について教えて下さい.

著者: 牧野英博

ページ範囲:P.455 - P.457

1 硬膜外麻酔分娩でのインフォームド・コンセント

 本来,分娩には危険が内在している.すべての医療行為にインフォームド・コンセント(以後,ICと略)が必要なわけではなく,ある程度危険を伴う場合や,予定していた医療行為を超える場合(例 : 帝王切開を予定していて弛緩出血で子宮摘出手術が必要となった場合など)に必要となる.妊婦の理解と協力なくして硬膜外麻酔分娩は行えない.十分な説明を行うことにより,妊婦の協力を得ることができる.ICを得ず前記のような医療行為が行われた場合,医療行為に過誤がなく,結果に重大な損害がなかった場合でも,医療従事者は損害賠償を追求される可能性がある.ゆえに硬膜外麻酔分娩を施行する際には,ICは必要といわざるをえない.

III.硬膜麻酔分娩とその影響 硬膜外麻酔分娩の分娩経過に及ぼす影響

39.硬膜外麻酔分娩を行うと鉗子分娩,吸引分娩が増えないのですか.

著者: 松岡謙二

ページ範囲:P.460 - P.461

1 はじめに

 分娩は妊娠の終わりだけではなく,育児の始まりでもあり,分娩後は母児ともに元気なスタートをきらなければならない.筆者は「笑顔でお産」をモットーに1988年から硬膜外麻酔(硬麻)による無痛分娩を行ってきたが,近年では当院分娩数の約90%の産婦に硬麻分娩を施行し,安全で楽しいお産を実践している.しかしながら,硬麻分娩をしたことで母児生命のリスクが増加するようでは本法の意義がなくなるので,今回,硬麻分娩が分娩法ならびに周産期予後に影響を及ぼすかどうか評価するために,当院と他施設における通常陣痛下分娩とを比較検討した.

40.膜外麻酔分娩を行うと帝王切開が増えないのですか.

著者: 松岡謙二

ページ範囲:P.462 - P.463

1 はじめに

 分娩は,妊娠の終わりだけではなく育児の始まりでもあり,分娩後は母児ともに元気にスタートをきらなければならない.硬膜外麻酔(以下,硬麻)をしたために,母体あるいは胎児に危険を及ぼし,その結果,帝王切開(以下,帝切)が増えることになってしまってはいけない.このことを検討するために,今回,当院での硬麻分娩と他施設での分娩における帝切施行の状況を比較検討した.

41.硬膜外麻酔分娩を行うと分娩第2期が延長しないのですか.

著者: 古屋幹郎

ページ範囲:P.464 - P.465

1 硬膜外麻酔分娩の分娩第2期は漫然と放っておけば延長する

 分娩第1期に関しては,硬麻(硬膜外麻酔)は,マイリス,エストリオール製剤,プロスタグランディン製剤などに比してはるかに子宮頸部組織を軟化・開大させる作用を持っているので,設問42の解答に記載したように,上手に誘発硬麻分娩を行えば,むしろ大幅に時間を短縮することが可能である.

 しかし,分娩第2期に関しては,骨盤底筋群の弛緩による第2回旋の不全と,いわゆる“いきみ”の不足による娩出力の低下などによって遷延する.一般に硬麻分娩では回旋異常が生じやすいと喧伝されているが,それは低在横定位の増加を指しているのであって,決して反屈位や後方後頭位は増加しない.

42.硬膜外麻酔分娩を行うと子宮収縮薬の必要性が高くならないのですか.

著者: 古屋幹郎

ページ範囲:P.466 - P.467

1 硬膜分娩には子宮収縮薬が必要である

 設問41とやや重複することにならざるを得ないが,分娩第1期であれ,第2期であれ,分娩経過全体を俯瞰した場合,硬膜外麻酔による知覚神経と運動神経との抑制によって娩出力はきわめて高くはないにせよ,弱化されるので,子宮収縮薬の助力を必要とする症例が増大することは論を俟たないであろう.

 筆者の場合,常に誘発硬膜外麻酔分娩という枠のなかで分娩と取り組んできたので,ごく自然に発来し,進行している分娩に対し,医学的必要性から子宮収縮薬を用いて観察を行った経験を持たないので,残念ながらこの設問に的確なお答えをすることができない.

硬膜外麻酔分娩と計画分娩

43.硬膜外麻酔分娩と計画分娩との関連について教えて下さい.

著者: 磯部孟生

ページ範囲:P.469 - P.473

1 はじめに

 本来,欧米における積極的分娩管理(active management of labor)あるいは選択的分娩誘発(elective induction of labor)は,(a)医学的合併症がない,(b)自発の子宮収縮がある,(c)頭位,(d)単胎,の状態で満期産の週数に至った初産婦の分娩時間を短縮させ,帝切率を減らす方法として開発されたものである.この分娩管理は次の3点から成る.(1)One─to─one看護ケアを行う.(2)子宮頸管が熟化(展退80%)していて,痛みを伴う子宮収縮や出血,自然破水があるなど,スタートにおいて分娩開始状態である.(3)早期に人工破膜を行い,オキシトシンを使用する1)

 なお,硬膜外麻酔(以下,硬麻と省略)は産婦の希望時に実施されることが多い.一方,わが国で行われる計画分娩とは,医学的適応を含んだ幅広い症例に対しての選択的な分娩誘発を指す.計画分娩に硬麻を併用する理由としては,誘発を行うと進行が速いので,休日や夜間など医療スタッフが少ない時期を避けて,平日の日中に十分な管理が行えること,産痛の除去によって母児の安全性がより保証されること,いつでもそのまま緊急帝切に移行できる態勢ができることにある.

硬膜外麻酔分娩と緊急帝王切開

44.硬膜外麻酔分娩時の緊急帝切について,具体例を挙げて説明して下さい.

著者: 磯部孟生

ページ範囲:P.474 - P.477

1 はじめに

 硬膜外麻酔(以下,硬麻と省略)分娩が緊急帝切となるのは,稀に臍帯脱出や前回帝切後の経腟分娩における子宮破裂,多くは常位胎盤早期剥離を含む重症の胎児ジストレスであろう.すでに留置してあるカテーテルを利用して,高濃度の局麻薬やオピオイドを追加投与すればただちに帝切に対応できる.また,硬麻分娩時にオピオイドを併用しているとき,母体の胃内容物の消化が遅延しているため誤嚥を生じやすいので,できれば全麻への転向は避けるほうがよい.アメリカでは0.75%ブピバカインが市場から姿を消し,局麻薬中毒による母体死亡が減少した.これに比べると全麻の死亡率は増加している.挿管の失敗が1/250例あり,これは非妊女性の手術時失敗例の10倍である.したがって,ACOG(American College of Obstetricians and Gynecologyists)は,緊急帝切のリスクが高まった産婦には早めに硬麻を行うことを勧めている1)

 わが国の麻酔学会麻酔関連偶発症調査(1999)によれば,帝切の麻酔の3/4は麻酔科医ではなく産科医の手に委ねられている.帝切における麻酔中の心停止発生率は1万症例に対して1.89と多くはないけれど,その原因は高位脊椎麻酔や主麻酔薬の過量投与と局麻薬中毒であった2).脊椎麻酔と同様なリスクはあるものの,硬麻は分娩中から引き続いて帝切まで管理ができる点で優れている.しかし,手術時には分娩時よりも広い麻酔域と深度が必要なうえに,全麻に匹敵する短時間内の麻酔導入が求められる.

