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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科58巻7号

2004年07月発行

文献概要

今月の臨床 産婦人科医に必要な乳がんの知識 乳がんのリスク

2.HRTと乳がん

著者: 麻生武志1

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生殖機能協関学

ページ範囲:P.894 - P.899

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はじめに

女性の悪性新生物のなかで近年著しい増加をみせているのが乳がんであり,1996年に約30,000であったわが国での罹患数が,近年の集計では35,000人となっている.1983~87年の集計で対人口10万当りの乳がん死亡数が約28と世界的に最も高いイングランド・ウエールズに比して日本女性では5.8であったが,その20年前には3.9であったことからも,この間のわが国での増加傾向は明らかである1).また,わが国での乳がんの年齢層別罹患率は40歳代の後半にピークを呈して65歳までそのレベルを保ち,死亡率は50歳代の中頃に最高となるパターンは欧米と異なり(図1)2),中高年女性のヘルスケアにおける乳がんの診断・治療はきわめて重要である.

一方,閉経以降や両側卵巣摘除に生じるestrogenの低下とその後の持続的な欠乏状態に起因する種々の機能障害に関する詳細な検討が進むにしたがって,estrogenは単に生殖機能に関連するホルモンであるのみならず,女性の生命維持にもきわめて重要で多彩な作用を有することが明らかとなり,その低下・欠乏を補うことによって各種機能の障害が防止され,機能の回復を期待できることが示されている.以上のような背景に治療から予防へ向けての医療の基本姿勢の転換が加わって,ホルモン補充療法(hormone replacement therapy : HRT)が実地臨床の場に導入されるようになった3).一方,乳腺細胞・組織の分化発育はホルモン依存性であり,乳がんリスクが高まる更年期に外因性ホルモンを使用するHRTを実施するリスクとベネフィットは慎重に判断されなければならない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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