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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科58巻9号

2004年09月発行

今月の臨床 不育症診療─その理論と実践

内分泌異常による不育症

著者: 楢原久司1

所属機関: 1大分大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.1116 - P.1119

文献概要

はじめに

不育症は,いわゆる反復流産(2回連続した自然流産)および習慣流産(連続3回以上自然流産を繰り返した状態)を含み,生殖年齢の男女が妊娠を希望し,妊娠は成立するが流産や早産を繰り返して生児を得られない状態の総称である.不育症の原因は,子宮因子,内分泌異常,染色体異常,感染,抗リン脂質抗体症候群を含む免疫学的異常など,多岐にわたっている.

不育症を引き起こすとされる内分泌異常には,黄体機能不全,高プロラクチン血症,甲状腺機能障害,糖尿病などが挙げられる.黄体形成は卵胞成熟の過程から連続した変化であり,正常な黄体機能は正常な卵胞発育と排卵に引き続いて獲得される.黄体は,主として卵巣性ステロイドであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌により,子宮内膜を増殖期内膜から着床可能な分泌期内膜に変化させる.この過程は,着床および妊娠の維持に必須であり,黄体がこの機能を十分果たせない状態を黄体機能不全(luteal phase defect)という.

黄体機能不全が不育症の原因として占める割合は報告により異なるが,25~60%であるとされる1).同様に,高プロラクチン血症の占める割合は10~20%,甲状腺機能障害は2~10%,糖尿病は0.1~2%と想定される.それぞれの値の幅は,諸家の報告によりその頻度が大きく異なることを示している.また,これらの内分泌異常は,それぞれ相互に影響を及ぼし合っていることが考えられ,例えば高プロラクチン血症も甲状腺機能障害も黄体機能不全の原因になり得る.

本稿では,不育症の原因として内分泌異常に焦点を当て,なかでも黄体機能不全とのかかわりを中心に,その病態,診断と治療について概説したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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