硬膜外麻酔分娩による胎児への影響

45.硬膜外麻酔分娩による胎児への影響について教えて下さい.

著者: 渡邉智子

ページ範囲:P.478 - P.479

1 局所麻酔薬の胎児への影響

 局所麻酔薬(多くは塩酸ブピバカイン)の胎児への影響としては,(1)母体に作用し,子宮の収縮力を増強し,子宮血流量を減少させ,胎児への酸素供給を減少させる間接的なものと,(2)胎盤通過性が高いため,胎盤を介して胎児へ移行し,直接中枢神経系や心筋を抑制する直接的なものとがある.

硬膜外麻酔分娩で生まれた新生児の評価

46.硬膜外麻酔分娩で生まれた新生児の評価について教えて下さい.

著者: 渡邉智子

ページ範囲:P.480 - P.481

1 麻酔薬による影響の評価

 新生児が麻酔薬による影響をどの程度受けているかを評価するために,出生直後はアプガースコアと臍帯動脈血血液ガス分析が有用である.母体に麻酔薬が投与されている場合,児の心拍数,皮膚色は抑制されないが,呼吸,反射および筋力は抑制されることがある.Murphyら1)の報告では,無麻酔群に比べ硬膜外麻酔を含めた麻酔群ではアプガースコアはやや低値を示している.また,硬膜外麻酔群と対照群の臍帯動脈血pHを比較した越知ら2)の報告では,両群間に差はなく,硬膜外麻酔を用いた無痛分娩は新生児において安全であったとしている.

IV.硬膜外麻酔分娩の合併症とその対策 硬膜外麻酔分娩の合併症とその対策

47.局所麻酔薬の血管内注入の予防と対処について教えて下さい.

著者: 大島正行

ページ範囲:P.484 - P.485

1 はじめに

 硬膜外腔の静脈叢には解剖学的に弁がなく脆弱であるが1),脊柱管により守られている.下肢,骨盤からの血流は,妊娠子宮による下大静脈の閉塞により硬膜外静脈へ迂回し,閉塞部位より頭側で奇静脈に流入する(図1).妊娠末期には,硬膜外静脈叢が怒張しており,硬膜外針およびカテーテルの血管内留置が非妊娠時より多い.

48.局所麻酔薬のくも膜下注入の予防と対処について教えて下さい.

著者: 大島正行

ページ範囲:P.486 - P.487

1 はじめに

 局所麻酔薬のくも膜下注入とは,硬膜外腔へ針またはカテーテルを留置しようとして,脊髄くも膜下腔へ到達し薬剤を注入することである.

 硬膜外針で脊髄くも膜下腔へ到達した場合には,硬膜外針より脳脊髄液の流出をみるのですぐに診断できるが,カテーテルの先端が脊髄くも膜下腔に侵入した場合には,疑わなければ発見しがたい.

硬膜外針のベベル面を体軸に平行にして穿刺する場合には,硬膜外腔を確認後,硬膜外針を回転させてカテーテルを挿入しなくてはならない.Tuohy針で穿刺後,回転させたときに硬膜穿刺を起こした報告がある1).これは硬膜穿刺後頭痛(PDPH)対策には有効だが,脊髄くも膜下注入の可能性が増えるかもしれない.もっとも,すでに硬膜穿刺されており,回転させることにより明らかとなっただけであるとの報告2)もある.

 ベベル面を頭側に向けて穿刺したほう(7.66 N)が,ベベル面を硬膜の線維と平行に向けて穿刺したとき(5.66 N)より,硬膜を穿刺するのに強い力を必要とするので,硬膜穿刺の頻度が低い3).当施設では,硬膜外針のベベル面は頭側に向けて穿刺している.

49.局所麻酔薬の硬膜下注入の予防と対処について教えて下さい.

著者: 大島正行

ページ範囲:P.488 - P.489

1 はじめに

 硬膜下腔は,硬膜とくも膜の間に存在する潜在的空間で,漿液性の液体が少量存在し,向かい合う膜を湿らせている.脊髄くも膜下腔と交通はない.腰部より頸部で大きく,外側背側で広い(図1).

偶発的な硬膜下注入は,DeSaram1),Dawkins2)により報告された.

 吸引試験では,自然または吸引でも陰性で,麻酔効果がまだらである.予想外の広範囲の感覚および運動神経ブロックで,瞳孔散大,高位交感神経ブロックなどの症状を呈する.その症状は20分程度遅れて発生し,脊髄くも膜下注入では1~2分で発生するのとは対照的である.硬膜下ブロックの持続時間は短い.造影所見のみが確定診断である3~6)

 故意に硬膜下腔を穿刺する方法は,抵抗消失法で硬膜外腔を確定し,優しく圧をかけて針を180度回転させる7).硬膜外穿刺の際に針の回転を行うと硬膜下腔穿刺となる可能性が高い.

 脊椎手術を受けたことのある患者では,瘢痕,牽引により硬膜外腔が薄く,硬膜下腔が広い可能性があり,偶発的な硬膜下腔穿刺の可能性が高い8)

 死体を用いた研究では,Tuohy針を通して硬膜下腔のカテーテル留置が53%で可能で,くも膜下内視鏡にて40%が描出可能であった9)

50.硬膜外血腫の予防と対処について教えて下さい.

著者: 大島正行

ページ範囲:P.490 - P.491

1 はじめに

 硬膜外血腫は,Jacksonがspinal apoplexyとして初めて報告した1).多くは抗凝固療法が関与しており,カテーテルの挿入または抜去時に硬膜外腔に血腫を生じ,脊髄を圧迫する.

産褥期は肺塞栓症を合併しやすく,近年,抗凝固療法の併用が増加しており,硬膜外血腫の合併には注意が必要である.産科症例でも,特発性硬膜外血腫の報告がある2~4)

51.硬膜外膿瘍の予防と対処について教えて下さい.

著者: 大島正行

ページ範囲:P.492 - P.493

1 はじめに

 硬膜外膿瘍は,急性例では症状が激烈で,部位によりいろいろな症状が出現する.最も重篤な合併症の1つで,早期診断と早期治療が肝要である.(1)硬膜外麻酔施行時,(2)薬剤注入時のカテーテル内腔,(3)カテーテル外側周囲,(4)近隣感染巣,(5)他の感染巣からの血行性播種が考えられる.周術期では,予防的抗生物質が作用して硬膜外膿瘍の発生が低い可能性がある.

52.神経障害の予防と対処について教えて下さい.

著者: 津田敦 ,   長谷敦子

ページ範囲:P.495 - P.497

1 はじめに

 硬膜外麻酔分娩の神経合併症には,神経損傷,排尿障害,硬膜外血腫,硬膜外膿瘍,全脊麻などがある.産科関係の神経合併症の頻度は1/2,600例~1/6,400例で,そのうち麻酔が関与する割合は1/40,000例~1/100,000例といわれている1).ここでは,産科麻酔に関連した神経損傷とその予防法について述べる.

53.低血圧の予防と対処について教えて下さい.

著者: 津田敦 ,   長谷敦子

ページ範囲:P.499 - P.501

1 血圧低下の原因

 血圧低下の原因を図1に示す.交感神経は脊髄のC8,Th1~L2から起始し,毛細血管以外の血管に分布している.硬膜外麻酔により交感神経が遮断されると,細動脈が拡張し末梢血管抵抗が低下する.静脈が拡張すると,血液が静脈に貯留する.副腎への交感神経(Th6~L1)が遮断されるとカテコラミン分泌が抑制される.心臓交感神経以上(Th4)遮断されると徐脈となり,血圧低下の原因となる.さらに硬膜外麻酔による交感神経の遮断や妊娠子宮による圧迫によって,右心系の充満圧が低下し,反射によって徐脈が起こる1)

 子宮による下大静脈圧迫は,静脈還流を低下させるだけでなく,子宮の静脈圧上昇と子宮の血流低下をもたらす.これに対して通常は交感神経を緊張させ,血圧低下を防いでいるが,硬膜外麻酔ではその防御反応が抑制される.

54.硬膜穿刺後の頭痛の予防と対処について教えて下さい.

著者: 津田敦 ,   長谷敦子

ページ範囲:P.503 - P.505

1 硬膜穿刺後頭痛の原因と頻度

 硬膜外針(17 G~18 G)で硬膜を穿刺した場合のPDPH(postdural puncture headache)の発生率は90%にも及ぶ.そのうち75~80%に重症の頭痛が起こる.PDPHの原因は,穿刺部位からの髄液漏出によると考えられる.髄液漏出によって脳の浮力が減少して神経や血管が牽引されたり,脳血管が拡張しPDPHが発症するといわれている1).症状としては,激しい頭痛,めまい,嘔気,嘔吐,耳鳴,複視がみられる2).最近では,特発性低髄圧症候群の診断に造影MRI検査が用いられており,PDPH患者にもMRI検査を用いた鑑別診断が可能となっている.

55.腰部・背部痛の予防と対処について教えて下さい.

著者: 津田敦 ,   長谷敦子

ページ範囲:P.506 - P.507

1 はじめに

 腰部・背部痛は,硬膜外麻酔分娩後にかなりの頻度(30~40%)でみられる.しかし長期的にみると,硬膜外麻酔の有無によって発生頻度に差はなく,腰部・背部痛と硬膜外麻酔の関連性は少ないとされている.短期的には,硬膜外麻酔の重篤な合併症が潜んでいる場合がある.ここでは,硬膜外麻酔に関連した腰部・背部痛について述べる.

V.無痛分娩―われわれの工夫 硬膜外麻酔―われわれの工夫

56.中通総合病院産婦人科の工夫について教えて下さい.

著者: 川原聡樹 ,   加藤充弘 ,   熊谷暁子 ,   金森勝裕

ページ範囲:P.510 - P.513

1 はじめに

 われわれは,以前より硬膜外麻酔による無痛分娩(以下,硬膜外麻酔分娩)を実施してきた.ここでは,われわれが行っている硬膜外麻酔分娩の現状について述べる.

 1999年に開催された日本麻酔学会における無痛分娩シンポジウムのなかで,大部分の女性は,医療側からの情報提供が少ないことにより,有効な鎮痛方法としての硬膜外麻酔法が出産方法の選択肢の1つとなっていないと報告された1).その報告を受けて,私たちは同年5月より,外来に無痛分娩の実施施設である旨を呈示し,同時に無痛分娩パンフレットを作製して希望者に配布を開始した.その内容は,硬膜外麻酔の具体的な手技,硬膜外麻酔分娩の期待される効果と予想される副作用,そしてわれわれが行っている実際についてである.

 また,当院のホームページ(http://www.meiwakai.or.jp/nakadori/)が2001年に開設され,そのなかの産婦人科の紹介ページに,硬膜外麻酔分娩に対応していることを掲載した.さらに2002年11月には,産科のスタッフが中心となって産科専用のホームページが立ち上げられ,そのなかにおいても硬膜外麻酔分娩について言及している.

 このように,われわれは,積極的に妊産婦への情報呈示を行って硬膜外麻酔分娩を実施している.

57.大沼産婦人科医院の工夫について教えて下さい.

著者: 大沼靖彦

ページ範囲:P.515 - P.517

1 はじめに

 筆者は,無痛分娩として硬膜外麻酔分娩(以下,硬麻分娩)を採用している.硬膜外麻酔(以下,硬麻)は異常分娩時の児のリスクを低下させるとの報告1)もあり,麻酔分娩の希望者にはもちろん,難産因子のある例,血圧上昇例などにも積極的に行っている.それは硬麻下では筋弛緩作用による軟産道伸展性の改善,速やかな児頭下降などが得られ,鎮痛効果は産婦の鎮静,血圧の安定などにきわめて有効と思うからである.

 本稿では,施行に際しての筆者なりの工夫を述べてみたい.

58.植野産婦人科医院の工夫について教えて下さい.

著者: 植野信水 ,   源田辰雄

ページ範囲:P.518 - P.519

1 はじめに

 当院(産婦人科医院)では,当初より妊婦の分娩への多様化に対応するために硬膜外麻酔分娩を施行してきた.

 当院における硬膜外麻酔分娩は,1998年には全分娩の約20%前後を占めていたが,2002年は約9%と減少傾向にある.この原因は,医療の介入を避けたいという自然志向の増加,マンパワーの不足,医事紛争の増加などにより医療側が消極的な診療となっていることが挙げられる.当院では,この時期に両親学級の受講を必須とし,敷居を高くしたことも関係している.

 小規模施設であるわれわれがいかに患者のニーズに応え,硬膜外麻酔分娩を提供,工夫してきたか,これまでの経験から具体的に述べたい.

59.田中ウィメンズクリニックの工夫について教えて下さい.

著者: 田中康弘

ページ範囲:P.521 - P.523

1 お産はなぜ痛い

 あるとき直立二足歩行を始めた人類の祖先は,知能の発達とともに頭部が肥大化した.そのため他の哺乳動物のように成熟するまで体内で育つと,頭部が産道を通過できなくなる.

 また,直立したために子宮の上下が逆転し,子宮口が子宮の最下端部に位置したため発育した胎児の重みが子宮口を圧迫し,早産しやすい形態となった.体内で育ちすぎれば産道を通過できず,早すぎれば未熟性が強くて生育できないという,産道通過性と未熟児性という相反する2つの要素のせめぎあいのなかで,産道をギリギリ通過できる時期に陣発する形質を得た人類が子孫を残すことに成功したのである.

 通常の生理機能は最大能力の20~30%で行われ,常に70%以上の機能的予備力を残して行われている.火事場の馬鹿力とか,青竹を握り潰した産婦の話はそれを雄弁に物語るもので,いかに努力しても周産期のトラブルをゼロにすることはできないのは,人類の分娩に限って機能的な余裕のまったくない100(±a)%の脱出口突破作業だからである.したがって,産痛は人間の尊厳を保てないほど強い場合が多く,胎児にとってもあまりに激しい産痛はストレスとなる.母体の消耗を防ぎ,胎児にも負荷をかけ過ぎないために産痛を除去することは,母児の安全にとってきわめて重要である.ちなみに,産痛とは表1のごときものである.

60.東海大学医学部産婦人科の工夫について教えて下さい.

著者: 岩崎克彦 ,   牧野英博 ,   牧野恒久

ページ範囲:P.525 - P.527

1 無痛分娩の工夫は?

 東海大学医学部附属病院においては,開院以来,無痛分娩に対して積極的に対応している.その骨子は,非薬物的理学療法の導入と,硬膜外麻酔分娩の併用である.現在では,前者に関してはラマーズ法が主体であり,ときにアロマゼイション管理や音楽療法を行い,後者はダブルカテーテル法による両側持続注入硬膜外麻酔法を採用している.産婦に対し,産痛による恐怖感や苦痛を和らげ,同時に,リラクゼイション環境下における,快適で安全な分娩を目指している.このような観点から,当院での工夫というと,次のことが指摘できる.(1)計画無痛分娩を行う.(2)理学療法を併用している.(3)ダブルカテーテル法による両側持続注入硬膜外麻酔法を採用している.(4)可能な限りの少量または低濃度の薬物を使用する.

 表1に,東海大学病院における無痛分娩のプロトコールを示す.このプロトコールは,陣痛室にファイルに入れて常備し,いつでも,誰もが自由に参照し,施行ドクターや介助助産師が絶えず使用できる状態にある.

 本稿では,硬膜外麻酔に関して内容を追ってみたい.

61.平塚市民病院産婦人科の工夫について教えて下さい.

著者: 持丸文雄

ページ範囲:P.529 - P.531

1 はじめに

 無痛分娩の鎮痛法として硬膜外麻酔は,現在,最も有効で,しかも安全な手技と考えられる.覚醒時の鎮痛効果は,鎮痛薬・鎮静薬の経静脈的全身投与や吸入麻酔よりもすぐれているばかりでなく,気道に関する危険もないので,産婦は自ら主体的な役割を果たすことが可能である.カテーテルを留置する持続硬膜外麻酔は,その適応範囲が広く,分娩のさまざまな局面,例えば正常分娩,吸引・鉗子分娩,あるいは帝王切開などに応用することができる.しかも,術後の疼痛管理にも大変有効である.

 硬膜外麻酔は疼痛に起因する生理的・生化学的な過剰反応を抑制することにより,分娩中の産婦のみならず胎児に対しても有益な効果が広く認められている.一方,硬膜外麻酔に伴う運動神経の遮断は,分娩経過に悪影響を及ぼすとされ,これまでその影響を緩和すべく使用する薬剤の選択,目標麻酔区域などについて広範な検討が重ねられてきた.今後,理想的な無痛分娩の確立に向けさらなる研究の成果が待たれる.

陰部神経ブロック―われわれの工夫

62.久保田産婦人科麻酔科医院の工夫について教えて下さい.

著者: 久保田史郎

ページ範囲:P.532 - P.535

1 はじめに

 現代の妊婦は,痛過ぎず,満足のいくお産を望んでいる.妊婦が期待する理想のお産とは何であろうか.麻酔科医が少ないわが国のお産の現場で,母児にとって安全な産科麻酔法とは何か.そのことを知ることが,産科医がどの麻酔法を選択すべきかの決め手となる.当院では過去10年間,経腟分娩の全症例(約5,000例)に和痛と安産効果を目的として陰部神経ブロックを行ってきた.本法を選んだ理由について述べる.

63.あまがせレディスクリニックの工夫について教えて下さい.

著者: 天ヶ瀬寛信

ページ範囲:P.536 - P.539

1 はじめに

 分娩時の激しい疼痛に悩まされ,冷静さを失い,パニックに襲われているような正常妊婦に遭遇すると,心痛する.産科学的適応がないにもかかわらず,妊婦に帝王切開分娩による児の娩出を懇願されることがある.無痛分娩や和痛分娩は,このようなパニック状態の妊婦に冷静さを取り戻させ,再び分娩に積極的に取り組んでもらうためのよい一方法と考える.分娩第2期において,分娩時の疼痛の大部分は子宮収縮による疼痛よりも,むしろ下部産道の圧迫,伸展痛であるとされている.その疼痛の知覚神経は陰部神経が担っている.このため,陰部神経ブロックは,分娩第2期での和痛分娩によい適応となる.われわれは,子宮収縮子宮口が全開大し分娩第2期に入る直前に,適応を選んで陰部神経ブロックを施行している.

バランス麻酔,静脈麻酔─われわれの工夫

64.北里大学医学部産婦人科の工夫について教えて下さい.

著者: 天野完

ページ範囲:P.541 - P.543

1 はじめに

 無痛分娩の要点は,母児にとって安全で,十分な効果が得られ,分娩予後にも影響しない方法を選択することである.硬膜外麻酔が理想に近く,わが国でも1980年代後半から無痛分娩に応用されるようになり,2000年の調査では無痛分娩を提供するすべての施設が第一選択の方法と回答している(図1)1).血液凝固異常など硬膜外麻酔が禁忌の症例で(表1),無痛分娩を希望する場合がバランス麻酔,静脈麻酔の適応と考えられる.

VI.硬膜外麻酔分娩と妊婦 妊婦の疑問に答えます

65.硬膜外麻酔分娩の費用は,自然分娩と比べると高いのですか.

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.546 - P.547

1 保険診療と自費診療について

 わが国で行う医師の医療行為は各種の法令により規制されている.特に診療方針に関しては,医師法,健康保険法,保険医療機関および保険医療養担当規則に従わなければならない.そこには混合診療の禁止と,医療行為によって患者徴収できる金額も一部負担金と特定療養費などがあることが示されている.

 自然分娩と患者希望による硬膜外麻酔分娩は現在の健康保険制度の給付外にあり,それにかかわる費用は患者に直接負担をしてもらうという自費診療である.

 自費診療の料金設定は各医療機関の自由裁量に任されているので,医療機関と患者との契約といえる.

66.硬膜外麻酔を受けるためには,妊婦は何か特別な勉強をしたり,トレーニングを受ける必要があるのですか.

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.548 - P.548

1 はじめに

 われわれは,妊婦が硬膜外麻酔を受けるにあたり,特別なトレーニングなどは何も行っていない.しかし,すべての医療行為はそれを行う側と受ける側との間に完全な信頼関係が成立している必要がある.特に疾病を有し,外科的処置を受けるために行われる麻酔とは異なる.分娩に伴う硬膜外麻酔は疼痛緩和により精神的,肉体的な安定を通して分娩の進行に寄与するためであるから,ある意味では麻酔を受ける側にこの施術に対する危機感が少ない.

 一方,“小手術はあっても小麻酔はない”.すなわち,いかなる麻酔にもそれなりのリスクがあることは周知のことであり,不必要な麻酔を行わないほうがよいのも事実である.

 以上から,硬膜外麻酔分娩を受ける妊婦にはまず陣痛と分娩について説明し,そのうえで硬膜外麻酔についてその術式と効果と副作用などのインフォームド・コンセントを,妊婦の不安を掻き立てることのないように公正に行う必要がある.

67.“無痛”だと聞きましたが,本当にまったく痛みがないのですか.

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.549 - P.549

1 はじめに

 原則としては,陣痛に伴う痛みはまったくないのだが,分娩進行と麻酔薬の作用持続時間にずれのあることがあり,その場合には分娩が完了しないうちに痛みが出現することがある.これを防止するために持続硬膜外麻酔法を行い,麻酔薬の効果に減弱があれば麻酔薬を追加投与できるようにしている.

68.分娩時に妊婦の意識はあるのですか.

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.550 - P.550

1 はじめに

 硬膜外麻酔分娩では,ほかの麻酔法を併用しない限り意識はある.

 無痛分娩を受ける妊婦は,分娩に対する恐怖が強いようである.そのために,硬膜外麻酔による産痛の除去だけでは満足する無痛分娩とはいえないことがある.このように,分娩そのものに異常に恐怖を訴える妊婦には,われわれは必要に応じて笑気ガスなどを用いての全身麻酔,または鎮静薬(ホリゾン,セルシンなど),催眠薬(イソゾールなど)を用いることにしている.

 ただし,意識の抑制を必要とする場合は,分娩の進行がどうであるかによって薬剤の使い分けが必要となってくる.分娩第1期で,児の娩出までに長時間を要すると予測されるときには全身麻酔を併用することには無理がある.このときには鎮静薬,催眠薬の使用で必要な意識の抑制を得るようにしている.分娩第2期となって,児の娩出までに長時間を要しないなら全身麻酔を行うこともある.

 麻酔ガス,鎮静薬,催眠薬などは母体投与によって胎盤を通過し,胎児に移行するものが多い.その結果,母体には微弱陣痛,弛緩性出血を,胎児には生理機能の抑制(ときにはsleeping babyの発生)をきたす.また使用薬剤によっては,将来の正常な母児関係の成立障害や児の成長後の薬物中毒症,薬物依存症を若起する可能性を示唆する報告もある.

69.麻酔が効く範囲は身体のどの部分ですか.

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.551 - P.551

1 はじめに

 分娩第1期は開口期ともいわれ子宮口が開大する時期であり,この時期の産痛にはT10~L1までの知覚枝が関係する.分娩第2期は児の娩出期であるから,この時期の産痛には主に会陰部の知覚枝S2~S4が関係する.以上から,分娩第1期,分娩第2期を通して遮断しなければならない知覚神経はT10~S4の支配域の神経ということになる.一方,子宮収縮に関与する神経はT4~T12の支配域の遠心神経枝である.

硬膜外麻酔分娩では,陣痛と産道への影響を可及的に避ける必要があり,産痛除去のみを考えるとT10~S4までの分節麻酔でよいことになる.しかし,T10~T12までには子宮収縮に関係する遠心神経群も一部含まれているから,まったく陣痛に影響を与えないことにはならない.また,硬膜外麻酔を行う場合,目的とする神経遮断に必要な局麻薬剤量は使用薬剤によって差はあるものの,理論的には決まっている.実際には患者の麻酔科学的な特徴を考慮に入れて薬量を使用するが,麻酔の効き方は個人差を含め種々の因子によって目標よりも広範囲であったり,少なくて産痛が残ったりする.

70.下肢を自由に動かしたり,歩行することはできるのですか.

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.552 - P.552

1 はじめに

 硬膜外麻酔分娩では,産痛に関係する知覚神経を遮断すれば目的が達成されるのであるから,運動神経は遮断する必要がない.また,知覚神経線維と運動神経線維の局麻薬に対する感受性には差がある.すなわち,知覚神経枝は局麻薬によって運動神経枝より遮断されやすい.

 以上のことを考慮すると,局所麻酔薬濃度をできるだけ低くすることにより知覚神経だけを選択的に遮断できることになる.その結果,下肢の運動も自由であり,筋力の低下もなく歩行も自由にできることになる.

 しかし実際には知覚神経を完全に遮断する麻酔薬の濃度は運動神経の一部も遮断してしまい,下肢の運動はある程度できるが,筋力の低下により自由な歩行ができなくなる.また,遷延分娩などで長時間麻酔を必要とする妊婦では,歩行できないことは排尿行動が制限されることになる.このことに対応するには,分娩第2期まで持続導尿カテーテルを採用するか,間欠的導尿を行う必要がある.

71.子宮の収縮力だけで児を娩出することができるのですか.

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.553 - P.553

1 はじめに

 分娩第2期における胎児の娩出には,陣痛(子宮の収縮力)と腹圧(いきみ)が必要とされている.理想的な硬膜外麻酔分娩では子宮の収縮力を低下させないから,いわゆる自然分娩と同様の収縮力と腹圧で胎児は生まれることになる.

 設問70で記したように,子宮収縮はT4~T12支配下の遠心神経の影響を受け,産痛はT10~L1,S2~S4支配の知覚神経の遮断で抑制される.また,局所麻酔剤に対する感受性が知覚神経と遠心運動神経で異なることから,知覚神経を遮断し,運動神経の機能を残す分離麻酔ができるはずである.すなわち,子宮収縮力を残し,産痛だけを抑制することができれば陣痛の強さは変わらないことになるので,これに十分な腹圧が加われば自然分娩と変わらずに妊婦自身で児を娩出することができる.

72.陣痛に合わせて“いきむ”ことはできるのですか.

著者: 山本哲三

ページ範囲:P.554 - P.554

1 はじめに

 分娩において陣痛と協調した“いきむ”ことが必要なのは,(胎児)娩出期といわれる分娩第2期である.

 本来は,“いきみ”は子宮口が全開大になってから起きることが望ましいが,破水の有無,児頭の下降度,陣痛強度の程度などによっては分娩第1期から“いきむ”こともある.そのために,ときとして子宮頸管裂傷,直腸裂傷を含む重度の軟産道の裂傷などが生ずる.これらの損傷の予防には,“いきみ”は適時に,適量あることが望ましい.

 硬膜外麻酔分娩では,腹筋群,骨盤低諸筋群,下肢筋群の運動神経の種々の程度の遮断は一般的に起きえる.その結果,陣痛に合わせての必要にして十分な“いきみ”が期待できないことが多い.すなわち,“いきみ”は弱くもなる.このことが分娩時の損傷予防のためには利点になることもある.また,分娩第2期の“いきみ”の抑制には,理にかなったクリステレルの胎児娩出法,鉗子分娩法,吸引分娩法などを行うことによって対応できる.

73.“赤ちゃんを産む”という感覚はあるのですか.

著者: 早田幸司

ページ範囲:P.555 - P.555

1 はじめに

 出産とは母体の子宮内で発育した胎児を子宮外に産み出すことで,その内から外の間に存在する軟産道(子宮頸管と腟管からなる)の抵抗に逆らいながら胎児を圧出させる作業である.

 陣痛発来を自覚した母親は,それまで自分の胎内で成長したわが子を,無事,元気な姿で誕生させようと,心身ともに出産に臨む態勢に入る.そして,個人差はあるものの胎児娩出までの数時間を,種々の痛みや不安と戦いながら分娩は進行していく.子宮口が全開大し胎児下降が進むと,子宮収縮に一致して怒責が生じ腹圧が加わり,その強い娩出力で児を産道から子宮外へ押し出す.それがまさに“赤ちゃんを産む”という感覚につながる.

 無痛分娩には意識が朦朧としている間に分娩が終了してしまう方法がある.気がついたら赤ちゃんが産まれていたということになり,産む感覚は消えてしまう.しかし硬膜外麻酔分娩では意識はまったく正常で,はっきりした状態のもとで分娩は進んでいく.

74.母性が低下するといわれたのですが本当ですか.

著者: 早田幸司

ページ範囲:P.556 - P.556

1 はじめに

 当院で硬膜外麻酔分娩を希望する産婦のなかには,無痛分娩で出産することを「自分の母親には内緒にして欲しい」と訴える人がいる.「お産の痛みを耐え忍んでこそ,貴女はよい母になれるのだから,無痛分娩などもっての外だ」というわけである.特に田舎にいくほどその傾向が強いようである.

 欧米の先進国では,国によって多少は違いがあるものの,多くの産婦は無痛分娩を希望し,当たり前のごとく実施されているという.帝王切開による出産は,術後の痛みがあるにしても,胎児娩出に関しては完全無痛分娩である.それら欧米の女性や帝王切開で出産した彼女達は,自然分娩で苦しい思いをした女性より母性が低下しているのであろうか.「何をか言わんや」である.

75.麻酔が効きすぎたり,効かないということはないのですか.

著者: 早田幸司

ページ範囲:P.557 - P.557

1 はじめに

 産痛を管理するには次のような必要な条件がある.(1)母体,胎児に対して安全であること,(2)分娩の進行を妨げないこと,(3)成功率が高いこと,(4)産婦が満足すること,などである.それらの条件を満たすのが硬膜外麻酔であり,無痛分娩に最適な方法として認められている.

76.麻酔のために出血量が増えることはありませんか.

著者: 早田幸司

ページ範囲:P.558 - P.558

1 はじめに

 分娩後に生じる出血は,主に軟産道損傷によるものと胎盤剥離面からの出血である.

77.会陰部は,自然分娩のときと同じように切開しないといけないのですか.

著者: 早田幸司

ページ範囲:P.560 - P.561

1 はじめに

 自分の身体に傷がつくのは,誰でも嫌なものである.胎児が娩出する際,会陰が無傷でかつ児も元気に産声をあげてくれたら,医師にとっても患者にとっても大変ありがたい分娩になる.しかし,会陰に裂傷なく胎児が通過する例は少なく,かすり傷くらいの軽いものから直腸が裂けるほどの重度なものまで,程度の差はあるものの会陰裂傷は避けがたい.裂傷は会陰や腟壁だけでなく小陰唇や腟前庭部など数か所にできる場合がある(表1).会陰切開によって不要な裂傷を予防し,創の治癒状態も良好になる.

78.硬膜外麻酔を行うと分娩が長引くことはないのですか.

著者: 早田幸司

ページ範囲:P.562 - P.563

1 はじめに

 分娩の進行を決めるのは娩出力,産道,娩出物である.硬膜外麻酔は,娩出力と産道に影響を与える.

 娩出力とは,産道を通って胎児とその付属物を娩出させる力のことで,主として陣痛と母体の腹圧からなる.周期的に反復する子宮収縮を陣痛といい,胎児を娩出させる最も大きな力になる.子宮収縮力が弱かったり陣痛の間隔が長くなった状態を微弱陣痛といい,分娩進行が遅延,さらには停止してしまう例がある(表1).

 日本産婦人科学会では,初産婦で30時間,経産婦で15時間を経過しても児娩出に至らないものを遷延分娩と定義しており,母児に障害を及ぼすことがある.原因は多胎妊娠,肥満,母体疲労,軟産道強靱症などいろいろあるが,正しい分娩法ならばどのような方法だろうと遷延分娩の直接原因になることはない.

79.妊娠中毒症の場合にも無痛分娩は可能なのですか.

著者: 早田幸司

ページ範囲:P.564 - P.564

1 はじめに

 妊娠中毒症患者の分娩は,母児への危険が予想されるような重症例では最初から帝王切開が選択される.軽症で母児ともに安全な進行が期待できる場合は経腟分娩が試みられるが,分娩中に血圧の上昇がしばしばみられ,急性胎児仮死や母体の危急変化を生じる例がある.いつでも緊急の帝王切開ができるダブルセットアップ状態で,厳重な監視のもと,分娩に臨まねばならない.

80.分娩後,どれくらい経てば歩行できますか.

著者: 早田幸司

ページ範囲:P.565 - P.565

1 はじめに

 児が産まれてから胎盤が娩出するまでを分娩第3期,胎盤娩出後の2時間を分娩第4期といい,弛緩出血や子宮頸管裂傷などのため大出血が起こりやすい時期なので,この間はベッド上での厳重な観察が必要である.血圧や脈拍などのバイタルサインや子宮収縮,出血のチェックを行う.

 腟からの外出血が少なく安心していると,急に意識レベルと血圧が低下しショック状態に陥る例がある.子宮収縮不全で子宮筋が弛緩して出血が性器外に出ず,気がつかぬ間に1,000 ml以上の血液が子宮内に貯留しているようなケースである.少なくなったとはいえ,出血は未だ稀にみられる妊産婦死亡の最大の原因である.しかもそれらのほとんどは,見落としさえしなければ十分に救命可能なケースなので,この2時間の観察は重要である.第4期が過ぎると多量出血が生じる危険は少なくなるので,離床は可能である.

 以前は,何日もベッド上での安静を強いられていた時代があったようだが,最近は一般手術後と同様に,産褥期でも血栓症予防を目的として早期離床が勧められている.子宮復古を促進し,排便排尿機能の早期回復にも有効である.しかし,分娩は所要時間や出血量など個々で差があり,一律に同じ時間で離床開始というわけにはいかない.各施設間で多少違いがあるものの,だいたい産後6時間前後で歩行開始していると思われる.正常分娩後なら,その程度の時間が経てば疲労もほぼ回復している.

VII.麻酔に頼らない和痛法 和痛法の理論と実際

81.ラマーズ法の理論と実際について教えて下さい.

著者: 宮川勇生

ページ範囲:P.568 - P.569

1 はじめに

 麻酔に頼らない和痛分娩法として,これまでわが国で最も普及していた分娩教育法はラマーズ法である.そのほかにソフロロジー法,リーブ法,ミュージコテラピー,アロマテラピーなども自然分娩(natural childbirth)に和痛を取り入れた分娩教育法である.

 ラマーズ法は,1972年のジーン梅津のペアレントクラフトにおけるラマーズ法の紹介,1978年の尾島のラマーズ法の発表により1),1970年から1980年代のわが国における分娩教育法の中心をなすものとなった.しかし,ラマーズ法はアメリカを介して日本に紹介されたため,当時のアメリカにおける自然分娩への回帰の思想なども一緒になり,紹介されるまでに多くの修飾を加えられ複雑化した.現在では「呼吸法」と家族の「立ち会い分娩」により分娩時の不安や精神的・身体的緊張を取り除くことが中心となっている自然分娩法であるが,各施設により様式が異なっている2).また松永によれば,ラマーズ法の発祥地フランスでは,ソフロロジー法の普及によりラマーズ法はすでに古典的分娩教育法とされている3)

 これまでのわが国における主な分娩教育法の時代変遷について表1にまとめた.

82.ソフロロジー式分娩の理論と実際について教えて下さい.

著者: 宮川勇生

ページ範囲:P.571 - P.573

1 はじめに

 Sophrologie, sophrologyは,1960年にスペインの精神科医Alfonso Caycedoによって提唱された「心身の安定調和を得るための意識のあり方,意識段階の変化を研究する学問」で,sos(調和,平穏,平安,安定),phren(心気,霊魂,精神,意識),logos(研究,論議,学術)の3つの言葉からなる造語である.

 1976年にフランス,サンミッシェル病院のジャンヌ・クレフ博士によって1960年に提唱されたソフロロジーの理念,すなわち「意識の変化によって心身の安定調和をはかり,産痛を和らげる試み」が分娩教育法に導入された.わが国には1987年(昭和62年)にノートルダム・ド・ボンスクール病院で研修された松永昭博士によってソフロロジー式分娩教育法として紹介された1, 2)

さらに,1993年(平成5年)には日本ソフロロジー法研究会が設立され,松永博士の講演活動によりソフロロジー式分娩法は全国的に普及しつつある3~9).また,アメリカ,韓国,台湾,コロンビアなどにも日本から発信され,紹介されている.

83.分娩時におけるアロマセラピーの理論と実際について教えて下さい.

著者: 西島光浩

ページ範囲:P.575 - P.577

1 はじめに

 当科では,1996年より,妊産婦のみならず癌患者や術後患者に対して,精神的安定や疼痛の緩和を目的として病棟でのアロマセラピーを導入してきた.分娩時の和痛にもアロマセラピーを活用しており,疼痛に対しての極度の不安・緊張が軽減し,「出産をリラックスした状態で乗り切ることができた」と患者からも好評を得ている.また,疼痛に伴う不穏状態から硬膜外麻酔を必要とするような症例が非常に少なくなり,分娩管理のうえでもメリットが多い.

 そこで,当科で行っている分娩時のアロマセラピーの実際について紹介する.

VIII.助産ケアによる和痛 助産ケアにおける和痛―われわれの工夫

84.岩手県立久慈病院における和痛の工夫について教えて下さい.

著者: 東大野朋子

ページ範囲:P.581 - P.583

1 当院の概要

 当院は岩手県北に位置し,県北沿岸6市町村を診療圏とする338床の地域総合病院である.当病棟は,産婦人科・小児科・耳鼻科・眼科・歯科・形成外科で構成される58床の混合病棟である.年間分娩件数は450件前後で,産婦人科は医師3名,助産師8名で構成され,勤務体制は3交代制で行われている.

 2001年よりフリースタイル分娩に取り組んでおり,分娩第2期に限らず,分娩第1期から産婦の行動に制限を加えず自由に過ごしてもらっている.

85.小阪産病院における和痛の工夫について教えて下さい.

著者: 中山佳代子

ページ範囲:P.584 - P.587

1 はじめに

 バースプランでみると,ほとんどすべての産婦は安全で安楽な出産を望んでおり,この願いは現在わが国で進められている「すこやか親子21」のなかの「安全で快適な出産」にも通じるものである.また,産婦の多くはできるだけ医療処置の少ない自然な出産を望んでおり,和痛についてもなるべく麻酔や薬に頼らずに出産したいと願っている.

 当院は,ローリスクの分娩を中心に取り扱っていることもあって,産婦自身の産み出す力を引き出して,自然で,しかも安全な出産を心掛けてきた.和痛については助産師の援助のなかにさまざまな「代替医療」(表1)を組み込んで,医療処置を最小限度に抑えながら,達成感と満足度の高いお産になるように努めている.

 本稿では,当院でわれわれ助産師が行っている和痛の工夫について述べる1~3)

86.湘南鎌倉総合病院における和痛の工夫について教えて下さい.

著者: 長谷川充子

ページ範囲:P.588 - P.591

1 はじめに

 「ご妊娠ですよ,おめでとうございます!!」と告げられたときに笑顔であった人も,妊娠経過を重ねてくるとともに喜びと不安の入り混じった複雑な心境に,妊婦の多くはなっていく.妊娠後期に入る頃には出産の情報をいろいろなところから得て,「自分でも赤ちゃんを産むことができるのか?」と期待と不安のなかで出産を迎えようとしている.

 その情報がいいかげんなものであったり,伝える側が自分の都合のいいように出産の痛みを誇大,誇張して伝えると,これから出産に臨もうとしている妊婦は不安に陥ることになる.産痛には個人差があり,なかには始めからあまり強く感じない産婦もいる.分娩時の子宮収縮,軟産道開大,骨盤底の圧迫,会陰の伸展によって生じる痛みで分娩が進行するとともに,痛みの場所も変化してくる.それは,生理的な因子と精神的因子による.

 赤ちゃんを迎えようとする妊婦が不安なく安心して出産に臨むことができるように,分娩経過についてエビデンスに基づいた正しい知識を伝達していくことが医療者の役目である.出産をネガティブにとるか,ポジティブにとるかで,産痛を“産みの苦しみ”ではなく“産みの喜び”として迎えることができれば,80%くらいは楽しい出産として産痛を受け入れられる.恐怖心や不安感を持つことで,産痛を強い痛みと感じてしまう.サポートする人がいて,励まし,孤独感を取り除くと不安が解消され,産痛も緩和される.妊婦は,出産する施設の医師,助産師の分娩に対する考え方を理解し,「ここで分娩をしたい」「この人達と一緒なら安心して分娩できる」という信頼関係が築かれたときから,産痛を待ち遠しく感じるようになる.

87.永井病院における和痛の工夫について教えて下さい.

著者: 永井千穂

ページ範囲:P.592 - P.595

1 分娩に対する意識の変化

 わが国では,分娩とは本来つらいものであり,陣痛は我慢するのが美徳とされてきた.女性は陣痛を我慢して一人前の母となる,痛いほうがよいのだとさえされることもあった.しかし,近年の意識の変化,少子化による数少ない分娩に対する特別感から,妊娠生活,分娩をいかに快適に過ごすかに注目が集まるようになってきた.

 当院ではこのことに着目し,妊産婦のQOLの向上,分娩時の和痛,産後の育児支援に医療の補助的な存在としてアロマセラピーを取り入れている.

連載 知っていると役立つ婦人科病理・57

What is your diagnosis ?

著者: 清水道生 ,   小川史洋 ,   清水禎彦

ページ範囲:P.351 - P.353

症例 : 53歳,女性

 子宮頸癌検診にて,細胞診で腺系異型細胞が認められた.そのため生検が行われ悪性と診断され,子宮全摘術が施行された.Fig 1,2はその腫瘍の代表的な組織像(HE染色)である.病理診断は何か.

婦人科超音波診断アップグレード・1

卵膜の超音波所見─amniotic sheetsについて─

著者: 佐藤賢一郎 ,   水内英充

ページ範囲:P.597 - P.602

1 はじめに

 卵膜についての超音波所見の記載はそれほど多くないように思う.われわれは,子宮腔内に認められる索状の卵膜構造物について,おそらく本邦ではじめてamniotic sheetsとして報告した.Amniotic sheetsは,1985年にMahonyら1)が,胎児奇形とは無関係な超音波上の索状構造物で,amniotic band syndromeと類似するが区別されるべき所見であるとしてはじめて認識された.文献上では,intraamniotic bands,innocent amniotic bands,intrauterine shelves,uterine synechiaeなどとも呼称されている.

症例

頻脈発作に対しカテーテルアブレーション法が有効であったWPW症候群合併妊娠の1例

著者: 逸見博文 ,   鈴木静夫 ,   岡村直樹 ,   蠣崎和彦 ,   北宏之 ,   鵜野起久也 ,   遠藤俊明 ,   工藤隆一

ページ範囲:P.604 - P.607

 妊娠前からWPW症候群を指摘されていた妊婦に発症した発作性上室性頻拍に対して抗不整脈薬を投与したが,発作が繰り返し,消失しないためカテーテルアブレーションを行った.治療後は発作性上室性頻拍は認めず,妊娠39週4日,3,386 gの男児を経腟分娩した.Apgar score 9点で新生児に特に異常は認められなかった.また産褥期も発作性上室性頻拍は認めず,退院後も経過順調であった.


はじめに

 今回われわれは,妊娠前からWPW症候群を指摘されていた妊婦に発症した発作性上室性頻拍に対して抗不整脈薬を投与したが発作を繰り返したので,カテーテルアブレーションを行った症例を経験した.発作性上室性頻拍は再発せず,順調に経過したので報告する.

OBSTETRIC NEWS

早産再発予防

著者: 武久徹

ページ範囲:P.609 - P.611

 プロゲステロン合成剤は早産の予防的治療として有望(West J Surg Ob Gyn 72 : 3036, 1964/NEJM 293 : 675, 1975/AJOG 151 : 574, 1985)という複数の研究があったが,すべての結果が好結果ということではなかった(Ob Gyn 56 : 692, 1980/AJOG 146 : 187, 1983).メタ分析の結果,早産や再発流産を防止するうえで有効という証拠はないことが示唆された(BJOG 96 : 265, 1989)が,17 alpha―hydroxyprogesterone(17P)に限定したメタ分析では早産率が有意に減少することが示されている(BJOG 97 : 149, 1990).また,早産歴のある妊婦は次回妊娠で早産のハイリスクであることも明らかにされている(AJOG 178 : 1035, 1998).

 Meisらは米国19施設で17Pによる早産再発予防の有用性の有無を調べた.早産歴がある妊娠16週~20週の妊婦を対象に無作為化二重盲検偽薬対照研究を行った.研究群には分娩または妊娠36週まで17P(250 mg)が毎週1回筋注された.妊娠14週~妊娠20週6日までの間に全例に超音波による予定日確認と高度胎児奇形診断が行われた.多胎妊娠,胎児奇形,今回の妊娠でプロゲステロンまたはヘパリン療法を行った例,頸管縫縮術施行または予定例,薬剤投与が必要な高血圧,痙攣性疾患,他施設で分娩予定例は研究対象から除外した.非遵守の定義は2回の注射間隔が10日以上としたが,完全に注射が行えた例(遵守率)は91.5%であった.

Estrogen Series 61

「エストロゲン+プロゲスチンが更年期後女性の痴呆と軽度認知能力障害に及ぼす影響について」

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.612 - P.613

今回ご紹介する論文は,大規模RCTであるWomen's Health Initiative(WHI)調査研究から派生して行われたWomen's Health Initiative Memory Studyに関するものである.その一部はすでに本欄Estrogen Series No.58にてご紹介ずみであるが,そこでは全般的認知能力(global cognitive function)についての影響が検討された.今回のものは,それに引き続いて更年期後女性をエストロゲン+プロゲスチン : E+Pと略す)群とプラセボ群とにランダムに分け,痴呆(dementia)および軽度(認識)認知能力障害(mild cognitive impairment : MCI)に及ぼす影響をみようとしたものである.

分析対象はEstrogen Series No.58と全く同一で,今回のものはその延長上にある.すなわち,Modified Mini─Mental State Examination(3MSE)という認知能力テストを毎年行い,ある決められた点数を割ると,それらの対象に対して今度はもっと詳細な検査である第2相試験と第3相試験を行った.第2相試験ではConsortium to Establish a Registry for Alzheimer's Disease(CERAD)試験を行い,さらにテクニシャンによる面接を行った.第3相試験では痴呆の診断に関して資格と経験のある医師が直接患者に面接し,評価する.第3相試験では,対象は「痴呆なし」,「軽度の知的能力障害(mild cognitive impairment : MCI)あり」,おそらく痴呆と思われる「痴呆の疑いあり(probable dementia”)」,の3種に分類された.第3相の面接で「痴呆の疑いあり」が診断されると,第4相試験の対象となり,そこではCTやMRIなどの映像検査がなされ,(治療可能性を持つ)可逆的な原因があるかどうかが確認される仕組みである.

病院めぐり

新潟県立がんセンター新潟病院

著者: 児玉省二

ページ範囲:P.614 - P.614

 当院のあゆみは,昭和25年(1950年)に「県立新潟病院」として創設され,性病患者の治療と予防および健康診断を目的とし,内科・性病科の2診療科20床で開院しました.昭和36年には,「県立ガンセンター新潟病院」と改称し,病床数366床,乳児施設30床の総合病院として新しく発足し,昭和62年には「県立がんセンター新潟病院」と改められ,診療科目が16科,450床となりました.平成10年には「がん予防総合センター」が併設され,がん検診で精密検診が必要とされた二次検診の役割を担っています.現在の当院の診療科目は18科で,病床数500床にて診療が行われています.平成12年には「(財)日本医療機能評価機構の認定」を取得し,平成14年には「地域がん診療拠点病院」に県内で唯一指定(厚生労働省)され活動が期待されています.

 本院の基本理念は,「がんを中心とした高度先進医療を広く県民に提供する」ことで,患者の権利として「当院は『一人ひとりを大切にする医療』をめざしています」ことを挙げています.現在の当院医師数は,常勤77名,研修医は前期研修6名(内科),後期研修7名(外科,小児科)の合計13名となっています.そして,当院は「がん治療」が診療の中心ではありますが,病診連携を積極的に進め地域の医療に貢献するとともに,毎年の市民公開講座ではテーマを決めて講演を行い,一般市民の質問を受け交流をはかっています.

盛岡赤十字病院

著者: 松田壯正

ページ範囲:P.615 - P.615

 盛岡赤十字病院は,岩手山と北上川を背景とした自然に恵まれた環境に位置し,病舎は広い敷地のなか,北上川岸に庭園を配し,「緑豊かな環境のなかで心温まる全人的医療」を目指している.岩手県の県庁所在地である盛岡市内の南端に位置し,地域の中核病院として高度先進的な医療を実施しながら,周産期センター,がん診療設備を完備し,また母子保健施設,老人デイケア,人間ドック,人工透析,さらに日本赤十字社本来の仕事である災害救助センターなどを配置し,盛岡市の二次救急施設として多くの救急患者を受け入れている.平成15年には北上河原にヘリポートが完備され,災害救助体制のいっそうの充実がはかられた.

 本院は大正9年に大正天皇即位記念事業として創立され,長年,盛岡市中心部で診療を行って「日赤」と親しまれてきたが,施設が手狭で老朽化したため昭和62年12月に現在地に移転した.その当時,市中心部を離れることへの危惧があったというが,広大な駐車場を用意し,施設すべてに空間的余裕がある病院建設は「病院建築賞1991」をいただき,今になってみれば先見の明があったといえる.病床数492床の総合病院として,検診事業,災害時医療活動にも力を注いでいる.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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